1962年に創刊された中公新書からは、創刊以来、人文社会科学系の専門家によって多数の名著が世に出されてきました。
特に中公新書は、人文社会科学系のテーマに関する専門家によって書かれた、堅実な本が多いです。
しかし、今でも毎年多数の質の高い書籍が出版されているため、読むべき本を選ぶのはなかなか難しいものです。
そこでこの記事では、今まで100冊以上の中公新書から学んできた筆者が、
- 歴史系
- 政治系
- 経済系
- 文化・社会系
- 哲学系
- 個人的なお気に入り
のジャンル別に厳選して紹介します。
関心のあるところから読んでみてください。
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1章:【歴史系】中公新書のおすすめ本
それではまずは、中公新書の歴史系のおすすめ本から紹介します。
①
『日本近現代史講義』現代の日本が、政治の混迷や経済の低迷を中心にさまざまな問題を抱えていることは誰もが認めることだと思います。
なぜ日本はそんなさまざまな問題を抱えることになったのか?この問いを考えるためには、日本の近現代史をしっかり振り返り、反省することが大事です。
『日本近現代史講義』は、各ジャンルの専門家によって書かれた日本の近現代史の本であり、
- 明治維新
- 日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦等の戦争
- 日中関係
- 日本の占領
- 歴史認識問題
など非常に重要なテーマが分かりやすく解説されています。
明治維新以降の日本の歴史について、大事な論点を深掘りして理解したいという方は必読です。
やや政治史よりのテーマですが、宮城大蔵『現代日本外交史』も現代の日本政治、外交関係を整理する上でとてもいい本です。
②白石隆『海の帝国』
『海の帝国』はアジアを中心とした国際関係を専門とする白石隆が、アジアにおける秩序の形成と国家建設を総括的に述べた著作で、第一回読売・吉野作造生を受賞した名著です。
「アジアの秩序形成?」とイメージしにくい方もいるかもしれませんが、日本は地理的にアジアに属している上、アジアは欧米に変わる経済の中心となりつつあります。
また、隣国中国は大国として影響力を増しており、その中国に取り込まれまいと東アジアでは活発な地域秩序構想が議論されている現状があります(たとえば東アジア共同体論、RCEP構想など)。
このような時代に、過去の歴史からアジアがどのような秩序形成をしてきたか理解することはとても大事なのです。
白石隆はアジア秩序に関する複数の本を執筆していますが、『海の帝国』はその1冊としておすすめです。
ぜひ手に取ってみてください。
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『海の帝国』は東南アジアが中心ですが、アジア全体の歴史を知ることも大事です。日本の世界史の授業では西洋の登場が多くアジアは断片的であることもあります。
アジア全体の歴史を整理するために、下記の本も良書です。
③深井智朗『プロテスタンティズム』
深井智朗『プロテスタンティズム』は、宗教改革以降に生まれたキリスト教の新教であるプロテスタントの思想、プロテスタンティズムについて、その歴史や思想教義、政治や文化への影響を網羅的に論じた名著です。
歴史や政治に興味のない方にとって、キリスト教もプロテスタントも身近な存在ではないかもしれません。しかし、実はキリスト教の影響は欧州やアメリカの政治・文化に今でも強い影響を与えています(たとえばキリスト教右派など)。
『プロテスタンティズム』では、
といった、歴史、政治、文化にまたがる広い議論がなされています。
プロテスタントおよび欧米の宗教や文化を理解する上でとてもいい本ですので、ぜひ読んでください。
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④小林登志子『古代オリエントの神々』
小林登志子『古代オリエントの神々』は、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教といった宗教の起源となった古代オリエントの信仰について、文明形成の背景とともに分かりやすく解説された本です。
「古代オリエントなんて世界史で習ったくらい」という方も少なくないかもしれません。
しかし、古代オリエントは西洋文明の起源であり、西洋社会を理解する上で避けられない歴史です。また、現代でも多くの国家の政治、文化に影響を及ぼし、対立の原因ともなっているキリスト教、イスラム教、ユダヤ教といった宗教の起源となる信仰を生み出したのも、古代オリエントです。
つまり、現代の世界を理解する上でも、古代オリエント文明及び信仰を理解することはとても大事なのです。
この本は、世界史の知識に自信がない方でも読める上、とても知的好奇心が刺激される内容です。
ぜひ手に取ってみてください。
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⑤「物語」シリーズ
中公新書には「物語○○の歴史」というシリーズがあり、
といった各国史・地域史の本から、学問史をテーマとした、
などもあります。
特定のテーマから歴史を勉強したい方におすすめです。
岩波新書のおすすめ一覧は以下の記事で紹介しています。
2章:【政治系】中公新書のおすすめ本
次に、中公新書の政治系の本を厳選して紹介します。
①飯尾潤『日本の統治構造』
中公新書の政治系の名著として、飯尾潤『日本の統治構造』は外せません。
この本は、日本がいかに統治されているのか?ということを実態に即して解説したもので、政治に興味があるすべての人におすすめします。
日本の統治構造は、一般的には「議院内閣制」「政党政治」「官僚制」等と言われますが、実体としてどのようになっているのか理解している人は少ないと思います。
また、「政治は官僚が支配している」「自民党の一党独裁である」といった俗説も多く何が本当なのか、本当にそこまで極端な支配があるのか、疑問を持つ方も少なくないのではないでしょうか。
政治に関する議論は、極論や俗説が多いため、このような堅実な本からしっかり基本を学ぶことを強くおすすめします。
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②高坂正堯『国際政治』
高坂正堯『国際政治』は、国際政治学の入門書として長年名著とされてきたものです。
初版は1966年とすでに半世紀以上昔の本ですが、いまだに読まれているのはその問いが本質的であり、今でも色あせないテーマを論じているためです。
1960年代と2020年代では国際情勢はまったく変わってしまっていますが、権力闘争、勢力均衡、経済と政治、国際機構の意義等、現代と変わらない構造があることも分かります。
国際政治について理解したい方は、ぜひ読んでみてください。
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③白石隆,ハウ・カロライン『中国は東アジアをどう変えるか』
1章でも紹介した白石隆と、ハウ・カロラインの共著『中国は東アジアをどう変えるか』は、現代中国を中心としたアジアの国際関係について、詳しく論じた本です。
1章でも触れたように、これからの日本の政治・経済の未来を考える上で中国の存在は避けられません。しかし、国内では中国に対して、いまだに強い反発心を押し出した著作が多かったりします(そういう本の方が出版業界では売れるようです)。
そのような著作からは、正しい中国像は見えにくいでしょう。そのため、専門家が書いた堅実な著作である、『中国は東アジアをどう変えるか』のような本から、現代中国について理解することが非常に重要です。
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さらに、下記の『中国の行動原理』も中国研究者による堅実な内容であり、中国について理解する上でとても良い本です。
④宇野重規『保守主義とは何か』
「保守主義」と言うとどのようなことをイメージするでしょうか?
「自民党」「憲法9条改正」「復古的」といった政治的立場や「古臭い」「時代遅れ」といったイメージをお持ちかもしれません。しかし、これらは正しい認識ではありません。
保守主義には、近代的な進歩主義、つまり「頭の中で描いた理想社会をラディカルに実現させよう」とする思想に対し、「いやいやそれでは社会にいろんな問題が起こるから、漸進的な改革で社会を変えていこう」と主張する立場です(これは大雑把なまとめ方ですが)。
そして、そういった意味での保守主義の立場は、右派も左派も過激になりがちな現代社会だからこそ、学ぶ価値のある立場でもあります。
『保守主義とは何か』では、エドマンド・バーグから始まった保守主義の伝統からはじまり、アメリカや日本での保守主義について、詳しく解説されています。
「保守」という言葉に悪いイメージを持っている方も、読めば見方が変わるはずです。
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⑤堀内一史『アメリカと宗教』
アメリカというと「合理的」「個人主義」「実用主義(プラグマティズム)」といった印象を持つ方が多いかもしれませんが、実は非常に宗教の政治的、文化的力が強い国です。
有名な話ですが、
- 多くのキリスト教徒が進化論より「天地創造」を信じ
- 宗教右派勢力が政治的な力を持ち
- キリスト教との教義との整合性から政策について激しく議論がなされている
というのがアメリカです。
アメリカにおいて宗教はどのような力を持っているのでしょうか?なぜこれほどの力を持つようになったのでしょうか?
こうした疑問に答えてくれるのが、『アメリカと宗教』です。
アメリカ政治を語る上で宗教(特にキリスト教)のことは避けられませんので、ぜひこの本からアメリカの宗教を学んでみてください。
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⑥遠藤乾『欧州複合危機』
欧州での排外主義的政党の登場や、欧州の難民問題、イギリスのEU離脱(ブレグジット)など、近年欧州における問題は日本にも広く伝わっています。
欧州は戦後、紆余曲折を経てEUという地域統合を実現し、これは国際政治上も非常に実験的な試みでした。しかし、なぜ今になってこれほど問題を抱えるようになったのでしょうか?
遠藤乾は欧州研究の第一人者ですが、その遠藤によって書かれた『欧州複合危機』は、現代の欧州をめぐる問題が詳しく述べられています。新書として、これほど詳しく、かつ分かりやすい欧州問題に関する解説書は他にないでしょう。
欧州に対して少しでも関心がある方は、ぜひ手に取ってみてください。
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政治学のおすすめ本について、以下の記事でも紹介しています。
3章:【経済系】中公新書のおすすめ本
次に、経済系の中公新書のおすすめ本を厳選して紹介します。
①西野智彦『平成金融史』
現代の日本経済について理解を深める上で、『平成金融史』はとてもいい本です。
平成の経済は「失われた20年(30年)」と言われるほど低成長でした。アベノミクスで株価は上昇したものの、実体経済の面で豊かになったことを実感する人は少ないのではないでしょうか。
また、景気回復のため、平成の時代には金融政策が多用され、特に近年も巨額の量的緩和政策が行われています。
こうした金融政策は現在まで連続しているものですので、平成初期のバブル経済とその崩壊からはじまる平成の金融史を、しっかり把握しておくことが大事です。
金融を専門的に勉強している人には物足りないかもしれませんが、まずは広く知識を得たい、整理したいという人に『平成金融史』はおすすめです。
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いうまでもなく日本も資本主義経済ですが、資本主義は世界のどこでも同じ形で社会の中に存在するのではありません。日本独自の資本主義の形態について、『日本型資本主義』で論じられています。こちらもぜひ参考にしてください。
②猪木武徳『戦後世界経済史』
現代の世界経済を理解する上で大事なのが、戦後の世界経済の歴史を知っておくことです。『戦後世界経済史』は、そのタイトル通り戦後世界経済について、特に日本、アメリカ、欧州、アジアの地域を詳しく解説した本です。
戦後の世界経済を扱った新書として、これほど詳しく網羅的なものはないのではないでしょうか?
私は大学時代に繰り返し読んで、この本の内容は頭に詰め込みました。
経済学部の学生はもちろん、経済に興味のある社会人の方には必読書です。
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③後藤健太『アジア経済とは何か』
後藤健太『アジア経済とは何か』では、アジア経済について網羅的に解説された良書です。
アジアの経済は、日本一極からアジアNIESの発展、そして中国の市場経済化と急成長という大きな流れがあります。しかし、日本とアジアの経済は対立的だったわけではなく、重層的な構造が作られてきました。
つまり、日本の直接投資(工場の建造等)が最初は東南アジア中心に、次に中国へと行われ、アジア内では国際分業構造が形成されたのです。
では、なぜ日本の低迷に対し、中国をはじめとするアジアの国々は躍進しているのでしょう?
『アジア経済とは何か』では、そういったアジア経済に関するさまざまな問いに、分かりやすく答えてくれます。
これまでに紹介したアジアの歴史やアジアの政治と併せて、読んでみてください。
④堂目卓生『アダム・スミス』
アダムスミスと言えば経済学の創始者であり、「神の見えざる手」で知られる自由主義的な思想がよく知られています。いまだにさまざまな文脈で議論される、偉大な経済学者です。
しかし、スミス=自由主義・市場主義的と考える人も多い印象ですが、これはスミスの思想の一面に過ぎません。スミスは、経済学について述べた『国富論』だけでなく、「道徳」について述べた『道徳感情論』も著しているのです。
スミスについて理解することは、経済学の理解を深める上でとても大事ですが、そのためには『国富論』『道徳感情論』をセットで捉えることが大事なのです。
しかし、この2つの著作を読むのは文量も多くなかなか大変です。
そこで、スミスの思想の入門書として『アダムスミスー『道徳感情論』と『国富論』の世界』をおすすめします。スミスの最初の1冊として読んでみてください。
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⑤間宮陽介『市場社会の思想史』
「経済学という学問をまるっと理解したい」という場合、この『市場社会の思想史』をおすすめします。
経済学は、他の学問と比べても学派・思想が入り乱れていて理解しづらいものです。しかし、この本は経済学の複雑な歴史を「自由」という切り口から描いており、初心者にもとても理解しやすいものです。
特定の理論や経済学者について勉強する前に、経済学のアウトラインを描くものとして読むことをおすすめします。
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⑥瀧澤弘和『現代経済学』
『市場社会の思想史』では経済学・経済思想の大きな流れを捉えることができますが、この『現代経済学ーゲーム理論・行動経済学・制度論ー』はその流れの先で、現代の経済学がどのようなものになっているのか把握することができます。
「ゲーム理論」も「行動経済学」も「制度論」1つ1つが1冊の本には収まらないほど深いテーマです。しかし、この本ではあくまで現代経済学を広く理解するものとして、良い入門書だと思います。
経済学部生は教科書の副読本として、社会人は経済学の入門書や教養書として読んでみると良いと思います。
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4章:【文化・社会系】中公新書のおすすめ本
次に、中公新書の文化・社会系の本を紹介します。
①竹沢尚一郎『社会とはなにか』
私たちは日常的に「社会」という言葉を使いますが、あなたは「そもそも、社会とは何なんだ?」という本質的な疑問に答えることができるでしょうか?
竹沢の『社会とはなにか』では、教科書的な語りではなく、実際の問題を提示しながら、上の疑問に回答する糸口を提示しています。具体的には、外国人移民に関する政策と水俣病という事例から、多様な人々を多様なままに包摂できる社会を目指した議論がされています。
そのための議論の前提として、
- 「社会」という概念を再考すること
- 「社会」という用語が歴史的にどのように、どんな問題に対して構築されたのかを提示すること
がされています。
具体的な問題を取り上げながら、概念の歴史も学べる良書は少ないですから、ぜひ読んでみてください。
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②祖父江孝男『文化人類学入門』
祖父江の『文化人類学入門』は、シンプルに「文化人類学とはどんな学問なのか?」を解説した書物です。内容的にいえば、以下のようなことを学ぶことができます。
- 文化人類学の誕生背景・歴史
- 人間と文化・言語・経済・婚姻・宗教・心理の関係
見て分かるように、人間に関わるほとんど全てを研究対象とする「何でも屋」のような学問です。おまけに研究対象となる社会は、世界中の先住民社会がほとんどです。(→文化人類学に関して詳しくはこちら)
マイナーな学問であることは確かですが、そのような性質をもった学問が生み出す新たな視点は、グローバル時代でさらに有効になっているように感じます(ちなみに、上述した竹沢尚一郎は、社会学者ではなく、文化人類学者です)。
世界を異なる視点で見てみたいと思う方は、ぜひ読んでみてください。
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③加藤秀俊『社会学』
加藤の『社会学』は社会学の教科書的な説明ではなく、加藤の視点に立った「私社会学」を「集団」「コミュニケーション」「組織」といったキーワードから紹介するものです。
そのため、タイトルから社会学の概説を期待するかもしれませんが、必ずしもそうではありません。むしろ、数ある学説や研究のなかで、加藤の考える社会学の本質(「世間」)が練り出されています。
そういった意味で、「真面目な」学説や理論の解説を求める読者には向かないかもしれません。しかし、学問の多様なあり方を理解したい方にはとてもオススメできる書物です。
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④森正人『大衆音楽史』
森の『大衆音楽史』は、「民謡」「ジャズ・ブルーズ」「ロックンロール」「パンク」「レゲエ」といった幅広い大衆音楽の歴史を扱った新書です。(→大衆文化に関してはこちら)
歴史を扱うといっても時系列で紹介するというよりは、音楽を以下のようなものとして扱っています。
音楽は単に、現実世界で生じたことを映し出す鏡であるばかりではなく、それこそが社会を構成する一つのかけがえないのない要素(森『大衆音楽史』Ⅳ頁)
つまり、簡単にいえば、大衆音楽を社会歴史的な関係から捉えていくということです。そのため、音楽を音楽としてではなく、社会との関係から深く知りたい方にはとてもオススメです。
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⑤天野郁夫『大学の誕生』上・下
この『大学の誕生』は、日本の大学、大学制度が成立する歴史をとても詳しく解説した本です。
この本で扱われているのは、
- 明治時代に日本の近代化を背景にした人材育成のために、東京大学が設立される経緯
- 帝国主義的な背景から、東京大学が帝国大学の第一号となり帝国大学(東京大学)以外の高等教育機関が並行して設立されていく経緯
- 帝国大学やその他の高等教育機関の変化と、現代に繋がる大学制度の誕生
といった明治・大正期の黎明期の大学の歴史です。
とてもドラマチックで面白いため、すべての大学生や教育系の歴史に興味がある方におすすめします。
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⑥吉見俊哉『博覧会の政治学』
吉見俊哉の『博覧会の政治学』では、博覧会が「帝国主義」「消費社会」「大衆娯楽」といったキーワードと関連しながら形成されてきたことを明らかにしています。
このような視点から博覧会を考察するのは、そもそも、博覧会は国家や資本によって演出されて、受容のされ方が方向づけられた制度として存在したという認識があるためです。
カルチュラル・スタディーズやフーコーの「言説」「エピステーメー」に関する知識がないと読みにくいかもしれませんが、博覧会を多層的なテクストとして読解する分析は見事ですので、ぜひ読んでみてください。
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文化・社会関係のおすすめ本について、以下の記事でも紹介しています。
5章:【哲学系】中公新書のおすすめ本
次に、中公新書の哲学系の本を紹介します。
①伊藤邦武『物語哲学の歴史』
哲学は哲学史から学べとはよく言われますが、多くの哲学者が抽象的な議論を繰り広げる哲学史は、なかなか全体を理解できないという人も多いのではないでしょうか。
『物語哲学の歴史』は、哲学の大きな流れを1冊で描くことができる、入門書として非常にいい本です。
もちろん、膨大な哲学の蓄積を1冊で紹介することはできませんから、かなり割愛されています。そのため、哲学史の最初の1冊として活用することをおすすめします。
この本を読んだ後に、例えば岩崎武雄の『西洋哲学史』(教養全書)やシェヴェーグラーの『西洋哲学史』(岩波文庫)などを読んでみると良いのではないでしょうか。
(2023/06/02 16:15:29時点 Amazon調べ-詳細)
②細見和之『フランクフルト学派』
難解なフランクフルト学派の議論を丁寧に解説したのが、細見の『フランクフルト学派』です。
フランクフルト学派の成立時期・時代背景から『啓蒙の弁証法』に代表される批判理論をとてもわかりやすく解説しています。特に、文明と野蛮の関係を徹底的に疑い、批判的に考える姿勢は21世紀においても引き継がれるべきだと思います。
加えて、個人的には「アウシュヴィッツのあとで詩を書くことは野蛮である」という言葉に考えさせられました。
フランクフルト学派に関しては次の記事で解説していますが、詳しくは細見の『フランクフルト学派』を読むことをオススメします。(→フランクフルト学派についてはこちら)
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③酒井健 『シュルレアリスム』
「『シュルレアリスム』という用語はよく耳にするが、一体なにを指しているのだろう?」と悩む方もいるかと思います。
そんなとき、バタイユ研究者である酒井は、シュルレアリスムの哲学的な側面を中心にわかりやすく解説しています。特に、西欧近代社会の理性主義への批判が誕生背景にあったこと、そのためのフロイト理論の導入がされたことは、思想的な展開に極めて重要な局面ですからしっかり理解する必要があります。
もし内容に少し触れるならば、シュルレアリスム運動の本質は相対立する現実や人間の側面を肯定的に捉えていくことにありました。このような視点は、21世紀の今日、私たちはどのように引き継げるのでしょうか?ぜひ一緒に考えてみましょう。
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④岡本裕一朗『フランス現代思想史』
岡本の『フランス現代思想史』は、レヴィ=ストロースの構造主義からフーコーやデリダのポスト構造主義までの展開を提示したものです。
構造主義やポスト構造主義をまだしっかり理解していない方には良い道案内になりますし、研究者の方にはこれまでの議論を見直すという機会になると思います。
著者の岡本は、本書の特徴として、
- 思想家に共感して内部から書くのではなく、誰の思想にもコミットしない外部から理解しようとしたこと
- ポスト構造主義以降の潮流を提示したこと
を挙げています。(岡本『フランス現代思想史』(ⅲ頁))
フランス現代思想はとても難解でありながら刺激的な内容ばかりですので、本書を読んでからぜひ原著に挑戦してもらいたいです。
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哲学系の本について、以下の記事でもおすすめ本を紹介しています。
6章:【個人的なお気に入り】中公新書のおすすめ本
最後に、個人的なお気に入りの中公新書の本を紹介します。
①原洋之介『アジア型経済システム』
アジア経済についてはすでに紹介しましたが、『アジア型経済システム』の著者である原洋之介はアジア経済研究のパイオニア的な存在です。
少し古い本(2000年初版)ではありますが、この本の視点は今でも色あせないものだと思います。個人的に、原先生とは一度お目にかかったことがあるのですが、博覧強記でかつ話が面白く、とてもエネルギッシュな方でした。
他にも多数の著作がありますので、ぜひ読んでみてください。
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②岸上伸啓『イヌイット』
岸上の『イヌイット』では、地球上で最も厳しい自然環境を生き抜いたイヌイットの生活を垣間見ることできます。
私たちの日常的な常識からは考えられない出来事や習慣ばかりですが、そのような人々に対する理解を深めることが、グローバル時代では重要だと感じます。
自分とは異なる生活をする人々の魅力を、丁寧かつ愛をもって情熱的に描き出す岸上にも好感がもてた一冊です。
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岩波新書のおすすめ一覧は以下の記事で紹介しています。
まとめ
興味のある本はあったでしょうか?
多数の本を紹介しましたので、ぜひブックマークしてこれからもご活用ください。
一部の書籍は「耳で読む」こともできます。通勤・通学中の時間も勉強に使えるようになるため、おすすめです。
最初の1冊は無料でもらえますので、まずは1度試してみてください。
また、書籍を電子版で読むこともオススメします。
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数百冊の書物に加えて、
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などの特典もあります。学術的感性は読書や映画鑑賞などの幅広い経験から鍛えられますので、ぜひお試しください。
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