社会学

【消費社会論とは】研究目的から研究の変遷までわかりやすく解説

消費社会論とは

消費社会論(Theory of Consumer Society)とは、消費行動と社会現象との関連、あるいは、消費行動と社会全体との関連を分析するものです。

消費社会は、経済が繁栄し、物質的に恵まれた社会です。しかし、豊かさの中に、さまざまな問題を抱えてもいます。深刻な環境問題や健康被害、消費者間の階層格差など、多方面に負のひずみも現れています。

また、昨今は情報化社会が発達し、多品種少量生産のシステムが構築されました。IT技術の進歩により、インターネットを介したロングテール・ビジネスも盛んです。そのように新しい局面を迎えている現代社会に向き合い上で、消費社会論の議論はきっと役に立つはずです。

この記事では、

  • 消費社会とはなにか
  • 消費社会の成立過程
  • 消費社会論の変遷

をそれぞれ解説します。

関心に沿って読み進めてください。

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1章:消費社会論とは

まず、1章では消費社会の概要と成立過程を説明した後、消費社会論の研究目的を解説します。

このサイトでは複数の文献を参照して、記事を執筆しています。参照・引用箇所は注1ここに参照情報を入れますを入れていますので、クリックして参考にしてください。

1-1:消費社会とは

そもそも、消費社会とはどのような社会なのでしょうか?

私たちは日々の生活の中で、目的や用途によって、いろんな物やサービスを購入し、消費しています。人間は大昔から、衣食住などの生理的な欲求を満たすために「消費する」という行為を行ってきました。

そこで、単純に「消費社会」という言葉を文字どおりにとらえると、「消費が行われる社会」となりますが、それだけでは定義として不十分です。

そのため、ここでは、社会学者の間々田孝夫の定義を引用しましょう。彼は消費社会を以下のように定義しています。

人々が消費に対して強い関心をもち、高い水準の消費が行なわれる社会であり、それにともなってさまざまな社会的変化が生じるような社会2間々田『消費社会論』(有斐閣)8頁

定義にある「高い水準の消費」とは、健康と安全を最低限維持できるような慎ましい生活を超えて、ある程度は暮らしに余裕があり、消費することに楽しみを見出せる状態を指しています。

そして、高い水準の消費が、ごく一部の人だけのぜいたくではなく、広く一般の庶民までも含めて、豊かな生活を送っていることも意味しています。そのため、消費社会とは大衆消費社会であるといえるでしょう。

そして、大衆消費社会は、基本的に次のような特徴から定義されます。

  • 人々は買物に対して、強い関心をもつとされる。つまり、衣食住を満たすだけでなく、それを楽しみ、趣味や娯楽、レジャーに価値を置く
  • このような高い水準の消費を可能とし、人々の欲求に応えるには、行政や生産、流通などで、水準に見合った仕組みがある
  • 一方で、消費に熱中するあまり、自分以外の人々に犠牲を強いたり、地球環境に深刻な被害をもたらすなど、さまざまな問題も発生する
  • さらに、消費現象が社会全体を大きく変容させていくこともある

このような特徴をまとめると、「物質的な要素」「精神的な要素」「社会的な要素」の3つの要素によって構成されているといえます。



1-2:消費社会の成立

では一体、このような大衆消費社会は、いつ、どのようにして成立したのでしょうか?

結論からいえば、研究者の間でも、消費社会の成立時期については判断が分かれているのが現状です。それは、消費社会を構成する3つの要素のなかでどの要素に着目するかによって成立時期が異なるからです。

たとえば、

  • 後述するロストウは、人々の生活水準が著しく向上した1920年代のアメリカで大衆消費社会が成立したとする考える
  • その一方で、消費者のライフスタイルの変化から、17~19世紀のヨーロッパに消費社会の起源を見る研究者もいる

のが現状です。

事実、歴史を振り返ってみると、物質的・精神的・社会的な要素がすべて、いっせいに出そろった時期はありません。

具体的には、大量生産・大量流通が制度化され、市場を通じて供給される商品が一般家庭に普及し、大衆全体の生活水準が向上し、人々は新しい消費スタイルを追求する…といった状態が同時に成立してはいないのです。

どちらかといえば、これらの要素が時期をずらして現れ、しだいに消費社会が形成されていったのが実情です。そのため、消費社会の出現というのは、はっきりとした区切り目が存在しない現象なのです。(無理に単純化した結論を導き出すより、複雑性を保ったまま歴史を語る方がよい場合もあります)

それでも、多くの人に想定される消費社会のイメージの原型は、1950年代のアメリカといわれています。それは以下のような社会的状況があったためです。

  • 1950年代のアメリカは世界第1位の経済大国となり、GNP(国民総生産)の圧倒的な高さと、かつてない高水準の消費生活を実現した
  • その結果、大量生産システムが確立し、流通は合理化され、スーパーマーケットやショッピングセンターがいたる所で見られるようになる
  • 広告やマーケティングの手段も発達し、クレジットカードなどの決済手段も普及し、大量消費を支えるための仕組みが、この時に出来上がった
  • 一方で、浪費的な消費が目立つようになり、消費者問題や環境問題など、消費社会の負の側面が注目されるようになった時期でもある

このようにみると、1950年代から60年代前半にかけてのアメリカ社会をもって、消費社会の成立であると見る研究者は多いことにうなずけると思います。



1-3: 消費社会論の目的

上記のような過程から消費社会は成立したといわれますが、「消費」という概念はさまざまな分野で研究されてきました。

たとえば、大まかですが、

  • ミクロ経済学・・・消費者の行動を分析し、経済の一般法則を導き出そうとした
  • 心理学・経営学・・・消費者が購買行動を起こす要因や条件、意思決定のプロセスについて考察してきた
  • 家政学・・・家計における消費の実態が調べられた
  • 文化人類学・民俗学・・・伝統社会や農村社会の消費生活が調査された
  • 考古学・歴史学・・・消費生活の変遷が研究されてきた

といえます。

そのなかで社会学は、消費と社会との関わりについて考察してきました。つまり、消費という行動を単独でとらえるのではなく、社会現象との関連、あるいは、社会全体との関連の中で分析しようとしたのです。

言い換えれば、消費社会論とは、

  1. 消費を通じて、社会のありさまを知ること
  2. 消費の変化から、現代社会の変化の方向性を見極めること

を研究の目的にしてきたのです。

実際の研究を紹介する前に、一旦これまでの内容をまとめます。

1章のまとめ
  • 消費社会論とは、消費行動と社会現象との関連、あるいは、消費行動と社会全体との関連を分析するものである
  • 消費社会は「物質的な要素」「精神的な要素」「社会的な要素」といった要素が特徴にある
  • 消費社会の出現というのは、はっきりとした区切り目が存在しない現象である

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2章:消費社会論の変遷

さて、2章では消費社会論の変遷を、名著を軸に紹介してきます。

その前に1点注意していただきたいことがあります。以下の内容はあくまで大まかに概論をまとめたに過ぎません。それぞれの説に対して、さまざまな批判や議論の余地があります。

あくまでもあなたが身近なテーマをきっかけに、社会について、また、社会とのつながりについて、深く考えるきっかけとして活用していただければ幸いです。

2-1:ヴェブレン

まず、19世紀末、消費に関する問題を初めて正面から取り上げた社会理論家として、アメリカの経済社会学者ソースティン・ヴェブレン(1857年-1929年)がいます。

当時、アメリカは急速な工業化と経済的発展によって、近代化を遂げつつあるさなかでした。ヴェブレンは、台頭しつつあった新興企業家層をテーマに『有閑階級の理論』を著し、その中で、競争心や見栄で行われる派手な消費を「誇示的消費」と批判しました。

具体的には、

  • 私有財産制と貨幣経済の成立によって出現した有閑階級=資本家階級は、社会の生産活動に携わっていないこと(その対極には、生産活動に従事する労働者階級が想定されている)
  • そのため、富裕な有閑階級の人々は、時間や製品を浪費することで、自分たちの財力と社会的地位の高さを他人に誇示するためにされること
  • 消費とは、他人と比較し、虚栄心を満たすために行なわれ、消費される物はそのための手段になっていること

を指摘しました。

なお、誇示的消費について、より詳しく学びたい人は、以下の記事も参考にしてみてください。→【誇示的消費とはなにか】その意味から具体例までわかりやすく解説

また、原著を読みたい方はこちら。

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2-2:リースマン

20世紀に入ってしばらく経つと、欧米諸国では経済が発展して所得水準が上がり、大衆消費社会が成立します。一般の人々が豊かな消費生活を享受するようになると、社会の中心的価値観にも変化が表れてきます。

1950年代、アメリカの社会学者デイヴィッド・リースマン(1909年- 2002年)は、人々が行動を決める際の価値を区別し、以下の三つの類型を設定しました。

  • 他人指向型・・・他人やマスメディアからの情報に照らし合わせることで、自分の行動を決定するタイプ
  • 内部指向型・・・自分の内面にある価値観や信念を基準に行動を決定するタイプ
  • 伝統指向型・・・その社会の伝統的な規範や生活様式に従って行動を決定するタイプ

中世以前の時代には伝統指向型が多く、近代社会では内部指向型が、現代社会では他人指向型が多いと位置づけられています。

リースマンは、多数派の生活様式や生活形態を表す商品やサービスを「スタンダード・パッケージ」と呼びました。これは「人並み」な生活水準の目安となります。

そして、「他人指向型」は消費行動において「スタンダード・パッケージ」を購入したり、所有するようになると指摘したのです。

より詳しくは、デイヴィッド・リースマンの『孤独な群集』(みすず書房)を読んでみてください。

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2-3:ガルブレイス

同じく1950年代、カナダの経済学者ジョン・ケネス・ガルブレイス(1908年-2006年)が注目したのは、消費プロモーションの働きです。

簡単にいえば、消費プロモーションの働きとは、

もともと、生産は人間の欲求を満たすための活動であるが、現代社会では逆に、人々の欲求が生産によって刺激され、新たな欲望が作られていること

を指します。

ガルブレイスは、企業が消費者の需要を作り出す側面を強調し「依存効果」と表現しました。

  • 依存効果とは、消費者の欲望が生産者側に依存すること
  • つまり、供給する側の企業の宣伝と販売術によって、消費者の需要が形成され、消費行動が生じることを意味する

ガルブレイスが主張したのは、資本主義には、企業が消費者の欲望を喚起して、需要を作り出すメカニズムが備わっており、そのメカニズムを通じて、資本主義の安定化と拡大がはかられているということでした。

より詳しくは、ガルブレイスの『ゆたかな社会』( 岩波現代文庫)を読んでみてください。

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2-4:ロストウ

1960年代、アメリカの経済学者ウォルト・ホイットマン・ロストウ(1916年-2003年)は、社会経済の発展段階として「高度大衆消費時代」を設定しました。

具体的なロストウの議論は、以下のとおりです。

  • 経済的発展はを①伝統的社会、②先行条件期、③離陸期、④成熟への前進期、⑤高度大衆消費時代の五つの段階に区分した
  • いかなる社会もそのいずれかの段階にあり、資本主義が発展して安定し、高度大衆消費社会に到達する

そして、高度大衆消費社会の特徴として、

  • 大量生産を行なう産業体制に対応していること
  • 各家庭の消費水準は基本的な衣食住を超えて飛躍的に拡大し、生活様式が大きく変化していること
  • 人々は積極的に消費を追い求め、画一的・均一的な耐久消費財やサービスの消費が普及すること

が挙げられます。

ロストウは、高度大衆消費時代が最も早く実現したのは、第1次大戦後に空前の好景気に沸いた1920年代のアメリカであると述べました。自動車の爆発的な普及や、著しい都市化と郊外生活化、家庭電化製品の普及などを根拠に、この時期に大衆消費時代が到来したと考えたのです。

より具体的な議論として、ロストウ『経済成長の諸段階』(ダイヤモンド社)がおすすめです。

2-5:ボードリヤール

そして、消費を現代社会の新たなコミュニケーション手段であると提起し、消費社会論に一大ブームを起こしたのが、フランスの思想家ジャン・ボードリヤール(1929年- 2007年)です。

具体的には、ボードリヤールは、

  • 人間を取り巻く膨大な物を記号学的に分析し、「物の体系」という概念を提唱した
  • そして、消費を物の機能的な使用や所有ではなく、個人や集団の権威づけでもなく、コミュニケーションと交換のシステムとしての記号であると捉えた

のです。

大衆消費社会では、物の体系の差異、すなわち商品の差別化が進みます。現代の消費は、他人との違いを競うものとして行われています。

人々は、社会的・文化的な意味をもった記号やイメージとして、物を消費します。消費は、物という記号を介して個性を主張する言語活動であり、意味づけとコミュニケーションの過程であると、ボードリヤールは指摘したのです。

記号消費について、より詳しく学びたい人は、以下の記事も参考にしてみてください。→【記号消費とは】ボードリヤールの議論を具体例からわかりやすく解説

また、ボードリヤールの議論としては『物の体系』(法政大学出版局)や『消費社会の神話と構造』(紀伊國屋書店)が有名です。

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2-6:ポスト消費社会論

そして消費社会論の変遷の最後として、1980年代以降の消費社会論について軽くふれていきます。まず重要なのは、フランスの社会学者ピエール・ブルデュー(1930年- 2002年)です。

ブルデューは、消費行動が階級によって特徴をもつ行為であることを「ハビトゥス」という概念を使って考察しました。

定義的にいえば、ハビトゥスとは、

日常生活の認知、評価、行為を方向付ける性向(dispositions)のシステム

です。(→ハビトゥスに関してはこちら

さらに、消費が文化資本による「卓越化」の戦略であると述べました。卓越化とは、自分のハビトゥスを他人と区別し、より価値のあるものとして提示することです。

そして、文化資本は、

  • 環境や教育を通して個人が習得した知識や技能(=身体化された文化資本)
  • 美術品や機械のように所有可能な文化的財物(=客体化された文化資本)
  • 学歴や資格(=制度化された文化資本)

の三つに分けられます。(→文化資本に関してはこちら

ブルデューは、階級の区分による消費行動の違いを実証し、そうした文化的な差異が継承されることで、構造的な不平等が再生産されていくことを強調しました。



また、ポーランドの社会学者ジグムント・バウマン(1925年- 2017年)は、ポスト消費社会を「リキッド・ソサエティ(液状化する社会)」と称しました。

まず、バウマンは、液体と同様に、幸福も流動的であると説きます。そして、現代の不安定なアイデンティティは、生産を中心とする社会(近代の第一段階)から消費中心の社会(近代の第二段階)へ社会基盤が移ったことに原因があると考えました。

現代の消費社会には標準的な規律がなく、限りのない誘惑や欲望、願望の変化にさらされています。そして、個人に自由が与えられ、選択肢が無限となったがゆえに、消費者は不安定になったのだと指摘しています。

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3章:消費社会論を学ぶための本

消費社会論を理解するきっかけを掴むことはできたでしょうか?

以下では、消費社会論をより深く学ぶための参考図書を紹介します。

オススメ書籍

オススメ度★★★ 間々田孝夫『消費社会論』(有斐閣)

1章の冒頭で取り上げた本です。消費社会論の概要がわかりやすくまとまっています。初学者におすすめの入門書です。

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オススメ度★★ 井上俊・伊藤公雄(編)『メディア・情報・消費社会』(世界思想社)

メディア論や消費社会論に関する著作の要約集です。ヴェブレンやガルブレイス、ボードリヤールなどの原典に当たる前に、概要を掴むのに適しています。

オススメ度★★★ 見田宗介『現代社会の理論―情報化・消費化社会の現在と未来』(岩波書店)

現代社会を「情報化」「消費化」社会としてとらえ、資本主義の未来を読み解いています。新書なので薄く、読みやすいですが、内容は深く、ボリュームがあります。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • 消費社会論とは、消費行動と社会現象との関連、あるいは、消費行動と社会全体との関連を分析するものである
  • 消費社会は「物質的な要素」「精神的な要素」「社会的な要素」といった要素が特徴にある

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