社会思想

【保守主義とは】定義・歴史・影響をわかりやすく解説

保守主義とは何か
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保守主義(conservatism)とは、

社会の伝統的な慣習や文化、歴史を重視する思想であり、理性の力による進歩的な社会変革を目指す「進歩主義」の対抗概念です。

一般的には、「保守主義ってネトウヨみたいなの?」「愛国者のこと?」「移民やLGBTQなどに批判的な人?」「過去を大事にして今を変えたくない既得権益層の思想?」などと思う方が多いかもしれませんが、それらは表面的なものにすぎません。

保守主義が理解しにくいのは、保守主義とは「進歩主義」の対抗概念であるため、「社会が進歩している!」という実感が薄い社会では、保守主義も明確な形で現れてこないからです。

つまり、現代は、進歩主義も保守主義も見えにくい時代なのです。

とは言え、保守主義は単に「古くさい、旧態依然とした考え方」でも「過去の伝統や慣習を盲目的に重視する思想」でもありません。

その中には、現代を生きる私たちにとっても有益な考え方が残っています。

そこでこの記事では、

  • 保守主義の定義
  • 保守主義の役割や歴史
  • 現代の日本やアメリカにおける保守主義

などについて詳しく説明します。

最後まで読んで、保守主義の本当の意味を理解してください。

※2章以降多くの事例を紹介しますので、興味のあるものを読んでみてください。

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1章:保守主義とは何か?

それではさっそく、保守主義とは何なのか?その定義役割から解説していきます。

1−1:保守主義の定義

「保守主義(conservatism/コンサバティズム」とは、非常に簡単に言うと「何かを守る思想」です。

では、何を守るのでしょうか?何から守るのでしょうか?

これは、時代によって異なります。

2章で見るように、

  • フランス革命から英国王政を守る保守主義
  • 社会主義から自由主義的な秩序を守る保守主義
  • 「大きな政府」的な思想から自由な社会を守る保守主義

など、時代によって守るものが異なるのです。

したがって、保守主義を端的に定義することは難しいのですが、歴史上初めて保守主義というポジションを明確にとったエドマンド・バーグは、保守主義の基準を以下のように定めました。

保守主義とは、

①具体的な制度や慣習を保守し、

②そのような制度や慣習が歴史のなかで培われたものであることを重視するものであり、さらに、

③自由を維持することを大切にし、

④民主化を前提にしつつ、秩序ある漸進的改革を目指す

(『保守主義とは何か-反フランス革命から現代日本まで-』(2016)を参照)

つまり、ただ何かを「守る」のではなく、それを守ることを通じて「自由」や「民主化」を目指すこと。また、ただ単に「変わらない」のではなく、現実の積み重ねの中で必要に応じて変わっていくことを目指す思想が、保守主義なのです。

バーグの保守主義の思想はこちらの書籍で知ることができます。

1−2:保守主義は進歩主義への対抗概念

では、保守主義という思想にはどんな役割があるのでしょうか?

繰り返しになりますが、保守主義は進歩主義の対抗概念として生まれたものです。

進歩主義とは、描いた理想に向かって直線的に、飛躍して社会を変えていこうとする思想のことです。

進歩主義と聞くと「社会を良い方向に変えていく思想なら、良いに決まっているじゃないか」と思われるかもしれません。

しかし、進歩主義が持つのは良い面だけとは限らないのです。

確かに、社会は革新的な人々が描いた理想に向かって変わっていくことで、進歩してきた面は否めません。しかし、今ある現実社会を破壊して、ゼロから新しい社会を作ろうと言われると、困ってしまう人もいるはずです。

それに、誰かが頭の中で描いた理想が、本当に実現できるのかも分かりません。

変革がラディカル(急進的)なものであれば、たとえ本当に良い社会に向かっての変革だったとしても、その過程で犠牲も生まれるでしょう。

このように、ラディカル(急進的)で理想的な社会の変革に対して「本当にそれで大丈夫?」「もっと現実的な所から変えていく方法もあるよね?」と問いかけてきたのが、保守主義なのです。

保守主義と進歩主義はどちらだけが良いというものではなく、両方がバランスを取ることで社会が発展してきたのです。

ここまで、ちょっと抽象的な説明が続いたので、これから実際の歴史の中から保守主義の誕生や変容を見ていきましょう。

  • 保守主義は、歴史の中で形成されてきた慣習や制度を守り、自由や民主化を維持しながら、漸進的な改革を目指す思想。
  • 保守主義は、進歩主義の対抗概念として現れる。
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2章:歴史から見る保守主義

保守主義は、これまでに社会の様々な面で現れました。

社会の大きな変革の中から見ると、

  • フランス革命に対抗した保守主義
  • 社会主義に対抗した保守主義
  • 大きな政府に対抗した保守主義

があります。

※上記の分類及びこの章の記述は、後に紹介する『保守主義とは何か-反フランス革命から現代日本まで-』を参考にしています。

もちろん他にも保守主義が現れた時代や社会はたくさんあるのですが、その中でも分かりやすく、代表的な動きをピックアップして解説します。

2−1:フランス革命VS保守主義

歴史上、明確に保守主義というポジションを取って主張したのが、エドマンド・バーグです。

バーグは1729年アイルランド生まれで、アダム・スミスやヒュームなど、イングランドの思想家達と交流があり、政治家として活動した人物です。

2−1−1:バーグのフランス革命への危機感

彼は元々、英国では野党の立場から、国王中心の密室政治を批判し、民意を反映できる下院や政党の役割を主張した自由主義的な人物でした。

しかし、フランス革命を機に保守主義的な主張をするようになりました。

バーグから見ると、フランス革命は、

  • 「人間の権利」という抽象的な概念に基づいている
  • 過去から断絶し、未来へ跳躍しようとする理念を持っている

という点で「これまでの歴史で獲得されてきた英国王政の仕組みが失われるのではないか?」と危機感を覚えるものでした。

英国でも「名誉革命」が起こった過去がありましたが、名誉革命は、

  • 「英国人の権利」という現実的な概念に基づいている
  • 歴史と断絶しない、漸進的な革命だった

というものだとバーグは考えていました。そのため、このような急進的な革命は危険だと判断したわけです。

では、元々自由主義的だったバーグは、なぜ英国王政を守りたいと考えたのでしょうか?

2−1−2:英国王政を守りたかった理由

バーグは単に、歴史を持つ英国王政の制度そのものを守りたかったのではなく、歴史の中で獲得されてきた英国人の権利を守りたかったのです。

バーグの考えでは、「自由」「権利」のような抽象的な概念は、急進的な革命によって獲得されたところで、社会の中では機能しない。歴史的に形成され、人々にとってそれらの概念が自然に感じられるようになった社会で、ようやく生きたものとして機能するのだ。と、このように考えたのです。

英国人は歴史の中の積み重ねで、少しずつ「自由」や「権利」を獲得してきたのであり、それは将来世代に相続していかなければならない。急進的な革命によって、「自由」が機能する場である社会が勝手に変えられてしまうと、せっかく獲得してきた「自由」も機能しなくなってしまう。

バーグはこのように考えて、「自由」「権利」を支える英国王政という制度を守ろうとしたのです。

2−1−3:バーグは人間の理性を信頼しすぎることを批判した

バーグがフランス革命を通して危惧し批判したのは、人間の理性を信頼しすぎる思想です。

これは、保守主義を理解する上で最も重要なポイントとも言えます。

人間は、自分たちの理性に無限の可能性があり、どのようなことでも実現できるのだと考えがちです。確かに、実際に理性の力で社会は変えられ、想像もつかないような速さで技術革新が起こり、文明が発達してきました。

一方で、人間の進化は誰か一個人の抽象的な思想、直線的な設計によって実現されたものではありません。

歴史の中で、現実の生活の中で、絶えず修正、工夫されて発展してきたのです。

バーグから見ると、フランス革命は、一部の人間の理性によって、抽象的に設計された社会に向かって、直線的に変わろうとしているように見えたのです。

バーグはこのような進歩主義的価値観を批判し、一個人の理性よりも、これまでに人間が積み重ねてきた経験的な知、例えば「偏見」「迷信」「習慣」「宗教」などを大事にし、社会を漸進的に変えていくべきだと主張したのです。

バーグの考え方は、まさに保守主義の核心をついたものでした。

2−2:社会主義VS保守主義

歴史の中では、絶えず進歩主義的思想と保守主義的な思想が対立します。

進歩主義的な思想は、再び「社会主義」という形で登場しました。

社会主義が生まれ、社会に広く浸透していった時代、様々な人が社会主義に対する保守主義を主張しました。

それぞれの人物が主張した保守主義を紹介します。

2−2−1:T・S・エリオットの保守主義

T・S・エリオットは、1888年生まれの詩人、文芸評論家です。英国では文学を通じて政治を批判することがよくあり、彼の主張も当時多くの人に知られていたようです。

エリオットが主張したのは、伝統を重視すべきということです。

そもそも、文化というものは世代を超えて継承することができるもので、それが伝統になる。そして、文化は階級や家族によって支えられ、それが大きな社会へ繋がる。

しかし、この家族や階級という集団文化が断片化し、集団が相互に意思疎通しなくなると文化が崩壊し、伝統が作られなくなります。

このように、エリオットは社会主義という理想的で急進的な革命によって社会が壊されると、伝統が失われてしまうと危惧したのです。

当時の文人達は「コモンセンス」つまり共通の感覚を持っていて、芸術や文化はコモンセンスを持っていなければ、発展していかないと考えました。

そのため、社会主義によって社会が壊されないように保守主義を主張したのです。

2−2−2:フリードリヒ・ハイエクの保守主義

フリードリヒ・ハイエクは、1899年オーストリア出身の経済学者です。

彼の学者としてのキャリアは、社会主義に対する「社会主義計算論争」からはじまりました。

ハイエクについて少しでも知っている人は「ハイエクが保守主義?」と疑問に思われるかもしれません。実際、彼自身も自分が保守主義者ではないと考えていました。

しかし、実はハイエクも保守主義と言える思想を持っていたのです。

ハイエクは一般的に、社会主義を批判し市場主義を支持した、つまり国家はできるだけ市場(経済活動)に介入しない方が、より効率的な経済活動を営むことができ、結果的に社会が発展すると説いた、と考えられています。

これはもちろん正しいのですが、注意すべきなのは、ハイエクは盲目的な市場主義者ではなく、政府の役割も認めていたということです。

ハイエクは、ヨーロッパの個人主義的な思想の伝統にベースを持っていました。そのため、各個人の、国家に管理されない努力が秩序を生み出すと考えていました。

しかし、1800年代の終わりから、ドイツ知識人の「人間の意図によって秩序は統制できる」という思想が、イギリスまで影響を及ぼしてきます。

ハイエクはこうした思想が影響力を持つようになったことに危惧して、自由主義的な主張をしたのです。

ハイエクが批判したのは、社会主義そのもの、というわけでもありませんでした。

彼が批判したのは、「集産主義」です。

集産主義というのは、その目的にかかわらず、

  • 民間企業の廃止
  • 生産手段の私的所有の禁止
  • 計画経済の創設

といった手段を用いる思想のことです。

社会主義はこうした手段を用いることを主張したのですが、こうした集産主義的手段は、社会主義だけが用いるとは限りません。

(たとえば、戦時における統制経済も近い手段を用いるでしょう)

ハイエクは、こうした手段を用いる集産主義を以下のように批判しました。

「どれだけ善意であるとしても社会全体を統制する計画を立てることは、多様性と選択の自由を否定し、諸個人に一つの目的を強いることにつながるのである。」(『保守主義とは何か』(2016)より参照)

つまり、特定の個人や組織が社会全体の情報を把握し、統制することなど不可能なのだ。それで効率的な社会運営ができるわけないのだ、という批判です。

これも、人間の理性を過信しすぎないという保守主義的思想であることが分かると思います。

繰り返しになりますが、ハイエクは社会の秩序は人間の意図ではなく、意図しない行動の蓄積から生まれると考えました(自生的秩序)。

これは、実際には歴史的に形成された制度、慣習であると考えました。

たとえば、特定の立法者が作った法ではなく、歴史的に形成された法こそが、個人の自由を守ると考えたのです。

このように、ハイエクの思想には保守主義的思想が色濃く表れているのです。

※ハイエクの思想は以下の本を読めば理解できます。

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2−2−3:オークショットの保守主義

オークショットとは、1901年生まれのイギリスの政治学者で、保守主義的な思想家です。

彼は、保守主義の立場から合理主義者を批判しました。

合理主義者は、理性を強調し権威、伝統、慣習などから精神の独立を主張します。

「古くさい伝統から脱して、理性の力で社会を変えていこう」

というわけです。

しかし、オークショットは、そのような理性を強調する合理主義者を批判します。

なぜなら、人間の理性は慣習や伝統といった過去の実践の中に秘められているのであり、そこから理性だけを独立して取り出すことはできないと考えたからです。

したがって、「正義」「自由」「民主主義」のような理念も、長い歴史的な経験の中から形成されてきたものであり、そこだけ取り出して、他の社会に植え付けるようなことはできない、と考えました。

このように、社会主義が勃興した時代の保守主義者達は、理性によって革命を起こそうとする社会主義に対して、「理性は経験から離れて存在できない」「理性は万能ではない」「理性を過信するな」というメッセージを伝え、ラディカルに社会を変えようとする風潮に異議を唱えたのでした。

社会主義のその後の歴史を考えれば、彼等の保守主義的思想が、歴史の中でも大きな役割を持っていたことが分かると思います。

※オークショットの政治思想は、以下の本で学ぶことができます。

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それでは次に、20世紀以降のアメリカでの保守主義を見てみましょう。

2−3:現代アメリカの保守主義

アメリカでは、ヨーロッパのように明確な、一貫した思想としての保守主義の存在は見えにくいです。

なぜなら、アメリカは最初からロック的な自由主義的国家(個人の所有権を大事にする)として建国された国であり、また、ヨーロッパのように守るべき伝統がなかったからです。

とは言え、保守主義はヨーロッパ的なものとは異なり、

  • 反知性主義
  • リバタリアニズム
  • ネオコン(新保守主義)

という形で社会に現れ、影響力を持っています。

これらの思想を順番に説明します。

2−3−1:保守主義の背景にある反知性主義

現代アメリカの保守主義の背景には、「反知性主義(Anti-intellectualism)」という思想があります。

これは、「知性を否定する」という思想ではなく、「知性(エリート)と権力が結びつくことを監視、批判する」という思想です。

また、知的エリート的な主張や思想よりも、草の根的な実践を重視する思想でもあります。

「なぜ反知性主義の話が出てくるの?」

と思われたかもしれませんが、反知性主義というのは、アメリカにおける一種の伝統主義、つまり保守主義なのです。

それは、理性を信頼しすぎない、理性中心の社会の統制に反発する保守主義と近い思想なのです。

反知性主義は、アメリカのキリスト教社会の中で、伝統的なピューリタンの教会に対して、より自由で草の根的な「巡回伝道」をした説教師達に伝統がある、伝統主義でもあります。

彼等の精神が、今もアメリカ社会に反知性主義という伝統として、大きな影響力を持っているのです。

反知性主義について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

【反知性主義】本当の意味・誤用されるケース・影響力をわかりやすく解説

2−3−2:保守主義としてのリバタリアニズム

さらに、アメリカにおける保守主義は、「リバタリアニズム(libertarianism)」という形にも発展しました。

リバタリアニズムとは、徹底的に政府に頼らず、個人、民間によって秩序を作って行こうと考える思想のことです。

通常の自由主義より、もっと自由さを追求する思想です。一部の過激なリバタリアンは、政府の役割をまったく認めず「政府なんてなくて良い!」とすら主張します。

アメリカでこのような思想が顕在化したのは、20世紀の後半に「リベラリズム(自由主義)」という言葉の意味が以下のように変わったからです。

  • 従来のリベラリズム→政府の権力の抑制、個人の自由を守ること
  • 変化したリベラリズム→大きな政府の下で個人の自由を実現すること

つまり、元々「リベラリズム(自由主義)」という思想を持っていた人々が、リベラリズムの言葉の意味が転換したことから、自分たちの思想にリバタリアニズムという言葉を使ったのです(※)。

※ただし、リバタリアニズムという概念自体はそれ以前から存在しました。

では、なぜこのような思想がアメリカで生まれたのでしょうか?

その理由の一つは、アメリカ人が元々持っていた思想が、リバタリアニズムと結びつきやすいものだったからです。

元々、伝統的なアメリカ人は「政府に頼らず自分と自分の家族だけでも孤独に生き抜いていくのだ」という独立精神と強い宗教心を根底に持っています。

これが、政府に頼らないリバタリアニズム的な思想に近いことは、何となく分かると思います。

一方で、アメリカはある時期から「大きな政府」、つまり政府による社会・経済への介入を増やしていく、という方向に政策の舵を切りました。

「大きな政府」という政策は、ある意味で進歩主義的です。

なぜなら、特定の組織(政府)が、特定の方法で社会に介入することで、社会をより良くできると考えられているからです。

「大きな政府」的な政策への転換により、一部のリバタリアン的なアメリカ人は政策に反発しました。

こうしたきっかけで、アメリカでは政府主導の進歩主義的政策(大きな政府的な政策)を厳しく批判する、リバタリアニズム的な保守主義が生まれたのです。

リバタリアニズムについて、詳しくは以下の記事で解説しています。

【リバタリアニズムとは】自由主義との違いと批判・役割をわかりやすく解説

2−3−3:ネオコン(新保守主義)

アメリカの保守主義として、ネオコン(Neoconservatism/新保守主義)も取り上げなければなりません。

ネオコンとは、以下の特徴を持つ思想です。

  • 国際主義:伝統的な孤立主義ではない。国際政治に対して積極的に介入すべき。
  • リアリズム:国際政治を権力闘争の場として捉える(古典的リアリズム)のではなく、道徳的理念の実現の場として捉える。アメリカの覇権の必要性を強調。
  • 社会改革に対する姿勢:社会改造には限界があると慎重に考える。

つまり、国際政治に積極的に介入し、国際政治の場では「道徳理念を実現する」という目的を持っていて、各国の政治体制の転換(民主化など)に強い関心を持っている。一方で、国内経済に関しては、積極的に福祉政策を行ったりすることは考えない、という独特の姿勢のことです。

ネオコンは、

  • 共産主義やリベラリズムへの幻滅
  • ジョンソン大統領の「偉大な社会」計画への幻滅
  • カウンターカルチャー運動やベトナム戦争への反発

などのきっかけから、こうした思想や政策を批判し、共和党支持に転換していきました。共和党は、伝統的に、アメリカでは保守主義的な層が支持する政党です。

つまり、ネオコンはもともとのリベラルな立場(民主党支持)から転換し、伝統的な保守主義と合流したのです。

その結果1980年のレーガン大統領の当選(保守革命)という結果に貢献しました。

保守革命の結果、アメリカでは政治的な分断が顕在化しました。

従来のアメリカ政治は、自由主義・中道的な中での「大きな政府VS小さな政府」という対立が主流でした。

しかし、保守主義が大きくなってからは、倫理的争点(人工中絶、同性愛など)や宗教的争点が生まれ、政治的分極化が進むことになったのです。

このように、アメリカでは様々な形で保守主義が形成され、政策に影響を与えている現状があります。

※ネオコンについて詳しくは以下の記事で解説しています。

【ネオコン(新保守主義)】起源からトランプまでわかりやすく解説

「では、日本の保守主義はどんなもの?」

と思われるかもしれませんので、これから説明します。

  • 反知性主義は、アメリカの説教師の実践を源流とする「知性と権力の結びつきを批判する思想」であり、保守主義の一種の現れ。
  • リバタリアニズムは、政府に頼らないアメリカ人の伝統的価値観から生まれた、保守主義の一種の現れ。
  • ネオコンは、共産主義・リベラルな思想を持っていた一部の知識人たちが、共産主義・リベラルな思想に幻滅し、保守へ転換した思想で、旧来の保守主義とも異なる政策思想を持つ。
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3章:日本の保守主義とは?

繰り返しになりますが、保守主義とは単に過去の伝統や価値観に意味を見出す思想ではありません。

バーグが言うように、歴史の中で作られた伝統的な制度や慣習を重視しつつ、自由や民主化を前提に漸進的な改革を求めるのが、保守主義なのです。

そういった意味では、日本には確固たる保守主義はない、と言えるかも知れません。

とは言え、日本でも保守主義が論じられたことはありますし、保守主義と言われる政治の流れも存在します。

そこで、日本の保守主義についても簡単に紹介します。

3−1:日本に保守主義はないと論じた思想家

繰り返しになりますが、日本には一貫した保守主義的な思想はないように思えます。

なぜなら、日本のように伝統的な政治体制が長く存在した国では、政治体制を打破する勢力と、それに反発する勢力が衝突するため、漸進的な改革を主張する保守主義が確立する余地は小さいからです。

戦後日本を代表する思想家である丸山眞男は、日本には知的にも政治的にも保守主義が明確に定着することはなかったと論じました。

その代わりにあったのが、

「漠然と進歩を信じるか、さもなければ、ズルズルと現状維持を好む態度」

(『保守主義とは何か』(2016)より参照)

だと言います。厳しい見解ですよね。

丸山眞男は、日本の思想には「座標軸」となる思想が形成されず、思想は「保守主義」「進歩主義」のように明確な形を取ることがなかった。自己の思想を歴史的に位置付けるような伝統も形成されなかった、と言います。

※丸山眞男の思想についてまず読むべき本は以下のものです。

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また、同じく戦後日本を代表する保守主義的知識人である福田恆存は、日本は歴史的に何度も断絶しており、そのたびに歴史が根本的に書き換えられた。漸進的な変化の結果として革命が起こったヨーロッパとは違うのだ。そのため、日本には保守主義的伝統が形成されなかったのだ。このように主張しています。

彼等は共に、日本の歴史を貫く思想的な連続性が存在しないこと、そのため明確な伝統が形成されなかったことを主張したのです。

福田の保守思想について詳しくは以下の本を読んでみてください。

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3−2:日本政治における保守主義の流れ(戦前)

思想としては、保守主義はなかったという主張に説得力がありそうです。

では、実際の政治では、保守主義はどのように形成されているのでしょうか?

近代日本における保守主義的な流れは、明治憲法体制から始まりました。

つまり、明治憲法体制に対する保守主義です。

明治憲法体制を前提として、この体制の下で、明治憲法に内包された理念(自由の論理)を漸進的に発展させていこう、という思想が生まれました。これは、実際には伊藤博文から陸奥宗光へ、原へ、という路線になります。

この路線により、その後の立憲政治政党政治の形成が準備されました。

この明治憲法体制の保守主義は、「重臣的リベラリズム(天皇の側近たちによるリベラリズム的政策路線)」に繋がります。

重臣的リベラリズムは、民主化を望む民衆の声に対して、漸進的な改革を目指しました。

これは、保守主義的思想ですね。

とは言え、重臣的リベラリズムは、その後、場当たり的な思想に変化し、保守主義として機能せず、戦争に向かって急激に突き進む勢力に対応することができませんでした。

つまり、日本の戦前の保守主義は、確固たる強靱な思想とは言えないものだったのです。

3−3:日本政治における保守主義の流れ(戦後)

戦後日本の保守主義は、吉田茂からはじまりました。

吉田茂は、

  • 軽武装
  • 経済国家
  • 日米関係重視

という「吉田ドクトリン」を発表し、戦後日本の政策路線を規定しました。

これはつまり、「国防についてはアメリカに任せて、日本は国防にお金を使わず経済に特化していこう」という政策です。

この路線を柱に、日本の保守的路線が形成されていきました。

また、吉田は「吉田学校」という形で官僚出身の政治家を育成し、それも戦後の保守的路線を育てることになりました。

戦後の保守路線は、その後1955年に「55年体制」として確立します。

55年体制とは、左右社会党の統一に危機感を覚えた保守勢力が団結したことです。この体制がその後長く日本を統治することになりました。

しかし、55年体制は「反共」「経済成長」という軸しか持たない体制であり、この記事で解説してきたような、確固たる保守主義的思想を持っていたわけではありません。

そのため、その後の日本政治にとって良かったのか意見が分かれる所でしょう。

ここまでをまとめると、戦後の保守主義は明確な思想を持たないまま、冷戦体制を前提として経済発展のみを追求してきたものだったのです。

そのため、現在でも日本では保守の理念が曖昧なままであり、確固たる柱を持った保守主義的思想は、未だ日本には存在しないと言っても過言ではないのです。

※日本の政党政治について詳しくは以下の記事で解説しています。

【政党政治とは】基礎知識から日本の特徴・問題点まで詳しく解説

  • 日本は長い間伝統的な政治体制が存在したことや、歴史的な断絶があったことから、一貫した保守主義的思想が育まれなかった。
  • 近代化〜戦前の保守主義は、明治憲法体制を前提に形成されたが、超国家主義・戦争に突入する勢力に対応できる強靱さを持っていなかった。
  • 戦後の保守主義は、「反共」「経済成長」という吉田ドクトリン以来の軸しか持っていなかったため、曖昧な思想で、冷戦体制崩壊以降も明確な思想になっていない。

4章:保守主義を学ぶための書籍リスト

ここまで、保守主義について詳しく解説してきましたが、もっと学びたいという方はぜひこれから紹介する書籍から学んでみてください。

保守主義を理解することは、日本の政治や国際情勢を読み解く上で、避けては通れない思想なのです。それに、若い世代の人はついつい「進歩主義」「理性主義」的な思想を持ちがちですので、保守主義的思想を取り入れてみることで、新しい人生観が生まれる可能性もあります。

たった1000円程度からの書籍ですので、ぜひ手元に置いて繰り返し読んでみてください。

オススメ度★★★宇野 重規『保守主義とは何か-反フランス革命から現代日本まで-』(中公新書)

保守主義を広く学ぶ上で最良の本です。この記事も、多くがこの本に基づいて執筆しました。新書ですので手軽に読めます。

オススメ度★★ラッセル・カーク『保守主義の精神』上・下(中公選書)

英米の保守主義的思想家について詳しく論じられた名著です。保守主義についてより深く学びたい方には必須の本です。

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まとめ

最後に今回のポイントをまとめます。

今回のまとめ
  • 保守主義とは、過去の伝統や価値観を盲目的に重視する思想ではなく、伝統的な慣習や伝統を守り、自由や民主化を重視し、漸進的な改革を求める思想
  • 保守主義は、特定の個人や組織の理性で、ラディカルに社会を変革しようとする思想(進歩主義)を批判する役割を持ってきた
  • 保守主義は、明確な進歩主義的価値観がない現代社会では、様々な思想に別れたり、曖昧な形になっている。

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