勉強法

【イヌイットのおすすめ本8選】初学者編〜学術書編まで紹介

イヌイットのおすすめ本

極北地域におけるイヌイットに関して勉強する場合、概説書から全体像を把握して、その後にあなたの関心のある分野を学んでいくことをおすすめします。

イヌイットに関する概説書は多いわけではありませんが、文化人類学者を中心した研究者が良質な書物を出版しています。

この記事では、「初学者編」「言語編」「社会・文化編」「学術書編」にわけて紹介しますので、あなたの関心にあった書籍を手に取ってみてください。

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1章:イヌイットのおすすめ本:初学者編

まず、初学者に向けてイヌイットの概説書を紹介します。概説書から読み始めることで、イヌイット社会や文化、歴史に関して全般的に学ぶことができます。

「イヌイット」とは、カナダの極北地域における人々を指す用語です。「エスキモー」の違いに関しては次の記事で解説しています。

→【イヌイットとは】エスキモーとの違い・生活・歴史・現在を解説

①『イヌイット―「極北の狩猟民」のいま』

『イヌイットー「極北の狩猟民」のいま』は「イヌイットについて知りたいけど、どの本がいいのだろう、、、」と悩む初学者に向けた概説書です。

著者の岸上伸啓は文化人類学者であり、イヌイット研究の第一人者です。20年間以上のフィールドワークをもとにイヌイット社会を描写しており、「教科書」として使える良質な本です。

内容に関していえば、

  • イヌイットの歴史・伝統的な文化の概説
  • 極北地域における生活(春・夏・秋・冬)
  • 都市におけるイヌイット
  • 極北地域における環境問題

などが扱われています。

学術的な議論というよりは、イヌイット社会の基礎知識を学ぶための本です。そのため、機能主義構造主義といった文化人類学的な理論から、イヌイット社会の分析がおこなわれいるわけではありません。

とはいえど、イヌイットの社会・文化・歴史が網羅的に提示されており、初学者には十分な内容です。ぜひ読んでみてください。

イヌイットに関する古典本としては本多勝一著の『カナダ・エスキモー』があります。岸上の『イヌイット』とは刊行された時代が異なりますので、合わせて読むと面白いと思います。

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②『カナダ先住民の世界―インディアン・イヌイット・メティスを知る』

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浅井晃著作の『カナダ先住民の世界』では、カナダにおける先住民の文化・歴史を概観することができます。

そもそも、カナダには、

  • インディアン…アメリカ大陸におけるインディアンを指す用語。そのため、「ネイティブ・アメリカン」と民族的な違いはない。便宜上「カナダ・インディアン」と言われる場合もある
  • イヌイット…以前は「エスキモー」と呼ばれた集団。アラスカからグリーンランドまで似たような言語を話す人々を指す
  • メティス…白人入植者とインディアンの混血から生まれた集団。平原地域に住み、独自の文化と歴史をもつとされる

といった先住民が存在します。

そして、それぞれの先住民は居住地域、文化や社会な形態、カナダ国家との関係などが異なります。そのため、イヌイット社会だけを理解するのではなく、カナダ主流社会から排除、他の先住民との関係などを考慮しながら多面的に勉強するべきです。

そういった意味で、『カナダ先住民の世界』はカナダ先住民を全般的の歴史・文化を概説しているため極めて有益な書物となります。

また冒頭で説明されるように、学術書というよりは一般に向けた啓蒙書です。そのため、初学者にとってうってつけの本です。

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2章:イヌイットのおすすめ本:社会・文化編

イヌイットの全体像をつかめたら、次はイヌイット社会・文化に関しての詳細な知識を身につけるべきです。おすすめ本を紹介していきます。

③『世界の食文化 (20) 極北

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岸上伸啓ら著作の『世界の食文化 (20) 極北』では、イヌイットを初めとした極北地域における人々の食文化を学ぶことができます。

イヌイット文化を語るとき、幸か不幸かアザラシの生肉という伝統的な食事を抜きにはできません。もしかしたらあなたの関心と直接的には関係ないかもしれませんが、食文化に特化した書物に触れておくことは大事です。

なぜならば、

  • 紀元10世紀ごろに発展した「チューレ文化」に関する一連の知識
  • 移動生活を強いてきた極北地域における自然環境
  • そのような自然環境に適した住居のあり方

といった付随する知識を学ぶことができるからです。

イヌイットの食事に関しては次の記事で解説していますので詳しく触れませんが、多様な動植物資源を活用してきたイヌイットの食事は興味深いですので、勉強することをおすすめします。

→【イヌイットの食事とは】伝統的な食事・現在・問題をわかりやすく解説

④『採集狩猟民族の現在』

タイトルにあるように、この書物の主題は採集狩猟民社会における変容で、舞台はイヌイット社会、アボリジニのヨロンゴ社会、ボツワナのサン社会、フィリピンのネグリト社会と多様です。

イヌイットに関していえば、この分野の代表的な学者がそれぞれの関心から、世界システムに組み込まれた採集狩猟民社会の変容に関して議論してます。(*それぞれ学者が担当した章のタイトルです)

  • 岸上伸啓・・・カナダ極北地域における社会変化の特質について
  • 大村敬一・・・「再生産」と「変化」の蝶番としての芸術―カナダ・イヌイット
  • スチュアート・ヘンリ・・・現在の採集狩猟民にとっての生業活動の意義―イヌイット

初学者にとっては少し難解かもしれませんので、上述した概説書を読んだ後に挑戦してみましょう。

それぞれ異なるトピックが一章にまとめられており、イヌイットを多面的に理解することができます。

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3章:イヌイットのおすすめ本:言語編

さて、イヌイットを初めとする先住民を理解する上で、もっとも重要なのは言語です。

それは先住民とのコミュニケーションの確立という実利的な意味だけではなく、言語がイヌイットの社会的現実を写し出すシステムだからです。

詳細は以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。

ここではイヌイット語に関するおすすめ本を紹介します。

⑤『エスキモーの言語と文化』

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著者の宮岡伯人は日本で唯一のエスキモー語学者で、この本では文法構成やその歴史的な移り変わりが考察されています。

「エスキモー語」とはカナダ、グリーンランド、アラスカ、シベリアの極北地域に住む民族が話す語族を指し、「イヌイット語」はその下位語派の一つです。

有名な話ですが、イヌイット語は「雪」を表す言葉が多いです。端的にいえば、この細分化はイヌイットが環境のどの部分に、どのような特徴に強い関心を向けていたのかが反映されています。

そういった意味で、言語を通してのみ、イヌイットが認識する「現実」を理解することができるのです。そのため、言語を学ぶことがもっとも重要なのです。

とはいえど、短期間でイヌイット語をマスターすることは困難ですから、『エスキモーの言語と文化』からその輪郭に触れてみてください。イヌイットみる世界は私たちがみる世界とどうように違うのかわかると思います。

宮岡伯人の議論は他にも次のようなものが有益です。

⑥『先住・少数民族の言語保持と教育』

長谷川瑞穂著作の『先住・少数民族の言語保持と教育』は、イヌイット語使用の現状や教育体制を学ぶことができる書物です。

年代や地域があるため容易な一般化はするべきではないかもしれませんが、イヌイット語話者は減少傾向にあると言われます。

『先住・少数民族の言語保持と教育』では、

  • カナダにおけるイヌイットの歴史
  • イヌイットに対する教育の歴史(宣教師や同化政策等)
  • イヌイット語の法的地位

などが現地調査から議論されています。

注意していただきたいのは、この書物が先行研究の批判的な読解と実践の記録というよりは現地調査から生のデータを提示したものであることです。そのため、現状を知るためのデータとして扱うことをおすすめします。

より学術的な議論にあたり場合は、以下で紹介する書物を参考にしてください。

4章:イヌイットのおすすめ本:学術書編

そして最後に、より学術書的な書物を紹介します。文化人類学やその理論についての理解がないと読みにくい本ですが、ぜひ挑戦してみてください。

⑦『カナダ・イヌイットの食文化と社会変化』

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上述した岸上著作の『カナダ・イヌイットの食文化と社会変化』は、カナダ首相出版賞を受賞した書物です。内容としては、世界システム互酬性を軸に、イヌイット社会における変容と食文化の分析されています。

具体的に、

  • 世界システム・・・グローバル経済に組み込まれるイヌイット社会の変容に関する議論
  • 互酬性・・・そのように変容する社会における食物分配の変化と再生産に関する議論

がされています。

文化人類学の議論は当然のこと、極北入類学の学史に関する前提知識がないと読むことが難しいでしょう。

しかし、イヌイット社会を基層的に支える要素として食物分配に着目した点は極めて独創的です。そういった意味で、社会と食文化の関係に関心のある方に開けている書物ですので、ぜひ挑戦してみてください。

⑧『Returns』

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『Returns』の著者は世界的に有名なジェームズ・クリフォード(James Clifford)で、この書物は『文化の窮状』(1988)と『ルーツ』(1997)から構成される三部作の最終編です。

『Returns』の副題にあるように、「21世紀において先住民になること(Becoming Indigenous in the Twenty-First Century)」は何を意味するのか、が議論されています。

ネイティブ・アメリカンのおすすめ本でも紹介した本で(→詳しくはこちら)、世界の先住民に関心のある方は必ず読みたいです。

クリフォードはカリフォルニア、アラスカ、オセアニアにおける先住民を対象としながら、逆説的な言葉遊びである「伝統的未来(traditional future)」を提示しています。

つまり、先住民は伝統という過去に振り返りながら、未来に向かう人々であることを主張しているのです。

より詳しい議論は『文化の窮状』『ルーツ』『Returns』の三部作を読破してみてください。読者は骨を折る読解作業が必要かもしれませんが、21世紀の先住民を想像する上で不可欠な議論です。

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まとめ

あなたが関心を持てる本はありましたか?

この記事があなたの学びのきっかけになれば幸いです。

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