カルチュラル・スタディーズ

【カルチュラル・スタディーズとは】文化の意味から研究事例まで解説

カルチュラル・スタディーズとは
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カルチュラル・スタディーズ(Cultural Studies)とは、

第二次世界大戦後のイギリスにおいて、資本主義文化による労働者階級の文化変容を理解するために出現した研究分野です。

具体的に、社会学者の伊藤公雄は、以下のようにカルチュラル・スタディーズを説明します。

日常的な実践、なかでも表象行為や言語を通じて、日常的な知(常識)に埋め込まれた(身体化・自然化された)ものとしての「文化」を対象とし、それを、ズレや対立、妥協や抵抗を含んだなかで構築されつつある力関係=政治的プロセスとして分析する作業

(伊藤公雄「カルチュラル・スタディーズが問いかけるもの」理論と方法 2000年15巻1号p.75-88を参照)

この定義ではわかりにくいですよね。「そもそも、その文化とはなんだ?」「文化に含まれる力関係=政治的プロセスとはなんだ?」と色々な疑問があると思います。

しかし、上で引用した社会学者の伊藤公雄がいうように、「カルチュラル・スタディーズとはなにか」という問いに簡略的に答えることは極めて難しいです。それはこの分野における研究が多岐にわたるだけでなく、さまざまな理論的源流が合流しているからです。

そこでこの記事では、カルチュラル・スタディーズの急所を押さえるために、

  • カルチュラル・スタディーズにおける文化の意味
  • カルチュラル・スタディーズの源流
  • カルチュラル・スタディーズの研究事例

をそれぞれを解説していきます。

好きな箇所から読んでいただき、カルチュラル・スタディーズの輪郭を理解するきっかけになれば幸いです。

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1章:カルチュラル・スタディーズとは

1章ではカルチュラル・スタディーズにおける文化概念と知的源流を簡潔に紹介します。

カルチュラル・スタディーズの研究に興味のある方は、2章から読み進めてください。

1-1: カルチュラル・スタディーズにおける「文化」の意味

「カルチュラル・スタディーズ」という名前が示しているように、この学問分野は「文化」を出発点としています。では、「文化」の定義とはなんでしょうか?

そもそも、「文化」は英語でもっとも複雑な意味をもつ言葉の一つです。文芸批評家のレイモンド・ウィリアムズは、次のように「文化」の複雑さを説明しています。

この語自体が、ヨーロッパの言語のいくつかにまたがって、複雑な歴史的発達をとげたためでもあるが、おもな理由は、この語が現在いくつかの違った学問分野で、またいくつかの相容れない異なった思想体系において、重要な概念をさすようになっているためである

(レイモンド・ウィリアムズ『キーワード辞典』2011を参照)

「では、カルチュラル・スタディーズではどのような意味が付与されているんだ?」と疑問をもつと思いますので、その点を解説してきます。

1-1-1: 高級文化と大衆文化

カルチュラル・スタディーズの文脈で重要となるのは「高級文化」「大衆文化」です。それぞれの違いは以下の通りです。

  • 「高級文化」・・・これまでに考えられ、語られてきたものの最高のもの(たとえば、芸術、文学、哲学、古典音楽…etc)
  • 「大衆文化」・・・中産階級を対象にして大量に生産された商品に関する文化(たとえば、自動車、ジャズ、映画、雑誌…etc)

これらの違いが大事なのは、カルチュラル・スタディーズはイギリスにおける高級文化の伝統では光が当てられてこなかった、労働者階級の文化に焦点を当てたことから出発しているからです。

大衆文化に関しては次の記事で詳しく解説しています。参考までぜひ参照ください。

【大衆文化とはなにか】その意味から具体例までわかりやすく解説

1-1-2: レイモンド・ウィリアムズ

特に重要なのは、先ほども紹介した文芸批評家のレイモンド・ウィリアムズです。

レイモンド・ウィリアムズとは、

  • 労働者階級出身の文芸批評家で、伝統的な英文学の教育を受ける
  • スチュアート・ホールと並び、カルチュラル・スタディーズの創設者の一人とされる
  • 労働者階級の自らの経験から、研究の対象を「高級文化」だけでなく、労働者階級の「文化」まで拡大した

人物です。

ウィリアムズは社会と文化の関係を研究し続けるなかで、以下のような文化の定義にたどり着きます。ウィリアムズの『長い革命』(1961)から引用します。

「文化」は、生活のある特定のあり方の記述であり、それは単に芸術や教育だけではなく、制度や日常生活のなかにある一定の意味や価値を表現するものである。

(レイモンド・ウィリアムズ『長い革命』を参照)

つまり、「文化」とは芸術や音楽などを意味する高級文化ではなく、特定の制度における生活様式を意味するのです。

ウィリアムズは特定の制度における意味や価値(つまり「文化」)を、政治や経済といった他のカテゴリーとの関係性のなかから考察しました。

1-1-3: 伝統的マルクス主義における文化との対立

「文化」を考察する際、ウィリアムズの念頭にあったのは伝統的なマルクス主義との対決です。

伝統的なマルクス主義は、

  • 上部構造ー下部構造論」を前提に、文化を副次的なものと考える
  • つまり、文化は経済によって従属的に決定される領域

と考えていました。

しかし、ウィリアムズはイタリアマルクス主義者のグラムシが提示した「ヘゲモニー理論」を用いて、「文化」に新たな可能性を見出します。

ヘゲモニーとは、

  • 支配者階級が武力ではなくリーダーシップによって従属階級の支持を獲得し、この合意にもとづいた政治関係を指す概念
  • つまり、支配と従属の関係は流動的であり、交渉・合意の結果として、支配ー従属の関係は形成される

と考えるものです。

ウィリアムズはヘゲモニー概念を念頭に置きながら、従属側の人びとが自らの経験を文化として表現すると考えました。

つまり、支配ー従属の関係が固定的ではなく流動的ならば、そのプロセスのなかに従属側の文化、つまり人間主体のもつ可能性が見いだせると考えたのです。それはマルクス主義による単純な決定論とは全く異なる見方です。

冒頭で説明した「文化には力関係=政治的プロセスが含まれる」とは、ウィリアムズのこの視点を意味しているのです。

ちなみに、ウィリアムズの文化の定義は次節で説明する「文化主義」的なものです。「文化主義」の考えはフランスの構造主義との対立をへて、カルチュラル・スタディーズの認識的視座を形成していきます。

1-2: カルチュラル・スタディーズの源流

さて、カルチュラル・スタディーズの知的源流は大きく「ニューレフト・レビュー」「文化主義と構造主義の対立」から説明できます。それぞれのポイントを紹介します。

1-2-1: ニューレフト・レビュー

まず、ニューレフト(新左翼)の基礎的な情報は以下の通りです。

ニューレフトとニューレフト・レビュー

  • ニューレフトとは1950年から60年のイギリスにおいて、新たな左翼的思想を率いた組織の総称
  • 旧ソ連のハンガリー革命の圧殺を契機として誕生したもので、ベトナム戦争反対運動などの連帯した
  • そのような運動において、「ニューレフト・レビュー」は新たな左翼的思想の理論誌であった

大事なのはニューレフトの運動と思想は、伝統的なマルクス主義との決別であったことです。上記の文化の定義でいえば、文化を経済に還元しないという姿勢はまさにニューレフトの思想を汲むものでした。

また、後にカルチュラル・スタディーズが取り組んだエスニシティ、ジェンダー研究というマイノリティの視点はニューレフトの知的潮流を示すものといえるでしょう。

ちなみに、マルクス経済学という「土台」を学ぶことで、マルクス主義の大枠の考え方は理解できます。興味のある方はぜひ次の記事の参照ください。

【マルクス経済学とは】史的唯物論から『資本論』の世界まで解説

1-2-2: 文化主義と構造主義

続いて、カルチュラル・スタディーズの創設者の一人であるスチュアート・ホールは、「文化主義と構造主義の対立」からカルチュラル・スタディーズのパラダイムを説明しています。

文化主義と構造主義の特徴を説明するのは難しいですが、以下のようにまとめることができます。

文化主義の特徴

  • 「文化」はマルクス主義のように社会構造の従属的な領域に押し込められるものではなく、人間主体の実践によって歴史がつくられるような社会的実践の組織体
  • つまり「文化」は特定の社会集団や階級の意味や価値だけでなく、集団的・階級的価値が表象される実践のプロセス

構造主義の特徴

  • 「文化」や経験は、意味・価値がその領域から生まれるものではなく、私たちは言語学的なコードの作用によって、なんらかの意味や経験をするという立場
  • 人びとの経験や生きられた意味は、それ自体が根源的なものではなく、コードの作用として理解されるもの

少し難しいかもしれませんが、両者の立場には大きな違いがあります。

簡単にいうと、文化主義では階級や世代といった社会的集合が経験の主体として想定される一方で、構造主義ではそうした主体を言語やイデオロギーの効果として把握しているのです。

さてホールがいうように、大事なのは構造主義は文化主義に対して優位に立つことを考えないことです。むしろ、両者は相互補完的に支えながら、カルチュラル・スタディーズの認識的視座を形成しています。

そのような視座こそが、カルチュラル・スタディーズの重要なポイントとなります。少し長いですが、社会学者の吉見俊哉の言葉を引用します。

文化を経済や政治から切り離せる固定的な領域と見なすのでも、またそうした経済や政治に従属的な表層の秩序と見なすのでもなく、むしろ権力が作動し、経済と結びつき、言説の重層的なせめぎあいのなかで絶えず再構成されているものとして問題化していくこと。カルチュラル・スタディーズが、単なる文化の実証主義的な研究とは決定的に異なるポイントがここにある。

(吉見俊哉『カルチュラル・スタディーズ』2000から参照)

このように、カルチュラル・スタディーズにおいて「文化」は単なる芸術でも経済決定論でもなく、政治、経済、社会、歴史と交錯しながら理解されるカテゴリーへを発展したのです。

ちなみに、ホールの論文集は『Essential Essays, Volume 1: Foundations of Cultural Studies』がおすすめです。「文化主義と構造主義の対立」を議論した論文も含まれています。

1-2-3: バーミンガム大学における現代文化研究センター

1章の最後に、「現代文化研究センター(CCCS:Center for Contemporary Cultural Studies)」について触れます。CCCSはバーミンガム大学に設立された研究センターです。

初代所長はレイモンド・ウィリアムズと同じような経歴をもつリチャード・ホガートです。

ホガートの有名な著作は『読み書き能力の効用』(1958)です。

『読み書き能力の効用』とは、

  • 労働者階級出身の学生に、一方的にアーノルド的な「高級文化」を教えるのではなく、労働者階級の文化を記述する必要があると考えて書かれたもの
  • 第二次世界大戦後のイギリス社会におけるアメリカ化を批判しつつ、労働者階級の文化をノスタルジックに書き出したもの

です。

『読み書き能力の効用』はカルチュラル・スタディーズの基礎として読んでおきたい書物です。

1969年にリチャード・ホガートの後任として呼ばれたのが、カルチュラル・スタディーズの第一人者であるスチュアート・ホールです。

センター長がホガートからホールに代わったことで、研究内容にも変化が起きました。その変化は次のように説明できます。

ホガートの研究…労働者階級といったこれまで文化とみなされてこなかった階級の生き生きとした文化を研究することが目標

ホールの研究…大衆文化、サブカルチャー、メディア研究に関する分析が中心。後に人種エスニシティ、ジェンダーの議論へと発展していく

CCCSが理論的に発展していくのは、ホールがセンター長に就任してからです。現在のカルチュラル・スタディーズの枠組みが形成される背景には、ホールの貢献が大きいです。

では一体、ホールはどのような研究をしたのでしょうか?2章ではホールの代表的な研究を紹介していきます。

ここではいったん、これまでの内容をまとめます。

1章のまとめ
  • カルチュラル・スタディーズはイギリスにおける高級文化の伝統では光が当てられてこなかった、労働者階級の文化に焦点を当てたことから出発し、マルクス主義との決別があった
  • カルチュラル・スタディーズの理論的源流には、「ニューレフト・レビュー」と「文化主義と構造主義との対立」がある
  • 現在のカルチュラル・スタディーズの枠組みが形成される背景には、CCCSのセンター長に就任したホールの貢献が大きい

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2章:カルチュラル・スタディーズの研究事例

2章ではカルチュラル・スタディーズの有名な研究を紹介します。

再度言いますが、この記事で紹介する内容はカルチュラル・スタディーズのすべてをカバーするわけではありません。あなたが研究や学説史に興味をもった場合は、必ず書物に当たってください。

2-1: スチュアート・ホールの研究

まずは、スチュアート・ホールの有名な研究を紹介します。日本でスチュアート・ホールが初めて紹介された文脈はメディア研究でした。

ホールの最も有名な論文の一つは「コード化と脱コード化」です。

「テレビ言説におけるコード化と脱コード化」という論文は、

コミュニケーションの過程を直線的な流通回路とみなした従来のメデイア研究を批判し、「生産—流通—配分/消費—再生産」という新たな過程を「コード化」と「脱コード化」の概念から提示したもの

です。

重要なのは「コード化」という概念です。

  • 「コード化」とは「encoding」の訳語で、メッセージの送り手がその意味を「生産—流通—配分」の過程から生産していくことを意味する
  • たとえば、ニュース番組では取材・テロップ・BGMといった作業から恐怖を煽るようなニュースを生産していく
  • それはテロップも解説もなしに、映像を流すのとは異なるもの。編集作業から生まれる意味の生産である

「上部構造ー下部構造」を基礎とする古典的なマルクス主義の見解によると、メディアはイデオロギーの領域に属します。イデオロギーは生産関係という経済的土台を反映してるものと捉えられますから、イデオロギーに属するメディアは資本家の利益になるために機能する装置と考えられます。

そのため、これまでのメディア研究では、

  • メディアを楽しむ大衆は、資本主義の哀れな奴隷として描かれがちであった(「行動主義」といわれるもの)
  • その結果、大衆が主体的にメディアを解読すること、つまり「脱コード化」する過程が抜け落ちていた

という問題点がありました。

このような先行研究を批判しながら、ホールはメディアの内容が生産関係に基礎づけられることは認められながらも、大衆は受動的な消費をするだけでなく、能動的に「脱コード化」をすることを主張します。

たとえば、当たり前かもしれませんが、性別や階級が変われば「脱コード化」された意味も変わります。大衆はメディアの意図したように意味を解読するのではなく、自らの経験や立場に基づきながら解読、意味を生産をするのです。

このようにしてホールはメッセージが一方通行的であると考えた以前のメディア研究を批判し、大衆の読みの多様性や政治的交渉の可能性を模索したのでした。

この論文も上で紹介したホールの論文集である『Essential Essays, Volume 1: Foundations of Cultural Studies』に含まれています。

2-1-1: 文化的アイデンティティとディアスポラ

続いて、ホールの論文はポストコロニアリズムに関するものです。特に、有名な「文化的アイデンティティとディアスポラ」を紹介します。

「文化的アイデンティティとディアスポラ」では、

ポストコロニアル的主体を視覚的に表象する一連の映画で問題とされている、黒人の文化的アイデンティティ(cultural identity)の考察がされます。

ホールによると、文化的アイデンティティを考えるときに二つの立場が存在します。

一つ目の立場は、次のようなものです。

  • 文化的アイデンティティを「他の多くのより表装的または人工的に押しつけられた『自己』を内部に隠蔽する、一つの共有されたある集合的な『一つの真なる自己』」と捉える立場
  • つまり、ある共通の歴史と先祖を持つ人々が共有するものという観点から定義する方法

この観点から文化的アイデンティティを定義すると、単一の人々としての私たちに、実際の歴史の絶え間ない分裂化と変位の下に隠されて、安定した、不変の、継続的な認識的枠組みと意味を供給するのです。

たとえば、より表装的な差異の根底にある単一性が「カリビアンらしさ」の真実であり本質になると考える立場です。この種の文化的アイデンティティはポストコロニアル闘争で極めて重要な役割を果たしきました。

しかし、この立場の文化的アイデンティティは本質主義的と批判をされされます。そのため、ホールはこの立場に満足しません。

■ 文化的アイデンティティの第二の立場

そこで、ホールは文化的アイデンティティの第二の立場を提示します。文化的アイデンティティの第二の立場とは、

多くの類似点に加えて「実際の私たち」、むしろ歴史が介入してきたゆえに「私たちがなってしまったもの」を構築する深層的決定的な差異をいうものがある、と認める立場がある。(『現代思想臨時増刊号 スチュワート・ホール』(2014)を参照)

わかりやすく言い換えると、文化的アイデンティティの第二の立場とは、

  • 第一の立場と異なりアイデンティティに一貫性を認めるのではなく、カリビアンのユニークさを構築している断絶と非連続性という歴史を引き受ける立場
  • つまり、文化的アイデンティティとは「あるもの(being、黒人に本質的に備わっているもの)というだけでなく、「なるもの(becoming)」
  • 文化的アイデンティティは本質化された過去のようなものに永続的に固定化されるというものではなく、歴史、文化、権力の継続的な「戯れ(play)」に従わなければならない

という考える立場です。

第二の立場が非常に重要なのは国民国家、人種・民族、伝統といった既存の文化的な枠組みを批判的に考察できるからです。

第二の立場を引き受けることでのみ、本質的で決定されている閉鎖的な「国民国家」「人種・民族」「伝統」ではなく、現在はあくまでも「将来に開けた未完の過程」であると捉え直すことができます。

『文化的アイデンティティとディアスポラ』は青土社の現代思想から出版された特集号で読むことができます。日本語で読めますので、ぜひ当たってみてください。

2-2: サブカルチャー

カルチュラル・スタディーズのサブカルチャー研究は『儀礼を通した抵抗』が重要です。

スチュアート・ホール(編)の『儀礼を通した抵抗』は、

  • ヘブディジなどのサブカルチャー研究の代表的論者の論文集
  • カルチュラル・スタディーズのサブカルチャー研究の始まりとされる本

です。

タイトルにある「儀礼」という言葉は、サブカルチャー研究では重要なワードです。

『儀礼』の意味

  • 文化人類学では宗教、神話などの文化的な規範を指す言葉(通過儀礼ともいわれる)としても使われる
  • しかしサブカルチャーを対象とする研究では、スタイルによって形作れた身振りや慣習行為を指す(ex: モッズが軍用コートを着てスクーターに乗ること)

こうした儀礼行為から文化を見ることは、文化を社会的な小集団や特定の「部族」にみることを意味します。そして、儀礼的行為は階級・エスニシティ・人種と密接な関係にあり、この関係を分析することがカルチュラル・スタディーズの重要な研究となっています。

2-2-1: ブリコラージュとサブカルチャー

さて、『儀礼を通した抵抗』において、各論者はサブカルチャーのなかに資本主義社会に対する抵抗や闘争を見出していきます。その際、重要なのがブリコラージュという概念です。

ブリコラージュは『野生の思考』において、フランス人人類学者のレヴィ=ストロースが提示した概念です。

レヴィ=ストロースは、

持ち合わせた材料を用いて物を作る知的な器用仕事を「ブリコラージュ」

を呼びます。

ブリコラージュはもともとフランス語で、

  • 器用仕事
  • 日曜大工

を意味する言葉です。

しかしレヴィ=ストロースは、「未開人」の思考を特徴づけるのは目の前にありあわせの記号(たとえば、自然界にある動植物)を用いることだと主張し、これを「ブリコラージュ」と呼びました。

『儀礼を通した抵抗』の論者の一人であるヘブディッジは、サブカルチャーの実践にブリコラージュを見ました。ヘブディジにとって、サブカルチャーとは日用品やありきたりの記号のもつ意味を破壊し、その意味を拡張するものでした。

たとえば、ネオナチや保守主義に反対するパンクや若者はカギ十字の「社会や体制から嫌われるもの」という意味をもち、ファシズムという本来意味されたものから引き離します。

髪を染めたり、奇抜なファッションを求め、異様な音楽を聴く。そのような反抗や逸脱から「平準化」への一つの抵抗のスタイルが生まれていく、とヘブディジは考えたのです。

『儀礼を通した抵抗』は非常に刺激的な議論ですので、ぜひ読んでみてください。

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3章:カルチュラル・スタディーズの学び方

どうでしょう?カルチュラル・スタディーズの輪郭をつかめることはできましたか?

この記事ではできるだけ簡潔に要点に絞ってカルチュラル・スタディーズの急所を解説しました。より詳しく知りたい場合は必ず書籍にあたることをおすすめします。

そこで最後にカルチュラル・スタディーズについて学べるオススメ書籍を紹介します。

オススメ書籍

オススメ度★★★ 上野俊哉・毛利嘉孝(編)『カルチュラル・スタディーズ入門』(ちくま新書)

カルチュラル・スタディーズの入門書。この記事でも参照しました。わかりやすく全体像をまとめています。

オススメ度★★★ 吉見俊哉『カルチュラル・スタディーズ』(岩波書店)

有名な社会学者の吉見俊哉が、カルチュラル・スタディーズについて解説した書籍。カルチュラル・スタディーズの理論的展開を学べることができます。

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書物を電子版で読むこともオススメします。

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まとめ

この記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • カルチュラル・スタディーズはイギリスにおける高級文化の伝統では光が当てられてこなかった、労働者階級の文化に焦点を当てたことから出発し、マルクス主義との決別があった
  • カルチュラル・スタディーズの理論的源流には、「ニューレフト・レビュー」と「文化主義と構造主義との対立」がある

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