社会学

【サブカルチャーとはなにか】意味から具体例までわかりやすく解説

サブカルチャーとはなにか
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「サブカルチャー(subculture)」とは、

「ある文化より下位にあって、これに従属したり、準じたりする副次的な文化の現象や領域」を意味します。(『カルチュラル・スタディーズ入門』(2000)から参照)

日本語の「サブカルチャー」と英語の「subculture」という言葉は異なる意味をもつため、深い理解をすることが大事です。

加えて、「大衆文化(マス・カルチャー)」「対抗文化(カウンター・カルチャー)」「若者文化(ユース・カルチャー)」など似たような言葉との関係性を理解することも重要です。

この記事では、

  • サブカルチャーの意味
  • サブカルチャーの他の文化との相違
  • サブカルチャーに関する研究

をそれぞれ紹介します。

「サブカルチャー」という言葉が生まれた歴史や本来の意味を理解することで、私たちが作り出す豊かな文化をより楽しむことができます。

あなたの関心のある箇所だけでも構いません。ぜひ読んでみてください。

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1章:サブカルチャーとはなにか

「サブカルチャー(subculture)」とは何でしょうか?一体、誰の文化を指すのでしょうか?

冒頭の定義を確認すると、

サブカルチャーとは「ある文化より下位にあって、これに従属したり、準じたりする副次的な文化の現象や領域」

といえます。

サブカルチャーが「下位」や「副次的」とされるのは、接頭辞の「sub」が意味するとおりです。すると、「誰のどうような文化に対して、下位なのか?」といった疑問が出てきます。

1-1: サブカルチャーの意味と具体例

ここでは「高級文化」「大衆文化(マス・カルチャー)」といった言葉と比較しながら、サブカルチャーの意味を解説していきます。

1-1-1: サブカルチャーと高級文化

まず、サブカルチャーの上位にある文化とは何でしょうか?

結論からいうと、サブカルチャーの上位は「高級文化」があります。たとえば、高級文化には人類が作り出した最高のもの(ex: 文学、哲学、絵画、彫刻、etc)が想定されます。

そのため、サブカルチャーとは「大衆的でない文化」「エリートではない文化」「ブルジョア的でない文化」と言い換えることもできるでしょう。

しかし、「高級文化」と「サブカルチャー」の境界線は明確ではありません。たとえば、1960年代におけるビートルズはサブカルチャーでしたが、現在では教材となる一種の高級文化化しています。

(*高級文化の定義や意味については、1-2で解説します)

1-1-2: サブカルチャーと大衆文化

「高級文化」と「サブカルチャー」は対立的に比較できますが、「大衆文化」と「サブカルチャー」はどのように比較できるでしょうか?

簡単にいうと、「大衆文化」と「サブカルチャー」の相違は次のようになります。

大衆文化・・・中産階級を対象にして大量に生産される社会の主流的な文化

サブカルチャー・・・時として嫌悪感や精神的な危機をあおるような文化

このように、「大衆文化」と「サブカルチャー」の関係は新旧の差異でも世代間の差異でもありません。

注意しなければならないのは大衆文化が常にメジャーでマスな文化であり、サブカルチャーはいつもマイナーであるという考えです。それぞれの文化の境界ははっきりしているわけでなく、複合的、文脈依存的に決定されているのです。

つまり、サブカルチャーとは非常にあいまいなものです。その点を、社会学者の上野と毛利は次のようにいいます(『カルチュラル・スタディーズ入門』(2000)から参照)

したがって、強いていえばサブカルチャーは高級文化でも大衆文化でもない、またしかし同時にそうなることもありうるような、幅の広さとあいまいさをもった文化の領域

このように定義にしにくい文化がサブカルチャーであり、カルチュラル・スタディーズという学問はサブカルチャーを対象にしているのです。

ちなみに、「大衆文化」という概念は複雑な歴史をもって形成されています。興味のある方は次の記事を参照ください。

【大衆文化とはなにか】その意味から具体例までわかりやすく解説



1-2: サブカルチャーの対義語としての高級文化

さて、サブカルチャーの対義語として「高級文化」があると述べました。実は「文化」という言葉自体に「高級文化」の意味が含まれています。それは「文化」の語源を知ることで理解できます。

文芸批評家のレイモンド・ウィリアムズは「文化(culture)」が英語でもっとも複雑な言葉といいました。多くの研究分野でキーワードになるにもかかわらず、合意ができる定義を生み出せなかったからです。

「文化(culture)」の語源と意味の発展は複雑です。ここでは要点だけおさらいしましょう。

「文化」の語源と発展

  • 「culture」の前形は、ラテン語の「cultura(耕作)」
  • 語源はラテン語の「colere」。その意味は「住む」「耕す」「守る」「敬い崇める」であり、さまざまな言葉に派生していった(ex:「住む」という意味は、ラテン語の「colonus」を経て、英語の「colony」への発展)
  • 16世紀の初期から「culture」は「自然生育の世話をする」という意味であったが、19世紀初期までに「人間の発達過程」という意味をもつようになる
  • その後、複数形の「cultures」という使用される。これは「個別の多様な文化様式」を意味するために用いられた

「どこに高級文化の意味があるんだ?」と思うかもしれませんが、ここではまず「文化」の意味を大きく3つに分類したいと思います。

最初の二つはすでに述べていますが、「文化」を大きく3つの意味にわけると、

  1. 人間の知的・精神的・美学的発達の過程
  2. ある国民・ある時代の特定の生活様式
  3. 知的、とくに美術的な活動の実践と作品

となります。

私たちにとって、重要なのは③の意味です。③の「文化」はカルチュラル・スタディーズの創設者に大きな影響を与えた批評家のマシュー・アーノルドによって定義されました。

1-2-1: 高級文化とアーノルド

アーノルドは「文化」を「高級文化」の意味で次のように定義します。

「これまでに思考され、語られてきたものの最高のもの」

(『カルチュラル・スタディーズ入門』(2000)から参照)

アーノルドが「文化」をこのように定義した背景には、

  • アーノルドが『文化と無秩序』(1869年)を書いた時代、近代化のなか多くの人々が都市部に集まり労働者階級独自の文化を創り出していた
  • アーノルドは、労働者階級の文化は「(高級)文化」に対する脅威と捉えた
  • 教養のない大衆は「文化」のない存在で、教養のある少数の人々による「文化」しか存在しなかった
  • そのため、アーノルドは野蛮な大衆から「文化」を守るべきだと考えた

といったものがあります。

どうでしょう?「(高級)文化」という言葉の歴史を知ると、「サブカルチャー」がなぜ「高級文化」と相容れない理由がわかると思います。

レイモンド・ウィリアムズの『キーワード辞典』は社会変化に伴って変化し続けてきた、英単語の意味をわかりやすく解説しています。興味のある方はぜひ読んでみてください。

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1-3: サブカルチャーと日本社会での具体例

さて、これまで英語圏での「subculture」を解説してきましたが、日本社会において、「サブカルチャー」とはどんな意味をもつのでしょうか?

まず「subculture」を無理に翻訳してみましょう。「subculture」を日本語に訳するならば、「下位文化」となります。一般的には「サブカル」と略称が使われることが多いです。

そして、英語の「subculture」と日本語の「サブカルチャー」は異なる対象を指します。

英語の「subculture」・・・(特に英国では)ロック、スキンヘッド、ドレッド、パンク

日本語の「サブカルチャー」・・・ロックなども対象であるが、一般的に「オタク」文化として広く共有されたものを指す

日本社会に「サブカルチャー」という言葉が輸入された際、拡大解釈されて用いられた、と社会学では考えられています。

そのため、日本社会と他の社会で同様の言葉が使われても異なる意味をもつを理解することが大事です。

これまでの内容をまとめます。

サブカルチャーを理解するためには、まずカルチュラル・スタディーズです。カルチュラル・スタディーズに関する入門書はいくつかありますが、次の本をオススメします。この記事でも多く参照しています。ぜひ手に取ってみてください。

1章のまとめ
  • サブカルチャーとは「ある文化より下位にあって、これに従属したり、準じたりする副次的な文化の現象や領域」を指す
  • 高級文化とは「これまでに思考され、語られてきたものの最高のもの」で、サブカルチャーの対義語
  • 英語の「subculture」と日本語の「サブカルチャー」は異なる対象を指す

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2章:サブカルチャーに関する研究

さて、1章ではサブカルチャーの概要を解説しましたが、2章では「サブカルチャーに関する研究って実際どんなもの?」と疑問に答えていきます。

ここではサブカルチャーの研究で有名な2つの本を解説します。

2-1: ヘブディジの『サブカルチャー』

ディック・ヘブディジの『サブカルチャー』は、

ファッション、音楽、嗜好に関する振る舞いを「スタイル」と称し、1960-70年代に英国で盛り上がりをみせた若者のサブカルチャーを研究した本

です。

ヘブディジが対象とする英国のサブカルチャーは、ヒップスター、ビート族、モッズなど多様です。この本では階級、移民文化、消費社会といった社会背景を分析しながら、サブカルチャーの繁栄が説明されます。

ヘブディジがサブカルチャーの分析方法として採用するのは、構造主義の創設者である人類学のレヴィ=ストロースが唱えた「ブリコラージュ」という概念です。

ブリコラージュとは、

  • 本来フランス語で、「日曜大工」「器用仕事」を意味する言葉
  • レヴィ=ストロースは、未開人の思考が目の前にあるシンボルやモノを組み合わせて、別のレベルで意味を再構成する特徴を指すために概念化した

ものです(→ブリコラージュが提示された『野生の思考』についてはこちら)。

ヘブディジにとって、サブカルチャーとは日用品やありきたりの記号のもつ意味を破壊し、その意味を拡張するものでした。そのため、サブカルチャーは「記号論的ゲリラ戦」ともいわれます。

たとえば、ネオナチや保守主義に反対するパンクや若者はカギ十字の「社会や体制から嫌われるもの」という意味をもち、ファシズムという本来意味されたものから引き離します。

髪を染めたり、奇抜なファッションを求め、異様な音楽を聴く。そのような反抗や逸脱から「平準化」への一つの抵抗のスタイルが生まれていく、とヘブディジは考えました。

ヘブディジの研究はその後のサブカルチャーに大きな影響を与えたものです。世界各国で読まれた『サブカルチャー』は読み物としても面白いです。

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2-2: ホールの『儀礼を通した抵抗』

スチュアート・ホール(編)の『儀礼を通した抵抗』は、

  • ヘブディジなどの代表的論者の論文集
  • カルチュラル・スタディーズのサブカルチャー研究の始まりとされる本

です。

タイトルの『儀礼』とは、サブカルチャー研究では重要なワードです。

『儀礼』の意味

  • 文化人類学では宗教、神話などの文化的な規範を指す言葉(通過儀礼ともいわれる)
  • サブカルチャーを対象とする社会学では、スタイルによって形作れた身振りや慣習行為を指す(ex: モッズが軍用コートを着てスクーターに乗ること)

これらの儀礼行為をある社会における小集団、つまり「部族」としてみることから分析がされていきます。部族は階級、エスニシティ人種、ジェンダーと密接な関係があります。

カルチュラル・スタディーズは、このようなサブカルチャーの儀礼行為に、

  • 社会、政治体制への抵抗
  • 職場や学校などの日常への抵抗

を見出していきます。

カルチュラル・スタディーズの抵抗という考えは、イタリア人マルクス主義者のグラムシに由来します。

  • ある支配的な考えや動向が生まれるとき、それは一方的なものではなく、持続的な交渉の結果
  • そのような交渉の結果は支配側と従属側の同意に基づく、ヘゲモニーにほかならない
  • 言い換えると、交渉の場こそが力のせめぎ合いの場となる

つまり、サブカルチャーとは支配的な文化との相互行為、闘争、交渉の結果なのです。このような見方からカルチュラル・スタディーズはサブカルチャーを分析してきました。

『儀礼を通した抵抗』は日本語訳がありませんので、英語版の原著に挑戦してみてください。

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3章:サブカルチャーの学び方

どうでしょう?サブカルチャーへの理解は深まりましたか?

サブカルチャーは日常的な生活に存在する、力のせめぎ合いの場です。まずはサブカルチャーに関する研究から理解を深め、実際に世界中で起きる出来事に敏感になる必要があります。

これから紹介する書籍や新聞から、サブカルチャーに関する理解を深めていってください。

おすすめ書籍

オススメ度★★★ ポール・ウィリス 『ハマータウンの野郎ども』 (ちくま学芸文庫)

労働者階級の不良少年たちをエスノグラフィー的に調査した研究。サブカルチャーや若者文化を理解する上で重要な本。文庫で読めるのでオススメ。

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オススメ度★★★ 井上 俊, 伊藤 公雄 (編)『ポピュラー文化』(世界思想社)

ポピュラー文化やサブカルチャーなどに関する有名な研究を解説した本。一度に多くの研究を学べるのでオススメ

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オススメ度★★ 伊奈正人『サブカルチャーの社会学』(世界思想社)

フィールドワークをもとにしたもので、日本社会におけるサブカルチャーを知りたい方にオススメ。

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おすすめ新聞・雑誌

繰り返しますが、サブカルチャーは現代社会における交渉の結果です。つまり、現代社会で起きる出来事を無視して、理解を深めることはできません。情報量の多い以下の新聞・雑誌はオススメです。

ウォール・ストリート・ジャーナル

ニューズウィーク日本版はAmazonアンリミテッドなら無料で読めますので、特におすすめです。

まとめ

この記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • サブカルチャーとは「ある文化より下位にあって、これに従属したり、準じたりする副次的な文化の現象や領域」を指す
  • 高級文化とは「これまでに思考され、語られてきたものの最高のもの」で、サブカルチャーの対義語
  • サブカルチャーとは支配的な文化との相互行為、闘争、交渉の結果であり、抵抗の一種である

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