社会学

【世界システム論とはなにか】発想・特徴から批判まで簡単に解説

世界システム論とは

「世界システム論(World-Systems Theory)」とは、

アフリカ社会学から出発したウォーラステインが、近代世界の経済は15・16世紀のヨーロッパに誕生し、そこから跛行的に世界に広がった一つのシステムであることを論じたものです。

世界を一つのシステムとして考える論者や論考は数多くありますが、最も影響力をもった分析はウォーラステインの提唱した「世界システム論」です。

ウォーラステインの議論は壮大なものあるため、詳細な歴史的分析については批判もあります。しかし、経済・政治を中心としたグローバルな分析は社会科学に大きな影響を与えるものでした。

そこで、この記事では、

  • 世界システム論の発想
  • 世界システム論の特徴
  • 世界システム論への批判や展望

をそれぞれ解説します。

ウォーラステインの視点はグローバル規模で世界を捉えようとするとき、必ず必要となるものです。ぜひ読んでみてください。

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1章:世界システム論とはなにか

世界システム論は、アメリカの歴史社会学者であるイマニュエル・ウォーラステイン(1930年 – 2019年)が提唱した分析の視点です。

あえて「分析の視点」と言うのは、ウォーラステイン自身がいうように、世界システム論は「理論」ではなく「パースペクティブ」だからです。ウォーラステインのこの姿勢は世界システム論の根底にある発想に直結しています。

少し遠回りかもしれませんが、まずはウォーラステインの発想を説明します。その後、世界システム論の特徴を解説していきます。「急がば回れ」ではないですが、この意識的な遠回りによって、世界システム論の理解が深まるはずです。

1-1: 世界システム論の発想

結論からいえば、世界システム論が提唱される背景には、19世紀以来の社会科学を捉え直したいというウォーラステインの考えがあります。具体的に、19世紀以来の社会科学とは人類学、経済学、政治学、社会学を指します。

ウォーラステインは、次のような考えのもとに、社会科学を捉え直そうとします。

  • 1945年以降、人類学、経済学、政治学、社会学という4つの学問分野の境界はますます見えにくくなっている
  • 境界を保持することは、社会科学の創造的な刺激とはならない
  • そのため、「学際性」は延命措置にすぎず、長期的な視野に立っていない

このように考えるウォーラステインは、「人類学、経済学、政治学、社会学という分野を明確にわける境界などない」と主張をします。それを示したのが、世界システム論という分析でした。

たとえば、従来の社会科学を乗り越えようとするウォーラステインの発想は「史的システム」「資本主義世界経済」というアイデアに示されています。

1-1-1: 史的システムと資本主義世界経済

簡単にいうと、「史的システム(historical system)」とは分析単位としての「社会(society)」を考え直そうとするアイデアです。

19世紀以来の社会科学では、基本的な分析単位として「社会」と想定していました。

しかし、ウォーラステインは「社会」の代わりに、「史的システム」を提案します。これは文字通り、分析の単位をシステム的・歴史的なのにしようとする試みです。

たとえば、国民国家という問題を考えてみてください。私たちが国民国家に関して漠然と抱く一般的な考えは、ウォーラステインによって次のように捉え直されます。

  • 一般的な考え・・・国民国家は近代に成立され、それぞれの国家が相互の関係を形成していくなかで、国際関係や国際的な秩序が生まれていった
  • ウォーラステインの考え・・・国民国家を政治的なシステムで定義することは問題含みである。むしろメルクマールとなるのは、資本主義世界経済であり、それは15世紀末に成立した。資本主義世界経済が発展するにつれて、その内的な論理が、国民国家という体制を要請した

つまり、国民国家が成立した後に同盟などの関係が作られることで世界システムが形成されたのではなく、資本主義世界経済の歴史的な展開のなかで、それが要請した政治的な枠組みに国民国家は過ぎない、とウォーラステインの考えたのです。

1-2: 世界システム論の特徴

では、「世界システム論」を深掘りしていきましょう。世界システム論の特徴をまとめると、以下のようになります。

世界システム論の特徴
  • 史的システムの3つの形態…「ミニ・システム」「世界帝国」「世界経済」
  • 国際的な分業…一つの商品が生産される過程で、世界の地域が生産プロセスの関与する
  • 中核−半周辺−周辺…3つ層からなる不平等な構造
  • 国家と資本蓄積…国家は資本蓄積をするためにさまざまな手段を講じる。そのなかでヘゲモニー国家が生まれるときもある

それぞれを詳しく解説してきます。

これから要点を解説しますが、詳細な議論は必ず原著を参照ください。ウォーラステインの議論は『近代世界システムⅠ』がおすすめです。

1-2-1: 史的システムの3つの形態

ウォーラステインは、史的システムの境界線をみきわめる問題に関して、人とシステムの再生産が分業によって規則的にされる単位を規準とします。

そして、そのような史的システムは歴史上3つ存在したといいます。

  1. ミニ・システム・・・空間的に小さく、時間的にも短い時間しか継続しなかったもの。文化的にも同質である
  2. 世界帝国・・・広大な政治構造をもったもので、貢納が基本倫理となる。地方の生産物は中央へと吸い上げられ、行政者に再配分される
  3. 世界経済・・・広大で不平等な連鎖。蓄積された余剰が不平等に再配分される。端的にいえば、資本主義の倫理である

3つの史的システムは共存した時期もありましたが、西暦1500年ごろまでにヨーロッパ経済が「世界経済」として歴史の舞台に登場します。ウォーラステインによると、この資本主義世界経済は地球全体を覆っていく過程で、「ミニ・システム」や「世界帝国」を吸収されました。

かくして、地球上に存在する史的システムは、19世紀後半までに資本主義世界経済のみとなります。

  • マルクス経済学では労働力が商品化され、自由な賃労働が形成されることを資本主義成立のメルクマールをする
  • しかしグローバル的にみれば、マルクスの想定した現象はごく一部の地域にすぎない
  • 世界システム論では経済学の枠組みを越えて、グローバル規模で資本が蓄積される過程の考察がされる

マルクス経済学に関しては、次の記事で詳しく解説しています。

マルクス経済学とは
【マルクス経済学とは】史的唯物論から『資本論』の世界まで解説マルクス経済学とは、マルクスが古典派経済学を批判的に継承して体系化した経済学です。資本主義社会が持つ矛盾から、いずれ社会主義が到来することを予測しました。剰余価値説、貨幣の物神性、資本蓄積、産業予備軍など独自の概念が多いですので『資本論』から詳しく解説します。...

1-2-2: 国際的な分業

このような世界システムの実質は「国際的な分業」です。

国際的な分業とは、

  • 一つの商品が生産されるために、世界の各地域が多様な形で生産過程に関与する
  • 分業への関与のあり方は、垂直に統合された「グローバルな商品の連鎖」である

といった特徴があります。

大事なのは、資本によって「グローバルな商品の連鎖」が統括され、資本が蓄積される運動を通して、世界の各地域が3つの層にわけれることです。

1-2-3: 中核−半周辺−周辺

世界システムには上記した地政学的な意味で、「中核−半周辺−周辺」にわけれれます。この論理は「ラテンアメリカのための国連経済委員会」に淵源をもち、のちに「従属理論」として考察がされるものです。

「中核−半周辺−周辺」の概念の特徴は非常にシンプルです。この概念の特徴を次のようにまとめることができます。

  • 「中核−半周辺−周辺」の概念は、生産過程に特徴をもつ区分である
  • 中核地域は市場の多くの生産物を独占する力をもつため、余剰価値の大部分が中核地域への流れていく
  • 政治的にいえば、政治的に弱い国家から強い国家への資本の移動であり、司法的、物的、所有制度という点で強い国家は力を発揮する

注意したい点は、「中核−半周辺−周辺」は固定的なものではないことです。たとえば、織物は1800年代に中核的な生産過程による商品でした。しかし、2000年までに周辺的な生産品となります。要点はこの種のシフトがシステムそれ自体に影響を与えないことです。

つまり、「中核−半周辺−周辺」の特徴は、

  • 「中核−半周辺−周辺」という諸変数によって構成される構造に変化はない
  • 時期によって、それらの役割を演じる具体的なプレイヤーが換わる

といえます。

1-2-4: 国家と資本蓄積

世界システムは資本によって動かされるため、資本間の競争に伴って対立が起きます。

普通、資本をめぐる対立は市場システム上における対立ですから、独立の国家がシステムを統括する事態には陥りません。

しかし、産業、金融、軍事力の点で圧倒的な優位をもつ国家が出現したとき、そのような国家は「ヘゲモニー国家」と呼ばれます。ヘゲモニー国家の事例としては17世紀におけるオランダ、19世紀におけるイギリス、第二次世界大戦後のアメリカがあります。

ここでいう、ヘゲモニーはアントニオ・グラムシの提唱した「ヘゲモニー」概念とは異なるの注意してください。グラムシのヘゲモニー概念はこちら記事を参照ください。

【ヘゲモニーとは】意味からグラムシの議論までわかりやすく解説

これまでの内容をまとめます。

1章のまとめ
  • 世界システム論の発想には、19世紀以来の社会科学を捉え直すという考えがある
  • 世界システム論の要点は、「史的システムの3つの形態」「国際的な分業」「中核−半周辺−周辺」「国家と資本蓄積」である
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2章:世界システム論への批判と展望

1章では世界システム論の概要を解説しましたが、2章ではこの議論に対してなされた批判や今後の展望を紹介していきます。

1章でみたように、ウォーラステインの議論の意義はグローバル規模な分析枠組みを提示したこと、それを一つのシステムとして世界全体を理解しようと試みたことです。

しかし、ウォーラステインの壮大な試みはさまざまな専門家から批判がされています。まずはその批判を紹介していきます。

2-1: 世界システム論への批判

上記したように、ウォーラステインの発想自体が論争的なものでしたから、多くの批判的な議論を巻き起こしました。彼への批判で代表的なものは、「方法論」と「資本主義という概念」に関してです。

2-1-1: 方法論への批判

ウォーラステインの方法論への批判とは、

世界システム論が対象とするのは世界システムしかない

ということです。

考えてみてください。世界システム論の科学的な対象となる経験的実体は世界システムしかありません。

言い換えると、その構造と変動を理論的に把握するためには、他の事例と比較をする必要がありますが、そのような把握の仕方は不可能である、ということです。

つまり、世界システム論は「反証可能性」が否定されているのです。

2-1-2: 資本主義という概念

資本主義の概念というのは、

世界全体を資本主義が覆うという主張が正しいのか?という問題

です。

ウォーラステインは、世界システム論において資本主義のシステムとして世界全体を捉えていますが、世界システムの周辺には強制労働などの資本主義とは異なる活動が存在します。

その結果、自給自足的な労働や強制労働などの活動を、資本主義と一括りにして把握することは正しいのか?といった問題が浮上します。それぞれの活動の独自性を捉え損ねることに繋がるからです。

2-2: 世界システム論の展望

世界システム論への批判に答えるように、さまざまな研究が進められています。

たとえば、チェイス=ダンの研究は前近代における史的システムの比較研究を通して、世界システムの変動過程を分析しようとするものです。

日本では世界システム論を批判的に継承しつつ、ローカルな社会の変動を分析する研究があります。たとえば、次に紹介する社会学者の山田の研究などのです。

とにかく、「グローバル化」に関する議論がされるはるか以前から、世界システム論を唱えたウォーラステインの意義が失われることはないでしょう。

これまでの内容をまとめます。

2章のまとめ
  • 世界システム論への批判は、「方法論」と「資本主義という概念」に関してされた
  • 世界システム論への批判に答える形で、さまざまな研究がされる
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3章:世界システム論を学べる本

どうでしょう?世界システム論に関して理解を深めることはできましたか?

この記事で紹介した内容は、世界システム論の要点にすぎません。詳細な議論を知りたいという方は、これから紹介する書籍にあたり、さらに理解を深めていってください。

オススメ書籍

オススメ度★★★ イマニュエル・ウォーラーステイン『近代世界システムⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ』(名古屋大学出版)

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まとめ

最後に今回の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • 世界システム論の発想には、19世紀以来の社会科学を捉え直すという考えがある
  • 世界システム論の要点は、「史的システムの3つの形態」「国際的な分業」「中核−半周辺−周辺」「国家と資本蓄積」である
  • 世界システム論への批判は、「方法論」と「資本主義という概念」に関してされた

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