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【アボリジニの現在とは】人口・生活から差別問題までわかりやすく解説

アボリジニの現在とは
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アボリジニの現在とは開発の進んだ都市における居住や、社会経済的な困難に特徴づけられます。そのなかでも、都市部における貧困と土地権の問題は、アボリジニの生活に関わる大きな問題です。

「アボリジニは辺境地で生活している」という漠然的なイメージをもつ方がいるかもしれませんが、実はアボリジニの多くは都市で暮らしています。

辺境地で生活する「真正」な先住民像を想定することで、現在を生きるアボリジニを見落とすことは大変危険であり「もったいない」です。

そこで、この記事では、

  • アボリジニの人口・生活
  • アボリジニに関する問題(土地権、健康問題)
  • をそれぞれ解説していきます。

好きな箇所から読み進めてください。

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1章:アボリジニの現在とは

まず、1章では現在のアボリジニを「人口」「生活」から紹介します。

2章では現在のアボリジニを取り巻く問題を解説しますので、関心のある箇所から読み進めてください。

1-1: アボリジニの現在の人口

さて、オーストラリアにおいてアボリジニは現在どの程度いるのでしょうか?オーストラリア統計局が2016年に実施した調査から紹介していきます。(「Estimates of Aboriginal and Torres Strait Islander Australians, June 2016」https://www.abs.gov.au/ausstats/abs@.nsf/mf/3238.0.55.001(最終閲覧日2020/2/5))

1-1-1: アボリジニの人口

まず、オーストラリア統計局によると、

  • オーストラリアの先住民(アボリジニとトレス海峡諸島人)は798,400人で、オーストラリア全人口の3.3%にあたる
  • 2011年の調査における先住民人口は669,900人だったので、5年の間に19%上昇したことになる

といった結果がでています。

ちなみに、先住民のうちの91%がアボリジニのみ、5%がトレス海峡諸島人のみ、残りの4%が両者を含むルーツをもつと回答しています。

1-1-2: 年齢別

アボリジニの人口(年齢別)(「Estimates of Aboriginal and Torres Strait Islander Australians, June 2016」より引用https://www.abs.gov.au/ausstats/abs@.nsf/mf/3238.0.55.001 最終閲覧日2020/2/5))

年齢別でみると、先住民は非先住民に比べて若年中心であることや平均寿命が短いことがわかります。

また、先住民の平均年齢は23歳である一方で、非先住民の平均年齢は37.8歳であることが統計局の調査では示されています。



1-2: アボリジニの現在の生活

では一体、アボリジニは現在どのような生活をしているのでしょうか?

そもそも、「アボリジニ」と一言でいっても多様な部族が存在する上に、地域差があるため一貫した生活形態を語ることは難しいです。それには植民地主義の歴史が大きく影響しています。(→アボリジニの歴史についてはこちら

ですので、ここでは「都市」という地域における観点からアボリジニの生活を概観したいと思います。

冒頭で少し触れましたが、現在多くのアボリジニは開発の進んだ都市的な環境で暮らしています。研究者の山内によると、先住民の都市居住は世界的な傾向です。(山内 2014「都市に暮らすオーストラリア先住民」『オーストラリア先住民と日本』(御茶の水書房))

都市で暮らす先住民の割合

  • オーストラリア・・・先住民人口の70%以上
  • アメリカ・・・先住民人口の60%以上
  • カナダ・・・先住民人口の60%以上
  • ニュージーランド・・・先住民人口の80%以上

それぞれの社会における個別の歴史があるため、先住民が都市に居住する理由は一枚岩的に語ることができません。しかし、仕事、教育、医療等の理由で都市は先住民を引きつけてきたことは間違いありません。

そして、都市におけるアボリジニの特徴としては、

  • 混血が進み英語しか話さない人も多い
  • 生活様式はイギリス系の人々と変わらない
  • そのため、彼らは「本物のアボリジニ」ではないなどの差別経験を受けてきた

といったことが挙げられます。

そのような都市における差別の経験は、さまざまな活動に影響を与えました。たとえば、都市におけるアボリジニのアートには、以下のような特徴があります。

  • 辺境のアボリジニとの決定的な違いとして、主流社会の人々と同様に、美術学校において高等教育を受けることができた
  • つまり、都市のアボリジニは西洋社会でのアートを学ぶことで、その技法から独自の現代的なアボリジニアートを生み出していった

このようなダイナミズムから生み出される新たなアボリジニの形態こそが、都市のアボリジニの特徴でしょう(→アボリジニアートに関して詳しくはこちら)。

『地球の歩き方』などの観光ブックではアボリジニの記述が北部などの辺境地に偏りがちですが、都市におけるダイナミズムを無視してアボリジニを語ることができないのは明らかです。

より詳しくアボリジニの生活や経験を知りたい方は、さまざまな経験が記述された以下の書物を読むことをおすすめします。

1章のまとめ
  • オーストラリアの先住民(アボリジニとトレス海峡諸島人)は798,400人で、オーストラリア全人口の3.3%にあたる(2016年の調査)
  • 先住民は非先住民に比べて若年中心であることや平均寿命が短い
  • 「アボリジニ」と一言でいっても多様な部族が存在する上に、地域差があるため一貫した生活形態を語ることは難しい
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2章:アボリジニの現在の問題

1章で現在のアボリジニを概観しましたが、2章ではアボリジニを取り巻く問題を「差別」「健康問題」「土地権問題」から解説していきます。

2-1: 現在のアボリジニに対する差別

まず、アボリジニに対する人種差別が常態化していた白豪主義の時代から考えれば、政策レベルでの差別は撤廃されたといえるかもしれません。

そして、21世紀も四半世紀が過ぎた今日、人種的な優劣から人種差別を正当化する人は少ないと思います。たとえば、「白人は優秀で、黒人は劣ってる」と考える人は多くいないでしょう。

しかし、オーストラリア社会に差別が残っているとしたら、それは制度的な人種差別です。

簡単にいえば、制度的な人種差別とは、

  • 社会構造の一部として、社会のいたる箇所に残存する差別がある
  • その結果、ある集団に利益を、ある集団に不利益を与えている

といったものです。

少し抽象的いえば、制度的な人種主義とは人種をとおして不均衡を作り出すパワーのシステムといえます。

2-2: アボリジニの健康問題

人種差別の議論は抽象的でしたので、健康問題から差別を考えていきましょう。

オーストラリア研究の青山は『アボリジニで読むオーストラリア』(明石書店)のなかで、アボリジニの健康問題を以下の言及しています。

  • 歴史的、社会的、法律的な差別から引き起こされてきた健康問題に、アボリジニは悩まされてきた
  • つまり、アボリジニの不健康状態はアボリジニの生活環境によるものだけでなく、文化や政治、社会から疎外といった要素が複雑に絡まった結果生じたものである

このように、人種主義的な政策や文化の否定といった要素がつなぎ合わさることで、アボリジニの不健康状態が生じているのです。

上述した人種主義を用いて説明すれば、

  • 歴史的な人種主義的政策が廃止されたことや、人種的な優劣から人種差別を正当化する人がいないことは差別がないことを意味しない
  • 社会構造の一部として、人種主義が社会のいたる箇所に残存しているため、ある集団(この場合はアボリジニ)は不利益を被る立場にいる

といえます。

事実、アボリジニの健康状態は発展途上国のそれと近い状態にあります。

  • オーストラリア人と比べてアボリジニは17年も寿命が短い(男性57歳、女性62歳)
  • エイズ、淋病、結核、インフルエンザなどの感染症にかかる率も高い
  • 自動車事故による死亡率は、非アボリジニに比べて3倍も高い

こうした状況はオーストラリアの歴史が作り出した、アボリジニの劣悪な生活環境、精神的・物資的な貧困などから考えなければならないのです。



そもそも、青山によると、アボリジニとって「健康」とは西洋社会で認識される「health」とは一線を画します(同書, 192頁)。

アボリジニとって「健康」とは、

  • 「life is health is life」=「人生は健康、健康は人生」といった意味合いをもつ
  • つまり、生活に全般に関わることで、単に医者にかかるとか病院に行くとかレベルではない

ものです。

そのような健康概念を念頭に置きながら、アボリジニの健康状態が改善されるための政策を練ることが必要とされています。

世界の他の地域における先住民の健康状態も極めて悪いです。より詳しくは次の記事を参照ください。

2-3: 土地権の問題

そして大きな問題の一つに、土地権に関するものがあります。たとえば、次のような状況を考えてみてください。

  • 土地権を主張するために、アボリジニは「アボリジニ性(アボリジニであること)」を証明しなければならない
  • 言い換えれば、伝統的な文化を継承し先祖代々の土地を所有していたことを、アボリジ二性から主張する必要がある
  • しかし、その「アボリジニ性」は白人が残した学問的知識に基づいている
  • つまり、アボリジニであることは白人の資料から過去を復元していく必要ある

このようにみると、何がアボリジニの文化であり何がアボリジニの文化でないのかといった問題は、史的な事実というよりも知識を生産するパワーの問題です。

文化をめぐる問題は学問との関係を知る必要がありますので、「アボリジニの文化」の記事を参照してください。この記事で詳しく解説しています。

→【アボリジニの文化とは】特徴・歴史・問題点をわかりやすく解説

2-4: アボリジニの未来

さて、これまで解説してきたように、現在のアボリジニはさまざまな問題を抱えています。

問題は山積みで一朝一夕には解決するものではありません。効果的な施策によって一気にすべてが改善するとも考えにくいです。

少なくとも、「誰が誰のために」権利を主張しているのかを考えて、対話を続けていくことが重要だと思います。そのような精神を文化相対主義から学べるところがあるのではないでしょうか。

2章のまとめ
  • 人種をとおして不均衡を作り出すパワーのシステムがある
  • オーストラリアの歴史が作り出した、アボリジニの劣悪な生活環境、精神的・物資的な貧困などから考えなければならない
  • 何がアボリジニの文化であり何がアボリジニの文化でないのかといった問題は、史的な事実というよりも知識を生産するパワーの問題
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3章:アボリジニの現在を学ぶためのおすすめ本

アボリジニの概観をつかむことはできましたか?

今回はアボリジニの現在の状況を概観しました。最後に、参照した本を含めてアボリジニを深く理解する参考書物を紹介します。

おすすめ本

オススメ度★★★青山晴美『アボリジニで読むオーストラリア』(明石書店)

この書物では非常にわかりやすくアボリジニ文化・社会が紹介されています。「です・ます調」で解説されるため、初学者にもとても読みやすい書物です。

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オススメ度★★★ 山内由理子(編)『オーストラリア先住民と日本』(御茶の水書房)

オーストラリア先住民に関する多様な情報だけでなく、日本人が研究することの意義を学ぶことができます。こちらも初学者向けです。

オススメ度★★★ 藤川降男(編)『オーストラリアの歴史』(有斐閣)

オーストラリア史が簡潔にまとめられた書物です。アボリジニアートを深く理解するには、オーストラリア史の前提知識が必要ですから、この書物から学んでみてください。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • オーストラリアの先住民(アボリジニとトレス海峡諸島人)は798,400人で、オーストラリア全人口の3.3%にあたる(2016年の調査)
  • 「アボリジニ」と一言でいっても多様な部族が存在する上に、地域差があるため一貫した生活形態を語ることは難しい
  • オーストラリアの歴史が作り出した、アボリジニの劣悪な生活環境、精神的・物資的な貧困などから考えなければならない

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