先住民

【ネイティブ・アメリカンとは】部族・歴史・居留地をわかりやすく解説

ネイティブ・アメリカンとは
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ネイティブ・アメリカン(Native American)とは、アメリカ合衆国における先住民族の総称です。先住民としてのアイデンティティは、生物学的な証明(血筋を引くこと)、政治的・法的な証明(部族政府に部族員として承認されること)、文化の継承(部族に関する知識をもっていること)から成り立ちます。

アメリカは「移民の国」としばしば形容されますが、このように形容した瞬間にネイティブ・アメリカンの存在は無視されています。

コロンブスによる新大陸の「発見」以来、先祖から受け継いだ土地を奪われて、現在では連邦政府から「与えられた」居留地で暮らすネイティブ・アメリカンに、光が当たることは少ないです。

そこで、この記事では、

  • ネイティブ・アメリカンの概要
  • ネイティブ・アメリカンの歴史
  • ネイティブ・アメリカンと居留地

をそれぞれ解説していきます。

ぜひ好きな箇所から読み進めてください。

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1章:ネイティブ・アメリカンとは

まず、1章ではネイティブ・アメリカンの部族・人口・部族承認の問題を紹介します。

ちなみに、この記事はネイティブ・アメリカンを専門とする鎌田遵の『ネイティブ・アメリカン』を主に参照しています。詳しい内容を知りたい方はぜひ手に取ってみてください。

1-1: ネイティブ・アメリカンの部族

私たちはシンプルに「ネイティブ・アメリカン」と呼びますが、その部族と文化は実に多様です。ここでは8つの文化圏から、ネイティブ・アメリカンの全体像を提示します。

ネイティブ・アメリカンの文化圏(鎌田遵『ネイティブ・アメリカン』31頁から引用)

ネイティブ・アメリカンの8つの文化圏
  1. 大平野部…北はカナダのマニドバ州から南はアメリカのテキサス州まで広がる地域。この地域の生活基盤は移動に最適なバッファローである。農耕部族もいたが、基本的には狩猟部族が多い(たとえば、ラコタ族やダコタ族)
  2. 北西沿岸部…アラスカ南部からカリフォルニア州の北部までの地域。豊富な海洋資源に恵まれたこの地域では、海沿いに集落が形成されてきた。トーテミズムで有名なトーテムポールを家の前に建てることで有名である
  3. 高原部…西にはカスケード山脈、東にはロッキー山脈がつらぬく地域。山間部の文化が育ち、山麓の川を中心に集落が形成されてきた。川での漁業や、狩猟、採集中心の生活がされてきた
  4. 大盆地部…ユタ州、ネバダ州、コロラド州、ワイオミング州、アイダホ州、オレゴン州とカリフォルニア州の一部を含む地域。この地域の狩猟採集民族は、季節ごとの移動を繰り返してきた。雨量が少ないこと地域は、農業に不適切であった
  5. 北東部沿岸部…五大湖を代表とする湖、川、森林など豊富な資源がある地域。イロコイ連盟に属するオノンダーガ族、オネイダ族などは多様な文化をもつ。木材で作られた長細い家屋がとても有名である
  6. 南東部…ケンタッキー州、チカソー族が暮らしてきたこの地域は、農業、漁業、狩猟採集が盛んである。これらの部族は入植者の文化を受けれてきたため、比較的「文明化」した先住民と考えられている
  7. 南西部…メキシコの一部を含む広大な地域。土で建てられた家屋に住み、現在でも集落を形成して暮らしている。現代では最大の居留地をもつナバホ族は、近隣の先住民との交流から農業や牧畜を始めたとされる。
  8. カリフォルニア…多様な動植物が生息する地域。この文化圏は言語が多様であり、100以上の異なる言語が話されていた。地域の面積に対する多言語の割合は、世界有数である

個々のネイティブ・アメリカンの部族が、この文化圏を意識してるわけではありません。言語の広がりや部族の移動は流動的なものです。しかし、地域と部族の特徴を大まかに把握する上で、文化圏を知ることはとても有効です。

1-2: ネイティブ・アメリカンの人口

さて、ネイティブ・アメリカンの人口はどの程度なのでしょうか?アメリカ社会に詳しい方はすでにご存じかもしれませんが、ネイティブ・アメリカンの人口は1960年代後半から増加しています。

その理由は、

  • アメリカ社会で1950/1960年代に起こった公民権運動と先住民の権利拡大を主張するレッド・パワー運動が起こったため
  • その結果、先住民というアイデンティティを隠すのではなく、誇りをもって主張できるものに変化させたから

です。

ネイティブ・アメリカンの人口増加は、次の表から一目瞭然です。この表から先住民の血を引き継ぐ人たちが、自らを先住民として申告する割合が増加してることがわかると思います。

ネイティブ・アメリカンの人口(鎌田遵『ネイティブ・アメリカン』9頁から引用)

基本的には、文化的アイデンティティを得るために先住民になろうとする人が多いです。

しかし、カジノ経営で成功を収めた一部の部族がその部族員に利益を配分しているため、そのお金を得ようと部族員承認をおこなう人が増えているのも事実です。



1-3: ネイティブ・アメリカンとは誰か

ここで大事のは「誰がネイティブ・アメリカンなのか」という問題です。非常に複雑な問題ですが、ここでは「部族承認」「部族員承認」「部族承認の歴史」の項目から解説していきます。

1-2-1: 部族承認

まず、アメリカにおける部族の形態は次の4つに分類されます。

  1. 連邦政府承認部族…連邦政府から承認を受けた500以上の部族
  2. 州政府承認部族…州政府から承認を受けた20以上の部族
  3. 終結部族…部族としての認定を終結されて、部族としての扱いを受けない「部族」
  4. 未承認部族…連邦政府から承認を受けたことのない200以上の「部族」

ネイティブ・アメリカンが部族承認を求めるのは、部族国家として経済的な支援を受けることができるからだけではありません。

ネイティブ・アメリカンが連邦政府から承認にこだわるのは、

  • 独立した共同体として、自治権を取り戻すことができる
  • 社会政治的な認知は部族としての尊厳を守るものであり、承認がなければその部族は消滅したものと見なされる

からです。

しかし、非常に悲劇的なのは承認を得るための審議で使用される資料は白人が作成したものが殆どで、部族の主張よりも侵略者の白人の資料に重きがおかれることです。

たとえば、『文化の窮状』で描かれたマシュピー族の土地裁判において、部族としてのアイデンティティや共同体の継続性は白人の視点から問われています。

1-2-2: 部族員承認

では一体、ネイティブ・アメリカンの部族の一員になるにはどうすればいいのでしょうか?

基本的には、以下のような認定が必要です。

  • 部族員として認められるには、連邦政府から承認された部族からの認定が必要
  • つまり、部族社会で生まれ育ち言葉を流暢に扱おうとも、自動的に部族員になるわけではない
  • 各部族が定める審査を経て、はじめて部族員と認定される

多くの部族政府は、部族員申請者の「血の濃さ」を提示するように求めています。血筋の濃さの規定でも、父母のどちらかが同族である必要があるホピ族から(2分の1)、16分の1でよいとするチェロキー族まで幅広いです。

しかし、現在では8割以上の部族が4分の1以上の血筋の濃さを基準としています。

血筋の濃さを基準にするこの認定は問題含みです。たとえば、

  • 4分の1の血筋を引いたちがう部族出身の両親が子どもをもうけた場合、その子どもは異なる部族から8分の1ずつ血を引いたことになる
  • 部族員と認定の基準が一般的な4分の1場合、この子どもはどちらの部族員としても認定されることがない
  • その結果、色々な部族の血を引きながら、法的にはどこの部族員でもない人が生まれてしまう

つまり、部族員であることを証明するために血筋の濃さだけに頼ると、歴史的・文化的なつながりを無視することになりかねないのです。

1-2-3: 部族承認の歴史

そもそも、部族政府に部族員として認定してもらうという考えはコロンブス到来以前に存在しませんでした。もともとの部族社会では文化や言語のつながりや、精神世界の共有が重要視されてきました。

では一体、どのように部族員制度や血筋の濃さの基準がつくられたのでしょうか?それは白人入植者によってです。

  • 「誰が部族員であるか」という認定が必要になったのは、19世紀に部族が連邦政府と条約を結んでから
  • (ちなみに、連邦政府と部族の間には300以上の条約がある。連邦政府はその殆どを不履行にし、先住民の虐殺や土地の収奪をした)
  • 虐殺の果てに生き残った先住民の食糧や福祉の援助をする際、連邦政府が対象となる人を明確にする必要が生まれた
  • 連邦政府が作成した当時の部族員名簿に優先的に記載されたのは、白人との混血の先住民。純血よりも混血のほうが文明社会に同化しやすいと考えられたため

さらに悲劇的なのは、後に説明するドース法の際にインディアン局が作成した名簿です。

現在もほとんどの部族がこの時インディアン局が作成した名簿を頼りに、部族員認定の審査をしています。しかし、この名簿から記載漏れや記入ミスがあっても訂正されることはごく稀でした。

とにかく、本来、社会文化的な営みで成立する部族という単位が、連邦政府からの承認がないと成立しないことは傷ましいことです。

これまでの内容をまとめます。

1章のまとめ
  • ネイティブ・アメリカンには、大きく8つの文化圏がある
  • ネイティブ・アメリカンの人口は1960年代後半から増加している
  • 部族員であることを証明するために血筋の濃さだけに頼られているが、歴史的・文化的なつながりを無視することになりかねないという問題がある
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2章:ネイティブ・アメリカンの歴史から現在まで

2章ではネイティブ・アメリカンの歴史から現在までを概観します。

「良いインディアンは、死んだインディアンだけ」と言われた(死をもってのみ、アメリカ合衆国に貢献できるという宣告)、ネイティブ・アメリカンはどのような歴史をもっているのでしょうか?

ここでは上述の鎌田が連邦政府とネイティブ・アメリカンの関係を軸に提示した、6つの時期からネイティブ・アメリカンの歴史と現在を紹介します。

これからの内容を手短に知りたい方は、次の要約を参考にしてください。

ネイティブ・アメリカンの歴史から現在まで
  1. 合衆国憲法成立前(1532年〜1787年)…ヨーロッパから侵略者によってアメリカ大陸における先住民人口は激減した時期。虐殺や天然病の蔓延によって、ネイティブ・アメリカンは壊滅的なダメージを受けた
  2. 形成期(1787年〜1871年)…国家が西に拡張していく中で、連邦政府が先住民の土地を奪い、居留地に隔離していった時期。ネイティブ・アメリカンの貢献とは土地を渡して農業に適さない場所に黙って移住することであった。
  3. 分割と同化(1871年〜1928年)…「一般土地割当法(ドーズ法)」と「寄宿学校」によってネイティブ・アメリカンは土地を失い、アメリカ社会への同化を強制された。
  4. 再組織(1928年〜1945年)…部族に自治政府と部族憲法を促した「インディアン再組織法(Indian Reorganization Act)」が施行された時期。ドース法による土地の喪失を食い止めたこと、拉致同然の寄宿学校を禁止したことが重要である
  5. 終結(1945年〜1961年)…インディアン終結政策が実施された時期。これは部族政府の自立促進を大義名分としているが、実際は部族社会を解体して、部族承認を奪い、先住民としての権利を失わせることを目標していたものである
  6. 自決(1961年〜現在)…1960年代から1970年代にかけて、ネイティブ・アメリカンの文化的アイデンティティや民族自決権の獲得をするための運動が盛んになった時期。条件付きとはいえ部族政府は自治権を獲得した

個別の部族や地域によって違いがあるため一枚岩的に語ることは難しいものの、ネイティブ・アメリカンにはそれらを貫く植民地主義や同化政策といった一貫した経験があります。

2-1:①合衆国憲法成立前

ヨーロッパからの侵略者が到来して以降、ネイティブ・アメリカンは悲劇的な歴史を歩むことになります。

周知の事実ですが、ヨーロッパから侵略者によってアメリカ大陸における先住民人口は激減しました。その主な原因は以下の通りです。

先住民人口の激減の理由

  • ヨーロッパの侵略者による虐殺がおこなわれたため
  • 白人が持ち込んだ「麻疹」「水疱瘡」「コレラ」「インフルエンザ」「性病」「天然病」の蔓延したため
  • 植民地化によって生活基盤が変化したため

たとえば、ヨーロッパから持ち込まれた疫病に感染してわずか数時間のうちに部族の大半が絶命することがあったといいます。なかでも天然病の蔓延は致命的で、1520年から1524年のわずか4年間の間に先住民人口は半分になったといわれています。

また、強制的な移動によって土地を離れなければならなくなった先住民は、食糧調達や生態系の急激な変化にさらされて、窮地へ追いやられてたのです。

そのようなネイティブ・アメリカンの虐殺を、断片的ながら、『イシー北米最後の野生インディアン』は伝えています。文化人類学博物館で生きたまま展示された最後の純血ヤヒ族とされたイシの物語です。

著者で人類学者のシオドーラ・クローバーは『イシ』のなかで、カリフォルニア州を移り住んだ白人の開拓精神を尊重しつつも、次のような批判的見解をします。

彼らのうちのもっとも善良で優しい人も、彼ら以外の人間ーそれがインディアンにしろーに属する土地を自分のものにするー法律用語は「正当な征服」というものであったー権利が自分たちにあることを疑わなかったのだということを思い出してみてもよい。この侵略は、たとえ政府や大衆の支持がどんなに広汎で本物であったにせよ、古典的な侵略ー定住してきた人々のなかに力ずくで侵入し、侵略者がその人々にとって代わるというーであった。

(『イシー北米最後の野生インディアン』68頁から引用)

カリフォルニア州は観光地も多くポジティブなイメージと結びつけられることも多いかもしれませんが、カリフォルニア州に住む白人の先祖がおこなった虐殺の歴史を思い出すことを大事です。

ぜひ読んでみてください。

2-2:②形成期

アメリカ合衆国の建国が成されて以降、ネイティブ・アメリカンへの抑圧はさらに強くなりました。形成期は国家が西に拡張していく中で、連邦政府が先住民の土地を奪い、居留地に隔離していった時期です。

まず、アメリカの領土が西部へと拡大する過程に少し触れます。

  • 現在のアメリカ西部は「未開の地」とされ、東部の白人社会のロマン主義を駆り立てるものであった
  • 西部の土地は開拓者が一定期間住めば土地の所有権が認められる、つまり白人に平等に保証された権利とされた
  • それは階級社会や貴族社会のヨーロッパ的な社会制度ではなく、(アメリカ型の)民主主義を実践する場として捉えられていたことを意味する
  • 西部への開拓精神は、「マニフェスト・デスティニー」という対外領土獲得を正当化するスローガンのもと進められた
  • 白人の米墨戦争を経て西海岸まで到着すると、1890年にフロンティアの終焉が宣言された

このようにアメリカ合衆国の領土が形成される時期、ネイティブ・アメリカンの貢献とは土地を渡して農業に適さない場所に黙って移住することでした。

たとえば、1830年には「インディアン強制移住法」が制定され、ミシシッピ川以来東に住んでいたネイティブ・アメリカンは「白人が不用と見なした」オクラホマ州の地域に強制移住を要求されました。

また、強制移住を要求されたネイティブ・アメリカンは「自然」以下でした。アメリカの国立公園には次のような事例があります。

  • 日本でも大変有名なグランド・キャニオン国立公園には、先住民の住居跡や岩に刻まれた彫刻が多数存在する。4800以上もの考古学的な資料が先住民がかつて生活したことを示している
  • しかし、現在この国立公園には部族の人たとの居住権や自治権は認められていない。自然保護を主張する白人知識人が尊重したのは、自然の美しさだけであった
  • 同様の事例は、ヨセミテ国立公園やメサ・ベルデ国立公園などがある

このように、ネイティブ・アメリカンは入場料を払わないと、自らの先祖が暮らしてきた土地にすら入ることができないといった状況があるのです。



2-3:③分割と同化

分割と同化の時期に特徴的なのは、「一般土地割当法(ドーズ法)」「寄宿学校」です。それぞれを説明します。

2-3-1: 一般土地割当法

1887年に施行された一般土地割当法(ドーズ法)とは、

  • 部族が所有した居留地の土地を細分化して、ネイティブ・アメリカンと非ネイティブ・アメリカンの個人に割り当てることで、部族の土地を減らす目的で実施されたもの
  • 基板の目のように土地を区切り、一面をネイティブ・アメリカンに与え、その周りを非ネイティブ・アメリカンに割り当てることで、共同体の生活を破壊した
  • 余剰と判断された土地は、白人にすべて配分されたため、ネイティブ・アメリカンの土地は激減した
  • 割り当られた土地は課税の対象となったため、税金から逃れるために、二束三文で白人に売り渡すネイティブ・アメリカンが多かった

部族政府管轄の土地は1881年の1億5560万エーカー(1エーカー=4046.9平方メートル)から、1934年までに5220万エーカーへと激減しました。

つまり、1881年から1934年の間に1億エーカー以上の土地を失ったことを意味しています。

2-3-2: 寄宿学校

寄宿学校とは、

インディアン局が子どもを部族社会から強制的に引き離し(ほとんど拉致)、主流社会に同化するために設けた学校

です。

寄宿学校の目的は次の二つです。

  1. ネイティブ・アメリカンとして生き方を完全に否定すること。キリスト教に改宗させた上で「文明化」を図り、「野蛮」な文化と信仰を切り捨てること
  2. 部族意識を低下させること。異なる部族員が出会う場を提供することで、混血児を増やしていけば、血筋の濃さで判断される部族員の資格をより難しいものにする

1909年までに居留地内部に157個の、居留地外部に25個の寄宿学校が設立され、合計で10万人以上の子どもが同化政策を受けました。

寄宿学校のような同化政策では、

  • アメリカ社会の一部になることを強制したが、移民のように平等な権利を与えることは否定する
  • その結果、自らの土地でありながら、アメリカ社会の最下層に組み込まれることになる
  • また、寄宿学校を卒業後に居留地に戻るが、言語や伝統を失い、部族社会に馴染めず、行き場をなくした若者が増加した
  • 精神的なトラウマに苦しんだ彼らは、アルコール依存症や家庭内暴力といった負の連鎖を生む大きな原因となった

という悪名高いものです。

寄宿学校の一旦は、映画「裸足の1500マイル」から伺うことができます。オーストラリアが舞台ですが、同化政策という点で共通する箇所がいくつもあります。ぜひ観てみてください。

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2-4:④再組織

部族社会の崩壊に歯止めをかけようと、あらたな政策が展開されたのが再組織期です。

具体的には、1934年はそれぞれに部族に自治政府と部族憲法を促した「インディアン再組織法(Indian Reorganization Act)」が制定されました。

「インディアン再組織法」の要点は次の通りです。

  1. 部族政府の権限を認めて、部族政府と連邦政府の相互関係を回復する
  2. 土地の分割と個人所有を廃止する(ドース法の廃止)
  3. 経済開発への支援をする
  4. インディアン局にネイティブ・アメリカンの職員を増やす
  5. 文化、工芸品の作製、言語の継承を支援する

「インディアン再組織法」は当時存在した266部族のうち、189部族が受け入れました。それはドース法による土地の喪失を食い止めたこと、拉致同然の寄宿学校を禁止したためでした。

ドース法よりも部族自治権を認めるとはいえ、居留地は連邦政府の信託地である点や部族の政治経済がインディアン局の管理下にある点には全く変わりがなかったです。



2-5:⑤終結

「インディアン再組織法」によって同化政策は終了したと見方がされますが、ネイティブ・アメリカンは連邦政府の強権に再度振り回させることになります。それが終結期です。

終結期には「インディアン再組織法」による先住民社会の改善には限界があるため、先住民の伝統を捨てて、アメリカ社会に同化することが大事だという姿勢が連邦政府で取られるようになります。

それが1953年から連邦政府によって実施された「インディアン終結政策(Termination Policy)」です。

インディアン終結政策の要点

  • 部族政府の自立促進を大義名分とした政策
  • 連邦政府の支援を打ち切り、居留地を部族員で個人所有にする。それによって、ネイティブ・アメリカンを「アメリカ人」として自立させることを目標とした
  • 見返りとして、連邦政府は職業訓練や道路・水道などのインフラ整備を約束した

インディアン終結政策は部族政府の自立促進を大義名分としていますが、実際は部族社会を解体して、部族承認を奪い、先住民としての権利を失わせることを目標としていました。

実際、この政策のターゲットとなったカリフォルニア、ユタ、ネブラスカ、オレゴン、オクラホマの部族は、

  • 居留地の土地を部族員で配分させられた
  • 個人所有の土地は連邦政府の信託から外れたため、州税の対象となった
  • その上で、約束された職業訓練はなく、資金難から州税を払えずに、やむなく土地を売却する者が多かった

です。

その結果、1950年代から1960年代にかけて、109部族の承認が取り消されて、1万2500人のネイティブ・アメリカンが先住民としての資格を失いました。

2-6:⑥自決

1960年代から1970年代にかけて、ネイティブ・アメリカンの文化的アイデンティティや民族自決権の獲得をするための運動が盛んになります。

これは「汎インディアン運動(レッド・パワー運動)」と呼ばれるものです。この運動の中心となったのは「インディアン転住プログラム」で豊かな暮らしを求めて片道切符の長距離バスに乗り、都市部へと旅だったネイティブ・アメリカンです。

  • 「転住プログラム」とは先住民の窮状を救うべく、インディアン局が都市部における職業訓練や就職を斡旋したもの
  • 実は先住民人口の約半分(45%)は、都市部で生活を営んでいる

直接行動等の活動は結果を結び、1975年には「インディアン自決・教育援助法(Indian Self-Determination and Education Assistance Act)」が制定されます。この法によってインディアン局による管理と支配に歯止めがかけられました。

インディアン自決・教育援助法では、

  • 部族政府は内務省や保健省と直接交渉ができるようになる
  • 公共医療や住宅問題を部族政府の主導で確立する権利が与えられた
  • 100以上の部族承認を取り消した終結政策の廃止、取り消された部族承認の回復への道が開けた

といった結果をもたらしました。

なかでも重要なのは、部族政府が条件付きとはいえ自治権を獲得したことです。ネイティブ・アメリカンは国家を構成する民族集団ではなく、国家対国家の関係であることが認められたのです。

その後の状況については、次の記事を参照ください。

→【ネイティブアメリカンの現在】統計情報や文化の問題をわかりやすく解説

部族政府が居留地の行政、立法、司法を統括するとはいえど、居留地は連邦政府の信託下におかれるという曖昧な状況には変わりありません。最後に、居留地について解説します。

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3章:ネイティブ・アメリカンと居留地

3章ではネイティブ・アメリカンの居留地について簡潔に解説します。

3-1: ネイティブ・アメリカンの居留地の歴史

そもそも、ネイティブ・アメリカンの「居留地(reservation)」とは、

17世紀のアメリカ北東部の入植地の一部を、ネイティブ・アメリカンを保留する目的で設置されたもの

です。

侵略によって土地を失ったネイティブ・アメリカンや、一時的に彼らを収容する役割を担った施設がそのまま居留地になったものもあります。

居留地を設立する際、連邦政府はもともと部族政府とのあいだに「条約」を結び、部族が所有できる土地を規定していました。しかし、連邦政府は一方的に条約を破り、保証されていた土地の一部しか部族は確保していません。

ネイティブ・アメリカンの保有地の減少(鎌田遵『ネイティブ・アメリカン』25頁から引用)

今日まで条約の履行を部族政府は訴えてきていますが、連邦政府がネイティブ・アメリカンの尊厳や政治的権利を守る日は来るのでしょうか?

3-2: ネイティブ・アメリカンの居留地における自治権

部族政府の自治権は居留地内に限ります。つまり、居留地を一歩でもでた瞬間、部族警察や部族政府の権限はありません。

とはいえ、実情はここまでシンプルではありません。部族政府の権限は非常に複雑ですから、ここでは要点をまとめます。

  • 居留地内部での部族法は認められており、民事に関する司法権は概ね部族政府に委ねられる
  • 一方で、殺人や傷害等の凶悪犯罪は、連邦法が適用される。つまり、刑事事件は連邦法である(いくつかの州では州警察が居留地での司法権をもつ)
  • 部族政府は基本的に州政府とではなく、連邦政府との直接的な関係にある
  • 居留地は連邦政府の信託地であるため、ネイティブ・アメリカンは連邦政府に税金を払うが、州政府に対する税金は免除されている

こういった意味で、部族政府は条件付きの自治権をもちます。この曖昧な状況はしばしば「国内の従属国家」という言葉によって説明されます。

このような限界があるとはいえど、部族の自治権が与える法的・政治的権利は大変重要なものです。この権利を獲得するまでに上述の歴史があったことを考えると、居留地における自治権は極めて重大な進歩です。

居留地に関して、さらに詳しくは次の記事を参照ください。

→【インディアン居留地とは】歴史・現在をわかりやすく解説

また、居留地におけるインディアンカジノについてはこちらの記事があります。

→【インディアンカジノとは】概要・事例・問題点をわかりやすく解説

4章:ネイティブ・アメリカンの学び方

ネイティブ・アメリカンに関する理解を深めることはできましたか?

ここで紹介した内容はあくまでのネイティブ・アメリカンの知るためのきっかけにすぎません。あなたがさらに学びを深めていきたいと思うならば、これから紹介する映画・書籍をぜひ参考にしてみてください。

まず、気軽に学べる教材として映画があります。次の記事ではネイティブ・アメリカンと映画の関係をまとめていますので、ぜひ紹介した映画をみてみてください。

ネイティブ・アメリカンおすすめ映画
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以下はおすすめの書籍になります。

オススメ書籍

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この本はネイティブ・アメリカンの入門書としてとても分かりやすいです。歴史から現在の状況までカバーしており、初めて読む本としては最適です。この記事でも多く参照していますが、詳細な議論はこの本を当たってください。

オススメ度★★★鎌田遵『ぼくはアメリカを学んだ』 (岩波ジュニア新書)

著者である鎌田遵の体験に基づいた旅の記録です。17歳でユーラシア大陸を横断したときの記録から先住民居留地における壮絶な生活まで書かれています。半日あれば読めることができます。

オススメ度★★阿部 珠理 (著/編集)『アメリカ先住民を知るための62章』(明石書店)

明石書店の「知るため」シリーズも初学者におすすめです。学術的な議論が深掘りされているわけではありませんが、ネイティブ・アメリカンの全体像を掴むためには有益です。

オススメ度★★★James Clifford『Returns: Becoming Indigenous in the Twenty-First Century』(Harvard University Press)

21世紀に先住民になることは何を意味するのか?持続と変成を伴う歴史をもつ先住民のこれからを考えたい方におすすめ。世界的に有名なJames Cliffordの議論は極めて刺激的です。

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まとめ

この記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • ネイティブ・アメリカンには、大きく8つの文化圏があり、その人口は1960年代後半から増加している
  • 部族員であることを証明するために血筋の濃さだけに頼られているが、歴史的・文化的なつながりを無視することになりかねないという問題がある
  • ネイティブ・アメリカンの歴史は大きく6つの段階にわけることができる
  • 部族の自治権が与える法的・政治的権利は大変重要なもの

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