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【アボリジニの言語とは】一覧・特徴から歴史・現在まで徹底解説

アボリジニの言語とは

アボリジニの言語は大きく二つに分類され、大陸の大部分におけるパマ・ニュンガン語群と、北部のアーネムランドとキンバリー地方における非パマ・ニュンガン語群があります。

アボリジニの言語に関する研究は多いわけではありませんが、日本語で読める優れた研究がいくつかあります。

言語を通してのみ人間は思考できることを考えると、言語は人間の世界観を理解するもっとも有効な手段といえます。それはアボリジニの言語に関しても同様です。

そこで、この記事では、

  • アボリジニの言語一覧
  • アボリジニの言語の特徴
  • アボリジニの言語の歴史と現在

をそれぞれ解説していきます。

好きな章から読み進めてください。

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1章:アボリジニの言語とは

まず、1章ではアボリジニの言語の「一覧」「特徴」を説明します。「歴史と現在」に関心のある方は、2章から読み進めてください。

1-1: アボリジニの言語一覧

まず冒頭で説明したように、アボリジニの言語は次の大きく二つに分類されます。

  • 大陸の大部分におけるパマ・ニュンガン語群
  • 北西部のアーネムランドとキンバリー地方における非パマ・ニュンガン語群

これだけではわかかりにくと思いますので、以下の図を確認してみてください。

アボリジニの言語とその分布(藤川(編)『オーストラリアの歴史』有斐閣, 18頁より引用)

この図から大陸の大部分がパマ・ニュンガン語群で占められており、北西部の一部の地域で異なる言語が使用されることがわかると思います。

ここでは河崎靖の「アボリジニの言語」から、それぞれ語群を詳しく解説していきます。(*ドイツ文学研究』: 報告 (64), 1-43, 2019, 京都大学人間・環境学研究科ドイツ語部会に記載の学術論文

1-1-1: 非パマ・ニュンガン語群

まず、非パマ・ニュンガン語群とは、

  • 西オーストラリア州の最北部と北部準州にある言語
  • 接頭辞を頻繁に使う特徴がある
  • 通常、23の語群にわけることができる

ものです。

そして、地域別に分類すると、以下のような一覧表にまとめることができます。個別の語派を覚える必要はありませんが、一覧表からアボリジニ言語の多様性を感じて取ってみてください。

アーネムランド(大陸北部)

  1. ティウィ(Tiwian)語派
  2. イワイジャ(Yiwaidjan)語派
  3. ガグジュ(Gagudjuan)語派
  4. ナカラ(Nakkaran)語派
  5. グンウィング(Ganwinyguan)語派
  6. ブララ(Burarran)語派
  7. ヌングブユ(Nunggubuyan)語派
  8. エニンディリャグワ(Enindhilyagwan)語派
  9. マラ(Maran)語派
  10. マンガライ(Mangarayan)語派
  11. ヤニュワ(Yanyuwan)語派
  12. マンゲル(Mangerrian)語派
  13. ガラワ語(Garawa)語派

北部準州(Northern Territory)

  1. ミンギ(Minginan)語派
  2. ララギヤ(Laragiyan)語派
  3. グンガラガン(Gungaraganyan)語派
  4. ワライ(Warayan)語派
  5. デイリー(Daly)語派
  6. ジャミンジュング(Djamindjungan)語派

キンバリー地方(大陸北部)

  1. ジェラガン(Djeragan)語派
  2. ブヌバ(Bunuban)語派
  3. ウォロラ(Worrorran)語派
  4. ニュルニュル語派(Nyulnyulan)

以上、23の語群です。さらに、これら語群から「方言」などの下位分類がされていくことを、狭い地域のなかに驚くべき多様性があることがわかります。

1-1-2: パマ・ニュンガン語群

次に、大陸の大部分を占めるパマ・ニュンガン語群とは、

  • 総数は約175にのぼる語群
  • お互いに似たような特徴をもつが、それでもいくつかの下位分類がされる

ものです。

ここでも、パマ・ニュンガン語群の下位分類を一覧で紹介します。当然ですが、専門家を目指す方以外、覚える必要はありません。

  • 南西語派・・・大陸の南西部 ピチャンチャチャラ語(Pitjantjatjara)・ジャル語(Djaru)・グリンジ語など
  • アランダ語派・・・アランダ語(Aranda)など
  • バークリー台地・西クィーンズランド語派・・・アリャワラ語(Alyawarra)など
  • 南東語派・・・ディヤリ語(Dieri)など
  • パマ・マリック語派・・・ウィク・ムンカン語(Wik-Munkan)など

非パマ・ニュンガン語群とパマ・ニュンガン語群を一つの語族として捉える見解もあるそうですが、実際には印欧語学の歴史・比較言語学のアプローチ(比較法)をどこまで適用できるかは議論のわかれるところです。



1-2: アボリジニの言語の特徴

さて、これまでアボリジニ言語の一覧表を提示してきましたが、ここからは「言語の特徴」「社会的特徴」に迫っていきます。

1-2-1: 言語の特徴

まず、言語としての特徴として、母音はi, a, uの3つで、子音はb, g, d, rd, dy, m, ng, n, rn, ny, l, rl, ly, w, yの15あることを挙げることができます。

そして、日本語の観点でいえば、特筆するべき点がいくつかあります。岡村徹の「オーストラリアの言語と社会」によると、

  • 閉鎖音に関して、有声音と無声音の区別がないこと(ex: 「兄」という用語の発音に関していえば「baba」でも「papa」でも、そこに違いはない)
  • 日本語母語話者には、苦手な鼻音の対立がある(ex: / manan /「取る(現在形)」と/ marnan /「話す(現在形)」の違い)
  • 巻き舌の /rr/と、反り舌で発音する/r/の二つ区別は、日本語母語話者にとってとても困難である

という特徴があります。

1-2-2: 社会的特徴

また、社会的な特徴の一つとして、アボリジニ社会では一定期間の間、死者の名が伏せられることがあります。

なぜならば、死者の名を口にすることは祖先の世界への死者の魂の旅を妨げるだけでなく、死者の魂が現世に戻ってくると信じられているからです。

言語の観点でいえば、

  • 死者の名を伏せるだけでなく、同じ単語や類似した単語の使用も禁じられる
  • ある単語の使用が禁じられる期間は、別の単語で禁じられた事物・事象が説明される

といった特徴があります。

このような言語使用をめぐる慣習は、アボリジニ社会の特徴的なものの一つです。

いったん、これまでをまとめます。

1章のまとめ
  • アボリジニの言語は①北西部のアーネムランドとキンバリー地方における非パマ・ニュンガン語群と、②大陸の大部分におけるパマ・ニュンガン語群に大きく分類される
  • 日本語母語話者にとって困難な発音の区別や、言語使用に関して独自の慣習がある

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2章:アボリジニの言語:歴史と現在

2章ではアボリジニ言語の「歴史」と「現在」を簡潔に紹介してきます。

要点からいえば、以下のとおりです。

  • アボリジニの言語に対する歴史的な抑圧があった
  • その結果、アボリジニの言語話者は減少しているだけでなく、多くの言語が消滅した

2-1: アボリジニの言語の歴史

まずは、アボリジニ言語の歴史から解説してきます。

2-1-1: 「アボリジニ」の意味

そもそも、「アボリジニ」とは何を意味するのでしょうか?

上述した河崎によると、「アボリジニ」という用語は、

  • もともとラテン語の「最初から」を意味する「aborigine」 に由来する
  • 「aborigine」は 「ab(〜から)」と「 origine(起源)」から構成される

ものです。

もともとは、古代ローマ人が中部イタリアにおける先住民を指す用語でしたが、英語では意味がより一般化して「原住民一般または土着の動植物」を指すようになりました。

そして、この用語がオーストラリアの先住民に当てられて、彼らは「アボリジニ」と呼ばれるようなったのです。

現在オーストラリアでは「アボリジニ」が差別的という指摘があるため、公文章などで使用されなくなってきています。



2-1-2: 入植当時のアボリジニの言語

さて、オーストラリア大陸に白人が入植した当時の言語状況はどのようなものだったのでしょうか?

アボリジニ歴史に関する記事で紹介したように、白人が入植した当時は、

  • 白人入植当時の人口は約30万人〜100万人いたと想定される(決定的な判断は困難)
  • 500ほどの言語グループに分かれていた
  • 親族を基盤とした集団を形成し、狩猟採集しながら生活を営んでいた

といいます。

とはいえど、上述したように印欧語族に属する諸言語は多くて数千年の歴史であるのに対しして、万年単位の長い歴史があるアボリジニ言語のルーツを正確に理解するは大変困難です。

2-1-3: 同化政策

さて、白人入植後、アボリジニは悲劇的な歴史を歩むことになります。(→アボリジニの歴史に関して、詳しくはこちら

なかでも1900年前半から1970年代までおこなわれた、親子強制隔離政策はとても悪名高いです。

親子強制隔離政策の概要

  • 混血のアボリジニを親元から強制的に隔離して、寄宿舎や居留地内の施設に送り込む
  • それらの施設ではアボリジニの価値観や言語を否定して、キリスト教の思想がたたき込まれた

言語の観点でいえば、同化政策によって親世代からの言語の継承が阻まれることになりました。このような西洋中心主義的な考えは、現在否定されるものの、負の遺産として残っています。

世界の先住民は似たような経験をしています。以下の記事では、「ネイティブ・アメリカン」と「イヌイット」のケースを扱っています。

2-2: アボリジニの言語の消滅

オーストラリアでは1987年に「言語に関する国家政策」が策定されると、初めてアボリジニ言語の維持と発展が国家単位で取り組まれることになります。

その結果として、アボリジニ言語を維持をするための助成金といった言語復興の動きが活発になってきました。

とはいえど、250ある多様なアボリジニ言語は恐るべき早さで消滅しており、今後長く維持されるような言語ないといいます。

取り返しのつかない状況をつくってしまった白人入植国家は、今後どのようにアボリジニの言語の復興に関わっていくのでしょうか?

2章のまとめ
  • アボリジニの言語に対する歴史的な抑圧があった
  • その結果、アボリジニの言語話者は減少しているだけでなく、多くの言語が消滅した

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3章:アボリジニの言語を学ぶためのおすすめ本

アボリジニの言語の概観をつかむことはできましたか?

アボリジニの言語だけを学ぶとしても、植民地主義の影響を無視できません。ですから、オーストラリア国家との関係において、アボリジニ言語に関する理解を深めていってください。

おすすめ本

オススメ度★★★ 藤川降男(編)『オーストラリアの歴史』(有斐閣)

オーストラリア史が簡潔にまとめられた書物です。アボリジニの言語を知るには、オーストラリア史の前提知識が必要ですから、この書物から学んでみてください。アボリジニに関する記述も多くあります。

オススメ度★★★ 亀井孝・河野六郎・千野栄一 (編)『言語学大辞典』第1巻(三省堂)

この書物に記載される「オーストラリア原住民語」(角田)は、アボリジニ言語の特徴を極めて詳細に示しています。アボリジニ言語に関心ある方は触れたい本です。

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オススメ度★★ 河崎靖「アボリジニの言語」ドイツ文学研究』: 報告 (64), 1-43, 2019, 京都大学人間・環境学研究科ドイツ語部会

こちらはアボリジニ言語に関する論文です。この論文では、アボリジニ言語が概説されるだけでなく、その特徴をわかりやすく解説しています。本記事でも参照しましたので、ぜひ読んでみてください。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • アボリジニの言語は①北西部のアーネムランドとキンバリー地方における非パマ・ニュンガン語群と、②大陸の大部分におけるパマ・ニュンガン語群に大きく分類される
  • アボリジニの言語に対する歴史的な抑圧があった
  • その結果、アボリジニの言語話者は減少しているだけでなく、多くの言語が消滅した

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