民主主義(democracy)とは、政治を運営するのは「国民」であると考え、国民の声によって国家を運営することを重視する政治思想のことです。
国民によって国家の政策やルール、制度が決められるために、選挙制度や議院内閣制、政党政治といった仕組みが発明・導入されてきました。
誰もが学校で習い、当たり前のような耳にする言葉であることから、
「民主主義は本当に良い制度なのか?」
「民主主義は機能しているのか?」
「民主主義より良い仕組みはないのか?」
「なぜ今のような民主主義の仕組みができたのか?」
など、さまざまな疑問が出てくることもあるのではないかと思います。
そこでこの記事では、
- 民主主義とは何か、どのような仕組みなのか
- 民主主義とは多数決の原理なのか
- 日本の民主主義はどのような仕組みなのか
- 民主主義はどのようにして、どのような仕組みが作られたのか
などを詳しく説明していきます。
この記事を読めば、歴史上出てくるさまざまな問題に対して、その時代の国民、政治家、思想家が戦う中で生み出されてきたのが、現代の民主主義であることが分かるはずです。
知りたいところから読んで、政治への理解を深めてみてください。
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1章:民主主義とは何か?
もう一度確認しましょう。
民主主義(democracy)とは、政治を運営するのは「国民」であるとする政治制度や思想のことです。
これは非常に簡単な説明ですが、最も本質的なのが上記の点です。
1-1:民主主義の特徴
民主主義について、まずは特徴をまとめましょう。
- 民主主義とは、国民(民衆)が政治を運営する政治体制
- しかし、多数の国民が直接政治を運営することは不可能であり、混乱を招くため、代表者を選んで代わりに意見を主張してもらうのが現代の仕組み(間接民主主義/議会制民主主義)
- その代表者を選ぶための制度が選挙制度で、公平に選べるように小選挙区制や比例代表制といった仕組みも導入されている
- さらに、代表者に権力が集中し独裁させないために、権力が分散する仕組みが作られ、現代ではそれが三権分立(立法、行政、司法)として成立している
- 民主主義には、「民衆が愚かな選択をしてしまう(衆愚政治)」「民意が正しく反映されず、特定の層の利益に偏る」「少数者の意見が軽視されたり、重視されたりする」「仕組みを悪用して独裁的に権力をふるう支配者が出る可能性もある」といった問題点もある
このように、民主主義とは、「特定の支配者に権力を集中させない」「できるだけ平等、公平に民衆の意見を政治に反映させる」という問題意識から作られた仕組みなのです。
なぜなら、特定の個人に権力が集中すれば、その個人(支配者)によって他の人々(民衆)の自由が奪われてしまうからです。
民主主義政治の具体的な仕組みの内容は、3章で説明します。
ところで、国民が政治を運営するという民主主義は、私たちにとってはあって当たり前のものであり、それ以外の政治制度など考えにくいものです。
逆に言えば、他の政治制度のイメージが湧かないことが、民主主義という制度を分かりにくくしています。
そこで、他の政治制度と比較して考えてみましょう。
1-2:民主主義の対義語
あなたは、特定の個人や一部のエリートによって支配される国と、自分たちで政治を運営できる国、どっちが良いですか?
古代ギリシャの哲学者アリストテレスは『政治学』で、民主政とそれ以外の政治制度を以下のように整理しました。
良いもの | 悪いもの | |
一人の支配 | 王政 | 僭主政 |
少数者による支配 | 貴族政 | 寡頭政 |
多数者による支配 | 国制 | 民主政 |
1-2-1:王政・僭主政とは
王政というのは、王つまり一人の絶対的な権力者によって国家が支配され、政治が運営されることです。
古代や中世の時代に多く存在し、そこでは国民の自由はなく国民は支配されるのみ。
そのため、王の人間的な資質によって国家が左右され、国民の運命が決まります。
王が国民のことを考えてくれる「良い王」である場合は「王政」ですが、王が国民のことを考えず搾取することしか考えていないものを「僭主政」と言います。
この「王政」「僭主政」は、国民の意思がまったく政治に反映されず、国民が政治から最も遠いという意味で民主主義の対義語です。
1-2-2:貴族政・寡頭政とは
貴族政というのは、少数の貴族(支配者・エリート)によって国家が支配されることです。
これも支配者層である貴族が国民のことを考えて政治をするなら「貴族政」ですが、支配者たちが国民を搾取することしか考えていなければ、それは「寡頭政」です。
アリストテレスは、寡頭政と民主政について以下のように考えました。
- 寡頭政…富裕層の生まれの良い人が少数で支配すること
- 民主政…自由人の生まれで財産がない人が多数で支配する
古代ギリシャの民主政は、富裕な少数が支配する寡頭政に対して、自由人による支配を唱えたものでした。
1-2-3:民主政・国制とは
興味深いのは、アリストテレスが民主政を基本的に「悪いもの」と考えていたということです。
なぜなら、民衆の決定にすべてをゆだねる仕組みにしてしまうと、民衆が独裁者となって富裕層から財産を奪ったり、専制的な政治を行う可能性があるからです(多数の専制)。
そこで、アリストテレスは最も良い政治体制として「国制」を考えました。
これは、民衆に政治を委ねすぎず、また少数の支配者層に政治を委ねすぎない、両方の政治体制の混合物です。
古代の時代から、民主政の良い面と悪い面が知られていたのはすごいことですよね。
しかし、当時考えられていた民主政は、
- 古代ギリシャのような小さな都市国家であったこと
- 奴隷制に支えられ、一部の自由人しか政治に参加できなかったこと
という現代とは異なる状況で実現されていたものでした。
そのため、その後民主政は優れた政治体制とは考えられず、長い間社会で実現されることがありませんでした。
1-3:民主主義と多数決の原理
ところで、民主主義について「民主主義って多数決の原理のことでしょう?」と思っている方も多いのではないかと思います。
確かに、民主主義は多数者(民衆)による支配ですので、多数の人々による決定→多数決の側面はあります。
しかし、単なる多数決では少数派の意見が犠牲になってしまいます。
多数派の意見が常に通り、少数派の意見が常に通らないのであれば、多数派のための国家になってしまいます。
それに、多様性がなければ豊かな国になりません。
そこで、現代の多くの国が採用している仕組みは、少数派の意見も尊重できる「議会制民主主義」で「政党政治」になっているのです。
- 議会制…民衆が自分たちの意見を代表してくれる人を選び、意思を政治に反映してもらう仕組み
- 政党政治…代表者が個々人で話し合うのではなく、政党に所属し政党の中で意見を集約して政治を運営する仕組み
単なる多数決ではなく、議会制や政党政治という仕組みを採用することで、少数派の意見も犠牲にしない民主主義の仕組みが作られているのです。
それでは、ここまでをいったんまとめます。
- 民主主義とは、国民が国家を支配し政治参加できる仕組み
- 民主主義は、古代や中世では一般的な体制ではなく、王による支配が一般的だった
- 単なる民主主義では、多数決の原理で少数派が犠牲になるため、議会制民主主義や政党政治という形で、少数派が犠牲にならない仕組みが考えられた
2章では民主主義の歴史について、3章では民主主義の具体的な仕組みについて解説しますが、実際に書籍を手に取って読んで学ぶこともおすすめします。
以下の本は、とてもやさしく民主主義が解説されているので、まずは民主主義の概要を知りたい方にはとてもおすすめです。
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2章:民主主義誕生と発展の歴史
民主主義について理解するためには、簡単に歴史を知っておくことも大事です。
なぜなら、民主主義は、民衆や思想家、政治家立ちが現実の問題に立ち向かう中で、少しずつ発展させていったものだからです。
現在の民主主義が不完全なものに見える方も、歴史を学べば、民主主義がまだ「発展途上」のものであることが理解できるでしょう。
民主主義は、
- 古代ギリシャ
- フランス革命
- アメリカ建国
- イギリスの議会制
などで大きく発展し、現在の世界中の国家の民主主義の原型が作られたのです。
2-1:古代ギリシャ:民主主義の誕生
1章でも触れたように、民主主義の原型は古代ギリシャで生まれました。
しかし、この時代、民主主義は例外的な政治体制で、多くの国家は一人の支配者(王)が国家を動かし、民衆を支配していました。
その代表例はギリシャに200万人の軍勢を率いて攻め入ったペルシャの大王です。
2-1-1:恐怖による支配
ペルシャにおいて、大王が民衆を動かす力は「恐怖」です。
つまり「従わないと自分や家族がどんな目に合うか分からない」という心理に訴えかけて、人を支配し国家を動かしていたのです。
なぜ王は民衆を恐怖によって動かそうとしていたのでしょうか?
それは、恐怖で民衆を縛っておかなければ、勝手に行動して国家が混乱すると考えられたからです。
ペルシャのような国家では、大王の支配を実行に移すための官僚制が発展しました。
2-1-2:法による支配
それに対して、ギリシャの民衆は「法」に服従しており、法の下では平等だと考えられていました。
「法」に服従しているため、恐怖による支配がなくても自分勝手に行動することはないし、指導者すらも法に従って行動するため、自由を奪われることもありません。
しかし、法によって支配される仕組みでは、政治の参加者や参加方法、行政組織の在り方、権力が集中しないしくみなどを複雑に作らなければなりません。
ペルシャのように大王―官僚制だけの組織というわけにはいかないのです。
そこで、生まれたのが民主政でした。
古代ギリシャの民主政は、
- 奴隷たちに参政権はなく、参政権があるのは一部の自由人のみだったため、自由人は尊敬される立場だった
- 自由人は名誉の獲得に熱心で、政治や戦闘への参加に非常に積極的だった
- 直接民主制だったため、貧しい自由人には政治参加のための日当が支払われた
という特徴がありました。
しかし、ギリシャの民主政はポリスという小さな都市国家だったから成立したもので、ギリシャ世界の混乱やマケドニアによる支配などから、民主政は消滅しました。
2-2:フランス革命による間接民主主義の誕生
現代の民主主義は、ほとんどの国家・地域で間接民主主義、つまり代表者(議員)を選んで、自分の代わりに政治活動をしてもらう仕組みが実施されています。
この間接民主主義が誕生したのは、フランス革命がきっかけでした。
2-2-1:社会契約思想の誕生
とはいえ、フランス革命でいきなり間接民主主義の思想が生まれたわけではありません。
その前に、いくつかの準備がありました。
■マグナカルタ(大憲章)
イギリスでは、国王と封建領主の間で、支配服従関係を定めたマグナカルタ(大憲章/1215)が結ばれました。
これは、国王が「あなたたち封建領主の権利は一部認めるから、その代わり私の支配を受け入れてね」という契約です。
つまり、王による単なる恐怖支配ではなく、契約関係による支配がはじめて生まれたのがマグナカルタです。
マグナカルタは、その後も支配関係を契約関係にした文書として、時代を超えてあがめられました。
ここでのポイントは、マグナカルタで認められたのが民衆ではなく領主に対する特権であったということです。
つまり、この時点ではまだ、すべての人の権利を認める本当の民主主義は生まれていないのです。
「イギリスのものが、なぜフランス革命や啓蒙思想に関係あるの?」
と思われるかもしれませんが、これが実は、間接的に影響があったのです。
■社会契約思想
16世紀には、ヨーロッパで絶対主義がさかんになります。
絶対主義とは、王が契約関係で決められた限定的な権力を超えて、絶対的・無制限な権力を行使しようとした思想。
絶対主義に対して生まれたのが、「人間には、生まれながらにして権利があり、それは奪われてはならないものなのだ」という思想です。
社会契約思想にもさまざまなものがありましたが、いずれもすべての人に、普遍的に、平等に権利があるのだ、と主張した点は共通しています。
つまり、マグナカルタで認められた「一部の人への特権」から、「すべての人への普遍的権利」へ法の支配を拡張させようと試みられたのです。
そこで生まれたのが、国家(権力)というものは、人々の平等な同意によって生まれたものなのだ、という「社会契約思想」です。
こうしてヨーロッパでは、自由、権利、法の支配といった思想が充実するようになり、それが社会で実現されるベースを作っていったのです。
※社会契約思想について、詳しくは以下の記事で解説しています。
※社会契約説の重要思想家であるジョン・ロックの政治思想について、詳しくは以下の記事で解説しています。
2-2:フランス革命
フランス革命は、一言で言うと「すべての人の自由で平等な権利を認め、実現させた」出来事です。
フランスではもともと、絶対君主の支配(アンシャンレジーム)が続いていました。
国民は聖職者、貴族、平民に分けられており、平民には税金を負担させ、聖職者と貴族は税金免除&年金支給という特権がある身分制が制度化されていました。
思想的には社会契約思想が広がっていたのに、現実のフランス社会は中世的で、平民の不満は蓄積される一方です。
それがエネルギーになって起こったのがフランス革命です。
フランス革命についてここで詳しく解説はしませんが、フランス革命では、
- 身分制の議会(三部会)→平民によって発足された国民議会になる
- 特権を廃止させる
- 「人権宣言」によって人々が生まれながらに持つ権利(自然権)が政治の仕組みになる
- 国民主権、つまり国民が国家を支配するのであり、国家の最高ルールである憲法を制定できる
といったことが実現されました。
その後、フランスは革命・クーデターによって政治的に混乱しましたが、民主主義の前提である「国民主権」「国民がみな平等な権利を持つ」といった思想が実現された点で、歴史的な進歩だったのです。
2-3:アメリカの建国
民主主義は、アメリカの建国によっても発展させられました。
アメリカにおいては、民主主義を実現する具体的な仕組みについて考えられ、それがアメリカの大統領制として実現します。
そもそも、アメリカは自由主義として建国されました。自由主義というのは、簡単に言えば「個人の自由を他者や権力によって規制されない」という思想です。
なぜなら、アメリカはヨーロッパ的な王や領主による支配がもともとなく、自由を求める人々によって建国されたからです。
2-3-1:連邦政府の必要性
そのため、アメリカ建国にあたっても「連邦政府はどこまで権力を持つべきなのか」「なぜ連邦政府が必要なのか」ということが課題になりました。
そこで、アメリカ合衆国憲法の批准を推進するために書かれた『ザ・フェデラリスト』では、連邦政府の必要性について、
- 単なる民主主義では多数派によって政治が動かされてしまう(多数派の専制)
- そのため、それを抑制する権力(連邦政府)が必要なのだ
と主張されました。
ここまで読んだ方は、なぜ多数派によって政治が動かされてしまうのがいけないのか分かると思います。
それは少数派の意見が犠牲になり、少数派が政治参加できないだけでなく、国家から多様性が失われ、経済、文化、社会などさまざまな面で発展を阻害するからです。
単なる民主主義では、特定の利益を求める多数派が派閥を作り、自分たちに有利に政治を動かすようになる可能性があります。
とはいえ派閥そのものがダメなわけではありません。派閥が作られることも自由な政治活動として認められなければならないものです。
つまりここで、政治活動の自由を認めつつ、多数派・派閥によって政治が支配されない仕組みが求められたのです。
2-3-2:三権分立の実現
こうして考えられたのが、「三権分立」です。
自由に政治活動できるようにしつつ、しかも権力が一部に偏らない。そのための仕組みとして「立法」「行政」「司法」に権力を分け、それぞれが均衡するようにしたのです。
こうして、特定の権力が政治を支配することができなくしたのです。
しかも、この仕組みの下では個人は自由に政治活動することができるため、自由の抑制も最小限です。
2-3-3:大統領制
アメリカの政治体制は大統領制ですが、大統領は行政(実際の政治運営)のトップです。
大統領がもし議会によって選ばれるようになると、議会によって行政まで支配される余地が生まれます。
そのため、アメリカでは大統領は国民による投票によって直接選ばれるようになっています。
※アメリカの政治について、以下の本では分かりやすく解説されていて面白いです。
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2-4:イギリスの議会制
現代の民主主義の体制は、大統領制と議会制の2つの体制が主流です。
それぞれ、以下のような違いがあります。
- 大統領制…三権分立に基づき、権力が分散させられ特定の権力が肥大化しない
- 議会制…行政のトップが議会によって任命されるため、権力が集中しがちな一方で、安定した政治運営が可能
議会制の代表はイギリスです。
イギリスの思想家であるウォルター・バジョットは、「大統領制は権力が分散するため、安定した政治運営ができない。議会制は行政のトップが法律が必要と思えば、法律を作ることができるため、円滑に政治が運営できる。」と主張しました。
どちらが良いというものではありませんが、アメリカで生まれた大統領制とイギリスで生まれた議会制が、現代まで続く民主主義の制度のひな型になったのです。
大統領制 | 議会制 | |
行政のトップの 選出 |
国民が直接投票で選ぶ | 議会が選出する |
権力 | 議会と行政、司法に権力が分散する | 議会の権力が強くなる |
国民の代表 | 議会と大統領 | 議会のみ |
※議会制(議院内閣制)について、以下の本ではとても分かりやすく書かれています。
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ここまでをまとめます。
- 国民の基本的人権を実現できる政治体制は、民主主義のみ
- 民主主義は多数決の原理によって、少数派が犠牲になることがあるため、少数派も犠牲にならない議会制(代議制)民主主義が生まれた
- 議会制民主主義(間接民主主義)には、大統領制と議会制があり、それぞれにメリットがある
3章:日本の民主主義の仕組み・制度
民主主義が歴史的に、どのように形成されてきたのか分かったでしょうか?
それでは具体的な日本の民主主義の制度について整理してみます。
民主主義の制度について論じるときりがないので、ここでは「民主主義を実現するために、権力はどのように抑制されているのか?」「国民の声は、どのようにして政治に反映されているのか?」という点について説明します。
具体的には、三権分立と選挙制度についてです。
3-1:日本の三権分立
日本も行政、立法、司法の三権分立が実現されています。
それぞれ、以下のように権力を持っています。
- 内閣総理大臣の指名(内閣に対して)
- 内閣不信任の決議(内閣に対して)
- 国政調査権(内閣に対して)
- 裁判官の弾劾裁判(裁判所に対して)
- 違憲立法審査権(国会、内閣に対して)
- 行政事件に関する終審裁判(内閣に対して)
- 国会の召集(国会に対して)
- 衆議院の解散(国会に対して)
- 最高裁判所長官の指名(裁判所に対して)
- 裁判官の任命(裁判所に対して)
国家のルールである法律に対し、国会が法律を作る、裁判所が法律を監視する、内閣が法律を実際の具体的な政策として運用する、というそれぞれの役割があります。
そして、それぞれの役割をそれぞれがけん制しあい、特定の権力が暴走しないようになっているのです。
■国会が最高機関
3つの権力は互いに均衡するようになっていますが、日本国憲法では国会が最高の機関であるとされています。
なぜなら、国会(の議員たち)は国民から直接選ばれた唯一の代表者だからです。
ここまでも説明してきた通り、現代の民主主義のほとんどは国民が代表者を選び、その代表者が国民の声を代理する代議制民主主義です。
そのため、「国民主権」という民主主義の原則から考えて、国会が最高=国民が最高の権力を持つとされているのです。
3-2:選挙制度
民主主義が正しく機能するためには、「私たちの代表者をいかに平等、公平に選ぶか?」がとても大事な問題になります。
なぜなら特定の個人や集団によって代表者が選ばれてしまうと、少数派の声が政治に反映できなくなるからです。
そこで、日本の衆議院議員選挙は「小選挙区比例代表並立制」になっています。
学校の教科書などにも出てきますが、「なんて分かりにくい、長ったらしい制度なんだ」と思った方も少なくないと思います。
簡単に言えば、それぞれ以下のような仕組みです。
- 小選挙区制…1つの選挙区で1人の議員のみを選出する制度。国民は特定の政党を選ぶことを迫られる。
- 比例代表制…得票数に応じて議席を配分する制度。国民はいろいろな選択肢から選べる。
小選挙区制 | 比例代表制 | |
死票 | 多い | 少ない |
政党 | 大政党が勝ちやすい | 小党が議席を取りやすい |
国民の声 | 死票に投票した人の声が反映されにくい | 小党が議席を取りやすいため多様な声が伝わりやすい |
議会の進行 | 大政党が勝ちやすいため、勝った政党によって議会が進行しやすい | 小党が乱立しやすいため、議会の決定に時間がかかる |
このように一長一短あるため、日本では両方を活用する小選挙区比例代表並立制になっているのです。
- 日本でも三権分立が制度化されており、それぞれが権力を抑制しあっている
- 国民が直接選べるのは国会(議員)だけであるため、日本国憲法では国会が最高機関とされている
- 小選挙区制と比例代表制は一長一短であるため、それぞれの利点を合わせた制度が選挙制度になっている
4章:民主主義の学び方・書籍リスト
他にも政党政治や世論について、利益団体など民主主義に関わることはたくさんあります。
ここですべては説明できませんので、詳しくはこれから紹介する本から学ぶことをおすすめします。
民主主義は、「私たちの国家がどのように運営されているのか」「私たちは政治にどのように関わるべきなのか」などについて知る上でとても大事です。
政治なんてよくわからないという方も、少しずつ学んでみてはいかがでしょうか?
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ポピュリズムについては、以下の記事でも解説しています。
民主主義の思想や制度は不動のものではありません。現実の政治の中で常に変わっていくものですので、最新のニュースから学んでいくこともとても大事です。
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まとめ
最後に今回の内容をまとめます。
- 民主主義は、国民が国家の支配者であるとする思想、体制
- 多数派によって政治が左右される可能性から、議院内閣制(間接民主主義)が生まれた
- 代表者を公平に選ぶために、小選挙区制や比例代表制(とその並立)という複雑な制度が生まれた
- 現代の民主主義は、アメリカがモデルの大統領制と、イギリスがモデルの議会制という2つのモデルから制度化されている
【引用】
三権分立の画像:首相官邸キッズ(https://www.kantei.go.jp/jp/kids/sanken_sanken.html)