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【ネイティブ・アメリカンのおすすめ映画6選】1930年代~現代までの名作を紹介

ネイティブ・アメリカンおすすめ映画

ネイティブ・アメリカンに関して理解を深めたい場合、映画はもっとも有効な方法の一つです。

それはハリウッド映画といった映画産業はネイティブ・アメリカンのステレオタイプの生産に深く関わっており、映画を通してアメリカ社会における彼らの位置づけを知ることができるからです。

そのため、この記事ではネイティブ・アメリカンに関する代表的な映画をジャンル・時代別に紹介します。

大まかに、ネイティブ・アメリカンは、

  • 西部劇…白人ヒーローの敵役として暴力的、攻撃的なインディアン(野蛮なインディアン)
  • ロマンスの対象…自然と共生したインディアン(高貴な野蛮人)や勇敢な戦士としてのインディアン

として描かれてきました。

まずは西部劇における「野蛮なインディアン」、次に「ロマンスの対象としてのインディアン」を紹介します。

加えて、侵略されたアメリカ国家に貢献することの苦悩が垣間見える映画や、ネイティブ・アメリカンが自ら制作した画期的な映画なども紹介していきます。

それぞれの映画の詳しいあらすじはwikipediaに一任し、この記事ではネイティブ・アメリカンとアメリカ社会の関係を解説しつつ、それぞれの作品を紹介したいと思います。

関心のあるものを選らんで、観てみてください。

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  • 「インディアン」という呼称はコロンブスの勘違いから広まった言葉であり、本来使うべきではありません。そのため、アメリカに住む先住民を指す場合は、「ネイティブ・アメリカン」という総称を使います。
  • しかし、通称として定着してる「野蛮なインディアン」や「インディアン映画」といった言葉はそのまま使用します。
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1章:ネイティブ・アメリカンのおすすめ映画:西部劇

ネイティブ・アメリカンと映画の関係で不可欠なのは「西部劇」です。上で説明したように、西部劇においてネイティブ・アメリカンは獰猛なイメージで描かれています。

この分野で代表的な作品を送り出してきたのは、ジョン・フォード監督です。さっそく紹介してきます。

①『駅馬車』/ ②『荒野の決闘』

1939年公開の『駅馬車』と1946年公開の『荒野の決闘』は、ジョン・フォード監督の代表作です。

ジョン・フォード監督は、

  • アクション主体の単純な西部劇ではなく、人間性にあふれた現実的なストーリーを好んだ
  • インディアンを白人ヒーローを輝かせる脇役とし、勇敢な開拓者の脅威として描いた

といった特徴があります。

たとえば、『駅馬車』に登場する「アパッチ族」は白人の馬車を追いかける暴力的なインディアンとして描かれています。

また『荒野の決闘』においては、泥酔し拳銃を打ちながら暴れるネイティブ・アメリカンが登場します。ここでは暴力的というよりも、白人ヒーローを輝かせる脇役としてのネイティブ・アメリカンがいます。

ネイティブ・アメリカン研究者の鎌田によると、

  • 1939年から1964年のハリウッドはジョン・フォード監督の時代で、彼の映画から、アメリカ国内外を問わず、野蛮な先住民像が広く浸透していった
  • 特に、「アッパチ=戦闘的」というイメージはアメリカだけでなく、日本でも知られるようになった(警察による「ねずみ捕り」はしばしば「アパッチ」といわれる)
  • 一方で、史実を脚色して描かれたアメリカの「古き良き時代」は多くの観客を惹きつけた
  • 事実、冷戦よるアメリカ社会の保守化が進んだ1950年代は西部劇がもっとも大量に生産された時代であった

と指摘します。(鎌田『ネイティブ・アメリカン』岩波新書を参照)

つまり、ネイティブ・アメリカンは単に獰猛に描かれただけでなく、アメリカ社会の変容と密接に関係していたのです。

こういった理由から、もっとも広い影響力をもったジョン・フォード監督の西部劇はとても重要です。ストーリー自体も面白いので、一見の価値はありです。

『駅馬車』と『荒野の決闘』は、Amazonプライムに加入すれば、無料で観ることができます(一般の方は1ヶ月無料、学生は6ヶ月無料)。観たら退会すればOKです。ぜひこの機会にどうぞ。

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批評家の加藤によると、ジョン・フォード監督がネイティブ・アメリカンへの改悛の念を示すために制作したのは『シャイアン』です。

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『シャイアン』は居留地に強制移動させられるシャイアン族の悲劇を描いたものです。こちらはAmazonプライムメンバーで観れませんが、関心のある方はぜひ観てみてください。

(加藤『映画とは何か』みすず書房 2001)

2章:ネイティブ・アメリカンのおすすめ映画:ロマン主義

西部劇で「野蛮なインディアン」として描かれてきたネイティブ・アメリカンですが、1960年代の公民権運動が引き起こした社会的変化に伴い、歴史的事実や文化に基づいたインディアン映画が制作され始めました。

その大まかな過程は、以下のとおりです。

  • ネイティブ・アメリカンはサンフランシスコ湾に浮かぶアルカトラズ刑務所の占拠といった直接行動によって、アメリカ社会に異議申し立てをおこなった
  • そのようなアメリカ社会における運動は、白人監督によるネイティブ・アメリカンの描写に影響を与えた
  • 具体的に、「野蛮なインディアン」から「高貴な野蛮人」や「勇敢な戦士」へという描写へ変わっていった

ネイティブ・アメリカンの運動の歴史は、次の記事で詳しく解説しています。ぜひ参照してください。→【ネイティブ・アメリカンとは】部族・歴史・居留地をわかりやすく解説

ここでは、アメリカ社会の変化を代表する二つの作品を続けて紹介します。

③『ダンス・ウィズ・ウルブス』/ ④『ラスト・オブ・モヒカン』

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『ダンス・ウィズ・ウルブス』は1991年のアカデミー賞受賞作品です。ケビン・コスナーが監督と主演を務めたこの作品は、南北戦争における英雄将校とラコタスー族の友情が描かれたものです。

そして、『ラスト・オブ・モヒカン』は1992年に公開された映画で、フレンチインディアン戦争におけるモヒカン族の戦士が描かれたものとなっています。

両者の特徴としては、

  • 西部劇における「野蛮なインディアン」とは対照的に、原始的で自然と共生したネイティブ・アメリカンが描かれる
  • 「ポリティカル・コレクトネス」という政治的な公正性が求められた時代を背景に制作された作品
  • しかし一方で、「高貴な野蛮人」や「勇敢な戦士」といった新たなステレオタイプが生産された

といえます。

ここでは、関根と君塚による「ハリウッド映画におけるアメリカ先住民:その迫害と差別の歴史」から『ダンス・ウィズ・ウルブス』と『ラスト・オブ・モヒカン』の評価を紹介します。

関根と君塚は1960年代以降の社会運動に影響を受けて制作された上述の作品を、次のように厳しく批評しています。

過去の出来事を扱ったDance With Wolves, The Last of The Mohicansといったインディアン映画も、白人監督は彼らをロマンティックに美化することで白人によるインディアン迫害の歴史を覆い隠し、人種問題を過去の遺物にしてしまった

関根, 君塚「ハリウッド映画におけるアメリカ先住民:その迫害と差別の歴史-『スモーク・シグナルズ』に見るエスニック・アイデンティティ」茨城大学教育学部紀要 人文・社会科学・芸術 (54), 105-116, 2005

つまり、白人による欲望の投影が「高貴な野蛮人」を生み出し、それは永続する人種主義を見えにくくさせてしまったという評価です。

加えて、上述した鎌田はアメリカ社会が過度に個人主義に向かう時代の流れに言及し、『ダンス・ウィズ・ウルブス』を以下のように評価しています。

この映画が、リベラルな白人層を中心に評価された背景には、急激な経済発展を遂げたアメリカ社会が無機的で、極端に個人主義に走っているのではないかという反省があった。自然を尊び、仲間意識を絶やさない、平和な先住民のイメージがもとめられたようだ。

鎌田『ネイティブ・アメリカン: 先住民社会の現在』(岩波新書)127-128頁

つまり、「白人社会の衰弱と行き詰まりから脱却するために、先住民の精神で補強する」という構図があったのです。(同上 128頁)

こうしてみると、アメリカ社会はネイティブ・アメリカンを表象するパワーをもっており、国家が直面した問題に応じて、先住民像がつくられてきたことがわかります。

アメリカ社会が経験した出来事を頭に入れた上で、ここで紹介した映画を観ると、wikipidiaで紹介される内容とは異なる見方ができるかもしれませんね。

これらの作品は残念ながらAmazonプライムでは観れませんが、チェックする価値があるものなので、ぜひ観てみてください。

ポリティカル・コレクトネスに重点を置いた現代の西部劇としては、クリント・イーストウッド監督の『許されざる者』が有名です。合わせて観ると面白いと思います。

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3章:ネイティブ・アメリカンのおすすめ映画:現代

さて、21世紀に入り、ネイティブ・アメリカンの描かれ方はさらに複雑になっています。

ここでは先住民の複雑な苦悩が垣間見える映画や、先住民による画期的な映画を紹介します。

⑤『父親たちの星条旗』

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クリント・イーストウッド監督の『父親たちの星条旗』は日本でも大変有名ですから、知ってる方が多いかもしれません。

『父親たちの星条旗』は第二次世界大戦における硫黄島での闘いが「アメリカ側」から描かれた作品です。ネイティブ・アメリカンの観点から注目したのは、『父親たちの星条旗』で登場するアイラ・ヘイズという先住民兵の存在です。

そもそも、第二次世界大戦では、

  • 2万5000人の男性と500人の女性のネイティブ・アメリカンが入隊した
  • その背景には、居留地における部落社会は基本的に貧困であり仕事がないため、貧困から脱出する手段として入隊するネイティブ・アメリカンが多いという事情がある
  • つまり、アメリカへの愛国心と忠誠心では捉えられない、社会内部での格差があった

という事情があります。

『父親たちの星条旗』に登場するアイラはそのような先住民の代表的な例であり、侵略者である「アメリカ国家」への忠誠心を示すことを強いられる、ネイティブ・アメリカンの苦悩を伺い知ることができます。

ネイティブ・アメリカンの存在を念頭に置き、日本側からの視点である『硫黄島からの手紙』とともに観ると、映画としても楽しく観ることができると思います。

『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』は、Amazonプライムで観れます。

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第二次世界大戦におけるネイティブ・アメリカンの活躍は、他にも『ウィンド・トーカーズ』があります。ニコラス・ケイジ主演の有名な映画に、ナバホ族が協力者として登場します。

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⑥『スモーク・シグナルズ』

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これまで紹介してきた映画と、1998年に公開された『スモーク・シグナルズ』は根本的に異なる点があります。

それは『スモーク・シグナルズ』には、以下のような特徴によるものです。

  • ネイティブ・アメリカンの脚本、監督、出演によって制作された作品であること
  • ネイティブ・アメリカンの苦悩(アルコール依存症、貧困、失業等)が彼ら自身の視点からリアルに描かれたこと

上述した『ダンス・ウィズ・ウルブス』で提示された「白人の望むインディアン像」を揶揄するシーンもあり、ステレオタイプ的な先住民像を打破しようとする姿勢が垣間見えます。

アカデミー賞受賞作品の『ダンス・ウィズ・ウルブス』を厳しく批判した関根と君塚は、『スモーク・シグナルズ』に高評価を与えています。

Smoke Signalsは、若いインディアンが民族性を取り戻し、アイデンティティを確立していく過程を通して、現代の若いインディアンの苦悩と民族の迫害の歴史を描いた

関根, 君塚「ハリウッド映画におけるアメリカ先住民:その迫害と差別の歴史-『スモーク・シグナルズ』に見るエスニック・アイデンティティ」茨城大学教育学部紀要 人文・社会科学・芸術 (54), 105-116, 2005

関根と君塚は一貫して白人映画監督の制作するステレオタイプ的な作品を批判し、ネイティブ・アメリカンの手によって制作された映画を積極的に評価しています。

話は少しズレますが、この姿勢を単純に突き詰めると「日本人は日本のことしか語れない」ことになります。実情はそう簡単ではありませんが、ネイティブ・アメリカンが制作したものだけが「真正」とする姿勢は深く考える必要があるかもしれません。

いずれにせよ、『スモーク・シグナルズ』が画期的な作品であることには間違いありません。これまで他者によって表象される側の人々が、自らを表象する側に回ったことは大きな意味をもちます。

その画期的な作品である『スモーク・シグナルズ』をぜひチェックしてみてください。

4章:ネイティブ・アメリカン映画との関連映画

最後に、ネイティブ・アメリカンという枠を超えて、世界の先住民に関する映画を紹介します。

『サーミの血』

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『サーミの血』はスカンジナビア半島における先住民サーミ族が直面した人種主義とそれが生み出す複雑な先住民のアイデンティティが描かれています。

先住民のサーミとして生きない選択をした主人公のエレ・マリャの物語は、恐らく多くの先住民が葛藤・経験することではないでしょうか。

たとえば、「隠れアイヌ」が多く存在する日本社会を考えてみてもいいかもしれません。

  • 「「隠れアイヌ」はなぜ存在するのか?」
  • 「「隠れること」を半強制的に押しつける歴史とはなにか?」

主人公のエレ・マリャの物語が提示する複雑なアイデンティティの様相は、きっと私たちの社会を再度考えるチャンスをくれるはずです。

Amazonプライムでは観ることができませんが、Amazon上でのレンタルは可能です。興味のある方はぜひ観てみてください。

まとめ

どうでしょう?あなたが関心を持てる作品はありましたか?

今回の記事では、なるべく手軽に観れる作品を集めました。それぞれ時代・ジャンルで代表的なものばかりですので、ぜひ観てみてください。

今回の映画がネイティブ・アメリカンや先住民を学ぶためのきっかけとなれば幸いです。