政治思想・政治哲学

ハンナ・アーレントの『人間の条件』の内容・議論をわかりやすく解説

アーレントの人間の条件

ハンナ・アーレントの『人間の条件』(英:The Human Condition)とは、哲学者アーレントが伝統的な政治哲学の思想を批判し、全体主義に陥らないための実践を論じた著作です。

『全体主義の起源』で明らかにした問題を超え、再び全体主義に陥らないためにどうしたら良いのか?を論じた名著です。

この記事では、

  • 『人間の条件』に現れるアーレントの思想の特徴
  • 『全体主義の起源』と『人間の条件』の関連
  • 『人間の条件』の内容の解説

について詳しく解説します。

関心のある所から読んでみてください。

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1章:ハンナアーレントの人間の条件とは

1章では、『人間の条件』をより深く理解するための前提知識を説明します。『人間の条件』の具体的な概念、議論の解説から知りたい場合は、2章から読んでください。

このサイトでは複数の文献を参照して、記事を執筆しています。参照・引用箇所は注1ここに参照情報を入れますを入れていますので、クリックして参考にしてください。

1-1:『人間の条件』が書かれた背景

『人間の条件』は、ユダヤ人として迫害された当事者でありかつ学者として活躍した、ハンナ・アーレント(Hannah Arendt/1906-1975年)によって1958年に出版された著作です2伝記的情報について、森脇大輔『ハンナ・アーレント』ちくま新書を参照しています。

ハンナ・アーレントハンナ・アーレント

アーレントは『全体主義の起源』『人間の条件』『エルサレムのアイヒマン』など、世界的に有名な著作を何作も発表しています。その背景に一貫しているのは、ナチスという全体主義体制によって、同胞であるユダヤ人が大虐殺(ホロコースト)された経験です。

虐殺されたユダヤ人の数は、150万人とも、400万人とも、600万人とも言われています(諸説あります)。

こうした悲惨な経験をしたアーレントは、戦後、ナチスがなぜ人類史に残るほどの大虐殺を行ったのか、行うことができたのか、明らかにしようとしました。

その研究の集大成が、1951年に出版された『全体主義の起源』という著作です。

そして、『全体主義の起源』で論じられた全体主義が、再び世界を席巻することがないようにするにはどうしたら良いのか?ということを論じたのが『人間の条件』です。

1-2:『全体主義の起源』との関わり

このように『人間の条件』は、『全体主義の起源』の内容を踏まえた展開でもあるため、『全体主義の起源』の内容をある程度知っておくことが大事です。

簡単に説明すると、『全体主義の起源』では主に以下の3つの要素から、全体主義が起こった理由を説明しています。

  • 社会のアトム化という前提
    社会の発展に伴い、個人は自分の属する階級を失い、つながりが希薄になった(アトム化・大衆化)ことが、そもそもの前提としてあった。
  • ドイツの伝統①反ユダヤ主義
    ドイツは、「反ユダヤ主義」というイデオロギーを国家としての「われわれ意識」の形成に用いて、国民国家を形成した。そのため、「われわれ」ではない異分子としてユダヤ人が認識された。
  • ドイツの伝統②帝国主義
    ドイツでは、他国を支配(帝国主義)する理由として、自国民が優れているという優勢思想を用いて、「自分たちより劣等なユダヤ人は支配して良いのだ」と考えられた。

上記のような条件が重なった結果、社会不安が増大したドイツにおいて、「ユダヤ人が諸悪の根源であり彼らを絶滅させることがドイツ人のためになる」と主張したナチスが支持されてしまったのです。

『全体主義の起源』について詳しくは以下の記事をご覧ください。

【全体主義とは】生まれた理由からアーレントの主張までわかりやすく解説

また、ドイツ全体主義の問題は国民統合の問題から生まれたものでもあります。国民統合・ナショナリズムについて詳しくは以下の記事で説明しています。

【ナショナリズム・国民国家とは】成立過程から問題までわかりやすく解説

そして、アーレントは第二次世界大戦が終わったからといって全体主義の時代が終わったとは考えませんでした。

「社会のアトム化」は、その後の時代でも続くもので、明快な世界観・物語を提示するカリスマが登場すれば、再び全体主義が登場する可能性もあるからです。

そこで、『人間の条件』では、全体主義的を克服するため、

  • そもそも全体主義というイデオロギーの背景には、特有の思考がある
  • それが、これまでの政治哲学が持ってきた、現実の世界よりも抽象的世界における実践を優先する傾向である(世界疎外)
  • 「世界疎外」ではなく、現実世界における「活動」という実践が大事

と主張しました。

これから詳しく解説しますので、いったんここまでを整理します。

1章のまとめ
  • 『人間の条件』は、アーレントがユダヤ人としての経験を踏まえて書いた、全体主義に対抗する手段を論じた著作
  • 『人間の条件』では、伝統的哲学の思考様式が批判され、その代わりに現実世界における「活動」が重視された
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2章:ハンナアーレントの人間の条件を解説

アーレントが『人間の条件』で批判したのは、過去の政治哲学が形成してきた、抽象的世界における実践を重視する思想です。

順番に詳しく説明します3下記では、アーレント『人間の条件』(みすず書房)を参考に解説しています。

2-1:観照的生活と活動的生活

『人間の条件』でアーレントは、自らの思想を過去の思想と差別化するために、さまざまな区分を使っています。その一つが、「観照的生活(vita contemplativa)」「活動的生活(vita activa)」です。

  • 観照的生活…哲学的な真理を探究するプラトン以来の哲学者の理想とする生活。抽象的世界での実践を重視するもの。
  • 活動的生活…現実世界での日常的な活動を主とする生活。

アーレントは、過去の哲学が抽象的な「観照的生活」を「活動的生活」より重視してきたことが、全体主義のようなイデオロギーを登場させる前提になったと考えました。

『全体主義の起源』で指摘されたイデオロギーの、そのさらに背後にある思考様式を批判したのです。

この区分を踏まえた上で、『人間の条件』の重要概念である「労働」「仕事」「活動」を説明します。

2-2:労働

「観照的生活」と「活動的生活」を区分した上で、「活動的生活」には「労働(labor)」「仕事(work)」「活動(action)」があるとアーレントは論じました。

結論を言えば、アーレントが重視したのは「活動」です。

  • 労働…生存のための消費財の調達や生産行為のこと
  • 仕事…何らかの目的を達成するために行われる行為のこと
  • 活動…人間の自発性に基づく他者との関係性を築く行為

これらの概念の区別が『人間の条件』の中心的な主張と関わりますので、まずは「労働」から詳しく説明します。



2-2-1:労働と仕事の区別

「労働」とは、生存のために必要な食べ物などを調達したり、栽培、生産したりするような活動のことです。たとえば、おなかが減ったから料理を作ろう、というのが「労働」です。

後に「仕事」についても説明しますが、労働と仕事の違いは以下の点です。

労働(labor) 仕事(work)
生産物 残らない 残る
行為の理由 生存のため 決められた目的の達成のため

2-2-2:労働は活動的生活の最下位

ここまで説明したように、労働とは生存のための必要に迫られて行う行為なので、アーレントは「活動的生活」の中で最下位に置いています。

なぜなら、古典的哲学の考え方では「労働」から解放されることによって人間ははじめて自由になり、それから「仕事」という上位の行為に移行できたからです。これは、古典的哲学が発達したギリシャが奴隷制に支えられており、ギリシャ市民は奴隷に労働を肩代わりさせることで、「仕事」ができる余暇を作れたという説明です。

アーレントによると、「労働」が下位に、「仕事」がその上位にあるという前提を覆したのがジョン・ロックの労働価値説であり、それをアーレントは批判しています。

  • ロックの主張:人間が自らの労働によって生み出した価値は、その人が所有する権利を持つ(例:自分が開拓した土地は、その土地の所有権を持つ)
    →アーレントの批判:私有財産は「労働」とは関係なく、所有権が認められるもの
  • ロックの主張:貨幣の誕生によって、生産した価値を腐らせずに残せるようになった
    →アーレントの批判:「労働」は生産物を残し価値を保存するようなものではない

このような批判が必要だったのは、ロックの労働観に基づいた世界の説明が、全体主義がはびこる隙を与える考えだからです。

この点を理解するためには、アーレントの「私的領域」「公的領域」という区別を理解する必要があります。

2-2-3:私的領域・公的領域

「私的領域(private space)」とは「家政」つまり生存のために必要な空間のことで、家族との生活領域のことだと考えても大丈夫です。「公的領域(public space)」とは、家庭の外に出て公共的、政治的な実践が行われる場のことです。

アーレントが考える古典的哲学の立場では、

  • 私的領域と公的領域は、対になって世界に存在するもの
  • 奴隷や家人に労働を押し付け、家長は労働から解放されて自由を得た
  • 家長は、私的領域から自由になり公的領域で政治的な実践をした
  • 公的領域では、私的領域では解決されない公的な問題(たとえば共同体の外部からの安全の確保)が議論された

と考えられました。

こうした私的領域・公的領域の分担は、奴隷や家人に労働を押し付ける点で問題はあるものの、本質的な意義を持っています。

それは、公的領域に参加し共通の課題を議論することで、参加者は、考えが異なる他者が世界にはたくさん存在することを知り、その中で議論することで解決策を探る経験を得られるという点です。

この多様な個性を持つ人々が存在することを、アーレントは「複数性(plurality)」と言って非常に重視しています。

2-2-4:ロック、マルクス批判

一方、ロックの労働価値説を認めると、私的領域における生産の価値を持っているのは、実際に「労働」した奴隷らになります。それでは家長は公的領域に踏み出せませんし、それは実態を反映したものでもありません。

しかもこの「労働」観はその後の哲学の伝統になり、全体主義がはびこる隙を作ってしまったため、アーレントはこの点を問題視したのです。

まとめると、ロックのように「労働」から世界を説明しようとすると、公的領域における「複数性」の存在や、それを認識する経験を人々から奪ってしまうということです。

アーレントは批判していますが、ジョン・ロックの思想はその後の政治学に大きな影響を与えました。詳しくは以下の記事で『統治二論』を中心に解説しています。

【ジョンロックの思想とは】『統治二論』からわかりやすく解説

さらに、ロック以上に「労働」を重視したマルクスの議論も批判しています。

マルクスは、

  • 人間は自らの生命を存続させるために「労働」するが、それが結果的に社会全体を存続させる
  • 労働によって生み出された「余剰(消費しきれない部分)」は、人口増加などの社会の拡大のために利用され、人類の繁栄に貢献する

と考えました。つまり「労働」を社会全体の発展から捉えたのですが、この点をアーレントは批判します。

社会全体のための「労働」という観点は、個々人の存在を無視しているためです。マルクスの視点は、あたかも社会全体の繁栄のために個人が存在するかのようです。

このような世界観では、個々人の個性は存在せず、人々は多様な他者が社会に存在することを感じられず、「労働」のみに従事してしまうのです。

マルクスの「労働」の考え方を理解するには、マルクス経済学を学ぶことが近道です。以下の記事で詳しく説明しています。

【マルクス経済学とは】史的唯物論から『資本論』の世界まで解説



2-3:仕事

では、「活動的生活」においてアーレントが「労働」の上位に置いた「仕事」とはどのようなものなのでしょう?

結論を言えば、伝統的な哲学は「仕事」から世界を説明しようとする視点を持っていましたが、それが結果的に人間から他者との関わりを奪った、と考えました。詳しく説明します。

まず、アーレントの言う「仕事」とは、仕事やバイトのことではありません。何らかの目的を設定し、そのための手段として行われる行為が「仕事」です。

例えばコックがこだわりのハヤシライスの完成形をイメージし、それを作るために野菜や肉などの素材、調理器具を調達し、レシピを考え、時間をかけて作るとします。

これはハヤシライスを作るという目的のためになされる「仕事」で、調理の過程はすべて「ハヤシライスを作る」という目的に支配された行為です。

同じように、プラトン以来の伝統的哲学では「目的」に哲学者が導き出した理想が据えられ、「手段」に現実の政治が置かれました。哲学的理想の達成のために、現実の政治が手段とされたのです。

2-3-1:生産物の耐久性への認識の意義

私たち人間は、「仕事」によって料理、建築物、芸術作品、道具などさまざまなものを生産しますが、その一部は時代を超えて残っていきます。

私たち人間は、この「生産物が時代を超えて残っていく」とうことを認識することで、世界が安定して実在することを認識することができるとアーレントは考えました。

「世界は実在するに決まってるでしょう?」

と思われるかもしれませんが、これは全体主義と関わる議論です。

全体主義は、イデオロギーによって現実世界を改変できることを主張しました。カリスマ指導者や体制が考えた世界観に合わせて現実を変えられると考え、そのように行動しようとしたのです。

こうしたイデオロギーが社会を支配したことで、大衆は全体主義によって容易にコントロールされてしまう存在になってしまいます。

しかし、現実の世界には過去の人類が生み出してきたさまざまな生産物があります。こうした生産物の存在は、世界は容易に改変できるものではなく、一貫して存在し続けることを証明しています。

生産物の耐久性から、世界の実在を認識できるというのは全体主義に対抗する議論の一つです。

2-3-2:道具論

アーレントは「仕事」の議論の中で、「道具」についての議論も行っています。

「道具」とは、日常的に使う包丁、まな板、ハンマー、ハサミなどのことです。

これらの道具の使用を通じて、以下のように、私たちは間違った考え方を身に付けてしまう危険性があるのだ、というのがアーレントの議論です

  • 仕事を行う人は、道具を使用することで現実世界を自分の恣意によって改変できることを経験する
    例:調理器具を使うことで、素材からイメージした料理を作ることができる
  • また、仕事の中で人間は、道具や素材を本来とは違う目的で使えることも経験する
    例:たとえば、包丁は本来の目的から離れて、調理素材以外を切ることに使ったり、人を脅すことに使ったりする
  • こうした経験の積み重ねが、本来の目的から外れた使用を当たり前にし、自らの勝手な基準から物事を扱うメンタリティを作り出す

道具論の政治や哲学との関わりが分かりづらいかもしれませんが、端的に言えば、伝統的な政治哲学は哲学を目的に、政治を手段に置いたことに問題があるということです。

政治哲学を単純な目的-手段の関係に落とし込んだために、その過程における人間同士の日常的、現実的なかかわりが無視されてしまった。それが全体主義がはびこる隙を生み出してしまったのだ、というのがアーレントの主張です。



2-4:活動

さて、ここまで、過去の哲学的議論が「労働」「仕事」を重視していたために、人間が他者との関わりを持つ機会を無視してしまっていたことを説明しました。

アーレントによると、「労働」は人間の活動的生活(現実の日常的な生活)において、生存のための部分を位置づけています。しかし、人間の生活はそれだけではありません。「活動」の領域が非常に重要で、「活動」が公的領域でなされることで社会の「複数性」を認識し、また自らを認識できるのです。

詳しく説明します。

2-4-1:活動の特徴

アーレントの言う「活動」とは、人間の自発的に基づいた他者との関わりを築く行為です。

活動には、以下の特徴があります。

  1. 「活動」は、自分が何者であるのか、人格的アイデンティティを積極的に示す行為である
  2. 「活動」は、他者の存在に完全に依存している行為である

「労働」「仕事」だけでは、人々は多様な個性を持つ他者と積極的に関わるきっかけを失いがちなのに対して、「活動」は、他者ありきの積極的な行為なのです。

より具体的に活動の特徴をあげると、以下のようになります。

  • 「活動」は自分が何者であるのか、どんな人格を持っている人間なのかを、他者の目を通して明らかにする(暴かれる)行為である。
    →長い目で見ると、他者の目を欺いたり、とりつくろったりすることができない
  • 「活動」によって人格が暴かれることは不可逆、つまりやり直しがきかない。
    →誤った行為をしてしまった場合、それを取り繕うとしても他者にばれて、より低い評価をされてしまう
  • 「活動」はいつ行われるのか、いつ終わるのかわからない行為である
    →活動は他者との関わり(関係の網の目)の中で生まれる行為であるため、自分で「ここからが活動だ」「ここまでで活動を終える」などと意識してコントロールできない。そのため、人格そのものが暴かれてしまう

このように、「活動」では自分の人格が、自分の意志や思い描いた理想とは関係なく、他者との関係の中で暴かれ、知られる行為です。他者との関係の中で、「この人はこういう人」と認識されるようになります。

2-4-2:活動と人間の条件

こうした「活動」は、個々人の人格や個性が重視されない「労働」とは質的に異なる行為であることが分かると思います。

したがって、人間は「活動」による他者との関わりを通して自分が何者であるのかを知り、また他人がどのような人間であるのかを知ることができるのです。

その結果として、人々は公的領域で自分の人格、個性をあらわにし、社会が「複数性」を持つものとして展開するのです。

2-1で説明したように、アーレントは、古典的哲学が前提とした世界では公的領域は「複数性」を持つものとして考えました。これは、このように「活動」で個々人の人格が暴かれるからなのです。

「結局、活動と全体主義はどう関係するの?」

とまだ疑問があるかもしれません。

結論を言えば、全体主義は「活動」で生み出される「複数性」を持つ社会を破壊し、その代わりにイデオロギーによって人格、個性が無視される社会を作ったのです。

『全体主義の起源』では、ナチスドイツにおいては、

  • ユダヤ人は滅びゆく運命にある民族であると考えられた
  • 強制的に収容されていくユダヤ人に対し、国民はほとんど無関心であった

ということが明らかにされています。

本来、それぞれ人格を持つ、同じ人間であるユダヤ人に対して、無関心になるような空気が醸成されていたのです。それも、それまで普通に社会生活し、他者を思いやって生活してきたはずの普通の民間人までもが、ユダヤ人の存在に無関心になっていたのです。

それが、全体主義の病理の根本にあるとアーレントは考えました。そのため、『人間の条件』では「活動」による「複数性」のある社会を、全体主義への対抗として唱えたわけです。



2-5:世界疎外

アーレントは、プラトン以降の哲学が持つ伝統が「世界疎外」という特徴を持っていることも指摘しています。

世界疎外とは、現実の実践よりも観念の世界の実践を優先する思考を持つことで、世界から個々人の個性を奪ってしまうことです。

プラトン以降の哲学が持つ伝統は、現実の実践よりも観念を重視し、世界を一貫した論理で説明しようとしてきた、とアーレントは考えました。伝統的哲学は、私たちが感じる現実の実感より、抽象的な論理の世界の一貫性を重視してきたのです。

その結果、私たちは、

  • 自分たちの実感を信じるより、一貫した論理による説明を求めるようになった
  • その結果、世界を一貫した世界観から説明する全体主義に支配される隙を作った

ということです。

繰り返しになりますが、

「そのような世界疎外の伝統を持つ哲学ではなく、「活動」による現実的な他者との関わりこそが、全体主義に対抗する手段なのだ」

というのが『人間の条件』におけるアーレントの主張です。

2章のまとめ
  • 労働…生存のために行われる行為
  • 仕事…目的の達成のために行われる行為
  • 活動…公共的領域で行われる、自発性に基づいて、積極的に他者とのかかわりを持つような行為
  • 伝統的哲学は、現実より観念による一貫した説明を重視したため、その認識を持った人間は全体主義的イデオロギーを受け入れやすくなった
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3章:人間の条件の学び方・オススメ本・映画

『人間の条件』を含むハンナ・アーレントの著作は、なかなか難しいです。

しかし、実際に彼女の著作を読むことはとても勉強になりますし、自らの政治、哲学の考えを再検討するきっかけになります。そこで、これから紹介する入門書を参考に、原著を読んでみることをおすすめします。

オススメ書籍

森分大輔『ハンナ・アーレント‐屹立する思考の全貌‐』(ちくま新書)

この本では、『全体主義の起源』『人間の条件』を含むアーレントの主要な著作がそれぞれ解説されていて、アーレントの入門書としてとても分かりやすいです。

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ハンナ・アーレント『人間の条件』(ちくま学芸文庫)

入門書で概要を知ることができたら、実際に『人間の条件』を読んでみましょう。『全体主義の起源』ほど長大な著作ではないので、難しくてもまずは通読してみましょう。

オススメ映画

「ハンナ・アーレント」

2013年公開のの「ハンナ・アーレント」は、アーレントの波乱に満ちた人生を描いたとてもいい映画です。周囲に流されず、主張すべきことを毅然と主張するアーレントの人間像が素晴らしく描かれています。前提知識なしでも問題ありませんので、一度観てみてください。

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まとめ

この記事をまとめます。

この記事のまとめ
  • 『人間の条件』では、全体主義のイデオロギーが国家を支配したのは、伝統的哲学が持つ現実より観念を優先する思考様式があったためと考えられた
  • 伝統的哲学は、現実の実感より論理的一貫性を重視したため、全体主義的イデオロギーによる一貫した世界観の提供に、大衆が扇動された
  • 「活動」によって人々の人格を暴き、積極的に関係性を築くことが全体主義に対抗するこちになる

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