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【インディアン居留地とは】歴史・現在をわかりやすく解説

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インディアン居留地(Indian reservation)とは、もともと17世紀のアメリカ北東部の入植地の一部を、ネイティブ・アメリカンを保留する目的で設置されたもので、次第に白人が収奪した土地の代替地を指すようになりました。現在はインディアン局の管理の下におかれつつも、主権をもった部族政府が置かれています。

ネイティブ・アメリカンに関して理解を深めようとするとき、避けて通れないのが「居留地」に関する一連の知識です。

なぜならば、部族政府の主権といった政治的問題から観光産業と組み合わされたカジノ経営まで、ネイティブ・アメリカンの現状を知るためのキーポイントだからです。

そこで、この記事では、

  • インディアン居留地の概要と歴史
  • インディアン居留地の問題
  • インディアン居留地とカジノ

をそれぞれ解説していきます。

あなたの読みたい箇所から読み進めてください。

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  • 「インディアン」という呼称はコロンブスの勘違いから広まった言葉であり、本来使うべきではありません。しかし、通称として定着してるため、ここでは「インディアン居留地」を使用します
  • アメリカに住む先住民を指す場合は、「ネイティブ・アメリカン」という総称を使います
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1章:インディアン居留地とは

まず、1章ではインディアン居留地の概要と歴史を紹介します。

インディアン居留地が現在抱える問題やカジノ経営に関心のある方は、2章から読み進めてください。

1-1: インディアン居留地の概要

ここではインディアン居留地の「呼称」「土地面積と人口」「居留地における部族政府」から概観していきます。

1-1-1: 「居留地」という呼称

そもそも、「インディアン居留地」という言葉は、

  • 「Indian reservation」の訳語
  • 17世紀のアメリカ北東部の入植地の一部をネイティブ・アメリカンを「保留」した慣習から、しばしば「保留地」とも呼ばれる

ものです。

他にもインディアン居留地は「リザーベーション」「プエブロ」「ランチェリアス」「コミュニティ」といった名称で呼ばれたりします。

確認ですが、この記事ではもっとも一般的な呼び方である「インディアン居留地」と呼んでいます。

1-1-2: 土地面積と人口

さて、阿部珠理は『アメリカ先住民-民族再生にむけて-』(角川書店)で、インディアン居留地の場所と面積を次のようにまとめています。

インディアン居留地とは阿部珠理『アメリカ先住民-民族再生にむけて-』角川書店(22頁)より

順位居留地名州名面積(エーカー)
ナバホアリゾナ、ユタ、ニューメキシコ17,280,000
2トホノ・オーダムアリゾナ2,774,000
3ウインド・リバーワイオミング1,888,000
4サン・カルロス・アパッチアリゾナ1,827,000
5パイン・リッジサウスダコタ1,779,000
6フォート・アパッチアリゾナ1,665,000
7ホピアリゾナ1,561,000
8クローモンタナ1,516,000
9シャイアン・リバーサウスダコタ1,396,000

阿部珠理『アメリカ先住民-民族再生にむけて-』角川書店(23頁)を基に、筆者作製

最大のインディアン居留地はアリゾナ、ユタ、ニューメキシコの各州をまたがる「ナバホ」です。「ナバホ」居留地の面積は約1728万エーカーで、四国の約4倍の面積となっています。

一方で最小のインディアン居留地はカリフォルニア州サクラメント市近郊にあるもので、1エーカーに満たない面積から構成されています(1エーカー=4046.9平方メートル)。

アメリカ全土との比較でいえば、現在のインディアン居留地の総面積はアメリカ全土の2.8%にすぎません。1887年に全土の7%あったインディアン居留地は、さまざまな政策によって減少していきました(歴史は後述)。

1-1-3: 部族政府の主権に関する問題

さて、基本的にインディアン居留地には部族政府が置かれており、自治権が認められています。しかし、インディアン居留地における自治権は「完璧」なものではありません。

たとえば、インディアン居留地には次のような複雑な状況があります。

  • 居留地内部での部族法は認められており、民事に関する司法権は概ね部族政府に委ねられる
  • 一方で、殺人や傷害等の凶悪犯罪は、連邦法が適用される。つまり、刑事事件は連邦法である(いくつかの州では州警察が居留地での司法権をもつ)
  • 部族政府は基本的に州政府とではなく、連邦政府との直接的な関係にある(国家=国家の関係)
  • しかし、同時に居留地は連邦政府の信託地である
  • そのため、ネイティブ・アメリカンは連邦政府に税金を払うが、州政府に対する税金は免除されている

さらに状況を複雑にするのは、自治権が適応される範囲が州政府との関係によってそれぞれの居留地で異なることです。そのため、居留地の状況を一枚岩的に説明することは難しいです。

とわいえど、この複雑な状況はしばしば「条件付きの自治権」「国内の従属国家」といった言葉で説明されます。

細かい州法や連邦政府法を覚える必要はありませんが、上述した複雑な状況がインディアン居留地にあると理解する必要はあります。

ちなみに、ここでいう「部族」とは以下のような種類にわけられます。

  1. 連邦政府承認部族…連邦政府から承認を受けた500以上の部族
  2. 州政府承認部族…州政府から承認を受けた20以上の部族
  3. 終結部族…部族としての認定を終結されて、部族としての扱いを受けない「部族」
  4. 未承認部族…連邦政府から承認を受けたことのない200以上の「部族」



1-2: インディアン居留地の歴史

では一体、インディアン居留地はどのような歴史をもつのでしょうか?

ネイティブ・アメリカン研究者の鎌田によると、インディアン居留地とは、

  • もともとは17世紀にニューイングランドに作られた入植者の一部の土地を、ネイティブ・アメリカンに保留する目的で設置されたもの
  • 現在の居留地は侵略されたネイティブ・アメリカンを一時的に収容した土地や、虐殺のはてに生き残ったネイティブ・アメリカンを囚人のように収容した地域がある

といった歴史をもちます(鎌田『ネイティブ・アメリカン』(岩波新書))

もともと居留地を設立する際、連邦政府はもともと部族政府とのあいだに「条約」を結び、部族が所有できる土地を規定していました。

悲劇的なのは連邦政府は一方的にそのような条約を破ったため、ネイティブ・アメリカンは保証されていた土地の一部しか確保できなかったことです。

それは1660年から1880年における、居留地面積の変化から明らかです。

ネイティブ・アメリカンの保有地の減少(鎌田遵『ネイティブ・アメリカン』岩波新書(25頁)より)

このような、劇的な土地の減少がネイティブ・アメリカンの文化的な営みに大ダメージを与えたことは確認するまでもないでしょう。

ちなみに、1871年までに連邦政府は部族政府と370以上の条約を交わしています。現在までネイティブ・アメリカンは条約の不履行を批判してきましたが、アメリカ政府が約束を守る日は来るのでしょうか。

1章のまとめ
  • インディアン居留地(Indian reservation)とは、もともと17世紀のアメリカ北東部の入植地の一部を、ネイティブ・アメリカンを保留する目的で設置されたもの
  • 現在はインディアン局の管理の下におかれつつも、主権をもった部族政府が置かれている
  • インディアン居留地における部族政府の自治権は、「条件付き」である

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2章:インディアン居留地の現在

さて、インディアン居留地における社会経済的な状況、健康状況は好ましいものではないです。それは居留地だけでなく、ネイティブ・アメリカンが抱える最も大きな問題の一つです。

しかし、希望がないわけではありません。インディアン居留地におけるカジノ経営で成功を収めた部族は、その収益でインフラや公共施設の整備などをしているといった事例もあります。

そこでインディアン居留地の現在を知るために、まずは「ネイティブ・アメリカンの社会経済的・健康状態」を概観し、その後に「インディアン居留地におけるカジノ」を紹介します。

2-1: 社会経済的・健康状態の問題

ここではデータを「失業率と社会経済的な状況」「健康状況」をみていきましょう。

2-1-1: インディアン居留地における失業率と社会経済的な状況

少し古いデータですが、富田は『アメリカ・インディアンの歴史』(雄山閣)のなかで、インディアン居留地における失業率を次のように示しています。(富田虎男『アメリカ・インディアンの歴史』雄山閣, 9頁を参照)

1989年におけるインディアン局の調査

  • インディアン居留地とその周辺に住む先住民の数…約94万人
  • 労働人口…約63万人(学生などの働けない人の人口が約18万人)
  • 実際に働いている人…約23万人
  • 失業率…約33%

失業率が約33%あることに驚きですが、サウスダコタ州やネブラスカ州における居留地における失業率は約70〜80%に上るといいます。

仕事を求めて都市部に進出するネイティブ・アメリカンも多くいますが、差別や偏見に遭い仕事がなく、居留地に帰り、酒に溺れるという人々も多くいます。

残念なことに、この状況は全くといっていいほど改善の兆しをみせていません。鎌田は2003年におけるインディアン局の調査を示しています。(鎌田遵『ネイティブ・アメリカン』岩波新書, 156頁を参照)

2003年におけるインディアン局の調査

  • インディアン居留地とその周辺に住む先住民の労働人口…約80万人
  • 実際に働いている人…約40万人
  • 失業率…約50%

さらに悪いことに、職に就く人々の32%は貧困層に属しており、働いても貧困から抜け出せない構造があることがわかります。

事実、居留地における平均所得は794ドルで、全国平均2万158ドルの1/3しかないそうです。

鎌田はこの状況を以下のようにいいます。

移民の貧困問題と決定的にちがう点は、移民は子孫の代でアメリカ社会に慣れ、貧困から脱出する可能性をもっているのにたいして、この国に一番長く居住する先住民は、長いあいだ貧困から脱出する術をもたず、貧困を再生産しつづけていることである。

(鎌田遵『ネイティブ・アメリカン』岩波新書, 157頁を参照)



2-1-2: 健康状況

また、上述した阿部珠理はネイティブ・アメリカンが「最も不健康」な民族と言われることを述べて、疾病や犯罪に関するさまざまなデータを提示しています。(阿部珠理『アメリカ先住民-民族再生にむけて-』角川書店, 40頁)

ネイティブ・アメリカンと全米の比較

  • 肝臓疾患…全米4倍の発症率
  • 殺人死…全米の2倍の確率
  • 事故死…全米の3倍の確率
  • 糖尿病…全米の2倍の確率
  • 自殺…全米の2倍の確率
  • HIV…全米の2倍の確率
  • 結核…全米の7.5倍の確率

21世紀も四半世紀を過ぎた今日、生物学的差異に優劣をつける「科学的」な人種主義でネイティブ・アメリカンと全米(特に白人)との差異を説明する人は少ないでしょう。

むしろ、これらのデータから理解すべきは、

  • 歴史的な人種主義により限定的な選択を強いられた結果、生まれた社会的な不均衡があること
  • つまり、個人の資質や努力の問題の根源ではなく、社会構造による特定の人種の歴史的な排除が問題にあること

です。

ネイティブ・アメリカンが経験した歴史は次の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参照ください。

→【ネイティブ・アメリカンとは】部族・歴史・居留地をわかりやすく解説

2-2: インディアン居留地におけるカジノ

ネガティブな話ばかりでしたが、近年、居留地におけるカジノ経営は注目を集めています。それはカジノの収益によって居留地の設備が充実するといった利点があるからです。

ここでは青柳が『ネイティブ・アメリカンの世界』(古今書店)で報告したコネチカット州のマシャンタケット・ピークワットの事例を簡潔に紹介します。

そもそも、マシャンタケット・ピークワットとは、

  • アルゴンキン語の系統に属する部族で、植民者によってほとんど絶滅したと考えられた人々
  • 1800年代初めマシャンタケットに居住する先住民は、わずか30人〜40人程度であった
  • しかし、1983年に連邦政府に部族と承認されつつ、不法な土地売買で失った土地を取り返した

という歴史をもつ人々です。

土地調停が成立した後、ピークワットは1986年にビンゴ、1992年にカジノをフォックスウッドという場所に開設しました。

これらのカジノが、周辺地域に次のような良い効果を生み出しました。

  • 雇用人数…1万7000人を創出
  • コネチカット州の経済効果…約10億ドル
  • コネチカット州の税収…約1億3000万ドルの増加

経済的な効果に加えて、カジノの収益は部族文化の教育に役立てられています。

たとえば、カジノ収益で部族文化と伝統を保全する「マシャンタケット・ピークワット博物館研究センター」が建設されました。

「マシャンタケット・ピークワット博物館研究センター」の建設費は1億9300万ドルであり、ワシントンDCにある「国立アメリカン・インディアン博物館」の建設費が1億1000万ドルであることを考えると、極めて大規模なセンターであることがわかります。

このように、ネイティブ・アメリカンよるカジノ経営は部族文化の保全だけでなく、周辺地域にもポジティブな経済効果をもたす起爆剤として注目を集めているといえます。

2章のまとめ
  • インディアン居留地における「失業率と社会経済的な状況」「健康状況」は危機的な状況
  • ネイティブ・アメリカンによるカジノ経営は部族文化の保全だけでなく、周辺地域にもポジティブな経済効果をもたす起爆剤となる可能性がある

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3章:インディアン居留地の学び方

インディアン居留地について理解を深めることができたでしょうか?

インディアン居留地に関してはまだまだ知るべきことがあります。この記事で紹介できた内容は一部にすぎませんので、これから紹介する教材を参考に理解を深めていってください。

まず、気軽に学べる教材として映画があります。次の記事ではネイティブ・アメリカンと映画の関係をまとめていますので、ぜひ紹介した映画をみてみてください。

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まとめ

今回の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • インディアン居留地(Indian reservation)とは、もともと17世紀のアメリカ北東部の入植地の一部を、ネイティブ・アメリカンを保留する目的で設置されたもの
  • 現在はインディアン局の管理の下におかれつつも、主権をもった部族政府が置かれている
  • インディアン居留地における「失業率と社会経済的な状況」「健康状況」は危機的な状況
  • ネイティブ・アメリカンによるカジノ経営は部族文化の保全だけでなく、周辺地域にもポジティブな経済効果をもたす起爆剤となる可能性がある

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