日本政治

【日本のリベラル(左派)とは】政治的立場と戦前~現代の歴史を解説

日本のリベラルとは
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あなたは、日本のリベラルがどのように生まれたもので、どのような政治的立場なのか知っていますか?

日本のリベラルについて端的にまとめると、

  • 政治的に…護憲、平和主義、反戦、社会主義、共産主義
  • 経済的に…大きな政府、福祉国家、格差是正、経済的弱者の救済
  • 文化的に…ジェンダーフリー、マイノリティの保護、麻薬合法化

などの政治的立場のことです。

「なぜこんなにいろんな立場が『リベラル』の一言にまとめられるの?」

と思われるかもしれませんが、これには思想の対立軸が複雑化していく現代の特徴があらわれています。

そこでこの記事では、

  • 日本のリベラルの意味、主張、特徴
  • 日本のリベラルな政党や人物
  • 日本のリベラルの誕生から現代までの歴史

などについて詳しく説明します。

歴史から見ていくと、なぜリベラルな立場の意義や、リベラルが生まれた理由、現代になって「衰退している」と言われる理由なども分かるはずです。

日本の政治を理解する上で避けられない概念なので、ぜひ知りたいところから読んでみてください。

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1章:日本のリベラルとは

もう一度、日本のリベラルな立場を確認すると以下のようになります。

  • 政治的に…護憲、平和主義、反戦、社会主義、共産主義
  • 経済的に…大きな政府、福祉国家、格差是正、経済的弱者の救済
  • 文化的に…ジェンダーフリー、マイノリティの保護、麻薬合法化

リベラルは「左派」「革新」などとも言われますが、一般的にはそれぞれほぼ同じ意味だと考えて問題ありません。

ただ、「左派」は広い意味で社会主義や共産主義も含む一方、リベラルは革新的・進歩的な思想から、社会主義・共産主義のようなイデオロギーを抜いた思想、のような意味で使われることも多いです。

なぜこれほど多様な立場がひとまとめに論じられるのか、まずは「そもそもリベラルとは何か?」ということから簡単に説明していきます。

1-1:日本のリベラル(革新・左派)の意味

日本のリベラルを理解するためには、そもそも「リベラル」とは何なのか?というところから理解する必要があります。

そもそも、リベラルとは、

人間の理性の力を信じ、現状に対する理想を描いて、その理想を実現するために革新的な活動をする思想や勢力

のことです。進歩主義と言われることもあります。

自由主義としては、啓蒙思想社会契約思想に原点があり、政治的な革新勢力・左派としては、フランス革命の時代に原点があります。

リベラルを理解するには、その対義語である、「保守主義」「右派」を理解することも必要です。

保守主義・右派とは、

リベラル・革新的な勢力に対して、人間が理性的に描く理想よりも、伝統的な慣習、制度、価値観、文化、歴史などの存在を重視し、伝統的思想に根差した体制を作ろうとする思想や勢力

のことです。

※保守主義について詳しくは以下の記事で解説しています。

保守主義とは何か
【保守主義とは】定義・歴史・影響をわかりやすく解説保守主義とは、伝統的な慣習や歴史、文化を重視する思想で、理性の力を重視する「進歩主義」に対抗する思想です。保守主義は一貫した思想というより、時代や国家によって異なる思想ですので、歴史や事例から詳しく説明します。...

簡単にまとめると、

「現状には問題がある。現実はこうであるべき。だからもっと理想に向かって現実を変えていこう。」と主張するのがリベラル・革新・左派であり、

「理想なんて絵にかいた餅にすぎない。伝統的なものには、歴史の中で取捨選択されてきたため価値があるのだ。だから理想より伝統を重視すべきなのだ。」と主張するのが保守主義・右派

だと考えてください。

1-2:リベラル(左派)と保守(右派)は対立軸が前提

「そもそも、なぜリベラルを『左派』などと言うの?」

という素朴な疑問もあるかもしれません。

その直接的な理由は、フランス革命時代の出来事までさかのぼるのですが、この点は以下の記事を参考にしてください。

右翼左翼をわかりやすく解説
【図解・右翼・左翼とは】フランス革命から現代日本までわかりやすく解説「右翼(右派)」「左翼(左派)」とは、よく聞くわりにあいまいな理解しかされていない言葉です。 右翼(右派・保守)とは、伝統的・...

それより大事なのは、リベラル・保守というのは思想的な対立軸を前提にした考え方だということです。

そして、混乱しがちなのが、思想的な対立軸には複数のものがあるということです。

思想的な対立軸が複数あるのに、それをごちゃまぜにしてリベラル・保守などと言われることが多いために、混乱を招いてしまうのです。

主な思想的な対立軸から整理すると、以下のようになります。

日本のリベラルの立場1 日本のリベラルの立場2 日本のリベラルの立場3 日本のリベラルの立場4

※実際の立場はもっと複雑ですが、上記は正確性よりも分かりやすさを重視した区別です。

このように、さまざまなテーマについて、革新的なポジションを取るのがリベラル・左派であり、保守的なポジションを取るのが保守主義・右派なのです。

厳密に言えば、日本における「左派」と「リベラル」は区別して考えた方が良いです。

歴史の中では左派勢力が社会主義・共産主義を掲げる時代が長かったことから、左派=社会主義・共産主義と思われることもあります。しかし、近年はイデオロギー的な色合いが薄いものの、政治的立場としては革新的・進歩的である立場が主流です。これがリベラルと言われる勢力と言えます。

つまり、近年の「リベラル」と社会主義・共産主義は別の立場です。

1-3:日本の思想の対立軸

さて、上記は単一の対立軸からの分類でしたが、実際の立場は複数の軸を重ねることで明確に見えてきます。

政治的・経済的統制とリベラルの位置久米郁夫他『政治学』を参考に作成

これは政治的統制の強さと政治的統制の強さから分類した立場です。

この図において、広い意味では社会主義や共産主義を含む左側がリベラルに、狭い意味では左下の象限がリベラルと扱われます。

つまり、「経済的統制、政治的統制が共に強い(社会主義や共産主義)」もしくは「経済的統制が強く、政治的統制が弱い(社会民主主義)」という立場です。

具体的には、

  • 資本主義的体制の枠内・枠外で、できるだけ弱者に優しい政策を行うことを目指す
  • 国民の税や社会保険料の負担が重くなっても、高齢者、子供、障碍者、病人、貧困層のためにお金を再配分する
  • 軍事的予算よりも、社会保障などのために予算を割く(そのため軍備拡張や米軍駐在には反対)

などの主張をするのが、日本のリベラルの政治的立場です。

つまり、経済的な統制を強くしても、弱者に優しく人権に最大限配慮した国家を作っていこうという姿勢を持っているのが、日本のリベラルの思想です。

■近年のリベラルの立場

経済・政治の軸だけでなく、「文化的・歴史的立場」も加えて考えると、

  • ジェンダーフリー重視
  • LGBTQに寛容な社会作り
  • 多文化主義人種差別の撤廃、マイノリティ保護
  • 国内のエスニック集団(アイヌ、琉球民族など)の文化保護
  • アジアとの和解や国内での人権を重視した教育

などの主張もあります。

これらは大雑把な説明ではありますが、まずは大まかな思想的・政治的立場について、頭の中にマップを描いてみてください。

それが日本のリベラルや保守主義を理解する第一歩です。

1-4:日本のリベラルな政党・人物

日本では、リベラルと言うと近年あまり良い印象は持たれていないように思えます。

それは、リベラルな政党(野党)が政治的な実行力に欠けていることからかもしれません。

戦後日本の政党におけるリベラル(革新・左派)は、

  • 社会党(1945~1996)
  • 社会民主党(1996~現在)
  • 日本共産党(1922~現在(合法化したのは1945年から))

です。

現在の国会では、福島瑞穂代表の社民党と、志位和夫委員長の日本共産党がリベラルです。

政界以外のリベラルな人物としては、

  • 筑紫哲也(ジャーナリスト)
  • 田原総一朗(ジャーナリスト)
  • 本多勝一(ジャーナリスト)
  • 姜尚中(政治学者)
  • 大島渚(監督)

などがリベラルであることで有名な人物です。

彼らは反体制・反権力的(つまり現政権を批判する)姿勢が強く、伝統的価値観を重視する立場は薄いです。

また、言論界においては、

  • 朝日新聞
  • 岩波書店
  • 赤旗(共産党の新聞)

などの雑誌・新聞がリベラルとして有名です。

日本のリベラルがどのようなことかイメージはついたでしょうか?

いったんここまでをまとめます。

1章のまとめ
  • リベラル(革新・左派)とは、さまざまな思想的な対立軸において、より進歩的・理想的な立場のこと
  • 日本でリベラルな立場を取るのは、社民党、共産党、朝日新聞、岩波書店、赤旗など
  • 日本のリベラルな主張としては、「アジア重視」「人権教育」「戦争責任」「天皇制否定」「護憲」「平和主義」「福祉国家」など

これから日本のリベラルの歴史的な経緯を解説しますが、こちらの書籍では大きな流れが分かりやすく解説されているのでおすすめです。

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2章:日本のリベラルの歴史

ここまでを読んで、「リベラルがどのような立場なのか分かったけれど、なぜこのような分類がなされるのか分からない」という疑問も出たかもしれません。

結論を言えば、リベラルと保守という対立軸は、歴史の中で形成され、変化してきたものです。

変化する中で複数の意味が生まれたために、このように多様な立場がまとめて「リベラル」と言われるのです。

そこでこれから、日本におけるリベラル(革新・左派)と保守(右派)の歴史を説明します。

2-1:リベラル(左派)の誕生:自由民権運動

日本でリベラル(革新・左派)と保守主義(右派)という立場が生まれたのは、「自由民権運動」からです。

自由民権運動とは、明治維新以降に権力を支配した薩摩・長州公家に対して、「議会を作れ」「民主主義的な体制を作れ」と主張し、実現に向けて行われた運動のことです。

民主主義については次の記事を参照ください→【民主主義とはなにか】

この時期の政治的なテーマは、「民主主義をどこまで認めるのか?」ということでした。

そのため、このテーマについて対立軸が生まれ、以下のように意見が分かれました。

  • リベラル(左派)…もっと議会の力を強めて、国民の意思を政治に反映できるようにするべき
    中江兆民、大井健太郎など
  • 保守(右派)…二院制議会を認めればそれ以上に議会の力を強める必要はない
    板垣退助、大隈重信、後藤象二郎など

より理想的な国家を作ろうとするリベラルと、過去の体制を重視する保守というわけです。

とは言え、保守も自由民権運動というリベラルな活動をしていた勢力なので、完全な保守でもない点に注意が必要です。

この時代に、より保守主義的だったのは、天皇が自ら政治を行うことを主張した山県有朋などです。

※自由民権運動について詳しくは以下の本を読んでみてください。

2-2:日本的の保守(右派)の誕生

これに対して、日本の保守(右派)勢力は、頭山満の「玄洋社」の運動からはじまると言われています。

玄洋社やその後に続く右翼運動の主張は、「天皇中心主義」「大アジア主義(アジア支配)」「軍国主義」などです。

彼らの運動が保守(右派)とされるのは、天皇を体制の中心にしようと考えていたためです。

■天皇中心主義は近代的保守主義

ここで注意が必要なのは、天皇に権力を求める思想自体が明治維新以降に生まれたものだったということです。

なぜなら、当時の日本にとっての旧体制とは江戸幕府のことであり、本来の保守(右派)なら江戸幕府を権力に据えることを主張することになるはずだからです。

しかし、実際には江戸幕府の復権を求める勢力はいませんでした。

そのため、

  • 保守(右派)も、近代化のために体制を刷新することは前提にしていた
  • その手段として伝統的権威と言える天皇を持ち出した

ということが言えます。

天皇を持ち出したのは、日本を一つの国家としてまとめ上げるためには、国民に一体感を持たせるナショナリズムが必要だったからです。

詳しくは以下の記事で説明しています。

ナショナリズムとは
【ナショナリズム・国民国家とは】成立過程から問題までわかりやすく解説ナショナリズムとは、特定の民族が政治的な一体性を求める思想・運動のことですが、単なる愛国心とは異なるものです。また、ナショナリズムを理解するためには国民、民族、エスニック集団の違いを理解する必要があります。ナショナリズムについて詳しく解説します。...

明治時代のリベラル(左派)と保守(右派)について結論を言えば、

  • 自由民権運動によって高まった自由主義・民主主義→部分的な民主化にとどまる
  • 天皇中心主義→政治からは退けられるも、教育分野に影響を与えていく
  • 自由民権運動右派→帝国議会で衆議院議員になっていく
  • 自由民権運動左派→社会主義、共産主義のようにさらにリベラル(左派)的な勢力に繋がっていく

ということになっていきます。

※右翼運動の先駆けである「玄洋社」について詳しくは以下の本を読んでみてください。

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2-3:大正時代:政治の左傾化(リベラル傾向)

その後大正時代には、

  • 天皇機関説…議会から選ばれた内閣が政治を運営すべき(天皇は象徴)
  • 民本主義…政党政治や普通選挙の実施を主張
  • 普通選挙(25歳以上の男性限定)の実現

など、さらなるリベラル(左派)な政治が実現していきました。

しかし、昭和初期になるとリベラル・保守共に過激になり、戦争に突入していきます。

※大正時代には大正デモクラシーによって、リベラルが大きく政治を動かしました。詳しくは以下の本をお読みください。

2-4:戦前・戦中のリベラル

昭和初期の戦前から戦中にかけては、日本の政治は過激化しました。

2-4-1:リベラル(左派)の過激化

昭和初期、リベラル(左派)勢力は、社会主義・共産主義に傾き過激な行動を取るようになりました。

その前提として、当時は、現代では考えられないくらい経済格差が大きく、また都市部と地方でも生活に大きな格差がありました。地方の農民や、資本家にこき使われる労働者、失業に苦しむ貧困者などが多数存在したのです。

世界での共産主義運動の活発化をきっかけに、日本国内でも、

  • 労働争議、小作争議
  • 共産党の活動活発化
  • 社会主義政党が政界進出

などが起こりました。

しかし、リベラル(左派)の中でもより「左寄り」な立場の人々は厳しく弾圧され、残ったリベラル(左派)の勢力は、右派の対外拡張主義、軍国化を肯定するようになります。

つまり、リベラル(左派)が「右寄り」になっていったのです。

2-4-2:保守(右派)の過激化

この時代、保守(右派)も過激化します。

当時、世界で全体主義国家(ファシズム、ナチズムなど)が登場し、軍国化を進めていました。

※全体主義について、詳しくは以下の記事で解説しています。

全体主義とは
【全体主義とは】生まれた理由からアーレントの主張までわかりやすく解説全体主義とは、個人の利益よりも全体の利益を重視し、そのためにカリスマ的指導者が一貫した世界観で世界を説明し、国民を動員する思想です。ナチズムやファシズムが代表例ですが、全体主義は現代でも生まれ得るものです。全体主義について詳しく解説します。...

それを見た日本の保守(右派)勢力は、日本も軍国化して豊かになろうと考えたのです。

計画・統制経済によって軍国化を進め、アジアを欧米の支配から解放することを建前に支配し、日本を豊かにすること。それによって、国内の貧しい農民や労働者を救うことを目指しました。

こうした過激な思想は、実際に、

  • 満州事変と満州国の建国(植民地支配)
  • 2.6事件や5.15事件などのテロ・クーデターにより理想的な国家を作ろうとする革新将校の活動

などの過激な活動に繋がります。

リベラル(左派)の右傾化と保守(右派)の過激化から、国内には軍部を止める勢力が少なくなり、戦争に突入していくことになりました。

2-5:戦後日本の左派

戦前日本の政治的対立軸を整理すると、

  • 明治…「天皇の権力をどこまで認めるのか」というテーマで、保守が「天皇の権力肯定」、リベラルが「議会の権力を強める」という立場に立った
  • 大正…大正デモクラシーにより、左傾化(つまり民主主義が強まること)した
  • 昭和初期(戦前)…世界での全体主義の登場から、政治的テーマが「軍国化か、国内格差の是正か」になり、保守(右派)が軍国化、左派が格差是正のための社会主義・共産主義に結びついた

ということになります。

つまり、時代を経るごとに政治的な対立軸そのものが変化しており、その結果、リベラル(左派)と保守(右派)の意味も変わってきているわけです。

2-5-1:戦後政治のリベラルと保守の誕生

それを踏まえた上で、戦後政治の対立軸を見てみましょう。

戦後政治は、まず権力の軸では「左傾化」しました。

それは、

  • 日本国憲法で、議院内閣制と象徴天皇制が規定された
    →天皇の権力がなくなり、議会によって選ばれた内閣が権力を握る、民主主義的体制が実現
  • 戦前の保守(右派)が政治から消滅した
    →戦争を主導した保守(右派)は、米軍によって権力から押し出され政治の表舞台から消えた
  • 左派の活動が合法化
    →治安維持法を廃止し言論や思想、政治活動の自由が守られ、非合法だった共産党の活動が合法になった

などのことが行われたからです。

これらは、アメリカの占領下で行われました。

■日本社会党:極左から左派へ

戦前、政界では極左扱いだった左派の社会主義政党たちは、「日本社会党」に合流しました。現在の、福島瑞穂代表が率いる社民党の前身です。

1947年から1948年までの短期間でしたが、片山哲が首相に就任するまでに認められる存在になったのです。

■日本自由党:左派から保守へ

戦前は、政界で左派扱いだった勢力は、戦後は「日本自由党」「進歩党」という保守勢力に集まりました。

進歩党は、民主党の前身です。

■左傾化した理由

戦後日本の政治が、全体的にリベラル傾向(左傾化)になったのは、自由主義・民主主義が日本国憲法の規定によって明らかになり、格差是正が新たなテーマになったからです。

つまり、もともと自由主義・民主主義を掲げていた勢力は、リベラルな存在ではなくなったため保守になり、格差是正を主張する社会主義・共産主義が革新的な勢力になったということです。

2-5-2:冷戦下の右派・左派対立軸の形成

さて、ここからようやく現代に繋がる右派・左派の対立軸が生まれます。

それが、

  • リベラル(左派)…非武装中立・護憲・平和主義
  • 保守(右派)…対米従属・改憲・再軍備

という対立軸です。

またここで、新たな政治的テーマが生まれたため、その軸の中でリベラルと保守が分かれたということです。

なぜこのような新たなテーマが生まれたのか。

それは、戦後すぐに冷戦がはじまり、世界は東西に分断され、日本もどちらの陣営につくのか選択を迫られたからです。

■吉田ドクトリン

当時の首相吉田茂は、対米従属的な政策として、

  • 自衛隊の前身となった警察予備隊の組織化(逆コース)
  • 共産党員の公職追放(レッドパージ)

といった政策を実施しました。

これが戦後日本の政治の中心テーマである、

「アメリカに追従し、安全保障はアメリカ頼りの中で、国内経済の発展にフォーカスする」

という「吉田ドクトリン」です。

これが、保守(右派)勢力の「対米従属・改憲・再軍備」という思想です。

■リベラルの保守批判

この吉田ドクトリンに対して、リベラル(左派)は、アメリカの言う通りに行動するのは主体的ではない。西側につけば、共産主義圏から攻撃されるため、非武装・中立の立場を堅持すべきと主張します。

これが、「非武装中立・護憲・平和主義」という戦後日本のリベラル(左派)の立場になったのです。

2-5-3:リベラルの活発化:60年代安保闘争

日本のリベラルが、「非武装中立・護憲・平和主義」という立場を取るようになったことは分かったと思います。

こうした立場から、60年代に起こったのが安保闘争です。

きっかけや吉田茂首相が、東側を無視し、西側諸国とのみ講和するサンフランシスコ講和条約を締結(1951年)したからです。

これに対してリベラル(左派)は、

  • 東側とも平等に講和条約を結ぶべき
  • 日本国憲法通りに、非武装中立国を実現すべき
  • 吉田の片面講和には反対

と主張します。

日米安保条約は10年の期限付きでしたが、その期限の1960年には、日米安保をさらに強化しようとしました。

それに対してリベラルは大反対し、それが60年代安保闘争だったのです。

2-6:リベラルの衰退

しかし、これ以降日本のリベラルはそれほど大きな影響力を持たないままで、現代では衰退しているとすら言われます。

その理由は、保守(右派)勢力が中道的な政策を行い、国民の支持を得続けたためです。

2-6-1:日本の保守(右派)の中道的政策

戦後の日本の政治は、吉田ドクトリンによって安全保障問題を棚上げし、国内経済に集中して取り組むことができました。

そのため、長らく日本の政権を担った保守(右派)勢力は、財務省や通商産業省が中心となった経済政策(傾斜生産方式や護送船団方式)を行い、高度経済成長を実現します。

つまり、保守でありながら経済的統制の強い政策を行ったのです。

しかも、当初は批判された対米従属的な安全保障・外交政策も、特別大きな問題を起こさないままでした。

さらに、戦後日本は福祉国家的政策、つまり年金や公的医療保険、雇用保険など社会保障サービスを充実させていき、格差是正にも取り組みました。

そのため、保守(右派)の政策に対して、国民が大きな不満を持つことがなくなっていったのです。

戦後の日本政治では、右派がリベラル寄りの政治を行ったことから、リベラルが強い影響力を持つチャンスがなかったのです。

戦後リベラルの通史として、以下の本が読みやすいです。

2-6-2:新左翼の登場

こうした保守(右派)の長期支配の中で、共産党をはじめとするリベラル(右派)も、過激な主張を行わないようになります。

その結果、共産党に不満を持った勢力「新左翼」が登場し、安保闘争でも「中核派」「革マル派」と言われる過激派を生みました。また、テロ組織「連合赤軍」も新左翼の中から生まれた勢力です。

しかし、このような過激な行動も、共産主義的思想も、豊かになった日本の国民の支持を得られるわけがありません。

そのため、新左翼の主張は共産主義的思想から、

  • 日本の豊かさは、貧しい資源輸出国の犠牲の上にある
  • 日本は戦争責任を償っていないため、補償・謝罪すべき

という運動をはじめます。

この新左翼の運動は、現代でもその名残を見ることができるでしょう。

2-6-3:リベラルの衰退と日本の右傾化

こうして日本のリベラル(左派)は衰退し、現代では知識人や文化人が持論を展開することはあっても、まとまった勢力として影響力を持つほどではありません。

その結果、保守(右派)の主張が目立つようになり、右傾化しているように見えるようになったとも言われます。

日本の右傾化について、詳しくは以下の記事で解説しています。

右傾化とは?
【右傾化とは】55年体制から安倍政権までの変化をわかりやすく解説右傾化とは、政治的には保守的に経済的には市場主義・新自由主義的に政策が傾くことです。世界では多くの国で右傾化しており日本でもその傾向があります。日本や世界の現状を知るために理解しておくべきですので、右傾化現象を詳しく解説します。...

さらに、1991年に冷戦が終結したことで共産主義の魅力が一切失われ、また従来の「リベラルVS保守」という対立軸が意味をなさなくなりました。

そのため、今では多くの政治学者が「リベラルVS保守」「右翼・左翼」という区別自体が意味がなくなっていると主張しています。

それでは、戦後日本のリベラル(左派)についてまとめます。

2章のまとめ
  • 日本のリベラルは、自由民権運動から生まれた
  • リベラル勢力は大正時代に強くなり、戦前・戦中には右傾化、戦後は全体的に左傾化
  • 戦後政治は保守がリベラル寄りの中道的な政策をしたため、リベラルが影響力を持てなかった
  • 現在は、冷戦終結によるイデオロギー対立の終焉によって、従来の「リベラルVS保守」という対立自体が意味をなさなくなっている

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3章:日本のリベラルの学び方

日本のリベラルの意味や歴史が理解できましたか?

もっとリベラルについて理解を深めたい場合は、これから紹介する書籍を読むことをおすすめします。

おすすめ書籍

おすすめ度★★★浅羽通明『「反戦・脱原発リベラル」はなぜ敗北するのか』 (ちくま新書)

先ほども紹介した『右翼と左翼』を書いた著者が、現代のリベラルについて論じた本です。リベラルの活動や衰退の原因について学ぶことができます。

おすすめ度★★仲正昌樹『集中講義!アメリカ現代思想―リベラリズムの冒険―』(NHKブックス)

日本のリベラルは、世界で言われるリベラルとは若干違います。特にアメリカの政治の「リベラル」な立場や、それを支える「リベラリズム」を知ると、リベラルの理解を深めることができます。アメリカのリベラルを知るにはこの本が一番良いです。

また、アメリカのリベラルについて以下の記事でも解説しています。

【アメリカのリベラル(左派)とは】保守との違いと歴史をわかりやすく解説アメリカのリベラルとは、一般的には民主党のことで経済的・社会的平等の達成のために、政府の役割を積極的に認める立場です。アメリカのリベラルは、1930年代から明確に強くなった思想で、旧来の「自由主義」とも異なります。アメリカのリベラルの特徴や歴史を解説します。...
おすすめ書籍・雑誌

日本のリベラルについて知るには、何よりリアルタイムの政治の動向を知ることが一番良いです。そのために役立つ新聞・雑誌を紹介します。

英文ビジネス誌 The Economist

ビジネスの最前線で勝ち残るための必要な情報が凝縮 日経ビジネス

ウォール・ストリート・ジャーナル

まとめ

この記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • 日本のリベラルは、政治的には対米従属の反対、平和主義、護憲、人権重視、経済的には福祉国家、社会保障サービスの充実を主張する立場
  • リベラルは自由民権運動によって生まれ、その後大正デモクラシーや戦後直後の政治で影響力を持った
  • 戦後政治では、保守がリベラル寄りの政治を行ったため、リベラルは影響力を持てなかった
  • 体制のリベラルに不満を持った一部の人々は新左翼として活動したが、国民の支持は得られなかった

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