マルクス主義フェミニズム(Marxist feminism)とは、資本主義社会のもとでの女性の抑圧を、家事労働を前提として維持される家父長制と資本制との特殊なむすびつきに求めるフェミニズムです。
この定義的な説明だけでは理解しにくいかもしれませんが、「家事労働」といったキーワードを理論的に理解することで、マルクス主義フェミニズムについて深く理解できるはずです。
この記事では、
- マルクス主義フェミニズムの背景・特徴
- マルクス主義フェミニズムの具体的な思想・批判
などをそれぞれ解説していきます。
好きな箇所から読み進めてください。
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1章:マルクス主義フェミニズムとは
1960年代後半から70年代にかけて世界中を席巻した第二波フェミニズムを思想的に分類すると、以下の3つに分けることができます。(→第二波フェミニズムに関して詳しくはこちら)
- リベラル・フェミニズム
- マルクス主義フェミニズム
- ラディカル・フェミニズム
1章ではマルクス主義フェミニズムを概説します。2章では具体的な思想から深掘りしますので、関心に沿って読み進めてください。
このサイトでは複数の文献を参照して、記事を執筆しています。参照・引用箇所は注1ここに参照情報を入れますを入れていますので、クリックして参考にしてください。
1-1: マルクス主義フェミニズムの背景
マルクス主義フェミニズムが誕生する背景とは、どのようなものだったのでしょうか?
19世紀以来、人間解放の理論として体系的で影響力があったのは間違いなくマルクス主義でした。マルクス主義が近代以降、資本主義社会の不平等と抑圧についての分析眼を持っていたのは、以下のページでもくわしく紹介しているとおりです。
マルクス主義に関してはこちら記事を参照ください。
しかしそれらは男性をモデルとして構築されたものであり、女性差別問題をその理論の中心に組み込んでいませんでした。
それは、第一波フェミニズムが幻滅した近代自由主義とも同様でした(→第一波フェミニズムについてはこちら)。女性は自立した男性に従属する存在であり、社会主義、自由主義、ともに想定される<人間>には、女性が含まれていなかったのです。
時代は下って1960年代、伝統的マルクス主義を批判して登場した新左翼運動も、男性中心主義を抱えていました。新左翼運動において、女性解放は次のように考えられていました。
- 女性解放より社会主義革命を優先させるべき
- 革命で女性は自動的に解放される
以上のような考え方に反発し登場したラディカル・フェミニズムが、男性による女性支配を問い、家父長制概念を立ち上げます。
しかしこの性支配一元論に対し、性による支配だけでなく、資本制とのつながりに関心を寄せ、その両方を問題にすべきという理論的潮流が生まれました。
それが、マルクス主義フェミニズムであり、社会主義フェミニズムです。
ちなみに、この呼称の違いは欧米では統一されておらず、既存のマルクス主義をそのまま女性に応用する一派を「マルクス主義フェミニズム」、ハートマン以降の二元システム論を「社会主義フェミニズム」と呼ぶ場合があります。
日本では、80年代以降、上野千鶴子、竹中恵美子、久場嬉子らのことを「マルクス主義フェミニスト」と呼ぶことが多いです。その場合、第二波フェミニズム登場以前の社会主義婦人解放論とは区別されます2古田 1997「マルクス主義・フェミニズム」江原由美子・金井淑子編『ワードマップ フェミニズム』新曜社 320−321頁。
1-2: マルクス主義フェミニズムの特徴
では、マルクス主義フェミニズムの思想的な特徴は何だったのでしょうか?その名のとおり、マルクス主義フェミニズムは、マルクス主義とフェミニズムの両方の視点を持った思想でした。
とくに、家事労働が不払い(アンペイドワーク)であることに着目し、資本主義社会における女性の抑圧が、資本制と家父長制のむすびつきのあり方によって成り立っていることを明らかにしたことが大きな貢献です。
しかしなぜ家事労働がタダ働きだと、女性が抑圧されていることになるのでしょうか?これについては2章でくわしく説明しますが、かいつまんで紹介すると、代表的なマルクス主義フェミニストのダラ・コスタの主張にその理由が現れています。
- マルクス主義フェミニストのダラ・コスタ(1972)は「主婦も労働者」であると主張した
- 工場から帰った夫の世話をし、慰め、明日工場で働く労働力商品(=夫)を市場に提供するという家事労働(=再生産労働)は、資本に利潤を生む以上、資本のための労働であるとして、セクシュアリティを含む家事労働にも賃金が支払われるべきだと強調した3伊田久美子 2019 「労働としてのセクシュアリティ:再生産労働論の再検討」『女性学研究』26(https://irdb.nii.ac.jp/en/01059/0004030835 2020年8月13日アクセス)
つまり、家事労働がタダ働きなのは、資本主義社会が維持され広がっていくために不可欠な、女性たちの労働の搾取であるからだと主張します。
ここでキー概念になるのがマルクス主義の史的唯物論です。この史的唯物論とは、マルクス主義の特徴的な考え方で、歴史の発展の原動力は人間の意識や観念にはなく、社会の経済構造にあるとする立場です。
マルクス主義フェミニストは、史的唯物論に立脚しつつ、女性の家事労働も、資本家や男性に搾取されているからこそタダ働きなのであり、家事労働の剰余価値の搾取によって、女性を抑圧する男性中心社会が維持されているのだという主張を展開していきます。
そして、マルクス主義フェミニズムは、マルクス主義に対して、
- 経済決定論批判
- 階級闘争一元論批判
- 教条主義批判
- 白人中心主義批判
- 男性優位主義批判
を与えます。
これらの批判を乗り越えるために、家事労働論やインフォーマルセクター研究、有色のフェミニズム、世界システム論、精神分析を取り入れたフェミニズムなどさまざまな理論を展開していきました。
1-3: マルクス主義フェミニズムとほかのフェミニズムとの関係
では、第二波フェミニズムのほかのフェミニズムとの関係はどのようなものでしょうか?
まず、ラディカル・フェミニズムについては、以下のとおりです。
- 家父長制という概念によって家族の中の支配関係をあらわにした貢献は認めつつも、性支配一元論では市場との関係が説明できないとして、ハートマン以降はマルクス主義と両方を受容してはじめて女性の抑圧を理解できるという立場をとる
- 一方、ヤングは「資本主義的家父長制」という単一のシステムによってこそ女性の抑圧を説明できると「統一論」の立場をとる
いずれにせよ、「唯物論」に足場を置くマルクス主義フェミニズムは、家父長制だけに注目するラディカル・フェミニズムについて「観念論」と斥け、「市場」と「家族」の相互依存関係を問うことで、歴史的な形態を分析しようという点で異なるものといえます。
ラディカル・フェミニズムに関してはこちら→【ラディカル・フェミニズムとは】背景・特徴・運動をわかりやすく解説
家父長制に関してはこちら→【家父長制とは】近代における成立の歴史と日本・ヨーロッパの事例からわかりやすく解説
さらに、近代市民社会が前提とする人間像に近づこうとするリベラル・フェミニズムとの違いは、その近代市民社会というフレームを受け入れるか、そのフレーム自体を食い破ろうとしているかという点で大きく異なるといえます。
リベラル・フェミニズムに関してはこちら→【リベラル・フェミニズムとは】特徴・運動・批判からわかりやすく解説
以上のように、マルクス主義フェミニズムは、労働における女性の従属性を軸に、家父長制と資本制のむすびつきによって編み上げられた近代的な性支配の仕組みを批判し、構造的に解明しようとしたフェミニズムだということができます。
- 19世紀以来、人間解放の理論であったマルクス主義が想定する<人間>には女性は含まれていなかった
- マルクス主義フェミニズムは、マルクス主義の史的唯物論に、ラディカル・フェミニズムの家父長制概念を取り入れることで生まれた
- マルクス主義フェミニズムは、家事が不払い労働(アンペイドワーク)であることを発見した
2章:マルクス主義フェミニズムの具体的な思想
マルクス主義フェミニズムの最大の貢献は、家事労働という概念の発見でした。2章では「家事労働論争」「再生産様式の理論」「マルクス主義フェミニズムへの批判」から、マルクス主義フェミニズムの思想についてより詳しく見ていきたいと思います。
2-1: 家事労働論争
本節では、古田睦美の議論を主に参考にしながら「家事は労働か」「家事労働はどのような価値を生むのか」「家事労働はどのような関係の中で行われるのか」の3点について考えていきます4古田睦美 2002「家事労働をどう捉えるか:家事労働論争からアンペイド・ワークの測定へ」『家計経済研究』56 40−47頁(http://kakeiken.org/journal/jjrhe/56/056_05.pdf 2020年8月13日アクセス)。
2-1-1: 家事は労働か
1章では当たり前のように飛ばしてきましたが、「家事労働」という言葉を聞いて、一瞬「?」となった方はいませんか?
それは当然の反応だと思います。というのも、家事と呼ばれる行為、炊事、洗濯、掃除、インテリアで部屋を飾るなどの行為は、生きていれば誰もが行うことであって、「労働」と名付けるのは大げさなのではないかと考える人がいても不思議ではありません。
普段わたしたちがイメージする労働とは、市場で行う生産労働であり、その対価として賃金をもらうことができます。しかし、家事は家庭で行う再生産行為であり、どれだけ文句をいっても、誰も賃金など払ってはくれません。
でも、そこに疑問を投げかけたのが、初期のマルクス主義フェミストでした。大まかに、以下のような流れがあります。
- ベンストンは1969年の論文で、女性が家庭内で行っている家事を労働と位置づけ、搾取されていると最初に論じた。以降、さまざまな論客が女性の家事労働について論じはじめる
- オークレイ(1974)は主婦とその労働についてとりあげ、資本主義こそがプロレタリアと主婦の両方を作り出したのであり、家事は近代産業社会を維持するために不可欠の労働であると論じた
- さらに、上述のダラ・コスタ(1972)は「家事労働に賃金を!」というスローガンを打ち出し、資本主義は家事労働を不払いにすることによって根源的搾取により成立していると訴え、運動を展開した
コスタの運動は賛否両論を巻き起こしましたが、これまで愛や本能という名のもとで消費活動や余暇活動とみなされてきた女性たちによる家事という諸活動が、「労働」であると認識され、合意された点は重要な一歩でした。
2-1-2: 家事労働はどのような価値を生むのか
家事が労働なら、それはどのような労働なのでしょうか?この点に関して、以下について積極的な議論が展開されます。
- 家事労働は経済価値を生むのか
- 生産的労働といえるのか
- 家事労働の労働過程や生産関係はどのようなものか
- 資本主義とどのような関係にあるのか
家事労働は価値を生み出す、あるいは、夫という明日の労働力商品を再生産するというセカムやダラ・コスタによる主張に対して、旧来のマルクス主義者たちは、家事は市場を経由しないために経済的価値を持たないと反論しました。
このような論争をつうじて、家事は「交換価値」は持たないが、「使用価値」をつくり出すという認識が広がっていきます。それぞれの価値に関して、少し解説します。
そもそも、マルクスによる生産労働とは、交換価値と使用価値を帯びる生産物を生み出す行為です。その交換価値から使用価値を差し引いた剰余価値こそが、資本家による労働者の搾取の対象となります。
思考実験として、仮に家事労働と生産労働の搾取のメカニズムが同じだと考えてみてください。家事労働という他者のケアを含む労働が完全に不払いであることは、女性の家事労働は100%搾取されていると論じることもできるようになるわけです。
このように、マルクス主義フェミニズムによるこれまでの経済学や社会理論に対する挑戦は、経済と経済でないもの、生産労働と非生産労働、有償と無償を分けるものとは何であるかという根本的な疑問を投げかけることになりました。
このように家事を労働として考えることをとおし、問題の核心は「有償労働と無償労働の性別による分割にこそある」というポイントが浮かび上がってきたのです。
2-1-3: 家事労働はどのような関係のなかで行われるのか
では、家事労働はどのような関係のなかで行われ、どの場合に不払いになり、どの場合に有償になるのでしょうか?
たとえば、以下のような例を考えてください。
- パートで働く主婦がスーパーの惣菜売り場で客のためにおかずを作るという行為には賃金が支払われるのに、自宅のキッチンで家族のためにおかずを作る場合はタダ働きとなる
- 他者の都合にふりまわされつづけ、自分の時間はとれず、誰からも評価されない――家事労働は、クリーニング店やベビーシッター、メイドサービスなど家庭の外で契約して行われる場合は有償の仕事になるが、家庭という私的領域のなかで家族のために行う行為は無償となってしまう
家事労働はたとえ同じ労働的行為でも、公私という領域、そして家族という関係においてその経済価値がなくなるのです。これをマルクス主義フェミニズムは、男性による女性の労働の領有と位置づけました。
2-1-4: ここまでのまとめ
以上、1960年代後半から70年代の欧米における家事労働論争を見てきました。
マルクス主義フェミニストたちは、家庭のなかで女性が行う家事を「労働」としてとらえ、「なぜ家事労働は不払いなのか」「家事労働は経済的価値をなぜ生まないのか」をいう問いをもとに、資本制と家父長制の矛盾をつなぐ家事労働の意味について、議論をたたかわせました。
その結果、以下のことを明らかにしました。
- 家事を「労働」とする認識は、労働概念を押し広げた
- 家事労働の経済価値について、性に割当てられていることが問題の核心だと明らかにした
- 家事労働は労使関係における剰余価値の搾取とは異なるメカニズムで搾取されている
このように、マルクス主義フェミニズムは家事労働がいかなる歴史的条件において不当に搾取される労働であることを明らかにすることをとおして、家事労働こそが女性の抑圧の物質的基盤になっていることを示しました。
2-2:再生産様式の議論
家事労働は、再生産労働と同じ意味で扱われることも多いのですが、日本のマルクス主義フェミニストである上野千鶴子は、再生産をひとつの自立した様式として位置づけました。それは、どのような議論だったのでしょうか?5上野千鶴子 1990『家父長制と資本制』岩波書店 69頁以下
まず、再生産には以下の3つの意味があります。
- 生産システムそのもの再生産
- 労働力の再生産
- 人間の生物学的再生産
マルクス主義フェミニズムは家事労働論争で②をメインに使ってきましたが、①と③には異なる源泉があります。
- ①はアルチュセールの立場
→資本制システムの再生産におけるイデオロギーの役割を強調したもの - ③はメイヤスーの立場
→未開社会の親族構造の分析から「再生産様式」という概念を使った
ここで、上野はメイヤスーの次のような議論に注目します。
- メイヤスーは、社会の階級関係は生産手段の分配によってだけではなく、「再生産手段」という女性の分配によっても定義されるとする
- この再生産手段である女性の管理と統制は、社会にとっての核心であり、この様式をつうじて、最終的には生産様式も統制されていると論じた
- つまり、メイヤスーにとって階級関係とは、生産関係である以上に再生産関係である
ところが、このメイヤスーの主張に対して、マルクス主義フェミニストたちからの反応はかんばしくありませんでした。というのも、彼女たちは「生産が再生産を決定する」という生産至上主義の命題を手放さなかった、つまり、家父長制の独立性を認めなかったのです。
フェミニストは「女が劣った生産者であるのは、女が再生産者であるからだ」という説明を裏付けるために、生産様式と再生産様式が互いに矛盾する、という仮説をキープしてきました。これに対して、上野はこう反論します6上野千鶴子 1990『家父長制と資本制』岩波書店 84頁。
女が二流の生産者になるのは、ただ生産労働と再生産労働とがトレード・オフ(あちら立てればこちら立たず)の関係にあるような場合に限って、そうなのだ。そして近代社会とは、生産労働と再生産労働とが矛盾・抵触しあうような生産様式と再生産様式との間の編成を作り上げた社会なのである
つまり、再生産が生産に抵触するという考えの中には、近代社会が要請する、ギリギリの生存ラインまで目一杯働くという前提があるのです。もし、狩猟採集社会の住民のように1日4時間の労働で生産を極大化しなければ、それらは抵触しないはずです。
さらに、再生産が女性に性別配当されていなければ、女性が生産と抵触することはありません。近代以前、女性が再生産者であると同時に生産者であったように、男性も生産者であると同時に再生産者だったのです。
このように上野は、マルクス主義フェミニズムが生産至上主義を超えられていないと批判し、メイヤスーの「再生産様式」を援用しながら、再生産労働の概念化を試みました。
2-3:マルクス主義フェミニズムへの批判
最後に、マルクス主義フェミニズムに浴びせられた代表的な批判について見ていきましょう。岩本美砂子は、以下のようにまとめています7岩本美砂子 1997「ポストマルクス主義フェミニズム」江原由美子・金井淑子編『ワードマップ フェミニズム』新曜社 348−349頁。
①本質主義批判
- 女性の抑圧を再生産に位置づけるとするならば、抑圧は女性の生殖機能から生じることとなってしまう
- これを回避するために、マルクス主義フェミニストは生産と再生産が本来矛盾すると説明してきたが、これに対して、女性の抑圧をなくすには、女であることをやめるか、女だけのユートピアをつくるしかないとの批判が起きた8吉澤夏子 1993『フェミニズムの困難』勁草書房 14頁
※本質主義に関してはこちら→【本質主義とは】意味から構築主義による批判までわかりやすく解説
②家父長制還元論批判
- マルクス主義フェミニズムによる抑圧の説明は、女という集団と男という集団を前提に立っている
- マルクス主義が階級還元論なら、フェミニズムは家父長制還元論であるという批判が寄せらた
③すべての女性がフェミニストではないという批判
- 女性もしくはフェミニストの利益は、常にどこでも一致するのかという問いに答えていないという批判があった
- とくにイギリスでは、1979年のサッチャー政権以来の軍拡、福祉削減、中絶規制の強化という「反女性政策」が、女性首相によって進められたことによって、「女はひとつではない」という本質主義批判が高まった
④誰が弱者のケアをするのかという批判
- ネオリベラリズム下における新保守主義では福祉を削除し、女性にケア役割を再強化しようという傾向にあった
- これに対して女性が無償労働に反対するなら、誰が弱者のケアをするのかという問題が浮上した。家事労働を主題とするマルクス主義フェミニズムは、これに代案が示せていないという批判に直面することになった
本質主義批判は、ラディカル・フェミニズムにも寄せられた批判のひとつです。ポストモダンの流れにおいて、実践は多様であり、女性は不均質であり、個人の中でさえ不均質で分断されていることが明らかになってきました9岩本 同上 355頁。
そこで登場するのが「ポストマルクス主義フェミニズム」です。「女性の抑圧」というあらかじめ構成されたカテゴリー観を否定し、女性というカテゴリーを生む特定の歴史的状況や文脈を問題にすることで、多様性を認めつつ、徹底的な平等を目指す新たなフェミニズムが目指されました。
女性はもはや一枚岩で語ることができないという認識の前で、フェミニズムはどのように連帯の可能性を見出すことができるのか、ひきつづき、考えていきたいと思います。
- マルクス主義フェミニズムは、家事労働論争をとおして、不払いの家事労働が女性を抑圧する物質的基盤であることを明らかにした
- マルクス主義フェミニズムは、再生産様式に着目し、生産と再生産が抵触するのは近代社会特有の現象であると論じた
- マルクス主義フェミニズムが受けた批判は、女性というカテゴリーの設定は本質主義的であるというものだった
3章:マルクス主義フェミニズムを学ぶためのおすすめ本
マルクス主義フェミニズムについて理解できたでしょうか?
この記事で紹介した内容はあくまでもきっかけにすぎませんので、下記の書籍からさらに学びを深めてください。
オススメ度★★★ 上野千鶴子 1990 『家父長制と資本制――マルクス主義フェミニズムの地平』(岩波書店)
女性の抑圧の構造を解明するために、「マルクス主義」と「フェミニズム」というふたつの理論装置を弁証法的にとらえ分析。このページでも多くを参考にしています。
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オススメ度★★★ Hartmann, Heidi., 1981, The Unhappy Marriage of Marxism and Feminism: Toward a More Progressive Union. In Women and Revolution: A Discussion of the Unhappy Marriage of Marxism and Feminism,ed. Lydia Sargent. Boston: South End Press(日本語は田中かず子訳の『マルクス主義とフェミニズムの不幸な結婚』勤草書房)
家父長制と資本制の「二元システム論」を唱えたハートマンによる同題の論考を収録。マルクス主義の再構築を目指す「統一論」を主張したヤングの論考も必読です。
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オススメ度★★★ 江原由美子・金井淑子(編)1997『ワードマップ フェミニズム』(新曜社)
現代フェミニズム理論の諸潮流について、日本におけるそれぞれの代表的論者が執筆しています。フェミニズムについての知識をさらに深めたい人におすすめ。
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まとめ
最後にこの記事の内容をまとめます。
- マルクス主義フェミニズムは、人間解放の理論であるマルクス主義に、ラディカル・フェミニズムの家父長制概念を取り入れることで生まれた
- マルクス主義フェミニズムは、家事が不払い労働(アンペイドワーク)であることを発見した
- マルクス主義フェミニズムは、家事労働論争をとおして、不払いの家事労働が女性を抑圧する物質的基盤であることを明らかにした
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