心理学

【バーナム効果とは】意味・例・心理学的な実験からわかりやすく解説

バーナム効果とは

バーナム効果(Barnum effect)とは、誰にでも当てはまるようなことを、検査や占いの結果として提示されると、自分に当てはまると判断されやすくなる現象のことです。

あなたに馴染み深い「おみくじ」もバーナム効果の一種です。バーナム効果が生じやすい状況を理解すると、日常的にバーナム効果を意識することができるでしょう。

そこで、この記事では、

  • バーナム効果の意味・例・原因
  • バーナム効果の心理学的実験

をそれぞれ解説していきます。

関心のある所から読み進めてください。

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1章:バーナム効果とは

1章では、バーナム効果の全体像を提示します。バーナム効果の心理学的実験に関心のある方は2章から読んでみてください。

このサイトでは複数の文献を参照して、記事を執筆しています。参照・引用箇所は注1ここに参照情報を入れますを入れていますので、クリックして参考にしてください。

1-1: バーナム効果の意味

バーナム効果について、詳しい説明をする前に、1つ、テストをしてみましょう。『』の中を読んでみてください。

『あなたは、森の中を遭難しています。その森は木々がうっそうと茂っており、昼間でも遠くを見渡せないほどです。そんな中、あなたは助けになるものを発見しました。それは次のうちどれでしょう。

  1. トランシーバー
  2. 周辺の地図
  3. 虫よけスプレー

さて、実はこの質問は心理学的な背景があります。精神分析学の祖と言われているフロイトによると、森を遭難した状況というのは、自身の人生における問題に直面した状況を暗示しています。

そのような状況下で、あなたが発見したものは、無意識(フロイトはこれをエスと言いました)に発見したいと望んでいることを暗示しています。それ故に、ここでの選択はあなたの欲求や、現在ぶつかっている問題を暗示しています。

まず、①のトランシーバーは、他者とのつながりを希求する欲求を暗示しています。すなわち、①を選択したあなたは、時々、他人から好かれ、称賛されたいと思うことがあるのではないでしょうか。

次に、②の周辺の地図は人生における足跡です。それを求めるということは、自身の人生の足跡に対する自信の無さを暗示しています。②を選択したあなたは、時々、あなたは自分の決断や行動が、正しかったのかどうかを悩むことがあるのではないでしょうか。

最後に③の虫よけスプレーは、外敵からの防御、他者を寄せ付けたくないという欲求を暗示しています。そのため、③を選択したあなたは、大勢の人といるのも好きですが、時には一人でいたいと思う時があるのではないでしょうか。』

いかがだったでしょうか?バーナム効果の記事を読んでいる皆さんであれば、もうおわかりかもしれませんが、『』の中で書いたことは、事実を交えた噓っぱちです。

たしかにフロイトは、無意識のことをエスと呼んでいますが、遭難が何を暗示しているかなど、何も言っていません。また、発見したものによって何かが暗示されるようなこともありません。つまり、この検査には何の意味もありません。

※フロイトの無意識に関してはこちらの記事を参照ください。→【フロイトの無意識とは】意識やエスとの関係をわかりやすく解説

しかし、自分が選択した答えがあてはまると感じた人は多いのではないでしょうか。このように、検査や占いの結果として提示されると、その結果が実際に検査や占いの結果として出てきたものではなかったとしても、自分に当てはまると判断されやすくなる現象がバーナム効果なのです。



1-2: バーナム効果の例と原因

バーナム効果(Barnum effect)は、ミール(1956)によって命名されたものだといわれています2Meehl, P. E. (1956) Wanted‐A good cookbook. American Psychologist, 11, 263 – 272.。その由来は、どんな客でも喜ばすことが出来る出し物をした興行師バーナム(Barnum, P. T. 1810-1891)にちなんで名付けられたそうです。この、バーナム効果は、次の2点を満たすような場合に生じやすいことが知られています。

1-2-1: おみくじ

1点目は、ある結果を「あなた」に対する特定の検査や性質による結果だというように思わせることです。今回の例では、まず初めに選択を行いました。これにより、この選択肢を選択した自分だけに当てはまる結果なんだと思ってしまうわけです。

このように、何らかの選択によって決まったことだというように思わせる方法で、日本人にとってなじみ深いものがあります。それはおみくじです。

バーナム効果としてのおみくじ

  • おみくじの内容はまさに誰にでも当てはまる内容である
  • なぜなら未来のことですからどんな可能性でもあるためである
  • しかし、未来の運を伝えるだけなら、参拝に来た人に、あなたは吉ですとか、西に失せものありとかアドバイスをするという形でもいい
  • だが、多くの人は、おみくじはなんとなく信じていても、未来のことが分かるという人を信用いない

このように、バーナム効果を考えるときには、この“あなた”に対する特定の検査や性質による結果だと思わせることが重要です。

1-2-2: 誰にでも該当すること

2点目は、誰にでも当てはまることを結果として言うということです。

上の例において、検査の結果として使用した、「他人から好かれ、称賛されたいと思う」「時々、あなたは自分の決断や行動が、正しかったのかどうかを悩む」「あなたは、大勢の人といるのも好きですが、時には一人でいたいと思う」という項目は、バーナム効果項目と呼ばれるものです。

実際に、これらの項目は多少文言に変更を加えていますが、丹治・佐藤・郡谷・辻(2002)の研究3丹治哲雄・佐藤史緒・郡谷寿英・辻大輔 「バーナム効果と非合理現象信奉との関連」『生活科学研究』25, 51-60頁において、80%以上の人があてはまると回答したものを使用しています。

ちなみに、上の問題の作成には、バーナム効果以外のテクニックも使用しています。少し心理学を勉強した人(このサイトを見ているような人)にとって、フロイトは精神分析学の祖として知られる存在だと思います。

そのため、これを読んだとき、フロイトが言っているのであれば正しいだろうと思ったのではないでしょうか?このような、ある領域で権威のある人の言っていることの正確性や妥当性を高く見積もってしまう現象のことをハロー(後光)効果といいます。→ハロー効果に関して詳しくはこちらの記事を参照ください。



1-3: バーナム効果が引き起こす誤った信念としてのしろうと理論

バーナム効果は、しろうと理論(lay theory)の形成に大きな役割を持っていることが知られています。

しろうと理論とは、

確固たる根拠があるわけではないにもかかわらず、実証的な研究を積み重ねている学者ではないような、一般の人々(いわゆるしろうと)が抱いているとされる、それなりに体系だってみえるものの捉え方や枠組みのこと

です4伊藤哲司. (2011). 「しろうと理論」 二宮克美・子安増生 (編著) 『キーワードコレクション社会心理学』 東京.

しろうと理論は、必ずしも誤っているわけではありませんが、その中には科学的には全く正しくないと考えられるようなものも含まれています。なぜなら、多くの場合このしろうと理論は論理の飛躍や、整合性のなさを伴うためです。

  • このしろうと理論の代表的な例が、血液型ステレオタイプと呼ばれる、血液型と性格が関連しているという誤った信念
  • 心理学者の中で、このような血液型と性格が関連していると考えている人が現代ではほとんど存在しない
  • にもかかわらず、血液型と性格の間に関連があるということを信じている人は少なくない

血液型診断を、バーナム効果が起こるために重要な要因として説明した2点で考えてみましょう。まずは、1点目の「あなた」に対する特定の検査や性質による結果の結果だというように思わせるという点です。

第一の点

  • これは、A型、B型、O型、AB型、といった血液型が個人ごとに決められているという点で満たされていると言える
  • 血液型は、血統や血縁といった、血に由来するものであるという点で、性格に関わるイメージが非常に強く、もっともらしい話ができやすいような物語性を持つ
  • つまり、血液型は、単純な血液の4つのタイプというだけではなく、自身の血統や血縁といった個人の血と強く関連するものだととらえられやすいと考えられる

続いて、2点目の観点です。血液型性格診断に使用される性格特性である、「几帳面」や「おおらか」、「変なところがある」といった項目はまさに誰にでも当てはまると考えられる項目です。

第二の点

  • 一度に1つではなく複数の性格特性を同時に示すことが殆どである
  • そのため、その項目があてはまると判断される確率はより高くなる
  • つまり、血液型診断における結果は、バーナム効果により非常に受け入れられやすい

それ故に、このようなしろうと理論の形成に、バーナム効果が影響を与えているということです。

最後に注意しておくと、しろうと理論の形成に影響を与えているのはバーナム効果だけではありません。確証バイアスや利用可能性ヒューリスティック等、さまざまな認知特性が影響を与えています。

1章のまとめ
  • バーナム効果とは、誰にでも当てはまるようなことを、検査や占いの結果として提示されると、自分に当てはまると判断されやすくなる現象のことである
  • 生じやすい状況①:ある結果を「あなた」に対する特定の検査や性質による結果だというように思わせること
  • 生じやすい状況②:誰にでも当てはまることを結果として言うということ

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2章:バーナム効果の心理学的実験

さて、2章ではバーナム効果に関する心理学的な実験を紹介していきます。

2-1: フォアによるバーナム効果実験

バーナム効果は、性格検査や占いの結果として、「誰でもあてはまる」ことを提示されると、自分についてあてはまるものだと受容してしまう現象だと説明してきました。ここではこのバーナム効果を検証した古典的な研究としてフォア(1949)による実験を紹介します5Forer, B. R. (1949). The fallacy of personal validation: a classroom demonstration of gullibility. The Journal of Abnormal and Social Psychology, 44(1), 118.

フォアはまず13項目のバーナム効果項目を作成しました。それを日本語に訳したものを、菊池・谷口・宮本を参考に以下に示します6菊池聡 谷口高士 宮元博章『不思議現象なぜ信じるのか こころの科学入門』(北大路書房)

  1. あなたは時として外交的で,愛想がよく、社交的であり、また、時として内向的で、用心深く、内気になります。
  2. あなたは他人から好かれ、賞賛されたいと願っています。
  3. 時々、あなたは自分の決断や行動が正しかったのかどうか深刻に悩むことがあります。
  4. あなたにはまだ利用されていない能力があります。
  5. あなたはある程度の変化の多様性を好み、禁止や限定を加えられると不満を覚えます。
  6. あなたは自分自身に対して批判的な傾向があります。
  7. あなたは自分のことを他人に率直に明かしすぎるのは賢明ではないと思っています。
  8. あなたの生活における大きな目標の一つは安全です。
  9. あなたは自分自身の頭で物事を考え、証拠不十分な他人の発言をそのまま受け入れたりしないという自信があります。
  10. あなたが抱いている望みのうちのいくつかはかなり現実性のないものです。
  11. あなたには性格的に弱点もありますが、たいていそれを補うことができます。
  12. あなたは現在、性的な適応に関する問題を抱えています。
  13. あなたは外面は自律的で自己管理してしいるように見えますが,内面的には心配性で、不安定な傾向もあります.

フォアはこれらの項目を利用して、バーナム効果が生じるかを検討しました。実験の内容はいたって単純です。

実験概要

  • まず、実験参加者は、「あなたの性格についての検査」という名目で検査を受けた
  • この時、実験参加者は、検査用紙にしっかり名前を記入した
  • その一週間後、実験参加者は検査結果を伝えるといわれ集められた
  • そして、検査結果として、すべての参加者に上記の13項目が与えられた
  • そして実験参加者はこれらの項目が正しいと思うかという質問に回答した

その結果、39名の参加者の内、29名の参加者が13項目のうち10項目を正しいと回答していました。詳しい内訳は、正しいと思った項目数が5項目の参加者が1人、8、9項目がどちらも5人、10項目が10人、11項目が9人、12項目が7人、13項目が2人でした。

つまり、多くの参加者が、実際には行っていない検査の結果の半分以上の項目を自分に対してあてはまるものであると判断したということです。

この実験で重要なのは、誰にでも当てはまることを自分だけに当てはまるものだと判断したという実験結果ではないという点です。

この実験で示されたのは、「あくまでも実際には行っていない検査の結果」として提示された、「誰にでも当てはまること」が自分に当てはまるものだと判断されやすいという点のみです。

多くの方がこの点を誤解し、バーナム効果のことを「誰にでも当てはまることを自分だけに当てはまるように判断してしまう効果」だと誤解しているように思います。

とはいえ、バーナム効果が非常に強い効果であることに変わりはありません。この記事を読んだ皆さんには、いんちき性格診断や血液型診断などの、診断結果が、本当に意味のある結果なのかを見抜く目を養ってほしいと思います。

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3章:バーナム効果を学べるおすすめ本・論文

バーナム効果を理解することはできました?

バーナム効果に少しでも関心をもった方のためにいくつか本を紹介します。

おすすめ書籍

オススメ度★★★ 菊池聡 谷口高士 宮元博章『不思議現象なぜ信じるのか こころの科学入門』(北大路書房)

血液型診断といった、よく考えるといかにも怪しい現象をなぜ私たちは信じてしまうのかでしょうか?という点にスポットを当てた書籍です。バーナム効果をはじめとする信じやすさの心理学に関心がある方におすすめです。

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Forer, B. R. 1949. The fallacy of personal validation: a classroom demonstration of gullibility. The Journal of Abnormal and Social Psychology, 44(1), 118.

2-1で紹介した、バーナム効果に関する実験の原典です。ほとんどのバーナム効果に関する研究はこの文献を引用しているので、バーナム効果を本気で深堀したいという方はチャレンジしてみてください。参考文献含めて6ページで、複雑な分析も行っていないので、英語ですが読みやすいと思います。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • バーナム効果とは、誰にでも当てはまるようなことを、検査や占いの結果として提示されると、自分に当てはまると判断されやすくなる現象のことである
  • 生じやすい状況①:ある結果を「あなた」に対する特定の検査や性質による結果だというように思わせること
  • 生じやすい状況②:誰にでも当てはまることを結果として言うということ

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参考文献

  • Forer, B. R. (1949). The fallacy of personal validation: a classroom demonstration of gullibility. The Journal of Abnormal and Social Psychology, 44(1), 118.
  • 菊池聡 谷口高士 宮元博章 『不思議現象なぜ信じるのか こころの科学入門』(北大路書房)
  • 伊藤哲司「しろうと理論」 二宮克美・子安増生 (編著) 『キーワードコレクション社会心理学』 東京。
  • Meehl, P. E. (1956) Wanted‐A good cookbook. American Psychologist, 11, 263 – 272.