心理学

【フランクル心理学とは】特徴を『夜と霧』とともにわかりやすく解説

フランクル心理学とは

フランクル心理学(frankl psychology)とは、オーストリアの精神科医ヴィクトール・フランクル(Viktor Frankl)によって提唱された心理学理論です。この心理学は精神療法のウィーン三大学派の1つとして知られており、世界中で広く認知されています。

フランクル心理学におうて、人間は「人生の意味」を追い求める存在であり「人生の意味」を実現させるために生きる存在であるといわれています。それは自分の「人生の意味」が分からなくなってしまったときに、生きづらさを感じるとされるためです。

このような感覚を経験的にもつ方も多いのではないでしょうか?

この記事では、

  • フランクルと誰か?
  • フランクル心理学の特徴
  • フランクルの代表作である『夜と霧』の概要

をそれぞれ解説していきます。

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1章:フランクル心理学とは

まず、1章では「フランクルの伝記的情報」「フランクル心理学の特徴」から、フランクル心理学を概説します。

2章ではフランクル著作の『夜と霧』を解説しますので、あなたの関心に沿って読み進めてください。

1-1: フランクルの伝記的情報

ヴィクトール・フランクル(ヴィクトール・フランクル 1905年 – 1997年)

まず、冒頭の確認となりますが、

  • ヴィクトール・フランクル(Viktor Emil Frankl)は、オーストリアの精神科医
  • 「人生の意味」に基盤を置いた独自の心理学理論を展開し、人間の心理について新たな視点からアプローチを行った
  • 現在、心理学において最も重要な人物の1人と評価されている

人物です。

では一体、「人生の意味」について追及し続けたフランクルの人生は、いったいどのようなものだったのでしょうか?

結論からいえば、フランクルの生涯を語る上で欠かせない出来事は、彼がユダヤ人であるがゆえにナチス・ドイツ政権によって強制収容所に収容された経験があることです。この経験がフランクル心理学の形成に大きく寄与しています。

その前に、フランクルを幼少期から振り返ると、基本的な情報は以下のようになります。

  • 1905年にオーストリアの首都・ウィーンに生まれ
  • 4歳の頃から「人生の意味」という概念に興味を持つような早熟な子どもだったよう
  • 大学在学中より個人心理学を創始したアルフレッド・アドラー(Alfred Adler)や精神分析学を創始したジグムント・フロイト(Sigmund Freud)に師事した経験をつ
  • 大学卒業後、フランクルはウィーンの病院でごく一般的な精神科医として働いた

このような人生を歩んでいたフランクルに、歴史的な出来事が介入します。

1938年のナチス・ドイツ政権によるオーストリア併合により、ユダヤ人のフランクルはドイツ人の治療を禁じられるなどの不当な制約を受けるようになります。

危険が迫る中でも、家族や患者を見捨てられずウィーンに留まったフランクルは、1942年に家族と共に強制収容所に収容されてしまいました。フランクルはこの収容生活で、彼の妻を含む家族全員を失っています。

劣悪な環境下の強制収容所において、フランクルは心理学的な研究を続けていきます。

  • 限界状況下における人間の変容について心理学的な視点から観察した
  • 収容中の経験やフランクル心理学の芽生えについてを、フランクルの著書である『夜と霧』で詳しく記述した(詳細は2章)

1945年になると、ドイツの敗退によってフランクルは収容所から解放されました。解放後のフランクルはウィーンの神経科病院に勤める傍らで、独自の心理学理論としてフランクル心理学を提唱しました。

このようにみると、フランクルは、

  • 第二次世界大戦中にナチス・ドイツによって強制収容されたという経験をから、希望を失ったり、自分の人生には意味がないと感じたりした人から命を落とすことを考察した
  • 「人生の意味」は主体的に生きるために必要不可欠であり、人間は「人生の意味」を実現するために生きるのだ、という斬新な学説の誕生は、強制収容所の経験に基づいている

といえるでしょう。

その後のフランクルは、自らの学説を基盤にした心理療法としてロゴセラピーを提唱しています(詳細は後述)。また「人生の意味」の重要さを広めるための講演活動を行ったりするなど、精力的に活動したことで知られています。

過酷な収容所生活を生き延びたフランクルは、再婚した妻や子どもに囲まれ92歳で人生の幕を閉じました。



1-2: フランクル心理学の特徴

上述の内容からわかる通り、フランクル心理学は第二次世界大戦後に提唱された心理学理論です。

そして、フランクル心理学は「人間は誰しも生きる目的や意味を求めており、人生の意味を見出すことで主体的に生きていくことができる」という考えに基づいており、人生における「意味」や「意義」といった概念を重要視するのが特徴です。

これだけではわかりにくいと思いますので、20世紀に心理学理論を打ち立てた、以下の学者の理論と比べてみましょう。

  • アルフレッド・アドラー(Alfred Adler)
  • ジグムント・フロイト(Sigmund Freud)
  • カール・グスタフ・ユング(Carl Gustav Jung)

簡潔にいえば、「人間の生きる理由とはなにか?」という問いに対して、これらの学者は次のような回答をします。

  • アドラー・・・人間が生きる理由は力(理想の自分が持っているだろう能力のこと)を手に入れて、劣等感を克服するためである
  • フロイト・・・人間が生きる理由は本能から生ずる快楽感情(不快なことを避け、快楽を求めようとすること)を満たすためである
  • ユング・・・患者とセラピストとの対話の中で明らかにされる、無意識から生ずる願いを実現するために生きる

このような回答に対して、フランクル心理学では人間は「人生の意味」を実現させようとする自発的な力によって生きる存在だとされます。フランクル心理学が「実存主義」的な心理学であるといわれるのはこの理由からです。

実存主義とは、ジャン・ポール・サルトルの「実存は本質に先立つ」いう言葉に集約される考え方。この実存主義的な考えに基づくと、人間は「自分の意思で自らの生き方(本質)を決めることができる存在」ということができる

加えて、フランクルは自身の心理学理論を基に「ロゴセラピー」という心理療法を開発しました。ロゴセラピーとは「人生の意味」を見出すことで疾患や苦境にある状態からの回復を目指す心理療法です。

具体的に、ロゴセラピーでは、

  • 患者が自分自身の「人生の意味」が分からなくなってしまった時に、疾患が発現すると想定さえる(この「人生の意味」が見つからず、何をしたらいいのか分からなくなってしまう感覚のことを「実存的虚無感」という)
  • このような状況に対して、患者が実存的虚無感を克服し、再び「人生の意味」のために生きることができるよう対話(治療、セラピー)が行われる
  • 有名な治療として、「逆説思考」「反省除去(脱反省)」の2つの技法がある

ものです。(→より詳しくはこちら

また、フランクルは著書において、「人間は自分の人生の意味が何であるかと問うべきではなく、問われているのは自分自身だということを認識しなければならない」と述べています。(フランクル 2004『意味による癒し ロゴセラピー入門』(春秋社, 81頁)を参照)

つまり、ロゴセラピーは受動的なセラピーではなく、患者自らが「人生の意味」を見出すことを求める心理療法です。セラピストが人生の意味を見つけてくれるわけではない、患者自らが見つけることで主体的に人生を生きることができるのだ、というのがフランクルの見解といえるでしょう。

1章のまとめ
  • フランクル心理学(frankl psychology)とは、オーストリアの精神科医・ヴィクトール・フランクル(Viktor Frankl)によって提唱された心理学理論である
  • フランクルの生涯を語る上で欠かせない出来事は、彼がユダヤ人であるがゆえにナチス・ドイツ政権によって強制収容所に収容された経験があること
  • 人生における「意味」や「意義」といった概念を重要視するのが特徴

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2章:フランクル心理学と『夜と霧』

そして、フランクル心理学を語る上で抜きにできないのはフランクル著作の『夜と霧』(1946)です。

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そのため、2章では『夜と霧』の概要とこの書物がフランクル心理学に与えた影響を解説してきます。

2-1: 『夜と霧』とは

結論からいえば、『夜と霧』とは、

  • フランクルが経験した強制収容所での出来事や、収容された人々の観察から得た「人生の意味」についての考察がまとめられた本
  • 世界中でベストセラーとなり、強制収容所の実態を語り継ぐ上での歴史資料としても知られている本

です。

フランクルは本書冒頭において、「おびただしい小さな苦しみ」を描くと示しており、作中では壮大な地獄絵図を描かないと主張しています。(フランクル『夜と霧』(みすず書房, 1頁))

つまり、心理学者でも精神科医でもない等身大の人間の体験記であることが強調されることによって、本書で描かれる収容所の日常風景はより胸に迫るものとなっています。

『夜と霧』は歴史的な価値をもつ体験記ですが、ここで押さえておきたいのは、『夜と霧』が強制収容所の悲惨さを伝えることをメインテーマとした書物ではないということです。

むしろ、本書では極限状態に置かれた人々の精神状態や行動の変化や、「人生の意味」の有無が人間にどのような影響を与えるのかについての考察がされています。

そもそも、フランクルは収容前から精神科医として働いており、患者の治療を通じて「人生の意味」が生きることにどのような影響を及ぼすのかについてかねてより理論を組み立てていました。

つまり、

  • フランクル心理学は強制収容所で生まれた心理学理論ではなく、元々フランクルが持っていたもの
  • フランクル自身の収容経験が、図らずもフランクルの持論の正当性を証明するものになった

といえます。

フランクル心理学を理解するうえで、フランクル心理学の構想ができたときと、フランクルの収容体験の前後関係について押さえる必要があります。



2-2: フランクル心理学と『夜と霧』

では一体、フランクルは過酷な環境下に置かれた人間からどのような示唆を得たのでしょうか?

2-2-1: 精神的な自由

まず、精神的な自由に関してです。フランクルは被収容者の精神状態や行動について、次のように言及しています。

人は強制収容所に人間をぶちこんですべてを奪うことができるが、たったひとつ、あたえられた環境でいかにふるまうかという、人間としての最後の自由だけは奪えない

(フランクル 2002『夜と霧』(みすず書房, 110頁)を参照)

つまり、フランクルは極限状況下にあり、肉体的な自由が失われた被収容者にも「精神的な自由」があったということを示しています。

『夜と霧』によれば、

  • 被収容者の生活は劣悪極まりないものであり、多くの被収容者が「感情の消失や鈍麻」「いらだち」を募らせていた
  • しかし、過酷な環境下においても、「通りすがりに思いやりのある言葉をかけ、なけなしのパンを譲っていた人びと」がいた

といいます。(フランクル 2002『夜と霧』(みすず書房, 104-110頁)を参照)

フランクルはこの事象から、どんな環境に置かれたとしても、その場所で自分がどんな行動を取るのかということや、その環境についてどのような態度を取るのかということは誰にも決められないと考えるようになりました。

事実、この考えはフランクル心理学の心理療法・ロゴセラピーにおける「意思の自由」という観念に示されています。

意思の自由は、「困難な状況下においても、人間は自分の行動や態度を自分自身の意思で決定することができる」というフランクル心理学の基本理念の1つ

そのため、繰り返しとなりますが、フランクルは「人生の意味」を決定したりその決定に沿った生き方をしたりする権利はその人自身に与えられ、他の誰にも干渉し得ない自由であると結論づけるに至ったのです。

2-2-1: 生きる希望

また、フランクルはユダヤ人収容者たちは「生きる希望」を失ったときに死んでしまったと語っています。

たとえば、『夜と霧』において、次のような考察がされています。

  • 1944年のクリスマスと1945年の新年の間の週にかつてないほどの死者が出たことが示されている
  • この期間に死者が大量に出たことについて、フランクルは「多くの収容者が、クリスマスには家に帰れるという、ありきたりの素朴な希望にすがっていた」と語っている(フランクル 2002『夜と霧』(みすず書房, 128頁)を参照)
  • 過酷な環境下であっても、「クリスマスには家族と会える」「温かい我が家で過ごせる」と考えるとき、収容者たちには「生きる希望」があった
  • しかし、クリスマスが近づくにつれて、解放されることはないと悟った収容者は「生きる希望」を失ってしまい、次々に命を落としてしまった

死者と同じような環境下で過ごしていたフランクルは、解放される日まで生きながらえることができました。その理由について、フランクルは「解放されたら自分の論文を多くの人の前で発表する」という希望を持っていたためと示しています。

フランクルは、収容所の実態と自らの体験を踏まえた上で、

自分を待っている仕事や愛する人間にたいする責任を自覚した人間は(中略)、自分が『なぜ』存在するかを知っているので、ほとんどあらゆる『どのように』も耐えられる

(フランクル 2002『夜と霧』(みすず書房, 134頁)を参照)

と結んでいます。

このようにみると、「生きる希望」とは「自分が存在する意味」「人生の意味」であり、人間を生かし、主体的に生きる人生へと導いてくれる根底的概念といえるでしょう。

このようにフランクル心理学は、「人生の意味」というテーマに正面からぶつかることで、人間がどのように生きるべきなのかを示した心理学です。強制収容所を経験したフランクルの真に迫る理論は、「人生の意味」の答えを探す現代人にも通ずるものがあるのではないでしょうか。

2章のまとめ
  • 『夜と霧』はフランクルが経験した強制収容所での出来事や、収容された人々の観察から得た「人生の意味」についての考察がまとめられた本である
  • 『夜と霧』では極限的な環境下における人間の精神的な自由や、生きる希望の意味が示されている

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3章:フランクル心理学のおすすめ本

どうでしょう?フランクル心理学の概要をつかめることができましたか?

ここで紹介した内容はあくまでもフランクル心理学の一部です。原著にあたりながら、あなた自身の学びを深めていってください。

おすすめ本

オススメ度★★★ ヴィクトール・フランクル『夜と霧』(みすず書房)

フランクルの経験した収容所生活の実態について詳細に知ることができる一冊で、「人生の意味」の有無が極限状況下に置かれた人間をどのように導いたのかについて述べられています。フランクル心理学の真髄を彼の体験談を通して学ぶことができます。

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オススメ度★★★ ヴィクトール・フランクル『それでも人生にイエスと言う』(春秋社)

フランクルの「人生の意味」に対する見解を詳しく学ぶことができます。春秋社はフランクルの論文をまとめたシリーズを9冊翻訳していますが、この本は該当シリーズの第一冊目になります。フランクルの思想をより専門的に学びたいという方におすすめです。

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オススメ度★★ 諸富 祥彦『人生を半分諦めて生きる』(幻冬舎新書)

フランクル心理学の実用的な活用方法について解説された本です。日本のフランクル研究の第一人者である諸富祥彦氏の著作であり、日常生活で感じる不安を軽減する方法の1つとしてフランクル心理学を紹介しています。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • フランクル心理学(frankl psychology)とは、オーストリアの精神科医ヴィクトール・フランクル(Viktor Frankl)によって提唱された心理学理論である
  • 人生における「意味」や「意義」といった概念を重要視するのがフランクル心理学の特徴である
  • 『夜と霧』はフランクルが経験した強制収容所での出来事や、収容された人々の観察から得た「人生の意味」についての考察がまとめられた本である

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