ジェンダー論

【第三波フェミニズムとは】目的・具体的な運動からわかりやすく解説

第三波フェミニズムとは

第三波フェミニズム(Third-wave feminism)とは、第二波フェミニズムの限界を認めながらも、多様性や私らしさという個性を追求する思想・運動です。

後述するように、アメリカ社会ではライオット・ガールが、日本社会ではギャル文化が第三波フェミニズムと関連をもつ運動です。彼らが目指したものを理解することで、第三波フェミニズムの本質へと近づくことができます。

そこで、この記事では、

  • 第三波フェミニズムの背景・目的
  • 第三波フェミニズムの具体的な運動

などをそれぞれ解説していきます。

関心のある所から読み進めてください。

このサイトは人文社会科学系学問をより多くの人が学び、楽しみ、支えるようになることを目指して運営している学術メディアです。

ぜひブックマーク&フォローしてこれからもご覧ください。→Twitterのフォローはこちら

Sponsored Link

1章: 第三波フェミニズムとは

第三波フェミニズムの定義や評価はまだ定まりきっておらず、論者によって幅があります。とくに第二波フェミニズムとの区分けについて、第二波の延長であり第三波などないという主張もありますが、この記事では、あえて区切りを設ける立場を紹介していきます。

このサイトでは複数の文献を参照して、記事を執筆しています。参照・引用箇所は注1ここに参照情報を入れますを入れていますので、クリックして参考にしてください。

1-1: 第三波フェミニズムの背景

まず、第三波フェミニズムとは、どのような背景から生まれてきたのでしょうか?ここでは、以下の言葉から考えていきましょう。

「I am not a postfeminism feminist. I am the Third Wave.(私はポストフェミニストではなく、第三波フェミニストです。)」

この「第三波フェミニズム」という言葉は、アフリカ系アメリカ人の小説家アリス・ウォーカーの娘であるレベッカ・ウォーカーが提唱した言葉です。これはアフリカ系アメリカ人へのセクハラ事件を受けて、彼女が1992年フェミニズム雑誌『ミズ』誌上で打ち出したものでした。

一方で「ポストフェミニズム」とは、女性個人の成功を成果とみなす、新自由主義にとりこまれたフェミニズムのことを指します。

※新自由主義に関して詳しくは、こちら記事を参照ください。→【新自由主義とは】定義・問題点・生まれた背景をわかりやすく解説

では一体、両者の立場の違いとは何なのでしょうか?なぜそのような区分をする必要があったのでしょうか?その点を理解するためには、フェミニズムが辿ってきた、以下のような歴史を知る必要があります。

  • 折しも、80年代から90年代は、グローバル化、脱産業化、個人化が進むなかで、女子の大学進学率が上昇し、男女平均賃金の格差が縮小するなど、母親世代が訴えた第二波フェミニズムの成果が着実に見えてきた時期であった
  • そんななかでメディアに登場する女性たちに強調されるのは、市場でのきらびやかな個人的成功であった
  • 新自由主義的なポストフェミニズムの状況下において、フェミニズムはすでに解決済みであり、もはや必要ではないという声まで囁かれはじめていた

このようなタテマエ上の男女の格差縮小は、アンチフェミニズムやそれにもとづくバックラッシュなどの現象を呼び寄せました。

その結果、「女性は不当に優遇されている!」というバックラッシュ派の言説に対し、第二波のフェミニズム以来、ふたたび女性やフェミニズムについての発言が盛り上がりはじめたのです。

つまり、

  • ウォーカーをはじめとするアメリカの若い女性たちは、古い世代のフェミニズムによる一定の成果を認める
  • しかし、頻発するセクハラ事件など、性差別や人種差別はいまだに根強く残る現状は満足できるものではなかった
  • その結果、若い世代の女性たちをエンパワメントできるような、新しい概念が必要になった

のです。

このような流れのなかで登場したのが、第三波フェミニズムだったのです。



1-2: 第三波フェミニズムの目的

第三波フェミニズムは、「GRRRL(女の子)」という言葉に特徴づけられるように2「GIRL」ではなくなぜ「GRRRL」かという点については、女の子という意味のGIRLの中に、うなり声の「r」を多めに配置することで、軽蔑的な使い方から自分たちに取り戻すという、ライオット・ガールたちの意図を表現している。(Rowe-Finkbeiner、Kristin., 2004 “The F-Word: Feminism In Jeopardy—Women, Politics and the Future” Seal Press.)、90年代、特にポピュラー音楽の分野からムーブメントが巻き起こりました。それは「ライオット・ガール・ムーブメント」と呼ばれています。

簡潔にいえば、ライオット・ガール・ムーブメントの特徴は、次のようにまとめることができます。

ライオット・ガール・ムーブメントの特徴

  • 男に媚びることになるといって化粧もせず、着飾ることを止めた母親世代の第二波のフェミニストでも、高層階のオフィスをピンヒールで闊歩する肉食系のポストフェミニストでもない、ステレオタイプ化されたどちらの女性像も拒否した女の子たち
  • ライオット・ガールと呼ばれる女の子たちは、自らがかわいい、クールだと思うものをポジティブに追求した
  • また、社会規範により軽蔑的におとしめられた「女の子」「痴女」「雌犬」などの呼称を反転し、言葉のイメージを自分たちの手で取り戻すこと

そして、ハードコアパンクバンドのビキニ・キルやブラッドモービルに代表されるライオット・ガールたちは、「DIY(Do It Yourself)」精神によりジン(ミニコミ)を自作しました。

ジンでは性暴力に反対し、男性中心に出来上がったこの世界に対する違和感を込めたメッセージをぶちまけ、同世代の女の子たちの心をつかみました。

ふりかえれば、第一波フェミニズムや第二波フェミニズムは、以下のような特徴をもつ運動でした。

いうなれば、第一波が公的領域での平等を、第二波が私的領域での平等を求めたということができるのです。

では、第三波は何の平等を求めたということができるでしょうか?結論からいえば、本質的に多様で無秩序な第三波フェミニズムの特徴についてひと言で説明することは大変難しいのです。しかし、シェリー・パジェエオンは、以下の4点にまとめています3ジェリー・バジェオン/芦部美和子訳 2011=2020 「成功した女性性の矛盾ーー第三波フェミニズム、ポストフェミニズム、そしてさまざまな『新しい』女性性」『現代思想』48(4)169−182頁

  1. 学歴や職業で男女平等を達成した若い世代の女性たちは、「女性」よりも「世代」をより強く認識しており、第二波フェミニズムのように女性全体を問うことができない
  2. ポピュラー・カルチャーに大きく影響を受けている
  3. 後期近代で人びとのアイデンティティが流動的で複雑化してきた
  4. 第三波フェミニズムはその闘争の場として、ジェンダーや性的な差異だけを特別にあつかわない

このように、女性の解放を訴えた第二波フェミニズム以降、人種エスニシティ、階級、セクシュアリティなど女性同士の違いがあらわになり、女として連帯することができなくなりました。

では、どうすればいいのでしょうか?パジェオンは、フェミニズムを再活性化することが重要であると強調します。

再活性化するとは、

  • 差異を取り込み生まれる矛盾によって、そもそも「ジェンダー」というカテゴリーが不安定なことを示す
  • その上で、再領有と再意味付けをとおして、女性性を自らの手に取り戻し、エンパワメントすること

ということです。

それはまさしくライオット・ガールたちが、貶められた「女の子」という呼称を「GRRRL(ガルルル)」と自らに取り戻すことによって力を得たことに見いだすことができます。

すなわち、第三波フェミニズムは、差異を積極的に取り込み、かといってすべてを鋳型にはめ込むのではなく、個を尊重しながらすべての女性にとっての私らしさをもう一度取り戻すことを目指す運動であり思想なのです。

言い換えれば、

  • 女性全体の解放を目指す第二波フェミニズムと、新自由主義的な自己実現を目指すポストフェミニズムとの矛盾を見つめ、対話し、調和すること
  • 男女間の平等性はもちろん、肌の色や階級やセクシュアリティに関係なく、だれもが私でいられる個性の平等を目指すこと

こそが、第三波フェミニズムが求める平等なのです。

1章のまとめ
  • 第三波フェミニズムは、1990年代頃から2000年代頃にかけて展開した
  • 第三波フェミニズムとは、第二波フェミニズムの限界を認めながらも、多様性や私らしさという個性を追求する思想・運動である
  • 第三波フェミニズムは「ガール・パワー」、多様性が特徴とされ、だれもが私でいられる個性の平等を目指している
Sponsored Link

2章:第三波フェミニズムの具体的な運動

さて、この章では、第三波フェミニズムの具体的な運動について、アメリカのライオット・ガール・ムーブメント、さらには日本のギャル文化を中心に見ていきます。

2-1: アメリカ〜ライオット・ガール・ムーブメント

第三波フェミニズムの特徴として挙げられるのが「ガール・パワー」で、その象徴として頻繁にとりあげられるのがライオット・ガールです。

日本ではあまり馴染みのないライオット・ガールですが、大まかにいえば、次のような集団です。

ライオット・ガールの概要

  • 1990年代前半にビキニ・キル、ブラットモービル、ヘヴン・トゥ・ベッツィーなどのガールズバンドによるパンク・ロックを中心にしたムーブメント
  • ジン作り、アート、集会などをとおし、自己表現を強く呼びかけ、またたく間に全米の女の子たちに広がった

まずは、ライオット・ガールの先駆的な存在であったビキニ・キルによる「ライオット・ガール宣言」を見てみましょう4大垣有香 2005『riot grrrlというムーブメント-「自分らしさ」のポリティックス』遊動社(ウェブ版 vegangrrrl  P.W.A. https://vegangrrrl.exblog.jp/)

『ライオット・ガール宣言』

なぜライオットなの?

(中略)

なぜなら 自分のことを認識し自分自身に挑戦するというクールなことをやる/読む/みる/聴くことは、私たちにとって強さやコミュニティのセンスを得る助けになる。

それは私たちにとって、以下のことを理解するために必要なことなのだ:民族差別、健全な身体主義、年齢差別、人種差別、階級差別、体型差別、性差別、ユダヤ人差別、異性愛主義などのたわごとが私たちの生活において、どのように表象として現れているのか。

なぜなら 女の子のシーン、あらゆる女の子アーティストたちを促進しサポートすることは、このプロセスにとって不可欠なものであると私たちは考える。

なぜなら 私たちはその全ての形態において資本主義を憎んでいる。伝統的な基準に従い大人しくすることで利益を得る代わりに、私たちは情報をシェアし、活き活きとしていられることを主なゴールとして考えている。

なぜなら 女の子=物の言えない、女の子=悪い、女の子=弱い、と私たちに言い聞かせる社会に対して、私たちは怒っている。

なぜなら 女の子の妬み主義や自滅的な女の子らしい振る舞いを示すものとしての性差別を私たちが内面化してしまうことで、私たちの持っている本当のそして確かな怒りを、まき散らされたくないし私たちに対して返されたくない。

なぜなら 革命的な精神的強さ、それは世界を真実へとかえる、それができる強さを女の子たちが構成するということを、わたしは全身全霊心の底から信じている

このマニフェストからは、自分やコミュニティが自信を持って立ちがあるために、社会から押し付けられた「女の子」像やそれを内面化してしまう傾向を拒絶し、あらゆる差別に怒り、前を向こうとする決意がまっすぐに伝わってきます。

大垣有香によると、当時、アメリカの音楽シーンは以下のようなものだったといいます5大垣 同上

  • 男性主体でミソジニー(女性嫌悪)がはびこっており、ライブやフェスティバルの会場ではセクハラやレイプなど性暴力が問題となっていた
  • さらにパンク・ロックシーンにおいて観客がモッシュという狂乱して暴れる危険行為が常態化しており、死者も出るほどであった

つまり、女の子は女の子であること、ただそれだけで演じ手にもなれず、聴き手にもなれないまま音楽シーンから排除されてしまう状況に反抗し、パンク・ロックシーンにワークブーツとミニスカートで突入していったのがライオット・ガールたちだったのです。

そもそも、パンク・ロックは「あなたなら何でもできる」と等身大の自分の背中を推してくれるものだったはずです。それを「女の子であるという理由で排除するなら、それはお前らが悪いんだ」と考えるのは真っ当です。

そのようなフラストレーションや怒り、反発、さらには自ら受けた性暴力被害や悩みなどを率直にしたためたオルタナティブメディアが「ファンジン」であり、第三波フェミニズムの理論形成の場ともなりました6上谷香陽 2013「ガール・ジンからみる第三波フェミニズム アリソン・ピープマイヤー『ガール・ジン』を読む」『文教大学国際学部紀要』24(1) 2頁

ビキニ・キルのキャスリーン・ハナに焦点を当てたドキュメンタリー『The Punk Singer』(2013)は、当時の貴重なライブ映像が散りばめられているのでぜひ観てもらいたいです。

彼女たちのライブは文字通り熱気に満ちあふれていました。ライブ前には女の子たちをステージの前へ、男性を後ろに退くよう呼びかけたり、曲の前には「Revolution Girl Style Now!(今こそ女の子の革命のとき!)」と大声で叫んだりしました。

同時に、男性客からは威圧されたり靴を投げられたり、すさまじいいやがらせやからかいのなかでのパフォーマンスであったことは映像のなかでも語られているとおりです。



2-2: ライオット・ガール・ムーブメントの収束と成果

ライオット・ガール・ムーブメントは90年代初頭に急速に広がりましたが、ほんの数年で収束してしまいます。

その理由のひとつに、マスメディアの流布する偏見にみちみちたイメージに辟易したライオット・ガールたちが大手メディアの取材をこぞってボイコットしたことが挙げられます。

たとえば、1992年にはじめてアメリカのマスメディアでライオット・ガールの特集が組まれました。しかし、次のようなイメージで語られていたといいます。

  • ライオット・ガールの精神についてはほとんど触れられず、男性排除主義、分離主義、レズビアンといったイメージ
  • さらには、社会を脅かす「怒り狂ったオンナ」、もしくはその逆に性暴力被害者で悲惨な過去を持つ哀れな女の子というイメージが誇張されたもの

ハナは上述のドキュメンタリー『The Punk Singer』のなかで、「自分は父親にレイプされたことなどないのに、父親にレイプされたと書かれていました」と当時のメディアのいい加減さを苦々しくふりかえっています。

ところで日本でライオット・ガールがほとんど定着しなかったのはなぜでしょうか?

ここまで見てくると、それはアメリカのマスメディアをとおしたイメージ操作の効果と考えられます。彼女たちの音楽性やメッセージが伝わる前に、からかいに満ちたミソジニーが先行してしまったといっても過言ではないでしょう。

とはいえ、ハナが在籍するル・ティグラをはじめ、スリーター・キニー、Gossipなどライオット・ガールたちの精神は現在進行系で引き継がれており、いまでもこのプレイリストでその一端に触れることができます。

ライオット・ガールのプレイリストはこちら(AppleMusicに飛びます)

また、ライオット・ガールたちのムーブメントは消費文化と結びつきやすく、政治的な関心に欠けるという批判も向けられました。特に、94年にデビューしたスパイス・ガールズの商業的な成功は、「ガール・パワー」がメディアや経済の利益をあげるために利用されてしまったと印象づけました。

しかしながら、ほとんどのライオット・ガールたちは商業主義には背を向け、自ら表舞台から去っていったのです。

第二波フェミニズムの押しつけがましい女性像、さらにはポストフェミニズムの功利主義的でセクシーなイメージの両方に向けて挑発的に舌を出し、あなたが(私が)したいことをしようよと力強く女の子たちの背中を押した点は、これまでになく新しく、重要なムーブメントだったととらえることができます。



2-3: 日本〜ギャル文化

つづいて日本のケースを見ていきましょう。1990年代、日本の「ガール・パワー」といってまず思いつくのは、ミニスカートにルーズソックス、ポケベルが象徴的な「コギャル」ではないでしょうか?

ここでは、関根麻里恵の論考をもとに「ギャル」と第三波フェミニズムについて考えていきたいと思います7関根麻里恵 2020 「『ギャル(文化)』と『正義』と『エンパワメント』ーー『GALS!』に憧れたすべてのギャルへ」『現代思想』48(4)77-84頁

そもそも、ギャルとは、いつ誕生したものだったでしょうか?松谷創一郎によると、以下のとおりです。

  • 1980年代後半にディスコやクラブに通う「ボディコンギャル」の延長線上に、高校生ギャル、子どものギャルを意味する「コギャル」が登場
  • マスメディアではじめて「コギャル」という言葉が使われるようになったのは93年頃で、ピークを迎えるのは97年から98年頃
  • 高校を卒業しても「コギャル」性を維持したい女の子たちが「ギャル」と自称するようになる

一方で、90年代初頭から「コギャル」たちは「ブルセラ女子高生」「援助交際」とマスメディアや研究者に扇情的に取り上げられ注目を集めました8宮台真司 1994『制服少女たちの選択』講談社

そんな中、従来的な少女文化に包括しえない「コギャル」のポジティブな側面を強調した、藤井みほなによるマンガ『GALS!』の連載が98年より『りぼん』ではじまります。

『GALS!』の概要

  • 『GALS!』では、共働き家庭の割合が専業主婦世帯を抜き、近代家族イデオロギーが変化しつつあるただなかで、83年から94年生まれの小・中学生が主な読者として想定された
  • 「ギャル魂」「ギャル道」などの言葉が頻出し、主人公・蘭の「正義感」が物語の要となる
  • そして、ギャル同士の連帯や男性を介さずに問題解決するという個々人の成長に主眼が置かれ、従来の「コギャル」イメージを刷新しつつ、同時に援用しながら描いているのが特徴である

関根は、藤田ニコル(にこるん)や池田美優(みちょぱ)、木村有希(ゆきぽよ)などの90年代後半生まれのギャルモデルの活躍に見られるように、『GALS!』によってつくられたポジティブな「ギャル」のイメージが、女の子たちをエンパワメントし、「ギャル(文化)」後追い世代を生み出したのだと説明します。

では、第三波フェミニズムとの関連ではどう読み解くことができるでしょうか?

ライオット・ガールを象徴とする「ガール・パワー」の一部が、メディアや経済の利益をあげるために商業主義に利用されてしまった点は、第三波フェミニズムをカルチュラル・スタディーズの観点から取り上げた研究者がそろって指摘してきた問題でもありました。

その意味で、「コギャル」も「ギャル(文化)」後追い世代も、すでに「社会」が彼女たちのスタイルを一元化し、形骸化し、都合のいいイメージに置き換えてしまったということができます。

しかし、そのうえで関根が最後に期待するのが、地道だが最も効果のあるやり方として、「フェミニズムは終わった」と片付けるのではなく、いまなお山積する課題を彼女たちなりのやり方で発信しつづけることだといいます。

つまり、第三波フェミニズムの課題は、商業主義と反商業主義の間で、矛盾と調和の運動に身をゆだねつつ、なお「ガルルル!」とうなり声を上げ発信しつづけることにあるのだと。

その意味でも、この関根の論考において当事者である女の子たちの声が見えてこないという点では、「コギャル」も、「ギャル(文化)」後追い世代の語られ方も似通っているのかもしれません。

だれもが私でいられる個性の平等を目指す。それこそが、第三波フェミニズムの特徴だとしたら、第三波フェミニズムには、やはり、「私はわたしだ!」という力強い当事者の声が欠かせないのだということに気づかされます。

2章のまとめ
  • 第三波フェミニズムの特徴としてまず挙げられるのが「ガール・パワー」で、その象徴的存在がガールズ・パンクロックバンドを中心としたライオット・ガールである
  • ライオット・ガールは社会から押し付けられた「女の子」像やそれを内面化してしまう傾向を拒絶し、あらゆる差別に怒り、前を向いた
  • 日本の90年代のギャル文化は、マンガ『GALS!』をとおし後続の世代をエンパワメントした
Sponsored Link

3章:第三波フェミニズムを学ぶためのおすすめ本

第三波フェミニズムに関して理解は深まりましたか?以下ではさらに理解を深めるための書籍を紹介します。

おすすめ書籍

オススメ度★★★「2020年3月臨時増刊号 総特集フェミニズムの現在」『現代思想』48(4)

タイトルのとおり、最先端のフェミニズムの視座が網羅されています。第三波フェミニズムについても、この記事で参照したS・パジェオンほか多くの論者が言及しています。

オススメ度★★★ 田中東子『メディア文化とジェンダーの政治学ーー第三波フェミニズムの視点から』(世界思想社)

カルチュラル・スタディーズの視点から、主婦、コスプレ、スポーツまで現代日本における文化実践を分析しています。第三波フェミニズム理論についても詳しくまとめられています。

オススメ度★★★ 大垣有香『riot grrrlというムーブメント-「自分らしさ」のポリティックス』遊動社

おそらくライオット・ガールについて日本語で書かれたもののなかで最も網羅的で詳しいです。これがなんと卒論をまとめてジンにしたものだというから驚きです。ウェブ版も。

Amazonにはありませんが、下記サイトで取り扱われています。

→BASEサイト『riot grrrlというムーブメント-「自分らしさ」のポリティックス』

→Web版(ブログ)「P.W.A.」

学生・勉強好きにおすすめのサービス

一部の書籍は「耳で読む」こともできます。通勤・通学中の時間も勉強に使えるようになるため、おすすめです。

最初の1冊は無料でもらえますので、まずは1度試してみてください。

Amazonオーディブル無料体験の活用法・おすすめ書籍一覧はこちら

また、書籍を電子版で読むこともオススメします。

Amazonプライムは、1ヶ月無料で利用することができますので非常に有益です。学生なら6ヶ月無料です。

Amazonスチューデント(学生向け)

Amazonプライム(一般向け) 

数百冊の書物に加えて、

  • 「映画見放題」
  • 「お急ぎ便の送料無料」
  • 「書籍のポイント還元最大10%(学生の場合)」

などの特典もあります。学術的感性は読書や映画鑑賞などの幅広い経験から鍛えられますので、ぜひお試しください。

まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • 第三波フェミニズムとは、第二波フェミニズムの限界を認めながらも、多様性や私らしさという個性を追求する思想・運動である
  • 第三波フェミニズムは、1990年代頃から2000年代頃にかけて展開した
  • 第三波フェミニズムの特徴としてまず挙げられるのが「ガール・パワー」で、その象徴として頻繁にとりあげられるのがライオット・ガールである

このサイトは人文社会科学系学問をより多くの人が学び、楽しみ、支えるようになることを目指して運営している学術メディアです。

ぜひブックマーク&フォローしてこれからもご覧ください。→Twitterのフォローはこちら