国際問題

【持続可能な開発とは】必要とされる理由から具体例までわかりやすく解説

持続可能な開発とは

持続可能な開発(Sustainable Development)とは、環境問題をはじめとし、貧困や平和、人権、ジェンダー、保健・衛生などのあらゆる分野において、将来の世代のニーズを満たすことに配慮しながら、現在の世代のニーズも満足させるような開発を行うことです。

国際協力を考える上で必ず念頭に置かれるのは、「持続可能な開発」という概念です。

国連によって発表された「持続可能な開発目標(SDGs)」は、近年では、国際協力のみならず、学校や企業においても耳にすることが多くなってきました。

では一体、この「持続可能な開発」とは一体どういうものなのでしょうか?

この記事では、

  • 続可能な開発の背景・課題
  • 持続可能な開発の意味
  • 持続可能な開発の具体的な取り組み

について解説していきます。

関心のあるところから読み進めてください。

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1章:持続可能な開発とは

1章では、持続可能な開発が叫ばれる背景にはどのような課題があるか、また、持続可能な開発の意味について解説していきます。

このサイトでは複数の文献を参照して、記事を執筆しています。参照・引用箇所は注1ここに参照情報を入れますを入れていますので、クリックして参考にしてください。

1-1:持続可能な開発が求められる背景・課題

グローバル化が一層進む現代において、世界各地で起こっている問題は、その国や地域だけの問題ではなく、地球規模の問題として解決に取り組まなければなりません。

その取り組みの中心にあるのが、持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)です。

より具体的には、SDGsとは以下のようなものです。

  • 2015年9月の国連サミットで採択された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標である
  • 地球上の「誰一人取り残さない」を合言葉に、発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサルなもの
  • 現在世界が取り組むべき喫緊の課題が17項目の目標(図1)が示されているもの

SDGsにおける17の目標(図1「SDGsにおける17の目標」出典:国際連合広報センターHPより)

たとえば、目標3の「すべての人に健康と福祉を」の背景には、開発途上国においてエイズやマラリア、その他の感染症などが原因で5歳の誕生日を迎えられずに命を落とす子どもが今もまだ多数いることが挙げられます。

これを食い止めるために、医療の普及や全ての人がワクチンを利用できるための支援を進めていかなければなりません。

他にも、目標8の「働きがいも経済成長も」では、経済成長だけでなく、性別や障害の有無にかかわらず全ての人への均等な雇用機会の提供や、人身売買、児童就労の撲滅がターゲットになっています。

そして、目標17の「パートナーシップで目標を達成しよう」では、これらの目標を達成するために、世界各国がグローバルなパートナーシップと協力に向けた決意を強固なものにしていくことが求められています。

このように、SDGsを世界共通の目標として掲げ、持続可能な開発を推進していくことで、貧困に終止符を打ち、地球を保護した上で、全ての人が平和と豊かさを享受できるようにすることを目指す行動が求められているのです。



1-2:持続可能な開発の意味・目標

次に、持続可能な開発の意味について考えるために、「持続可能な開発」という理念がどのように成立し、展開されてきたかについて解説します。

「持続可能な開発」という言葉が使われるようになったきっかけは、1972年にスウェーデンのストックホルムで行われた「国連人間環境会議」にまでさかのぼります。

この会議は、以下のようなものです。

  • 世界で初めて行われた環境に関する国際会議で、「かけがえのない地球(Only One Earth)」のスローガンのもと、世界114の国と地域が参加し、環境問題に全世界が取り組むための「人間環境宣言(ストックホルム宣言)」が採択された
  • また、この会議において、国連環境計画(UNEP)、世界自然保護基金(WWF)、国際自然保護連合(IUCN)の3団体が新たに設立された(3団体は1980年に「世界自然保全戦略」を発表している)

この世界自然保全戦略において、「持続可能性(Sustainability)」という概念が初めて使用されました。

そして、「持続可能な開発(Sustainable Development)」という考え方が初めて提唱されたのは、国連の「環境と開発に関する世界委員会」が1987年に発表された報告書「われら共有の未来(プルントラント・レポート)」でした。

プルントラント・レポートの概要

  • 持続可能な開発について「将来のニーズを満たす能力を損なうことがないような形で、現在の世界のニーズも満足させること」とした
  • 先進国と開発途上国の双方で持続可能な開発を追求することが重要であると解いた

その後、1992年には、リオデジャネイロで「地球サミット(国連環境開発会議)」が開催されています。そこでは「環境と開発に関するリオデジャネイロ宣言(リオ宣言)」とこの宣言を実施するための行動計画「アジェンダ21」と「森林原則声明」が採択されました。

リオ宣言の概要

  • リオ宣言は、ストックホルム宣言をさらに発展させた内容となっており、持続可能な開発に向けた地球規模のパートナーシップを構築することを目標とした、環境と開発に関する27の原則で構成されている
  • たとえば、第1原則は「人類は、持続可能な開発への関心の中心にある。人類は、自然と調和しつつ健康で生産的な生活を送る資格を有する。」と始まっているように、「持続可能な開発」という言葉が含まれている

しかしその後、アフリカ諸国を中心とした開発途上国における、貧困や人権、感染症や教育などの問題のさらなる深刻化が露呈し、これらの社会課題に対して先進国の間で、「地球規模課題として国際社会全体で解決していかなければならない共通課題である」という認識が高まっていきました。

このような背景の中、2000年に開かれた「国連ミレニアム・サミット」では、21世紀の国際社会の目標として「国連ミレニアム宣言」が採択されることになります。

この中で策定された「ミレニアム開発目標(MDGs: Millennium Development Goals)」では、2015年までに達成すべき8つの目標、21のターゲット、60の指標が掲げられました。

MDGsにおける8つの目標

(図2「MDGsにおける8つの目標」出典:外務省HP「ミレニアム開発目標(MDGs)とポスト2015年開発アジェンダ」)

この取り組みによって、世界全体で極度の貧困の割合が半減されたり、不就学児童の総数が半減されたりと改善された部分もありましたが、達成できなかった目標も多く残ったもの事実です。

こうしてみると、

  • 当初は環境問題からスタートした「持続可能な開発」だったが、現在では貧困や人権、紛争などあらゆる地球規模の問題を解決することが目標に置かれている
  • その結果、「持続可能な開発」は誰にとっても平和で安定した社会にすること、そして我々の子孫にとってもそれが続いていくような社会を目指すことを指す概念となっている

といえます。

持続可能な開発に関連して、持続可能な観光に関する記事もぜひ読んでみてください。

【オルタナティブツーリズムとは】意味や具体例をわかりやすく解説

1章のまとめ
  • 持続可能な開発とは、環境問題をはじめとし、貧困や平和、人権、ジェンダー、保健・衛生などのあらゆる分野において、将来の世代のニーズを満たすことに配慮しながら、現在の世代のニーズも満足させるような開発を行うことである
  • 中心的な取り組みとして、持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)がある

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2章:持続可能な開発の具体例

2章では、日本が行っている持続可能な開発のうち、日本政府として実施されているもの、民間で実施されているものに分け、具体的な取り組みの例を紹介していきます。

2-1:日本政府が行っている取り組み

日本政府として実施されている持続可能な開発は、主にODA(政府開発援助)の枠組みの中で行われています。(→ODAに関してはこちら

2-1-1: インフラ整備

具体的には、日本のODAとして中心となって拠出されているものは「インフラ整備」2※インフラとは道路や水道、電気といった生活や産業などの経済活動を行う上で必要不可欠な社会基盤のことです。です。

世界全体で経済のレベルが上がるにつれ、とくにアジアやアフリカの開発途上国においてインフラ整備の支援に対する需要が飛躍的に高まっている

そこで本当に開発途上国の利益になり、持続可能な発展を実現するためには、より質の高いインフラが必要となる

日本は、2016年に行われたG7伊勢志摩サミットにおいて「質の高いインフラ輸出拡大イニシアチブ」というインフラ投資に関する日本独自の政策を打ち出し、5年間で総額2,000憶ドル規模のインフラ投資を世界全体に対して実施していくことを宣言しました。

以下は、これまでに実施された「質の高いインフラ整備」の具体例です。

カンボジア・ネアックルン橋梁建設計画

  • 2015年に完成したネアックルン橋は、交通量を増加かつ所要時間の短縮を実現し、地域の経済成長を促した
  • また、高品質で施工の省力化、維持管理の経済性にも注意し、地域住民の生活にも配慮して作られたものだった
  • 現在は、仕事や医療サービスへのアクセス向上により近隣住民の生活の質向上につながっている

ケニア・地熱発電計画

  • 46%を水力発電に依存していたケニアでは、天候に左右されないエネルギー確保が急務だった。この地熱発電所の建設によって、現在では安定した電力供給が実現し、経済や市民の生活の向上にも貢献した。
  • また、建設場所を人里離れた場所に計画したり、環境に調和したデザインにしたりするなど環境・社会に配慮し、発電所の部品にも錆びにくい合金を使い、持続可能性も考慮して作られた

2-1-2: 廃棄物管理

世界の人口増加と経済成長に伴い、廃棄物の増加も深刻な問題となっています。

日本においても、これまで廃棄物管理や3R(リデュース・リユース・リサイクル)に関する能力構築や人材育成、及び廃棄物関連のインフラ整備を行ってきました。

2019年に行われたG20大阪サミットでは、海洋プラスチックごみによる新たな汚染を2050年までにゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を実現するために、「マリーン・イニシアティブ」を打ち出しました。

これにより、廃棄物管理、海洋ごみの回収及びイノベーションを推進するための、途上国における能力強化を支援していきます。

以下は、これまでに実施された「廃棄物管理」の具体例です。

バングラデシュ・ダッカ市廃棄物管理能力強化プロジェクト

  • 2007年から2013年まで行われた同事業では、人材育成や意識改革、組織機能の改善、機材の改善、収集システムの改善などさまざまな活動を組み合わせ、廃棄物管理能力の強化を行いました
  • これにより、ダッカ市のごみ収集は大きく改善され、人々の生活の衛生的な向上にもつながった

大洋州大洋州地域廃棄物管理改善支援プロジェクト

  • 大洋州地域9カ国を対象に実施されている、持続可能な廃棄物管理にかかる人材および組織・制度的な基盤が強化されることを目標に実施されているプロジェクトで、2011年から始まり、現在も進行中です
  • これまでに廃棄物処理場の運営方法の改善や人材育成のための研修の実施などを行ってきており、大きな成果をあげています



2-2:企業が行っている取り組み

近年では、SDGsの達成に取り組む企業も増えています。

企業にとって、自社の取り組みにSDGsを活用することは、企業イメージの向上や社会貢献ができるだけでなく、持続可能な経営を行うことにもつながる可能性もあります。そのため、企業戦略の一環ということもできるでしょう。

以下では、日本の企業による具体的な取り組みを紹介します。

アート引越センター(アートコーポレーション株式会社)

  • Clean & Safety to “Zero” を合言葉に、ゴミゼロの引っ越しを目指し、紙資源を使わないエコ楽ボックスの開発や、段ボールのリユース(再利用)を進めている
  • また、大気汚染物質の排出を抑えられるクリーンディーゼル車の導入や、タブレットを使って見積書を作るペーパーレスの取り組みも行われている

日本フードエコロジーセンター

  • 食品関連事業者で発生する食品廃棄物を独自技術で飼料(エコフィード)に変え、その飼料を使って養豚を行い、生産された豚肉を、沿線の消費者に提供するというリサイクルループの形成を行った企業
  • 循環型社会の形成のグッドプラクティスとして、2018年にはジャパンSDGsアワードで最優秀賞を受賞した
2章のまとめ
  • 日本政府として実施されている持続可能な開発は、主にODA(政府開発援助)である
  • 企業にとっては、イメージの向上や社会貢献ができるだけでなく、持続可能な経営を行うことにもつながる可能性がある

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3章:持続可能な開発について学べるおすすめ本

持続可能な開発について理解できましたか?

さらに深く知りたいという方は、以下のような本をご覧ください。

おすすめ書籍

沖大幹(その他)『SDGsの基礎: なぜ、「新事業の開発」や「企業価値向上」につながるのか』(宣伝会議)

SDGsとは何か、といった基礎知識はもちろんのこと、企業や経営者にとって今後、SDGsをどのように捉え、取り組んでいくべきかについても提案している一冊です。

ロックストローム, J、クルム, M『小さな地球の大きな世界 プラネタリー・バウンダリーと持続可能な開発』(丸善出版)

近年よく耳にするSDGsの元となった概念「プラネタリー・バウンダリー」を研究である著者が丁寧に解説している一冊です。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • 持続可能な開発とは、環境問題をはじめとし、貧困や平和、人権、ジェンダー、保健・衛生などのあらゆる分野において、将来の世代のニーズを満たすことに配慮しながら、現在の世代のニーズも満足させるような開発を行うことである
  • 日本政府として実施されている持続可能な開発は、主にODA(政府開発援助)である
  • 企業にとっては、イメージの向上や社会貢献ができるだけでなく、持続可能な経営を行うことにもつながる可能性がある

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<参考・引用文献>