国際問題

【国際協力とは】目的や意義から活動の歴史までわかりやすく解説

国際協力とは

国際協力(international cooperation)とは、国際社会全体の平和と安定だけでなく、世界的な課題を解決も含めて、特定の国や地域を超えて行われる全ての援助・協力活動のことです。

国際協力と聞くと、少し遠いもののように感じる方もいるかもしれません。しかし、いま国際社会が直面している課題を解決するために、国際協力は大きな役割を果たすものです。

そして、私たち一人ひとりが国際協力について正しく学び、行動することは、これらの問題解決を加速させる一つの手段です。

この記事では、

  • 国際協力の目的・意義
  • 国際協力の歴史
  • 国際協力の問題点

をそれぞれ解説します。

好きな箇所から読み進めてください。

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1章:国際協力とは何か

1章では、国際協力の「目的・意義」「種類・手法」「動向・実態」から解説します。

このサイトでは複数の文献を参照して、記事を執筆しています。参照・引用箇所は注1ここに参照情報を入れますを入れていますので、クリックして参考にしてください。

1-1:国際協力の目的・意義

まず、冒頭の確認となりますが、国際協力とは、

国際社会全体の平和と安定だけでなく、世界的な課題を解決も含めて、特定の国や地域を超えて行われる全ての援助・協力活動のこと

です。

そして、定義にもあるように、国際協力の目的とは国際社会全体の平和と安定であるといえます。

現在、世界195の国のなかで150カ国以上が開発途上国と呼ばれています。開発途上国の多くは、貧困や紛争などの問題を抱え、それによって感染症や環境汚染、教育や雇用機会の喪失などに市民が苦しめられています。

グローバル時代におけるこうした問題は、世界規模の問題へと発展し、世界全体を脅かす可能性をもっています。そのため、開発途上国における問題として捉えるのではなく、地球全体の問題として世界各国が取り組む必要があるのです。

国際協力を通じて世界全体が平和になることで、結果的に国際協力を行う側の平和や安定にも繋がる。このことは、先進国が国際協力を行う意義ともいえるでしょう。

加えて、日本の場合はエネルギーの約80%を海外からの輸入に頼っています。食料自給率も40%を切っており、食料も海外への依存が強い国です。国際協力を通じて互いに支え合うための関係を築くという観点からも、その意義が理解することができるはずです。



1-2:国際協力の種類・具体的な手法

ここでは、国際協力にはどのような種類・方法があるかについて解説していきます。

結論からいえば、国際協力は「政府」「民間」の2つのレベルに大きく分けることができます。

政府による国際協力とは、一般的にODA(政府開発援助)と呼ばれており、開発途上国を直接援助する二国間援助と、国際機関を通じて間接的に援助する多国間援助があります。

ODAの内容は多岐に渡りますが、橋や学校を建設するインフラ整備や、専門家を派遣したりする技術協力などが主になります。(→ODAに関してより詳しくはこちら

一方で、民間による国際協力には、NGOやNPO団体をはじめ、大学や地方自治体、民間企業などの民間団体が行っている活動があります。

規模や対象地域はさまざまですが、政府や国際機関では対応が難しいような草の根レベルに対して直接支援を行う場合が多く、国際協力において重要なアクターとなります。

そして、国際協力には具体的に以下のような手法があります。

  • 慈善型開発…貧困者や災害地への寄付。一方的な支援になったり、支援先の人々の自立を妨げたりする可能性がある
  • 技術移転型(プロジェクト型)開発…先進国の知識・技術を、途上国の人々に教育や訓練を通して伝え、定着させる。支援後の自立を目指すものだが、先進国主導で進められるため、現地のニーズと一致しない開発が行われる場合も
  • 参加型開発…どのような開発を行うか、それを決める段階から現地の人をプロジェクトのメンバーとして参加させ、本当に必要な開発を本当に必要な地域に等しく行うことを目的とするもの。現地の人の問題意識や生活向上への意欲が不可欠

国際協力の方法は、このように時代とともに議論や改善を重ね、段階を経て変化してきました。現在は、参加型開発が主流になっていますが、課題も多く残されています。

そのため、多くの人間が国際協力に関わり、実践し、議論していくことが必要です。

1-3:現在行われている国際協力の動向と実態

では一体、日本はどのような国際協力を行っているのでしょか?

2018年のODAの実績額をみると、約141億6,352万ドル(約1兆5,642円)でした。これは、OECDの開発援助委員会に加盟する先進国の中で、米、独、英に次ぐ第4位です。

具体的にみると、

  • 支出総額TOP3・・・1位インド、2位バングラディッシュ、3位ベトナム
  • 地域配分の割合は、アジア59.7%、中東・北アフリカ11.5%、サブサハラ・アフリカ11.3%、中南米2.5%、その他15.0%

となっています(2017年実績)。

加えて、これまでのODAの受け取り国・地域の推移(図1)を見ると、近年アフリカ地域を中心に増加傾向にあるものの、一貫して日本のODAはアジアを中心に実施されてきたことがわかります。

ODAの受け取り国・地域の推移(図1「ODAの受け取り国・地域の推移」出典:外務省「我が国ODAの軌跡と成果」

また、日本のODAの特色として、

  1. 自助努力の後押し
  2. 持続的な経済成長
  3. 人間の安全保障

があります。

たとえば、アジアに対しては、安定的な成長のためにASEANへの継続的な支援を行ってきた結果、巨大な市場への発展に繋がりました。

また、アフリカに対しては、TICAD(アフリカ開発会議)を1993年から日本政府が主導で開催し、多くの国際的課題への対処や日本企業の進出を推進することでアフリカ経済を活性化させてきました。

一方で、民間による国際協力の実績も決して小さいわけではありません。日本ではNGOは1970年代から増加し、1990年代には多くの団体が設立されました。

活動地域としては、やはりアジアが半数以上を占めており、教育・職業訓練、環境、農業、保健・医療などの分野で活動している団体が多いです。

また近年、政府や自治体、国際機関、大学・研究機関、企業などと連携して国際協力を行っている団体も増えており、今後、政府・民間の垣根を越えて、より効果的で効率的な国際協力が実施されるようになっていくでしょう。

→ODAについて詳しくはこちら

いったん、これまでの内容をまとめます。

1章のまとめ
  • 国際協力とは、国際社会全体の平和と安定だけでなく、世界的な課題を解決も含めて、特定の国や地域を超えて行われる全ての援助・協力活動のことを指す
  • 国際協力は「政府」と「民間」の2つのレベルに大きく分けることができる
  • 将来的には、政府・民間の垣根を越えて、より効果的で効率的な国際協力が実施されるようになっていく
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2章:国際協力の歴史

さて、2章では国際協力の歴史と現在について解説していきます。

2-1:国際社会における国際協力の開始

国家間の国際協力の始まったきっかけは、第二次世界大戦です。

端的にいえば、それはそれまで各国が自国のためだけに経済政策を行ってきたことが摩擦や争いを生み、世界恐慌や第二次世界大戦を引き起こしてしまった反省があったからです。

その結果、

  • 1944年に行われたブレントウッズ会議において、これからは各国が相互に協力していく国際社会をつくるべく、国際通貨基金(IMF)や世界銀行の設立が決定した
  • 1948年には、アメリカが第二次世界大戦からの復興が遅れていたヨーロッパ諸国に対して、復興援助計画(マーシャル・プラン)を実施し、経済的な援助をおこなった

という歴史的な展開に繋がっていきます。

ちなみに、この頃、日本も国際協力の一歩を踏み出しました。1950年のコロンボプランという取り組みに参加したことがきっかけです。しかし、この頃の日本はまだ援助を受ける側であり、他国への援助も戦後賠償としての意味合いが強いものでした。

一方で、民間の国際協力の始まりは、さらに過去にさかのぼります。

現在の国際協力NGOのルールと言われているのは、

  • 1863年にスイスで設立された「5人委員会」と呼ばれるもので、赤十字国際委員会の前身となる団体であった
  • 設立のきっかけは、戦争で負傷した兵士の救援活動であった

ものです。

その後、第一大戦後の1919年には英国でセーブ・ザ・チルドレン、第二次世界大戦のころには、アメリカのCAREやイタリアのカリタス・インターナショナルなど、民間活動団体として次々に展開されていきました。

そして、1960年に国連が発表した「国連開発の10年」によって、国際協力は促進されていきます。



2-2:国際協力の展開

1960年代から1970年代、世界経済は急成長を遂げていった時期です。しかし、それに伴って国家間の格差が大きくなっていくことになります。いわゆる南北問題です。

南北問題とは、地球の北側に位置する先進工業国と南側に位置する開発途上国の格差とその是正を巡る問題群を指す。

これを機に、ODAを中心とした国際協力は量的な拡大、援助形態の多様化が進んでいきます。また、この時代の国際的な援助潮流として、基礎生活分野(保健・衛生、給水、教育、農業など)に対する援助が重視されていました。

しかし、1980年代に入ると、オイルショックなどの影響で一次製品の価格が下落し、開発途上国の経済はさらに窮地に陥ります。そのため、世界のODAも世界銀行を中心とした資金融資の援助へと変化していきます。

その一方で、日本はその潮流に乗りつつも、独自でアジアへの援助を拡大していき、とくに東アジアの発展に大きく貢献しました。

そして、1990年代、湾岸戦争が勃発し、冷戦が終結したことをきっかけにして、ODAのあり方が再度見直され、紛争予防の観点から、平和の定着や国づくりのための協力へとシフトしていきます。

この頃、世界各国が「援助疲れ」からODAを減らす中で、日本のODAは拡大し続けていき、1991年には日本は世界最大のODA援助国となりました。



2-3:国際協力の現在

21世紀に入ると、日本国内ではバブル景気がはじけ、「失われた10年」と呼ばれる経済不況に直面します。それに伴い、より効率的かつ効果的なODAの実施が求められるようになりました。

加えて、一人ひとりの人間を中心に据えて、脅威になるものから守り、それぞれが尊厳ある生命を全うできるような社会づくりを目指す「人間の安全保障」の考え方が国際協力の柱になるのはこの時期からです。

それには、以下のような時代的な背景があったためです。

  • 新興国の台頭で、国際市場の競争が激化したことにより、先進国と開発途上国の格差がさらに大きくなったこと
  • 環境問題や感染症問題など、さまざまな地球規模の問題に対応すべく、国際社会が手を取り合い、協力して解決に向かう必要があることなど

また、2000年の国連ミレニアム・サミットでは、国際社会の共通の目標として「ミレニアム開発目標(MDGs)」が採択されました。特に、開発途上国の貧困削減が最優先で取り組まれることになりました。

2015年には、MDGsの後継となる目標として、「持続可能な開発目標(SDGs)」が宣言され、現在の国際協力の指針となっています。

SDGsとは、「誰も取り残さない」を合言葉に、17のゴールと169のターゲットから構成され、途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサルなものでもあるのです。

SDGsの17のゴール(図2「SDGsの17のゴール」出典:国際連合広報センターHP)

さらにこのSDGsは、政府レベルの国際協力だけではなく、民間による国際協力においても、指針となるものになっており、国際協力の活動を主とした団体だけでなく、民間企業や大学などもSDGsに沿った取り組みが盛んになりつつあります。

2章のまとめ
  • 国家間の国際協力の始まったきっかけは、第二次世界大戦にある
  • 21世紀に入るとより効率的かつ効果的なODAの実施が求められるようになる
  • 現在の国際協力の指針は、持続可能な開発目標(SDGs)である
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3章:国際協力の問題点

3章では、国際協力が現在抱えている問題点について、取り上げていきます。

日本の国際協力、特にODAには多様な問題がありますが、特に以下の3つの問題点が指摘しています。2那須祐輔(2006)「日本の対アジアODAの諸問題」『経済政策研究』第2号, 33-58頁

  1. 透明性の向上
  2. 効率性の向上
  3. 経済インフラ偏向の援助

3-1:透明性の向上

①の透明性の向上については、日本政府が実施するODAに関する情報公開が十分ではないことで、国民のODAに対する理解を十分に得られていない点が問題となっている点です。

近年、日本のODAの予算は年々減少傾向にあり、この10年ほどは横ばいの状態です。1997年のピーク時に(1兆1,687億円)に比べると、現在2020年は5,610億円と約半分の規模となっています。

しかし、上述のように、世界には援助を必要としている国がまだまだあり、今後さらに国際協力を推進していくためには、ODAの実態が分かりやすいものになり、国民の理解がさらに向上する必要があります。

3-2:効率性の向上

②の効率性の向上については、①で述べたように予算が減少している中で、より効果的で、相手国の実情やニーズに即した援助を行うためには、ODAの計画・実施体制やその整備及び執行の効率化を推進していく必要があります。

残念ながらこれまでにも、実際に相手国のニーズに合致しないようなODAが行われたこともありました。加えて、相手国からの情報収集を丁寧に行い、理解してもらったうえで、現地の人々とともに実施していけるような事業の形成を行うことも重要です。

3-3:経済インフラ偏向の援助

また①と②については、決して日本だけの問題ではなく、ODAを実施する多くの国で同様の問題を抱えています。一方で、③の経済インフラ偏向の援助については、日本のODAの特徴ともいえる問題点です。

  • 経済インフラ・・・道路や港、鉄道やエネルギー、通信など産業に欠かせない基盤のこと
  • 社会インフラ・・・教育や医療、福祉、水道など、人間の活動の基盤のこと

簡単にいえば、経済インフラを整えることは相手国の経済活動に対する援助であり、社会インフラは相手国の人々の生活向上に対する援助であるといえます。

2017年の日本のODAの内訳を見ると、経済インフラ援助額が98億7811万ドルに対し、社会インフラへの援助額は32億5800万ドル。その差額には約3倍もの開きがあります。

このことから、日本のODAは開発途上国の貧困や生活改善などに貢献していないと、しばしば批判を受けることがあります。したがって、このようなODAのバランスについても、改善していく必要性が叫ばれています。

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4章:国際協力について学べる本

国際協力について理解できましたか?

さらに深く知りたいという方は、以下のような本をご覧ください。

おすすめ書籍

山本敏晴『「国際協力」をやってみませんか? 仕事として、ボランティアで、普段の生活でも』(小学館)

国境なき医師団・日本理事も務め、その後NPO法人「宇宙船地球号」を創設。これから国際協力をやってみたいという方におすすめの入門書です。

伊勢崎賢治『NGOとは何か―現場からの声』藤原書店

国際NGOのスタッフとしてアフリカに10年滞在した著者が、実際の現場の活動を通して、「善意」から「本物の成果」へと変えるためにはどうすればよいかを提言をしている一冊です。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • 国際協力とは、国際社会全体の平和と安定だけでなく、世界的な課題を解決も含めて、特定の国や地域を超えて行われる全ての援助・協力活動のことを指す
  • 政府・民間の垣根を越えて、より効果的で効率的な国際協力が求められる
  • 現在の国際協力の指針は、持続可能な開発目標(SDGs)である

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<参考・引用文献>

  • JICAのHP「国際協力とは」より
    https://www.jica.go.jp/aboutoda/whats/cooperation.html (最終閲覧日:2020年5月8日)
  • 外務省(2016)「NGOデータブック2016 数字で見る日本のNGO」外務省・国際協力NGOセンター
  • 那須祐輔(2006)「日本の対アジアODAの諸問題」,経済政策研究 第2号