国際問題

【ODA(政府開発援助)とは】意味・歴史・問題点をわかりやすく解説

ODA(政府開発援助)とは

ODA(Official Development Assistance)とは、開発途上国の社会・経済の開発を援助する目的で、政府が行っている経済協力のことを指し、「政府開発援助」とも呼ばれます。

グローバル化が加速するとともに、先進国と開発途上国の関係も大きく変化してきました。

先進国は開発途上国の社会・経済開発を支援するためにODAを行ってきましたが、日本もその例外ではありません。

日本がどれだけのODAを、どのように、どこの国に対して、どういう目的で行ってきたのか知ることは日本人にとって重要なことです。

そこで、この記事では、

  • ODAの役割と仕組み
  • 世界と日本におけるODAの歴史
  • ODAが抱える問題点

をそれぞれ解説していきます。

好きな箇所から読み進めてください。

このサイトは人文社会科学系学問をより多くの人が学び、楽しみ、支えるようになることを目指して運営している学術メディアです。

ぜひブックマーク&フォローしてこれからもご覧ください。→Twitterのフォローはこちら

Sponsored Link

1章:ODA(政府開発援助)とはなにか

1章では、ODAの「役割」「仕組み」「実態」を解説します。

2章では、ODAの歴史や現状について、3章ではODAの問題点について、それぞれ説明しますので、あなたの興味や関心に沿って読み進めてみてください。

1-1:ODAの役割

まずは、ODAが国際社会においてどのような役割をもっており、なぜ日本がそれを行っているのかについて考えていきます。

結論からいえば、ODAの役割は、

  • 開発途上国の課題解決と持続的な発展への援助
  • 国際社会の平和と安定及び繁栄の確保

であると言われています。

世界には飢えや貧困に苦しみ、教育や医療を満足に受けれない、そのような人々を多く抱えるいわゆる「開発途上国」が多く存在します。

ODAを通じて途上国の発展を援助していくことは、開発途上国の人々の人権や安全、平和を保障していくために大きな役割を果たします。

一方で、ODAは単に援助を受けた開発途上国だけではなく、ODAを実施する側にも利益をもたらします。

現在世界では、環境問題や気候変動、自然災害、感染症対策、食糧問題、エネルギー問題など、地球規模の問題に直面しています。これらの解決には、世界中の国々が足並みをそろえ、協力しながら問題に取り組む必要があります。

その点で、ODAの取組みは国際社会における信頼関係の構築に繋がります。ODAを通じて開発途上国の安定と発展を援助し、国際社会の平和と安定に貢献することで、結局は世界全体の繁栄にも繋がっていくということです。

この観点からいえば、日本がODAを実施することは意義があり、また途上国の開発を援助することは先進国の責任ともいえるのです。



1-2:ODAの仕組み

次に、ODAがどのような仕組みで行われているか見ていきましょう。ODAの仕組みは、次の図を通して説明することができます。(図1)

ODAの仕組みとは

まず、ODAには「二国間援助」と「多国間援助」があります。

  • 二国間援助…日本が開発途上国・地域を直接的に援助する。援助国と被援助国、1対1の関係。
  • 多国間援助…日本を含む多くの先進国が、国連などの国際機関を通じて間接的に援助する。国際機関が多くの国を代表して1つの国を援助する関係。

簡単にいえば、援助が直接的か(二国間)、間接的か(多国間)で区別されています。

そして、この二国間援助に関していえば「贈与」と「政府貸付」に分けることができます。これらは、援助が有償か無償かで区別されます。

  • 贈与…途上国に対して無償で提供される協力のこと
  • 政府貸付…途上国が将来返済することを前提とした、有償の協力のこと

さらに具体的にみていくと、贈与には「無償資金協力」と「技術協力」の2種類が、政府貸付には「有償資金協力(円借款)」と「海外投融資」の2種類ががあります。

贈与

  • 無償資金協力…返済義務を課さない資金提供
  • 技術協力…途上国の人材育成を目的とした、技術・技能、知識の提供

政府貸付

  • 有償資金協力(円借款)…インフラ整備のための、返済義務のある資金貸付
  • 海外投融資…日本の民間企業等による途上国の開発事業に対する出資・融資

政府貸付については、銀行のような役割をイメージすると分かりやすいかもしれませんね。

そして、これらODAの実施を担っているのが、独立行政法人国際協力機構(JICAという組織になります。



1-3:ODAの実態

最後に、世界と日本のODAの実態について紹介します。OECDによると、2018年のODAの総額は約1500億ドルです。そのうち、上位5か国は以下の通りでした。

  1. アメリカ 341.5億ドル (全体の22.3%)
  2. ドイツ 249.8億ドル (16.3%)
  3. イギリス 194.1億ドル (12.7%)
  4. 日本 141.6億ドル (9.2%)
  5. フランス 121.4億ドル (7.9%)

援助金という観点からみると、アメリカが世界第1位のODA拠出国です。日本は世界第4位になります。これら上位5か国のODAを合計すると、世界のODA全体の約68%の金額にあたります。

このように、国際社会の貧困削減や環境問題などの地球規模の課題を解決していくためにも、それぞれが国の経済規模に見合った援助をしていくことが求められます。

いったん、これまでの内容をまとめます。

1章のまとめ
  • ODAとは、開発途上国の社会・経済の開発を援助する目的で、政府が行っている経済協力のことを指す
  • ODAの役割は、開発途上国の課題解決と持続的な発展への援助と国際社会の平和と安定及び繁栄の確保である
  • 日本のODAの実施を担っているのは、独立行政法人国際協力機構(JICA)である
Sponsored Link

2章:ODA(政府開発援助)の歴史と現状

では一体、ODAにはどのような歴史があり、日本は現状どのような関わりをもっているのでしょうか?2章ではそれらの点を詳しく解説していきます。

2-1:ODAの開始

まず、ODAの歴史を大きく「アメリカ」「日本」からみていきましょう。

2-1-1: アメリカによるODA

現在のODAのような形の援助を世界で初めて行ったのは、アメリカと言われています。

具体的には、

  • 1947年、第二次世界大戦後の欧州諸国の復興のために、アメリカは「マーシャル・プラン」という資金投入をおこなった
  • その後、1950年代には米ソ冷戦に突入し、両陣営が国連において支持国を増やしたいという政治的観点から、アジア、アフリカなどの新興国に対して援助戦争を繰り広げていった

という歴史があります。

しかし、1960年代、冷戦が緊張緩和し始めると、ODAは国連を中心とした援助という新しい局面に移ります。この頃、先進国と新興国の経済的格差はさらに大きく拡大していたため、国連加盟国や国連機関が連携して援助するようになっていきます。

2-1-2: 日本によるODA

一方、日本のODAのはじまりは、1954年に「コロンボ・プラン」という南アジア諸国への援助への参加からです。

この援助はビルマ(現在のミャンマー)、インドネシア、フィリピン、ベトナムの4か国に対するものでしたが、これは戦後賠償という意味合いが強いものでした。

さらにこの時期の日本は、ODAの援助を受ける「被援助国」でもありました。戦後間もない日本は、まだまだ援助が必要な国でした。世界銀行からは、1953年から13年間にわたり、総額8億6290万ドルもの資金を借り入れました。

この投資は、戦後日本の経済発展の基盤となるインフラや産業に大きく貢献することになります。東海道新幹線、東名高速道路、黒部ダムなどは、このODAの援助によってつくられたものでした。

その後、日本の経済発展と共に、途上国に対するODAによる援助も拡大することになります。



2-2:ODA大国への成長

1964年、日本はOECDに加盟すると同時に、日本のODAの額や支援の方法が大幅に拡大していきました。

具体的には、以下のように拡大してきました。

  • 1964年の約1億1580万ドルから、1976年の約11億490万ドルへと、約10倍もの規模になった
  • 1965年に青年海外協力隊創設、68年には無償資金援助、その後も災害緊急援助や食糧増産援助などが開始された
  • 援助地域もアジア中心から、中東、アフリカ、中南米、大洋州になった

そして1989年、初めてアメリカを抜き、日本が世界第一位の援助供与国となりました。それ以降、1990年を除いた約10年間、トップ・ドナーを維持しました。

また、この頃から、環境問題や民族問題による紛争、貧困問題など、グローバルな課題に対して、一層の対応を求められるようになっていきます。



2-3:ODAの現状

21世紀に入り、以前にも増して世界各地で紛争が多発し、環境や保健、防災の問題はさらに多様化します。

日本は世界一のODA供与国ではなくなりましたが、引き続きアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスなどの国々と共に、主要ドナーとしてさまざまな課題への対応を主導してきました。

2015年に日本が策定した開発協力大綱(ODA大綱改訂)では、基本方針として、

  1. 非軍事的協力による平和と繁栄への貢献
  2. 人間の安全保障の推進
  3. 自助努力援助と日本の経験と知見を踏まえた対話・協働による自立的発展に向けた協力

を掲げ、現在190の国と地域に対してODAによる援助を行っています。

この方針を実行するために、日本は莫大な拠出をしていることを1章では確かめましたが、ここでは各国の国民総所得(GNI)に占めるODAの割合を確かめてみましょう。

  1. スウェーデン  1.04 %
  2. ルクセンブルク 0.98 %
  3. ノルウェー       0.94 %
  4. デンマーク   0.72 %
  5. イギリス    0.70 %

実績額の順位とはずいぶん異なる国々が並んでいることがわかります。このデータで日本は16(DAC加盟国29か国中)、GNI比は0.28%です。ちなみに、先ほど1位だったアメリカは第23位で、0.16%でした。

OECDが示す先進国の目標が「GNI比0.7%」であることを考えると、日本の割合はまだまだ低いことがわかります。

また、次の図は2017年度のODA拠出額(支出総額ベース)上位5か国のODA形態の内訳です。

2018年版開発協力参考資料集(出典:外務省「2018年版開発協力参考資料集」図表47, 単位:百万ドル)

この表をみると他の諸外国にくらべ、日本ODAは「無償資金協力の割合が少なく、政府貸付等(有償資金協力)の割合が多い」という特徴があることがわかります。

2章のまとめ
  • 現在のODAのような形の援助を世界で初めて行ったのは、アメリカである
  • 日本のODAのはじまりは、1954年に「コロンボ・プラン」という南アジア諸国への援助への参加からである
  • 日本ODAは「無償資金協力の割合が少なく、政府貸付等(有償資金協力)の割合が多い」という特徴がある
Sponsored Link

3章:ODAの問題点

さて、ODAは解決するべき問題点を抱えた取り組みでもあります。以下の3つを簡潔にみていきましょう。

  1. 本当に援助の必要な市民に届かない
  2. 援助国側の政治的な思惑による影響
  3. ODAの債務に苦しむ開発途上国

3-1: 市民の不可視性

ODAを決定する上で、被援助国側がどのような援助を受けたいか、援助国側がどのような援助が必要だと考えるか、両者の意見を突き合わせ議論していくことになります。

しかし、政府間レベルの議論の中に市民の生の意見というものは直接反映されないという現実があります。

結果、巨額のODAを投入しているにもかかわらず、被援助国の市民の生活は一向に改善されないどころか、中には改悪されているケースもあります。

市民レベルまで行き届く援助をするためには、援助を行う前のリサーチや議論の徹底だけでなく、NGOやNPO団体による草の根レベルの活動などに対する援助も拡充していく必要があります。

3-2: 政治的思惑

そもそも、ODAが外交戦略として政治的な側面をもっていることを理解しなければなりません。

二国間援助を通して、両国の関係はより親密なものになっていきます。被援助国が発展していくことは、援助国にとってもメリットがあります。その結果、途上国を舞台としたさまざまなドナー国の援助合戦になる恐れがあります。

多国間援助にも同様のことが言えます。どれだけODAを拠出しているかによって、国連機関での発言力にも影響が出かねません。

それによって振り回されるのは、本当に援助を必要としている人たちです。

3-3: ODAの債務

上記したように、ODAの形態には無償と有償があり、有償の場合、被援助国には返済の義務があります。

この有償資金協力によって開発を進めてきた途上国がその返済に苦しめられているという事態が実際に発生しています。とくに、日本のODAは他の主要国に比べ、有償資金協力の割合が高いことが指摘されています。

援助が必要な国を助けるどころか、さらに苦しめる結果になっては本末転倒です。

このような事態にならないよう、ODAを通して途上国が持続可能な発展をしていけるよう十分に計画し、実行していく必要があります。

4章:ODA(政府開発援助)に関するおすすめ本

ODAについて理解を深めることができたでしょうか。

今回紹介した内容は、あくまで基本的な情報ですので、さらに深く詳しく知りたいという方は以下の本をご覧ください。

おすすめ書籍

紀谷昌彦・山形辰史『私たちが国際協力する理由 人道と国益の向こう側』(日本評論社)

日本の国際協力の最前線で実際に活躍されている方々の、国際協力に対する熱い考えを知ることができる一冊。

created by Rinker
日本評論社
¥1,870
(2024/04/26 21:22:27時点 Amazon調べ-詳細)

古森義久『「ODA」再考』(PHP新書)

これまでのODAの事例をもとに、ODAのあり方について批判的な立場を知ることができる一冊。

created by Rinker
¥660
(2024/04/26 21:22:27時点 Amazon調べ-詳細)

草野厚『ODAの正しい見方』(ちくま新書)

ODA入門書となる一冊。ODAの役割や歴史、現状について、さらに深めたい方におすすめです。

created by Rinker
¥296
(2024/04/26 21:22:28時点 Amazon調べ-詳細)

学生・勉強好きにおすすめのサービス

一部の書籍は「耳で読む」こともできます。通勤・通学中の時間も勉強に使えるようになるため、おすすめです。

最初の1冊は無料でもらえますので、まずは1度試してみてください。

Amazonオーディブル

また、書籍を電子版で読むこともオススメします。

Amazonプライムは、1ヶ月無料で利用することができますので非常に有益です。学生なら6ヶ月無料です。

Amazonスチューデント(学生向け)

Amazonプライム(一般向け) 

数百冊の書物に加えて、

  • 「映画見放題」
  • 「お急ぎ便の送料無料」
  • 「書籍のポイント還元最大10%(学生の場合)」

などの特典もあります。学術的感性は読書や映画鑑賞などの幅広い経験から鍛えられますので、ぜひお試しください。

まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • ODAとは、開発途上国の発展を援助する目的で政府が行っている経済協力のことで、政府開発援助とも言う
  • 日本は1989年に世界第一位のODA供与国となり、現在も主要国の一つとして190の国と地域に対してODAを行っている
  • ODAには、援助が市民レベルまで行きわたらないなどの問題点があり、ODAのあり方が問われている

このサイトは人文社会科学系学問をより多くの人が学び、楽しみ、支えるようになることを目指して運営している学術メディアです。

ぜひブックマーク&フォローしてこれからもご覧ください。→Twitterのフォローはこちら

参考文献およびサイト

  • JICAのHPより「国際協力・ODAについて」https://www.jica.go.jp/aboutoda/index.html(最終閲覧日:2020年4月23日)
  • 外務省「開発協力大綱」2015年
    https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000072774.pdf(最終閲覧日:2020年4月23日)
  • OECD「DAC List of ODA Recipients Effective for reporting on 2020 flows」http://www.oecd.org/dac/financing-sustainable-development/development-finance-standards/daclist.htm(最終閲覧日2020年4月24日)
  • 外務省HPより「ODA実績」
    https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/jisseki.html(最終閲覧日2020年4月24日)
  • 外務省「政府開発援助大綱」1992年
    https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hakusyo/04_hakusho/ODA2004/html/honpen/hp203020000.htm(最終閲覧日:2020年4月24日)
  • https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hakusyo.html(最終閲覧日:2020年4月24日)