国際問題

【エコロジーとは】意味・思想の種類・取り組みをわかりやすく解説

エコロジーとは
LINEで送る
Pocket

エコロジー(Ecology)とは、地球環境や自然と、人間や動物などの生態系との間の調和や共存を念頭に置いて、人間社会の持続可能な開発や経済発展を目指す考え方のことです。

日本ですっかり耳なじみのある言葉となった「エコ」という言葉ですが、最近ではエコ〇〇といった数々の造語が世に溢れています。

このエコはもともと「エコロジー」からきた言葉でした。ではエコロジーという言葉、そして思想はどのように誕生したのでしょうか?

この記事では、

  • エコロジーの意味
  • 現代におけるエコロジー思想
  • エコロジー活動の具体例

について解説します。

好きな箇所から読み進めてください。

このサイトは人文社会科学系学問をより多くの人が学び、楽しみ、支えるようになることを目指して運営している学術メディアです。

ぜひブックマーク&フォローしてこれからもご覧ください。→Twitterのフォローはこちら

Sponsored Link

1章:エコロジーとは

1章では、エコロジーの意味と、現代のエコロジーの思想がどのように作られていったかを解説します。

1-1:エコロジーの2つの意味

まず、「エコロジー」が持つ2つの意味について説明します。

1-1-1: 生態学

もともと、「エコロジー(Ecology)」という言葉は、生物学の一つの分野である「生態学」を指す言葉として誕生しました。

生態学とは、生き物とその周りにある環境との間にある関係性に焦点を当てることで、生態系の仕組みやその機能について研究する学問のことを指します。

この言葉を最初に使われたのは1866年のことで、ドイツの生物学者ヘッケルという人物が、ギリシャ語で家や経済という意味を表す「oikos(イーコス)」と、論理を表す「logos(ロゴス)」を合わせて作った言葉とされています。

1-1-2: 自然環境保護運動

その後、1892年にアメリカ人のエレン・スワローによって、「エコロジー」は環境や自然との共生をはかる社会運動や、環境に配慮する行為などを指す言葉として使われるようになります。

スワローが主張した時代のアメリカでは、まだまだエコロジーと言う考え方は浸透しておらず、工業化が推進される時代でした。

人々の関心が経済発展にしか向いていないこの頃から、スワローは、

  • 工業化によって近い将来、必ずや環境が破壊され、私たちの生活にも大きな影響を与えることになることを予見していた
  • そのため、人々に環境に配慮することの大切さを訴え続けていた

のです。

そして、スワローの精神は、1962年に出版されたレイチェル・カーソン著書の『沈黙の春』において受け継がれます。この出版を機に、「エコロジー運動」として環境保護の活動が社会現象となっていきました。



1-2:現代のエコロジーの思想とはどういうものか

現代のエコロジーの考え方は、上述の通り年代1890年代のスワローから始まり、1960年代のエコロジー運動によって一気にムーブメントとなって広がり、現在に続いています。

このエコロジー運動に火をつけたレイチェル・カーソンの著書『沈黙の春』は、アメリカの工業化によって使われ出した農薬や化学物質が生態系に与える影響や危険性について訴えたものでした。

※レイチェル・カーソンの『沈黙の春』は環境倫理学にも強く影響を与えました。
→環境倫理学について詳しくはこちら

これが発端となり、欧米を中心に徐々にエコロジー運動が広まっていきますが、世界中に広がることになったきっかけの一つに、1972年ストックホルムで開かれた国連人間環境会議があります。大まかにいえば、この会議は以下のようなものでした。

  • この会議では「かけがえのない地球」をキャッチフレーズに、地球環境問題が国際的に議論され、「人間環境宣言(ストックホルム宣言)」「環境国際行動計画」が採択された
  • 人間環境宣言では、環境の保護改善は人間の義務であるとし、環境に関する権利と義務、天然資源の保護、野生生物の保護、海洋汚染の防止などが重要目標として掲げられた
  • 「環境国際行動計画」を実施するための国連機関として。「国際連合環境計画(UNEP)」が設立された

このように国際社会を中心に議論され始めたエコロジーの思想は、あくまで人間の経済開発を中心に考えられており、その発展と自然環境保護がどう融合できるかという点に焦点が当たっていました。

1-2-1: ディープ・エコロジー

そのため、この人間中心主義を否定する思想も現れたことも不思議ではありません。その一つが「ディープ・エコロジー」という思想で、ノルウェーの哲学者ネスによって提唱されました。

社会学者の柏谷によると、ディープ・エコロジーとは以下のようなものです。

「環境危機の根本原因を自然に対する人間の恣意的で暴力的な態度に求め、その源泉として近代科学に代表される人間中心主義的anthropocentricな自然観、世界観ー彼ら自身の用語では『パラダイムparadigm』ーを批判」1柏谷至(1991)「エコロジー思想における<自然的なもの>の問題:ディープ・エコロジーを例として」年報筑波社会学,3,26頁 (最終閲覧日:2020年6月22日)する考え方

つまり、地球規模で起こっている環境問題は、全て現在の社会システムと文明が生みだしたものであり、それを解決するためには、現在の社会システムと文明自体を変革しなければならないという考え方です。

国際社会で叫ばれている環境運動は、結局は人間社会に価値をおいたもので、非常に「浅い(shallow)」考えだと批判し、自然界に存在する全てのものに対する見方を平等と捉える価値観を構築することこそ「深い(deep)」ものなのだと主張しました。

したがって、ディープ・エコロジーは、

自然を征服すべき対象としてみることなく、人間と自然とはそもそも一体であり、自然のなかで自然に支えられて人間は生きるべきだという意識への変革を人々に求めたもの

でした。

この考え方は、とくに近代的な工業化社会を否定し、先住民などの生活スタイルに回帰するムーブメントを世界中で起こしていた人々を総称したヒッピーと呼ばれる人たちからも賛同を受けました。

加えていえば、その後に起こった1980年代のヨーロッパの反原発・反捕鯨運動などの政治運動につながっていきます。そういった意味で、この頃から、エコロジーは政治的なメッセージも持つようになっていきました。

1-2-3: 一般社会への広がり

さらには1980年代後半になると、エコロジーの思想は一般市民や消費者にも広がっていきます。その一つがイギリスで1988年に始まった「グリーンコンシュマー行動」と呼ばれるものです。

グリーンコンシュマーとは、

製品を購入する際に環境により良いものを選ぶ行動をする消費者のこと

を指します。

この考え方はイギリスで出版された『グリーンコンシュマーガイド』で表明されたもので、具体的には以下のように紹介されたといいます。

様々な財や企業が環境に及ぼしている影響についての調査と、消費者が環境負荷の少ない財や環境対策に熱心な企業を選ぶことによって企業活動に影響を与え,環境の改善に貢献することができるという考え方2小谷光正(2016)「環境マーケティングの進展とグリーンコンシューマーリズム」『名古屋学院大学論集社会科学篇』第53巻,第1号,21頁 http://www2.ngu.ac.jp/uri/syakai/pdf/syakai_vol5301_02.pdf (最終閲覧日:2020年6月22日)

この本の出版による影響はイギリスだけでなく、1989年にはアメリカで『よりよい世界のための買い物』、そして1991年には日本でも『買い物ガイド:この店が環境に良い』が出版され、瞬く間にコンシュマーリズムが世界に広まっていきました。

近年では、1992年にリオデジャネイロで開催された「地球サミット(国連環境開発会議)」で初めて言及された「持続可能な発展」という言葉が、現在のSDGs(持続可能な開発目標)へと引き継がれています。

SDGsとは、2015年に開催された「国連持続可能な開発サミット」において掲げられた目標で、「誰も取り残さない」を合言葉に17のゴールと169のターゲットから構成され、途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサルな世界共通の目標です。

このSDGs17の目標はすべて直接的、または間接的にエコロジーに関係しており、現在世界各国でこのSDGsに沿った活動が求められています。

1章のまとめ
  • エコロジーとは、地球環境や自然と、人間や動物などの生態系との間の調和や共存を念頭に置いて、人間社会の持続可能な開発や経済発展を目指す考え方のことである
  • ディープ・エコロジーとは、現在の社会システムと文明自体を変革しなければならないと訴えたものである
  • グリーンコンシュマーとは、製品を購入する際に環境により良いものを選ぶ行動をする消費者のことである

Sponsored Link

2章:世界におけるエコロジーの活動

さて、2章では世界におけるエコロジーの取り組みについて見ていきます。

2-1:国際社会におけるエコロジーの活動

ここでは、国家レベルで実施されているエコロジー政策の取り組み例をいくつか紹介します。

2-1-1: ドイツのエネルギー政策

ドイツは「Energiewende(エネルギー改革)」というスローガンを掲げ、脱原子力・脱化石燃料、そして再生可能エネルギーへの転換を進めている国です。

そのため、現在のドイツでは次のような計画のもと、政策が進んでいるそうです。

  • 2050年までに総最終エネルギー消費量の60%を再生可能エネルギーで占めることを数値目標として掲げており、その前段階としてまずは2020年までに18%にする計画である
  • ドイツの調査によると、すでに2016年の段階で再生可能エネルギーの割合は29.5%を占めるまでに成長しており、順調に政策が推進されている

特に、2000年に制定された再生可能エネルギー法によって導入された「固定価格買取制度(Feed-in Tariff, FIT)」によって、電力会社が再生可能エネルギーで発電した電力を国が全て買い取ることを保証したため、国内の再生可能エネルギーの成長が促進されました。

一方で、化石燃料による発電所の稼働を減らすことができておらず、本来の目的であるCO2排出量の削減はあまり進んでいないという問題もあります。

CO2を削減するためには、CO2を排出しない再生可能エネルギーを増やすと同時に、化石燃料による火力発電の低炭素化、そして何よりエネルギー消費量そのものの削減を進めていく必要があるようです。

2-1-2: 日本のバイオマス政策

日本が2002年から取り組んでいるエコロジー政策に「バイオマス」があります。

バイオマスとは、

再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもので、食品廃棄物や家畜の排せつ物、建設現場で発生した木材、稲わらやもみがらなど

です。

バイオマス資源の活用は、本来はゴミとして処理されるものを、肥飼料や製品の素材、燃料などの製品やエネルギーに変換することで、再活用・循環させる取り組みです。

バイオマスの特徴は、植物などから作られるため太陽と水とCO2さえあれば持続的に生み出すことができるという点にあります。

また、製品やエネルギーにする過程で発生するCO2は、化石資源の燃焼で発生するCO2とは異なり、生物の成長過程で光合成によって吸収されます。

そのため、大気中で新たなCO2を生まないという意味で「カーボンニュートラル」な資源と言われ、地球温暖化対策にも有効です。

しかし、バイオマス資源となるものは多岐にわたるため、収集・運搬にかかるコストが高いという問題点も指摘されており、日本ではあまり進んでいないのが現状です。



2-2:民間におけるエコロジーの活動

続いて、日本における民間の団体や企業が取り組んでいるエコロジー活動について紹介します。

2-2-1: NGO地球市民のグリーンコンシュマー活動

前章でも紹介したグリーンコンシュマーを、団体の取り組みとして行っているのがNGO環境市民です。

この団体は「グリーンコンシュマーの買い物10の原則」を掲げ、さまざまな市場の調査を行ったり、市民に対して地球にやさしい消費行動を啓蒙するワークショップを開催するなど、精力的に活動しています3NPO法人環境市民ウェブサイト「グリーンコンシューマー活動」(最終閲覧日:2020年6月23日)

グリーンコンシュマーの買い物 10の原則
  1. 必要なものを必要なだけ買う
  2. 使い捨て商品ではなく,長く使えるものを選ぶ
  3. 包装のないものを最優先し,次に最小限のもの,容器は再利用できるものを選ぶ
  4. 「作るとき」「使うとき」「捨てるとき」に資源とエネルギー消費の少ないものを選ぶ
  5. 化学物質による環境汚染と健康への影響の少ないものを選ぶ
  6. 自然と生物の多様性を損なわないものを選ぶ
  7. 近くで製造・生産されたものを選ぶ
  8. 生産者(おもに途上国の)に適正な対価が支払われている製品を選ぶ
  9. リサイクルされたものやリサイクルシステムのあるものを選ぶ
  10. 環境問題に熱心に取り組み,環境情報を公開しているメーカーや店を選ぶ

2-2-2: 積水ハウスのゼロエネルギーハウス

積水ハウスは、2008年に環境省からエコ・ファースト企業の認定を受けました。

積水ハウスは公約として掲げているものに、2020年までに全新築戸建住宅におけるゼロエネルギーハウスの比率を80%にすることがあります。

ゼロエネルギーハウスとは、省エネを徹底的に進めエネルギー消費の少ない住宅を作り、エネルギー消費量を上回る太陽光発電システム等を設置することで、エネルギー収支をゼロにした住宅のことです。

積水ハウスはこの他にも植樹活動や、建築時に出る廃棄物のリサイクルなど、環境保全活動に積極的に取り組んでいる企業の一つです。

2章のまとめ
  • 国家レベルで実施されているエコロジー政策として、ドイツのエネルギー政策と日本のバイオマス政策がある
  • 民間レベルでは、「グリーンコンシュマーの買い物10の原則」や積水ハウスの取り組みがある

Sponsored Link

3章:エコロジーの思想について学べる本

エコロジーについて、理解できましたか?

さらに深く知りたいという方は、以下のような本をご覧ください。

おすすめ書籍

オススメ度★★★ ジェラルド・マーテン, 天野明弘, 関本 秀一『ヒューマン・エコロジー入門―持続可能な発展へのニュー・パラダイム』(有斐閣)

ヒューマン・エコロジーという環境と人間社会の共存・強制を目指した考え方を学べる一冊。持続可能な開発についても理解を深めたい人にもおすすめです。

オススメ度★★★ ドレングソン・アラン, 井上有一『ディープ・エコロジー―生き方から考える環境の思想』(昭和堂)

ディープ・エコロジーの考え方の本質を知れる一冊。ディープ・エコロジーをもっと詳しく知りたい方におすすめです。

学生・勉強好きにおすすめのサービス

一部の書籍は「耳で読む」こともできます。通勤・通学中の時間も勉強に使えるようになるため、おすすめです。

最初の1冊は無料でもらえますので、まずは1度試してみてください。

Amazonオーディブル

また、書籍を電子版で読むこともオススメします。

Amazonプライムは、1ヶ月無料で利用することができますので非常に有益です。学生なら6ヶ月無料です。

Amazonスチューデント(学生向け)

Amazonプライム(一般向け) 

数百冊の書物に加えて、

  • 「映画見放題」
  • 「お急ぎ便の送料無料」
  • 「書籍のポイント還元最大10%(学生の場合)」

などの特典もあります。学術的感性は読書や映画鑑賞などの幅広い経験から鍛えられますので、ぜひお試しください。

まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • エコロジーとは、地球環境や自然と、人間や動物などの生態系との間の調和や共存を念頭に置いて、人間社会の持続可能な開発や経済発展を目指す考え方のことである
  • ディープ・エコロジーとは、現在の社会システムと文明自体を変革しなければならないと訴えたものである
  • グリーンコンシュマーとは、製品を購入する際に環境により良いものを選ぶ行動をする消費者のことである

このサイトは人文社会科学系学問をより多くの人が学び、楽しみ、支えるようになることを目指して運営している学術メディアです。

ぜひブックマーク&フォローしてこれからもご覧ください。→Twitterのフォローはこちら

参考・引用文献

伊東俊太郎(1996)「講座 文明と環境14・環境倫理と環境教育』,pp45-69,朝倉書店http://www.kuniomi.gr.jp/geki/iwai/deepeco.html (最終閲覧日:2020年6月22日)

エコ・ファースト推進協議会HPhttps://www.eco1st.jp/index.html (最終閲覧日:2020年6月23日)

環境省「参考資料1 ドイツのエネルギー変革に関する動向調査」環境省HPよりhttps://www.env.go.jp/earth/report/h29-03/h28_ref01.pdf (最終閲覧日:2020年6月23日)

環境省資料「バイオマスをめぐる現状と課題」環境省HPよりhttps://www.maff.go.jp/j/biomass/b_kenntou/01/pdf/1_1.pdf (最終閲覧日:2020年6月23日)

LINEで送る
Pocket