文化人類学

【コミュニタスとはなにか】その意味や具体的な例をわかりやすく解説

コミュニタスとは

「コミュニタス(communitas)」とは、

日常的な社会的規範や関係を示す「構造」と対立する概念で、非差別的、平等的、非合理的な「反構造」という社会状態を意味します。文化人類学者のターナーは「構造」と「コミュニタス(反構造)」のセットで社会が構成されると考えました。

ターナーの議論はヴァン=ジェネップやリーチの通過儀礼の分析を、さらに一般化したものとして知られています。

そのため、「コミュニタス」という概念自体は通過儀礼に関する議論から登場しますが、より一般的な社会の分析にも有効なものです。そういった意味で、人文・社会科学に興味のある方にはぜひ知ってもらいたい概念です。

そこで、この記事では、

  • コミュニタスの意味と具体的な例
  • コミュニタスと社会構造

をそれぞれ解説します。

ターナーによると、さまざまな社会でコミュニタス的な状況は発生します。読み終えることで、そのような状況を分析する視点が養えるはずです。

この記事があなたの学びのきっかけになれば幸いです。

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1章:コミュニタスの意味と具体的な例

まずはコミュニタスの意味を詳しく解説し、その後にコミュニタスの具体的な例を紹介していきます。

コミュニタスと社会構造に関心のある方は2章から読み進めてください。

1-1: コミュニタスの意味

まず、コミュニタスの定義から確認しましょう。

コミュニタスとは、日常的な社会的規範や関係を示す「構造」と対立する概念で、非差別的、平等的、非合理的な「反構造」という社会状態を指すものです。

文化人類学者のヴィクター・ターナー(Victor Turner 1920年 – 1983年)は『儀礼の過程』(1969)で、社会が儀礼とコミュニタスの弁証法的過程であることを指摘しました。その際に登場するのが、「コミュニタス」という概念でした。

ターナーはジェネップの有名な通過儀礼の議論に着目し、「コミュニタス」という概念を提示します。そのため「コミュニタス」を理解するためには、まず通過儀礼の議論を知る必要があります。

1-1-1: 通過儀礼とはなにか

通過儀礼とは、

人生の節目に経験する「人生儀礼」「移行儀礼」「加入儀礼」です。

たとえば、人生の儀礼は結婚や死などの人生の節目に経験する儀礼を意味します。儀礼にはさまざまな種類がありますが、個人の地位や身分が変更される際におこなわれる儀礼が通過儀礼であることを覚えておいてください。

通過儀礼に関しては次の記事で詳しく解説しています。ぜひ参照ください。

【通過儀礼とはなにか?】その意味から具体的な例までわかりやすく解説

1-1-2: ジェネップと通過儀礼

そもそも、「通過儀礼」という言葉は人類学者のヴァン=ジェネップが用いた言葉です。彼は世界各地でおこなわれる儀礼のなかにある共通の特徴を通過儀礼という言葉で説明しようとしました。

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ヴァン=ジェネップの研究から明らかになったのは、通過儀礼が3つの局面から構成されることです。その局面とは次のようなものです。

通過儀礼の3つの局面

  1. 現在の状態からの「分離」
  2. どの状態でもない「過渡」
  3. 新しい状態に向けた「統合」

このような通過儀礼の局面を図で表してみましょう。図1で表されるのは、子どもから大人へ移行する「成人の儀礼」です。

コミュニタスとは図1(子どもの世界と大人の世界は区別されており、儀礼を経て子どもは大人になる)

このような通過儀礼の局面において、ターナーが注目したのは「過度」の段階です。ターナーは「分離」にも「統合」にも属さない「過度」の境界性を「リミナリティ」と呼びました。

そして、ターナーはリミナリティにいる人間は法や伝統や慣習や儀礼によって指定され配列された地位のあいだのどっちつかずのところにいるという特徴がある、と述べます。

つまり、リミナリティにおける状況とは、

  • 「分離」や「統合」における日常的な社会的規範や関係と対立するものとなる
  • 具体的に、社会的な規範から解放された平等な個人で構成され、相対的に未分化な共同体としての社会状況が生まれる(「過度」の段階)
  • それは「並置的相互関係」とターナーがいう、「政治的・法的・経済的な地位の構造化され分化された」社会関係の様式と対照をなすもの(「分離」や「統合」の段階)

といった特徴があります。

ターナーはこのような日常の「構造」から解放された「反構造」を説明するものとして「コミュニタス」を用いました。

1-2: コミュニタスの具体的な例

ターナーは『儀礼の過程』において、コミュニタスのさまざまな事例を提示しています。ここでは簡潔にコミュニタスの事例をみていきましょう。

1-2-1: ンデンブ族のイソマ儀礼

ターナーによると、儀礼の境界段階(リミナリティ)にいる修練者には次のような特徴があります。

リミナリティにいる修練者の特徴

  • 無所有のものとして、全裸に近く、地位も財産も職業も、親族体系における序列や役割ももっていないことが表象される
  • 修練者は指導者に絶対的に服従するだけでなく謙虚であり受動的である
  • しかし、仲間同士の間では平等的であり世俗的な識別意識は均質化される傾向にある

このような特徴を示しているのが、ンデンブ族のイソマ儀礼です。イソマ儀礼では不妊の患者とその夫が儀礼の対象となります。

ターナーによると、不妊の患者とその夫は受動性、謙虚、全裸に近いという属性によって特徴づけられます。この時に生まれる、平等な個人で構成された相対的に未分化な共同体としての社会の様式を、ターナーはコミュニタスであると考えました。

1-2-2: 宮廷の道化師、千年運動論運動、ヒッピーなどの社会現象

続いて、コミュニタスは宮廷の道化師、千年運動論運動、ヒッピーなどの社会現象にも現れる、とターナーは指摘します。なぜならば、これら社会現象は構造的に周辺、劣位であるものが自由で平等なコミュニタスの無構造的性格を表現したものだからです。

ここでは、ヒッピーを事例にみていきましょう。

ターナーはヒッピーの特徴を、

  • 社会秩序の外側を選択し、浮浪者のような衣服をまとうこと
  • 社会的義務より個人的人間関係を重視し、性を永続的な構造化社会のきずなの基礎としてではなく、直接的なコミュニタスの多形態の手段としていること

と指摘します。

このような社会現象は自発性、直接性、実存を強調することに特徴があり、「構造」と対比的にコミュニタスがもつ意味を提示してる、とターナーは考えました。

つまり、コミュニタスは儀礼におけるリミナリティだけでなく、社会構造の裂け目、周辺、またはその周辺を占める人間や原理に確認できるものなのです。このような儀礼という枠組みをこえた社会の過程こそが、ターナーが示した新たな着眼点でした。

いったんこれまでの内容をまとめます。

1章のまとめ
  • コミュニタスとは、日常的な社会的規範や関係を示す「構造」と対立する概念で、非差別的、平等的、非合理的な「反構造」という社会状態を指すもの
  • 日常の「構造」から解放された「反構造」を説明するものとして、「コミュニタス」という概念が提示される
  • コミュニタスは儀礼におけるリミナリティだけでなく、社会構造の裂け目、周辺、またはその周辺を占める人間や原理に確認できるもの

ターナーの『儀礼の過程』は学術書であるにもかかわらず、非常に読みやすいのでハードルは低いです。ぜひ読んでみてください。

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2章:コミュニタスと社会構造

それでは次に、コミュニタスと社会構造の関係を解説していきます。大事な点から解説していきます。

2-1: コミュニタスと社会構造の関係

まず、注意していただきたい点は「社会構造」という言葉の意味です。文化人類学で「構造」と使うとき、一番最初に想定されるのはレヴィ=ストロースの意味での「構造」です。

ターナーは「社会構造」という言葉の意味を、レヴィ=ストロースと比較しながら次のようにその違いを述べています。

レヴィ=ストロースの社会構造・・・論理的カテゴリーとそれらの相互関係の形式に関わるもの(→構造主義に関してはこちら

ターナーの社会構造・・・相互依存の関係にある特定の諸制度とそれらの内に含まれる各種の地位と行為者からなる、あるいは、行為者のみからなる、制度化された組織の多少とも明確な配列

ターナー『儀礼の過程』(236頁)を参照

ターナーの社会構造は抽象的でわかりにくいかもしれませんが、要するに、地位や身分の配列、諸集団や諸関係の制度化または永続性が示されたものと考えてください。

重要なのはコミュニタスそれ自体が社会構造に発展し、個人の自由な諸関係は社会的な規律という支配の関係に変化してしまうことです。結論からいえば、この関係性がコミュニタスと社会構造の関係です。

つまり、ターナーは、

  • 構造だけではエネルギーが枯渇していまうので、反構造としてのコミュニタスが必要
  • コミュニタスはそれ自体も長続きせず、最終的には構造に吸収
  • そのため、「構造」と「コミュニタス」によって社会が存在する

と主張しました。

2-2: コミュニタスの3つの類型

さて、今までシンプルに「コミュニタス」と述べてきましたが、実はターナーはコミュニタスの3つ類型を提示してます。

具体的に、「実存的または自然発生的コミュニタス」「規範的コミュニタス」「イデオロギー的コミュニタス」の識別が必要であるとターナーは指摘しています。それぞれを解説します。

2-2-1: 実存的または自然発生的コミュニタス

自然発生的コミュニタスとは、

社会的地位や身分に就く間の空白期間である「社会構造の裂け目」として知られていたところによく発生するものを意味します。

このようなコミュニタスの種類は、複雑に産業化した社会においても、教会の礼拝式やヒッピーなどからその発生の試みを確認することができます。

2-2-2: 規範的コミュニタス

規範的コミュニタスは、

共通の目標を追求する集団構成員を社会的に統御するために、自然発生的コミュニタスを組織化させたものを意味します。

つまり、言い換えると、自然発生的コミュニタスを制度化したものが規範的コミュニタスです。

2-2-3: イデオロギー的コミュニタス

最後に、イデオロギー的コミュニタスとは、

ユートピア的様式の社会に貼られるラベルを意味します。

たとえば、シェイクスピアにおけるゴンザーロの理想共和国では、平等と財産欠如などが結びづけられています。これをターナーは「支配者なしに生活する人たちの純朴・純粋」(188頁)という価値が強調されていると述べて、イデオロギー的コミュニタスの事例として提示しています。

上記のように、ターナーは3つのコミュニタスの類型が提示しました。重要な点なので繰り返しますが、コミュニタスそれ自体は社会構造に発展し、個人の自由な諸関係は社会的な規律という支配の関係に変化してしまうという構造との関係性があります。

つまり、3つの類型のコミュニタスは社会構造の法律と政治的性質に対立するものとして登場しますが、それらの自然発生性と無媒体性が長期に維持されることはないのです。

これまでの内容をまとめます。

2章のまとめ
  • ターナーの社会構造とは、地位や身分の配列、諸集団や諸関係の制度化または永続性が示されたもの
  • コミュニタスそれ自体は社会構造に発展し、個人の自由な諸関係は社会的な規律という支配の関係に変化してしまう
  • 3つの類型のコミュニタスは社会構造の法律と政治的性質に対立するものとして登場したが、それらの自然発生性と無媒体性が長期に維持されることはない

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3章:コミュニタスの学び方

どうでしょう?コミュニタスに関する理解を深めることはできましたか?

『儀礼の過程』にそって解説しましたが、この記事では本当に簡単な解説に留めているため、もっと詳しいこと、正確な理解を求める場合は、必ず書籍にあたってください。

コミュニタスはこの記事でみたように、通過儀礼の議論と切り離して理解することはできません。コミュニタスをもっと知りたいと感じる方は、これから紹介する書籍を参考にしてみてください。

オススメ書籍

オススメ度★★★ヴィクター・ターナー『儀礼の過程』(新思索社; 新装版)

この記事で詳しく説明した『儀礼の過程』はコミュニタスを理解するための一番の近道です。イギリスの社会人類学の伝統を継承したターナーの議論は一見の価値ありです。

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オススメ度★★エドマンド・リーチ『文化とコミュニケーション』(紀伊國屋書店)

リーチによる通過儀礼の議論は、時間的な切れ目や空間的な切れ目に重点が置かれています。構造人類学を学ぶ上でも必須の本です。

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まとめ

この記事のまとめ
  • コミュニタスとは、日常的な社会的規範や関係を示す「構造」と対立する概念で、非差別的、平等的、非合理的な「反構造」という社会状態を指すもの
  • 日常の「構造」から解放された「反構造」を説明するものとして、「コミュニタス」という概念が提示される
  • コミュニタスそれ自体は社会構造に発展し、個人の自由な諸関係は社会的な規律という支配の関係に変化してしまう
  • コミュニタスは社会構造の法律と政治的性質に対立するものだが、それらの自然発生性と無媒体性が長期に維持されることはない

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