社会思想

【文化資本とは】学歴など事例から再生産の過程までわかりやすく解説

文化資本とは

文化資本(cultural capital)とは、単に収入のような経済資本だけでなく、言葉の使い方や振る舞い方、学歴、音楽や絵の文化的素養などに関する資本です。提唱者のブルデューは文化資本から、社会的地位の再生産を説明しました。

端的に、社会学者のブルデューが提示した文化資本の意義は、資本概念を経済以外にも広げた点にあります。

ブルデューは教育社会学的な研究の中で資本概念を発展させて、人々が社会で戦略的に生きていくために必要とされるものとして、文化資本に着目しました。これにより、それまで覆い隠されてきた社会的地位の文化的再生産を説明されたのです。

この文化資本がわかれば、お金以外にも文化的なものが関係し合うことで、私たちの社会が形成・再生産されていることがよくわかります。

そこで、この記事では、

  • 文化資本の意味・定義
  • 文化資本の例
  • 文化資本と経済資本・社会関係資本との関係

をそれぞれ解説していきます。

関心のあるところから読んでみてください。

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1章:文化資本とは

まず1章では、文化資本の意味や事例を提示します。

2章ではブルデューが提示した他の資本(経済資本と社会関係資本)と文化資本との関係を解説しますので、あなたの関心に沿って読み進めてください。

1-1:文化資本の意味

冒頭の確認となりますが、

文化資本とは単に収入のような経済資本だけでなく、言葉の使い方や振る舞い方、学歴、音楽や絵の文化的素養などに関する資本

です。

ブルデューが文化資本を提唱した背景から詳しく説明していきます。

ブルデューは初期の段階でアルジェリア研究やフランス農村研究などで「ハビトゥス」というキー概念を提示してから、教育社会学的な研究へとシフトしていきました。

ハビトゥスとは一見個人の意思に基づいた自由な判断にみえることも、実は社会的な性向があることを示す概念です。より詳しくは以下の記事を参照ください。

→【ハビトゥスとはなにか】その意味から具体例までわかりやすく解説

たとえば、ブルデューの著書である『再生産』(1991)や『遺産相続者たち』(1997)では、一貫して学校制度を通した社会的地位の再生産が扱われています。

具体的に、ブルデューは「学校制度は果たして平等化の装置なのか」という問いを立て、その説明に「文化資本」という概念を導出しました。

結論からいえば、学校制度は社会の不平等を再生産する装置だったといえます。ブルデューは、次のような論の展開をします。

  • 学校の制度は一見、万人に開かれていて平等にみえる
  • しかし、選抜試験や学校生活を有利に勝ち抜いていくためには、単純な筆記能力ではなく、言葉の使い方、振る舞い方、音楽や絵の文化的素養など目に見えない多岐にわたる能力が必要である
  • そうした文化的な能力は、幼い頃から触れてきた家庭の文化的環境を通じて獲得されるもの。これは、家庭の文化資本の大小がさらに次の世代にまで引き継がれること意味する
  • こうしてブルデューは学校の機会均等という形式的な平等の背景の裏にある実質的な不平等のプロセスを明らかにした

つまり、ブルデューは文化的再生産論を主張することで、経済資本の大小が次の世代に引き継がれて階級が再生産されるというマルクス主義的な再生産論を拡大したのです。



1-2:文化資本の事例

これまではブルデューの文化資本の学術的な説明でしたので、文化資本をより具体的な例から解説していきます。

ここでは、文化資本を「家庭」「学歴」の事例からみていきましょう。両者が直接的な関係にあることがポイントです。

1-2-1:家庭

まずは、家庭環境を見てみましょう。たとえば、次のような家庭環境で育った子どもを考えてみてください。

  • 家にたくさんの書物がある環境で子どもが育てば、それが読書習慣、文字の読み書きの能力につながる可能性がある
  • 頻繁に演奏会や美術館賞に行き、家の中にも楽器や芸術品が並ぶ家庭で子どもが育てば、美的な感性や楽器の演奏技術、劇場のような緊張感の場所でも毅然とした立ち居振る舞いの方法などが備わるかもしれない
  • 家がホームステイのホストで、普段から知らない人、異なる文化の人とたくさん触れ合えるような環境であれば、子どもは人との接し方に長けているかもしれない

「そんなことは当たり前だろう!」と思うかもしれませんが、それぞれの家庭環境において社会で正統とされている文化資本がどの程度あるのかは異なります。

そして、子どもに上述した経験を蓄積させられるだけの経済資本があるかなどによって、その子どもが獲得できる文化資本が決まってきます。

1-2-2:学歴

学校での成功は、この家庭環境から持ち込まれる文化資本と直接的な関係があります。

たとえば、上述した家庭環境で育った子どもは、

  • 読書習慣があり、文字の読み書きも得意な子どもであれば、学校教育との親和性が高いため、良い成績を取ることができるかもしれない
  • 劇場でも毅然とした立ち居振る舞いができる子どもであれば、目上の先生に対しても堂々と自分の意見を述べられる可能性があがるかもしれない
  • 人との接し方に長けている子どもであれば、クラス委員や生徒会長として、多くの人とうまく関わりながら物事を進めることができるかもしれない

という傾向をもちます。そのため、家庭環境と学校環境は直接的な関係があることがわかると思います。

言い換えると、文化資本が低い子供の場合はこの逆のプロセスが想定されます。

極端な例ですが、ヤンキーのように拳で語ることに慣れた子どもは、学校で正統的とされる文化資本を持たないため、うまく馴染めなかったり、異端児とレッテルが貼られてしまったりします。

ここまでの話をまとめると、

  • 家庭環境において文化資本がどれだけあるかが、学校環境における有利・不利に変換される
  • こうした学校生活における有利・不利によって、生徒は分類・種別化される
  • つまり、学習意欲が高く、学校の規則や文化に正統的な性向をもつ生徒には優等生のラベルが貼られ、そうでない生徒には逸脱者としてのラベルが貼られる
  • このように、生徒を振り分け差異化すること(優等生―劣等生、合格者―落第者、真面目―不真面目など)は学校の本来の選別役割に従うものとして、公認の事実として承認される

のです。

加えて、学校は公認された文化資本として学歴資本につながります。つまり、学校は家庭に蓄積された文化資本を子供が相続し、学歴資本に変換する「場」となるのです。

こうした学歴資本はその後、生徒の進路を決定し振り分ける効果もあり、文化的な地位の再生産を促します(たとえば、日本社会の就活における「学歴フィルター」など)。

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1-3:文化資本の様態

さて、ブルデューは文化資本の様態を以下の3つに分類しました。それぞれの定義的な説明しますが、個別の形態を覚える必要はありません。

身体化された文化資本

  • 個人に身体化されて蓄積された資本。具体的には、言語、教養、素養、技術・技能、趣味、感性などを指す
  • 長い時間をかけて身体化されるため、家族や家庭の果たす役割が特に大きい。これらによって、物事を知覚し、また文化を理解することができる

客体化された文化資本

  • 物財として所有され、譲渡可能な資本。具体的には、書物、絵画、楽器、道具、機械などを意味する
  • 譲渡可能な点で、経済資本と似ているが、身体化された文化資本と常に関係付けられたものである点で異なる
  • つまり、ただ所有しているだけでは意味がなく、本人が身体化された文化資本を持っていること、所有している人の手ほどきを受けて相続することが必要になる

制度化された文化資本

  • 社会からの公的な承認を得た資本。具体的には、学歴資格や資格証明などがある
  • ある特定の能力や技術を持っていることを制度的に保障するものであり、つまり特定の身体化された文化資本を客観的に外部から見えるようにしたものといえる
  • 社会的に価値を認められることで、就活や業務遂行を有利に進められ、他の資本と結びついていく

どうでしょう?繰り返しますが、それぞれの様態を細かく覚える必要はありません。「文化資本と一言でいっても、さまざまな形態がある」とまずは大雑把に押さえておきましょう。

これまでの内容をまとめます。

1章のまとめ
  • 文化資本とは単に収入のような経済資本だけでなく、言葉の使い方や振る舞い方、学歴、音楽や絵の文化的素養などに関する資本を指す
  • 学校は家庭に蓄積された文化資本を子供が相続し、学歴資本に変換する「場」となる
  • 文化資本には、「身体化された文化資本」「客体化された文化資本」「制度化された文化資本」の3つの様態がある
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2章:文化資本と経済資本・社会関係資本

ブルデューはさらに、文化資本が「経済資本」や「社会関係資本」に転換されることで利益を上げられる点を提唱しています。

まず、経済資本や社会関係資本の説明をした後、それぞれの関係について解説します。

2-1:経済資本

まず端的にいえば、経済資本とは、

自由にできる資源(金銭・資産・財産)のこと

です。

その特徴として、ブルデューは経済資本が非実体的な側面があることを指摘しました。たとえば、社会的な承認がなければ、紙幣もただの紙くずに過ぎないのです。

つまり、客観的なモノ(実体)としての側面だけではなく、貨幣が社会において価値あるものとして承認されることで初めて機能するということです。

また、前述したように、ブルデューは資本概念を拡張しているため、経済資本のみでは社会的地位の再生産は説明することができません。文化資本との関係性の中で説明する必要があります。

詳細は後述しますが、教育においては、経済資本が学校制度を通過する中で文化資本に転換され、就職で再び経済資本に転換されるといえます。

2-2:社会関係資本

近年、「ソーシャル・キャピタル」という似た概念が注目されていますが、ブルデューは早い段階で社会関係を資本と捉える考え方を提示しています。

ブルデューの社会関係資本とは、

知り合いなどの人的なネットワークによる親密で持続的な強い紐帯

を指します。簡単にいえば、日本語の「コネ」です。

その特徴は、社会関係資本量が人脈の規模、その安定性、利潤率に正比例して大きくなることです。さまざまな資本を多く所有する人ほど、それを流通・転換させる社会関係資本量も多いことを意味しています。

この視点は社会関係を豊かにすれば、社会は豊かになるという、ある意味で楽観的なソーシャルキャピタル論とは異なります。

ブルデューは、社会関係資本は低階層にとって経済資本や文化資本のハンディを克服する可能性とともに、そうした格差を助長する可能性もあることを指摘しました。あくまで格差の観点から、社会的地位の再生産の問題として資本を考えるブルデューの視点の特徴や意義はここにあります。

2-3:3つの資本の関係性と再生産

では一体、文化資本は経済資本・社会関係資本とどのように結びつくのでしょうか?

結論からいえば、個別の資本が次のようなプロセスで関係し合います。

文化資本

  • 人は家庭環境において、まず言語能力(言語資本)を身につける
  • 次にこれを元手にして様々な知識や能力、技術(身体化された文化資本)を手に入れ、さらにそれらを用いて学歴や資格(制度化された文化資本)を獲得する

経済資本

  • これらの文化資本を総合的に認めてもらうことで、職業(社会的地位)につき、所得(経済資本)を得ることができる
  • ここで、それまで蓄積された文化資本の大小によって、獲得できる経済資本が左右される
  • つまり、それぞれの文化資本を獲得したり、または獲得できなかったりすることで、全体としての階層分化が生じてくる

社会関係資本

  • 時には知り合いのつてやコネ(社会関係資本)が職務遂行上のキーとなり仕事を成功させて、信用や賞賛・昇進・昇級などの利益を得ることある
  • つまり、社会関係資本が自分の経済資本や文化資本を有効に活用するための資本として機能し、社会的地位の上昇・維持の戦略に貢献している

こうしたプロセスを経て、文化資本は様々な利益と結びつき、その価値を増殖させます。そして獲得した利益は、再び資本となってさらに新たな利益に結びついていきます。

また、ブルデューは「界」(シャンと読みます)という概念を提示して、こうした文化資本、経済資本、社会関係資本の関係性が相対的なものであることを説明しました。

端的にいえば、「界」とは、

  • 社会空間が分化した、相対的に自立した下位空間
  • 具体的には、経済界、芸術界、宗教界、大学界などがあり、それぞれの「界」では他には還元されない固有の実践的論理をもつ

ものです。

たとえば、芸術界では美的な感性などが成果に結びつきますが、経済界ではそれよりも論理思考や人との付き合い方などが利益につながるといったことが挙げられます。

ブルデューは、こうした「界」ごとに有効にはたらく資本が変わり、また同じ「界」であっても時系列的に有効な資本が変わってくる点を指摘しました。

ブルデューの資本論の特徴の1つは、このように文化資本・経済資本・社会関係資本の関係性を固定的なものではなく、ダイナミックで多元的なものとして捉えた点にあるのです。

2章のまとめ
  • 経済資本とは、自由にできる資源(金銭・資産・財産)のこと
  • 社会関係資本とは、知り合いなどの人的なネットワークによる親密で持続的な強い紐帯のこと
  • 文化資本、経済資本、社会関係資本の関係性は相対的なものであり、有効な資本は「界」によって異なる

 

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3章:文化資本に関することが学べるおすすめ本

ブルデューの文化資本について理解を深めることができたでしょうか?

今回解説した文化資本の概念は、ブルデューの他の理論とも密接に関係しています。他の理論と関連づけて学習することで、社会をより深く洞察できるようになるでしょう。ぜひチャレンジしてみてください。

オススメ本

オススメ度★★★ ピエール・ブルデュー『再生産』藤原書店

ブルデューの教育社会学理論がまとめられています。今回解説した、学校制度を通した社会的地位の再生産について、文化資本の概念を導出しながら書かれています。

オススメ度★★★ ピエール・ブルデュー『ディスタンクシオン』藤原書店

ブルデューの代表的な著書の一つです。教育社会学的研究に続く、現代フランスの文化社会学的研究に関するもので、これまでの理論を踏まえながら象徴資本というキー概念が導出されます。

オススメ度★★★ 多田治(2017)『社会学理論のプラクティス』くんぷる

初学者向け。ブルデューの理論の全体像がわかりやすくまとめられています。また、具体的な事例研究も豊富で、関連するルーマンやゾンバルトなどの理論も含めて解説されています。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • 文化資本とは単に収入のような経済資本だけでなく、言葉の使い方や振る舞い方、学歴、音楽や絵の文化的素養などに関する資本を指す
  • 文化資本、経済資本、社会関係資本の関係性は相対的なものであり、有効な資本は「界」によって異なる

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参考文献

  • 天沼英雄(2013)「ピエール・ブルデュー教育社会学論」『山梨学院大学現代ビジネス研究』3-21頁
  • 多田治(2017)「社会学理論のプラクティス」くんぷる