科学哲学(philosophy of science)とは、科学の基礎や方法などに関する哲学的探求1寺中平治「科学哲学」、村治能就編『哲学用語辞典』(東京堂出版)pp.65-66 を行う学問領域です。
「科学」と言えば、真実を明らかにするものでその結果は普遍的に適応できる、信頼できるものと一般的には考えられていると思います。
しかし、そもそも科学とはどういうものなのか、人間はどのように科学的な認識を得るのか、といった哲学的なテーマには議論の余地があります。
その意味で、科学哲学を学ぶことは、理系(自然科学・工学・医学等)だけでなく文系(人文社会科学系)の方にとっても大事なことです。
そこで、この記事では、
- 科学哲学とは何か
- 科学哲学の歴史
- 科学的推論、認識、存在、価値といった諸問題
- 科学哲学の有用性
などについて網羅的に解説しています。
1万5000字を超える長文ですので、ぜひブックマークして関心のある所から読んでみてください。
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1章:科学哲学とは
繰り返しになりますが、
「科学哲学(philosophy of science)」とは、科学の基礎や方法などに関する哲学的探求2寺中平治「科学哲学」、村治能就編『哲学用語辞典』(東京堂出版、1974年,pp.65-66)
です。
科学はこれまで、物理法則や生命の起源、宇宙のしくみや物質のふるまいなど、世界を構成するメカニズムについての様々な問いに答えてきました。しかし、それらをすべて統合する理論はいまだ提唱されておらず、諸事実のさらに根源的な原因を科学によって明らかにすることは不可能に近いといえます。
また、経験的に得られる知識を超えたこれらの問題になぜ答えられないのかについて、今日の科学は解答を持ち合わせていません。
科学哲学は、このような、科学がいまのところ答えることができない、そしておそらくはこの先も決して答えられない問いを扱い、その理由を考察する学問です3アレックス・ローゼンバーグ『科学哲学:なぜ科学が哲学の問題になるのか』(春秋社)pp.5-12 。
そこで、まず1章では科学哲学を理解する上で必要な基本的な知識について、解説していきます。
このサイトでは複数の文献を参照して、記事を執筆しています。参照・引用箇所は注4ここに参照情報を入れますを入れていますので、クリックして参考にしてください。
1-1: 科学と哲学の関係
今日の科学は一般に、「観察や実験などの経験的方法に基づいて実証された法則的知識」と定義できます5野家啓一『科学哲学への招待』(筑摩書房〔ちくま学芸文庫〕2015, p.14 。
「今日の」と表現したのは、科学の定義が時代とともに変化してきたからであり、将来的にこの定義が修正されても不思議ではないからです。
ちなみに、「科学」という言葉は「サイエンス(science)」の訳語であり、その語源はラテン語の「スキエンティア(scientia)」すなわち「知ること」という意味で、知的活動一般を指します6野家啓一『科学哲学への招待』(筑摩書房〔ちくま学芸文庫〕2015,pp.19-20 。
近代初期まで科学は「自然哲学」と呼ばれ、あらゆる自然の原理は哲学的な思索によって体系的に解釈されていました7苫野一徳『はじめての哲学的思考』(筑摩書房、2017年, p.38)。
そのため、科学は元をたどれば哲学と根を同じくする学問です。
新しい方法の考案や器具の発明といった学問の進歩は、その対象や研究方法の違いによって様々な知識を個別の「科」へと分化させました。その結果、実証的な分析を行って「事実」のみを明らかにする科学は、抽象的な思弁によってその事実が持つ「意味」をとらえようとする哲学と明確に区別されるようになりました。
1-2: 科学哲学の歴史
科学と哲学の双方の視点から考えなければならない科学哲学の性質上、両者の見解は一致しないことがあり、科学哲学の歴史を記すことは容易ではありません。
学問的な体系としての「科学哲学」が成立するのは19世紀後半から20世紀前半とされていますが、それ以前の科学哲学的な営みである、いわゆる「広義の科学哲学」についても少しだけ触れておきます。
1-2-1: 古代から中世までの自然哲学
先述したように、古代における科学的な営みは哲学の中に含まれていました。そのため、科学哲学も広く自然哲学に内包されていたと考えることができます。
たとえば、アリストテレスは2章で紹介する、科学的推論の手段である「演繹法」や「帰納法」について言及しています。
→演繹法・帰納法について詳しくはこちら
また、科学的説明の原型ともいえる「四原因説(four causes)」を唱えたことでも知られています8ジョン・プライス・ロゼー『科学哲学の歴史』(紀伊国屋書店、1974年, pp.15-26)。
古代の自然哲学者らの考え方は中世の人々にも引き継がれ、とりわけアリストテレス哲学は長きにわたって哲学の基盤となりました。
後の科学に重要な示唆を与えた中世の人物には、実験や観察を重視する科学的方法論を説いたロバート・グロステストやロジャー・ベーコン、理論の単純化を要請する「オッカムの剃刀(Occam’s razor)」と呼ばれる科学的説明を提示したオッカムのウィリアムなどが挙げられます9ジョン・プライス・ロゼー『科学哲学の歴史』(紀伊国屋書店、1974年,pp.44-53)。
1-2-2: 近代科学と「科学哲学」の誕生
近代以降の科学に多大なる影響をもたらしたのが、経験哲学の祖フランシス・ベーコンと大陸合理主義の祖ルネ・デカルトです。
彼らの思想をもとに打ち立てられた経験科学の方法は、今日に至るまで受け継がれています。この時期に起きたいわゆる「科学革命(scientific revolution)」により、科学は徐々に哲学の領域から切り離されて考えられるようになります。
自然哲学に代わって「科学哲学」という表現が使われるようになったのは、19世紀になってからのことです。フランスではアンドレ=マリー・アンペールやオーギュスト・コントが論文や著書の中で使用したとされ、イギリスではウィリアム・ヒューウェルが「科学者」という言葉ととともにこの語を生み出したとされています10ドミニック・ルクール『科学哲学』(沢崎壮宏、竹中利彦、三宅岳史訳、白水社、2005年,pp.20-22;伊勢田哲治『科学哲学の源流をたどる:研究伝統の百年史(叢書・知を究める 13)』ミネルヴァ書房、2018年,pp.5-7 。
1-2-3: 科学の危機と論理実証主義
古典物理学の確立により近代における数学や物理学を支配した価値観は、原因が定まれば結果も自然と定まるという「決定論的自然観(determinism)」と呼ばれるものでした。
しかし、「集合論のパラドックス」の発見、相対性理論や量子論の登場などによりそれまでの科学は危機に陥ります。その過程で生まれたのが「論理実証主義(logical positivism)」でした。
エルンスト・マッハ、バートランド・ラッセル、ゴッドロープ・フレーゲ、ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタインらの論理学の影響を受けて、哲学の科学への転換を掲げる科学者や哲学者が1929年に「ウィーン学団(独:Wiener Kreis)」を立ち上げました。彼らは、統一的な科学によって世界を把握することを目指し、徹底した実証主義と経験主義によって今日の科学哲学の基礎を築きました11伊勢田哲治『科学哲学の源流をたどる:研究伝統の百年史(叢書・知を究める 13)』ミネルヴァ書房,2018年,pp.245-251 。
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1-2-4: 論理実証主義への批判①:批判的合理主義
理論よりも観察を重視し、あらゆる科学は「検証」できるとした論理実証主義に対して、カール・ポパーは「反証」されることが科学理論の条件であるとし、批判によって合理性を追求しようとする「批判的合理主義(critical rationalism)」を唱えました。
この考え方は科学哲学のみならず社会哲学や政治哲学などにも広く影響を及ぼし、「開かれた社会」という科学を含めた社会全体の構成原理として多様な人々に受け入れられました12中山康夫『科学哲学入門:知の形而上学』(勁草書房,2008年, pp.69-88;野家啓一,前掲書pp.159-172。
1-2-5: 論理実証主義への批判②:パラダイム論
科学がどのように発展するのかについて、論理実証主義が科学哲学を席巻した20世紀前半では、「新たな理論が前の理論に積み上げられて作られる」(蓄積的進歩)という見方が一般的でした13伊勢田哲治『疑似科学と科学の哲学』名古屋大学出版会,2003年, p.73。
しかし、トーマス・クーンが1962年刊行の著書『科学革命の構造(The Structure of Scientific Revolutions)』で提起した「パラダイム」という概念が学界全体に衝撃を与えます。
ポパーの批判的合理主義とも衝突したクーンの議論は、
- ノーウッド・ラッセル・ハンソンの「観察の理論負荷性(theory-ladenness of observation)」
- クーンとポール・カール・ファイヤアーベントの「通約不可能性(incommensurability)」
- 「新科学哲学(new philosophy of science)」
と呼ばれる新たな潮流を形成しました14小林道夫『科学哲学(哲学教科書シリーズ)』産業図書,1996年, pp.127-131;
伊勢田哲治『疑似科学と科学の哲学』名古屋大学出版会,2003年, pp.76-87)。
1-2-6: 社会構成主義と相対主義
これらの新科学哲学の立場は、
- 科学的知識は決して科学者たちによって必然的に生み出されたわけではなく、あくまで人々による社会的な営みの中で構成されたものであるとする「(科学的)社会構成主義(social constructionism)」
- 異なる科学理論の間の優劣を決定するような客観的根拠はないとする「(科学的)相対主義(relativism)」
といった既存の科学観を揺るがす議論をもたらしました15小林道夫,前掲書産業図書,1996年, pp.131-134;森田邦久『理系人に役立つ科学哲学』化学同人,2010年, pp.70-73。
その結果、これまで科学のみに向けられていた考察が社会に対しても開かれるようになり、社会システムのなかに組み込まれた科学のあり方を明らかにするために、「科学社会学(sociology of science)」からのアプローチが不可欠であると考えられるようになりました16野家啓一,前掲書 p.206。
科学社会学のほか、科学哲学と関係のある学問分野については4章で触れます。
1-2-7: 「個別の科学哲学」の展開
論理実証主義に代表される「分析哲学(analytic philosophy)」に端を発する科学哲学は、科学の専門化が進むにつれてそれぞれの分野に特有の哲学的な問いに対処することが求められるようになります。
そこで科学哲学は、ここまで述べた科学全般に当てはまる問いを扱う「一般科学哲学(general philosophy of science)」と分野ごとの問いを扱う「個別科学の哲学(philosophy of particular sciences)」に分けて考えられるようになりました。
近年では「個別科学の哲学」の研究が増えており、形式科学や自然科学のみならず人文・社会科学の哲学も行われるようになりました。それぞれの分野における主な問いについては3章で紹介します。
1-3: 科学哲学の分類
科学哲学で扱われる主な問題の領域は、以下の4つに大きく分類されます17伊勢田哲治『疑似科学と科学の哲学』名古屋大学出版会,2003年, pp.2-5 。
表1. 哲学一般と科学哲学における命題の比較
分類 | 哲学一般 | 科学哲学 |
論理学 | 推論とは何か | 科学的推論とは何か |
認識論 | 認識とは何か、どうやって知識を得るのか | 科学的認識とは何か、どうやって科学的知識を得るのか |
形而上学 (存在論) |
存在するとはどういうことか | 科学理論やその対象は本当に存在するのか |
価値理論 倫理学) |
価値とは何か、どうあるべきか | 科学的であることに価値はあるのか、科学はどう扱われるべきか |
なお、科学哲学の議論は極めて複雑に入り組んで展開されており、すべての命題がいずれかの領域に分類されるというわけではありません。
科学哲学の諸問題は、それを論じる人の数だけ立場が存在するといっても過言ではなく、議論の方向性を整理して分類することすら非常に挑戦的な試みなのです。
ここでは便宜上、哲学一般の問いと並列して科学哲学の問いを分類しましたが、実際の研究では領域横断的な問題も数多く存在します。
ここまで科学哲学を外観しましたので、2章では「一般科学哲学」の代表的な議論、3章で「個別の科学哲学」について、4章では、科学哲学に近接する学問領域との関係、学問としての科学哲学の有用性を説明します。
- 科学哲学は、科学が今も、おそらくはこれからも答えられない問を扱い、理由を考察する学問
- 科学と哲学はもとを辿れば同根であり、哲学から科学は分化していった
- 現代の科学哲学は19世紀後半から20世紀前半ごろに成立した
2章:一般科学哲学
科学哲学には、分野ごとのもの(生物学の哲学など)と、分野を超えた一般的な科学哲学とが存在し、一般向けの書籍では、分野を超えた一般科学哲学が紹介されることが多いです。
そこでまずは、この一般科学哲学とはどういうものなのか詳しく説明します。
2-1: 論理学:科学的推論とは何か
科学とは何かを考えるときに最も重要なことは、科学と科学でないものを明確に区別することです。
しかし、それを判定することは実に難しく、これまで様々な論争が行われてきました。科学と疑似科学あるいは非科学を分ける基準についての議論は「線引き問題(demarcation problem)」と呼ばれ、科学哲学においていまだに決着がついていない命題の一つです。
この節では、科学的な営みの前提となる推論、ある命題を科学とするための条件、ある現象を科学的に説明する方法として考えられているいくつかの議論を紹介します。
2-1-1: 科学的推論
科学は、諸事実から法則や理論を組み立てたり、反対に法則や理論から論理的な帰結を導き出すことによって発展してきました。
その営みを支える重要な思考が「推論」です。一般に、推論は「演繹法」と「帰納法」に大別されます。帰納法はさらに、その過程における手続きの違いによって「枚挙的帰納法」「アナロジー」「アブダクション」に分けられます。
→演繹法・帰納法について詳しくはこちら
ただし、演繹法と帰納法は一長一短であり、どちらか片方のみで科学的推論を行うことは困難です。そのため、今日の科学研究では両者を統合した「仮説演繹法(hypothetico-deductive method)」という方法で推論が行われています。演繹法と帰納法が互いの欠陥を補完しあうことで、理論と観察を有機的に結びつけることができるのです。
こうして科学は経験を積み重ね、新しい議論を展開してきました。
2-1-2: 科学の条件
それでは、科学と科学でないものはどのように判断されるのでしょうか。一般に、科学的な命題であると認められるには以下の基準を満たす必要があるとされます18森田,前掲書, pp.26-44 。
- 命題が経験によって正しいことが証明される可能性があること(検証可能性)
- 命題が経験によって誤りであることが証明される可能性があること(反証可能性)
- 命題が経験によって確からしさが増す可能性があること(確証可能性)
ただし、これらの立場にはそれぞれ問題点があり、「これが科学である」と言い切れるような基準はいまだ提唱されていません。
また、科学を「科学的方法に従って実証された学問・知識の体系」と考え、科学的方法そのものやそれが適用できる対象から科学の条件を検討する見方もあります19濱田嘉昭『科学的探求の方法』(NHK出版、2011年) 。
- 対象を測定できる可能性があること(測定可能性)
- 対象を定量化できる可能性があること(定量性)
- 同一の方法から同一の測定結果が得られること(再現性)
- 測定結果が統計的に有意であることが示されること(有意性)
- 推論の過程が論理的に整合していること(整合性)
しかし、現代では厳密な意味での定量化や再現性の追求が難しいものも科学の対象とされるようになってきており、基準として考えるにはややあいまいな部分が残っています。
2-1-3: 科学的説明
科学の目的として、世の中で起きている現象のしくみを「説明」することが挙げられます。そのため、説明が科学的に行われることもまた科学の成立における重要な要素です。
それでは、どのような説明が科学的であるといえるのでしょうか。これについても、いくつかの立場に分かれます20森田,前掲書pp.100-116;アレックス・ローゼンバーグ,前掲書pp.52-66)。
- 科学的説明とは、ある事実から「説明されるべき現象を記述した文」を演繹的に導出することである(DN理論/被覆法則モデル)
- 科学的説明とは、説明されるべき現象の原因を示すことである(説明の因果説)
- 科学的説明とは、説明されるべき現象がある原理や法則に統合されることである(説明の統合説)
- 科学的説明とは、「なぜ?」への答えであり、その疑問が発せられた文脈に依存する(説明の語用論)
そのほかにも、「理論」、「法則」、「事実」、「因果」など、科学的説明に不可欠な言葉の定義をめぐる様々な議論が展開されています。
科学は私たちが住むこの世界について多くのことを説明してくれますが、いまだに解明できていない事実もたくさんあります。果たして、科学ですべてを推論し、説明することはできるのでしょうか。
まだわかっていないことがあるにもかかわらず、科学的推論の正しさや科学であることの条件、科学的説明とは何かを定義することなどできるのでしょうか。科学においてわからないことがあるのは当たり前のように思われますが、実はこれが科学哲学では重大な問題なのです。
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2-2: 認識論:科学的認識とは何か、どうやって科学的知識を得るのか
人により程度の差はあれど、科学的知識に対して一定の信頼が置かれるのは、私たちがそれを論理的に正しいものと認識しているからにほかなりません。
それでは、そのような認識はどのようにして得られるのでしょうか。そもそも、科学的知識とはどのような知識なのでしょうか。
認識論については、近代初頭に「イギリス経験論」と「大陸合理論」の対立がありました。その後、イマヌエル・カント、エトムント・フッサールらによる批判を経て、20世紀哲学の潮流は、経験論に基づく英米圏の「分析哲学」とドイツ観念論や実存主義、構造主義の影響を受けた独仏圏の「大陸哲学(continental philosophy)」の大きく2つに分かれました21貫成人『図説・標準 哲学史』(新書館、2008年) pp.92-93, 96-105, 174-177。
この思想の違いが科学的認識をめぐる議論にも表れます。
科学哲学の誕生と深く関係する分析哲学は、経験主義に基づいた論理実証主義を唱えます。他方で、フランスにおける科学思想の根幹をなす「エピステモロジー(仏:épistémologie)」は、新たに得られた経験よりも、以前から積み重ねられてきた科学史あるいは科学思想史から合理性を見出そうとする合理主義を支持します22
金森修編著『エピステモロジーの現在』(慶應大学出版会、2008年) pp.1-19。
しかし、クーンの「パラダイム」論やその後の科学的社会構成主義、科学的相対主義の登場によって、これらの考え方は科学的な営み自体への客観的な反省を余儀なくされました。この出来事はまさに、科学的認識の一大転換であったといえます。
2-3: 形而上学(存在論):科学理論やその対象は本当に存在するのか
哲学の中で、あらゆるものの普遍的原理を探求し、その本質を明らかにしようとする学問を「形而上学(metaphysics)」といい、「存在論(ontology)」はその中の主要なテーマとして取り上げられます。
とりわけ人間が直接観察できないものについては、伝統的に「実在論(realism)」と「観念論(idealism)」の間で論争が繰り広げられてきました。
科学でも同様に、一般的に扱われる「知識」、「理論」、「法則」といった言葉も認識によって得られる概念であり、実際に目で見て確認できるようなものではありません。物事の本質の存在をめぐるこのような議論は、カント以後、認識論の問題と分かち難くなったといえます。
このような経緯で、科学的真理の有無について早くから展開されてきたのが「科学的実在論論争」と呼ばれる論争です。以下の節では、それぞれの立場を代表する議論をいくつかご紹介します。
2-3-1: 科学的実在論(scientific realism)
科学的実在論を支持する主な論拠として、
- 奇跡論法(miracle argument)
- 対象実在論(entity realism)
- 構造実在論(structural realism)
があります23戸田山和久『科学的実在論を擁護する』(名古屋大学出版会、2015年) pp.55-77, 175-21。
奇跡論法とは、過去の様々な科学理論の経験的な成功を前提に、(近似的な)科学的真理の存在を説く議論です。
しかし、奇跡論法は後ほど説明する反実在論側の主張である悲観的帰納法による批判を受けます。そこで、科学的な「理論」や「法則」とそれが扱う「対象」に区別し、対象の存在を証明したものが対象実在論です。
そして、一度成功した理論が新たな理論によって否定されたとしても、その理論の間をつなぐ構造が存在するとしたものが構造実在論です。
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2-3-2: 科学的反実在論(scientific anti-realism)
科学的反実在論の立場からは、
- 科学的実在論論争の発端となった「論理実証主義(logical positivism)」
- 実在論が主張した奇跡論法への反証として提出される「悲観的帰納法(pessimistic induction)」
- 決定不全性(underditermination)論法
- 構成的経験主義(constructive empiricism)
などが挙げられます。
そもそも実在論と反実在論の対立については、20世紀前半における論理実証主義の台頭が大きく影響しています。
論理実証主義は徹底した経験主義に基づいて、科学理論は科学的方法によって操作的に定義されるとする「操作主義」や科学理論は経験的事実を理解するための道具に過ぎないとする「道具主義」などの反実在論的な主張を展開しました。
しかし、こうした立場の理論的な前提となる「還元主義」、つまり科学理論は経験的に観察できる対象にすべて置き換えられるとする主張に欠陥があることが明らかになり、それまで息を潜めていた実在論が奇跡論法の提唱によって復興します。
ただ、その奇跡論法は、過去に成功したと思われた理論が後に提唱された理論によって誤りであったことが証明された事例の存在が証明され、それについて最良な説明を与えていないという批判がなされました。
そこで、いま成功していると考えられている科学理論はいずれ否定される可能性がある、ということを示したのが悲観的帰納法です。
そのほか、理論は実験観察などの経験から統一的に説明することはできないとする決定不全性論法や、科学の目的は(近似的な)真理の追求ではなく経験的に妥当な理論をつくることであるとする構成的経験主義などが科学的反実在論の代表的な主張です24森田邦久『理系人に役立つ科学哲学』(化学同人、2010年)pp.80-89;戸田山和久『科学的実在論を擁護する』(名古屋大学出版会、2015年)pp.21-54, 79-171。
2-4: 価値理論(倫理学):科学的であることに価値はあるのか、科学はどう扱われるべきか
科学と価値の関係について、メタ倫理学の立場からは、
- 事実から規範は導けないとする「ヒュームの法則(Hume’s law)」
- 科学理論は利用価値とは独立に存在すべきとする「価値中立性(value neutrality)」
といった概念が提示されています。
科学社会学からも、ロバート・マートンが提唱したマートン規範あるいはCUDOSと呼ばれる
- 公有性(communism)
- 普遍性(universalism)
- 無私性(disinterestedness)
- 系統的懐疑主義(organized skepticism)」
の規範に代表されるように、当初は科学が道徳的・政治的価値から切り離された中立的なものとして存在すべきとされてきました25伊勢田哲治『疑似科学と科学の哲学』(名古屋大学出版会、2003年)pp.169-170;金森修『科学の危機』(集英社〔集英社新書〕、2015年)pp.54-61。
しかし、科学が発展するにつれ、科学者は個人ではなく集団で研究を行うようになり、さらに国家や企業とも密接な関係を持つようになりました。
そして、核技術やバイオテクノロジーなど科学が技術と不可分のものとして扱われるようになり、例えば感染症、環境問題、遺伝子組換え技術、ゲノム編集技術のような不確実性を伴う科学技術領域の中には、科学だけで解決することができない「トランス・サイエンス(trans-science)」と呼ばれる問題群が存在することがアルビン・ワインバーグによって指摘されました。
また、これらの問題に加えて科学者による研究不正の問題が明らかになると、「科学者の社会的責任(social responsibilities of scientists)」が論じられるようになりました26内井惣七『科学の倫理学(現代社会の倫理を考える 6)』(丸善、2002年) pp.56-96;小林傳司『トランス・サイエンスの時代:科学技術と社会をつなぐ(NTT出版ライブラリーレゾナント)pp.121-133』(NTT出版、2007年)。
このように科学と価値をめぐる問題は極めて複雑な様相を呈しており、公共的問題として取り上げられている科学を価値中立的なものと言い切るのはもはや困難な状況です。
今日の科学は、科学哲学のみならず、社会や政治、宗教など様々な立場から、その価値について吟味されています。
- 一般的に、科学と科学でないものは「検証可能性」「反証可能性」「確証可能性」で区別される(ただし厳密な基準が確定しているわけではない)
- 科学的認識について、20世紀に分析哲学と大陸哲学の大きく2つが分かれたが、パラダイム論、社会構成主義、相対主義の東条によって転換を余儀なくされた
- 科学理論の対象やその存在については、科学的実在論論争で争われた
3章:個別科学の哲学
本章では、個々の科学分野それぞれに特有の命題など一般科学哲学では扱いきれないような問いを取り上げます。
※非常に多岐に渡るテーマですので、ここでは非常に簡潔にそれぞれの個別科学の哲学が扱う問いを外観するにとどめます。
3-1: 形式科学の哲学
形式科学の哲学は、主に以下の分野があります。
3-1-1: 数学の哲学
「数学の哲学」では、主に以下のような問いを扱います27伊勢田哲治「科学哲学日本語ブックガイド」伊勢田哲治のウェブサイト、2019年12月17日更新、< http://tiseda.sakura.ne.jp/PofSbookguide.html>、最終閲覧日:2020年6月29日 。
- 数学の対象は何か。
- 数は存在するのか。
- 数学的命題は分析的か。
- 数学的知識はいかにして得られるのか。
- 数学と経験科学は本質的に異なるのか。
3-1-2: 論理学の哲学
「論理学の哲学」では、主に以下のような問いを扱います28伊勢田哲治「科学哲学日本語ブックガイド」伊勢田哲治のウェブサイト、2019年12月17日更新、< http://tiseda.sakura.ne.jp/PofSbookguide.html>、最終閲覧日:2020年6月29日 。
- 数学と論理学はどのような関係にあるのか。
- 論理的な真理とは何か。
- 論理的パラドックスはどう解決されるべきか。
3-1-3: 統計学の哲学
「統計学の哲学」では、主に以下のような問いを扱います29伊勢田哲治『疑似科学と科学の哲学』(名古屋大学出版会、2003年)pp.214-230;森田邦久、前掲書p.155-174。
- 統計的に「有意」であるとはどういうことか。
- 確率とは何か。
- 確率は主観的か客観的か。
- 確率は科学理論にどう応用されるべきか。
3-1-4: 情報学の哲学
「情報学の哲学」では、主に以下のような問いを扱います30西田洋平「情報学の哲学的前提と生命観:メタ理論としての情報学と生命論の表裏一体性」(情報メディア研究、2011年、10巻1号、63-74頁)。
- 情報とは何か。
- 情報学は科学といえるのか。
- 情報と生命はどのような関係にあるのか。
3-2: 自然科学の哲学
自然科学分野の哲学は、以下のものです。
3-2-1: 物理学の哲学
「物理学の哲学」では、主に以下のような問いを扱います31森田、前掲書 pp.195-215; 伊勢田、2019。
- 量子力学は完全な理論といえるのか。
- 古典力学と量子力学はどのような関係にあるのか。
- 量子力学の正しい解釈は何か。
- 時間とは何か、時間と熱力学第二法則はどのような関係にあるのか。
- 空間は実在するのか。
- 物理理論における不変性とは何か。
- 熱力学の存在論的にどのような地位にあるのか。
- 超弦理論は科学といえるのか。
3-2-2: 化学の哲学
「化学の哲学」では、主に以下のような問いを扱います32伊勢田 2019。
- 化学現象は物理現象へ還元されるのか。
- 化学物質とは何か。
- 化学物質の同一性の基準は何か。
3-2-3: 生物学の哲学
「生物学の哲学」では、主に以下のような問いを扱います33森田、前掲書 pp.218-233; 伊勢田 2019。
- 進化論は科学といえるのか。
- 生物学における「機能」とは何か。
- 道徳は進化論で説明できるのか。
- 生命とは何か。
- 自然選択とは何か、自然選択はどのレベルで行われるのか。
- 進化論の観点から人類はどのように理解できるのか。
- 進化論は文化現象にどの程度適用できるのか。
- 遺伝学と分子生物学の関係は還元的か。
- 生物学に普遍法則は存在するのか。普遍法則がないとしたら、生物学理論はどのような地位にあるのか。
- 進化論の知見に忠実な分類体系はどういうものか。
3-2-4: 地球惑星科学の哲学
「地球惑星科学の哲学」では、主に以下のような問いを扱います34戸田山和久「地球惑星科学の哲学をつくる」(2010年10月6日)最終閲覧日:2020年6月29日。
- 地球惑星科学の物理学に還元されない独自性があるとしたら、それは何か。
- 地球惑星科学の目的は何か。
- 地球惑星科学には「法則」や「理論」の名に値するものがあるのか。あるとしたら、それは物理学で言うような法則や理論と同じようなものか、それとも独特のものか。
- 地球惑星科学における「説明」はどのような特質を持っているのか。なぜそれが説明力を持つのか。
- 地球惑星科学における過去の復元はさまざまな決定不全性で苦しむことになるが、このことは地球惑星科学による説明の力をどの程度制限するのか。
3-3: 人文科学の哲学
人文科学分野の個別分野には、以下のような哲学があります。
3-3-1: 心理学の哲学(心の哲学)・認知科学の哲学・精神医学の哲学
「心理学の哲学(心の哲学)」「認知科学の哲学」「精神医学の哲学」では、主に以下のような問いを扱います35伊勢田 2019;源河亨「色や音は世界のなかにあるのか」、西脇与作編『入門 科学哲学』(慶應義塾大学出版会、2013年、38-66頁)pp.38-66。
- 生得観念は存在するのか。
- 脳と心はどのような関係にあるのか。
- 通俗心理学は神経科学の発達で消滅するのか。
- 感覚的性質は知覚とは独立に存在しているのか。
- 表象は認知過程の理解に不可欠といえるのか。
- 認知過程における感情の役割は何か。
- 心理学や認知科学における正しい方法論は何か。
- 我々は精神の病をどうとらえるべきか。
3-3-2: 言語学の哲学(言語哲学)
「言語学の哲学(言語哲学)」では、主に以下のような問いを扱います36飯田隆「哲学から見た言語」、遊佐典昭編『言語と哲学・心理学(シリーズ朝倉〈言語の可能性〉 9)』朝倉書店、2010年、39-67頁)。
- 言葉はなぜ通じるのか。
- 言語は人間にとってどのような役割を持つのか。
- 言語は人間の思考や意識にどのように働くのか。
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3-4: 社会科学の哲学
社会科学分野でも、以下のような哲学的テーマが扱われます。
3-4-1: 社会学の哲学
「社会学の哲学」では、主に以下のような問いを扱います37伊勢田 2019。
- 社会とは何か。
- 社会学理論と心理学・生物学理論はどのような関係にあるのか。
- 社会科学は価値中立的でありうるのか。
- 現象学的社会学は科学といえるのか。
3-4-2: 経済学の哲学
「経済学の哲学」では、主に以下のような問いを扱います38伊勢田 2019;古賀聖人「経験的知識とはどのようなものか:合理性非合理性から見た科学的知識と知覚的知識」、 西脇与作編『入門 科学哲学』(慶應義塾大学出版会、2013年、74-106頁)pp.74-106 。
- 経済学における数理モデルは存在論的・認識論的にどのような地位にあるのか。
- 合理的経済人という想定はどう理解すべきか。
- 人間は合理的なのか、非合理的なのか。
3-5: 歴史科学の哲学
「歴史科学の哲学」では、主に以下のような問いを扱います39伊勢田 2019 。
- 歴史について科学は成立するのか。
- 歴史科学における説明は他の科学における説明と同じといえるのか。
- 研究者の解釈は歴史科学に不可欠といえるのか。
3-6: 応用科学の哲学
「応用科学の哲学」では、主に以下のような問いを扱います40伊勢田 2019 。
- 応用的な研究分野の方法論はいかにあるべきか。
- 応用的な研究分野において科学と社会の関係はいかにあるべきか。
- リスクという概念はどう分析されるべきか。
4章:科学哲学のいま
繰り返しになりますが、科学哲学は19世紀末~20世紀前半ごろから議論されるようになり、現代ではさまざまな分野と関わるようになっています。
科学哲学の現状や有用性について説明します。
4-1: 科学哲学から科学論へ
科学哲学に近接する代表的な学問領域には、
- 科学の営みを歴史的視点から取り扱う「科学史」
- 思想史的視点から取り扱う「科学思想史」
- 社会学的視点から取り扱う「科学社会学」
- 科学と技術と社会の相互連関という視点から取り扱う「科学技術社会論(STS)」
があります41佐野正博「科学論入門講座」明治大学 経営学部 佐野研究室、1999年3月13日更新、 < http://www.sanosemi.com/htst/Theory_of_Science >、最終閲覧日:2020年6月29日。
科学哲学はある種「科学」そのものを科学的に考察する試みでもあり、特定の科学研究だけに注目しているようでは片手落ちです。
科学的な営みを明らかにするには、歴史の中で「科学」なるものが生み出された過程、科学理論の時代的な変遷、その変化の背景にある社会構造などにも注目しなければなりません。
したがって、科学哲学の扱う範囲は近接分野と重なる部分があり、また極めて密接しているといえます。
さらに、現代は諸科学が様々な技術と結びつくことにより人々に多大なる影響を及ぼしており、もはや個々の学問領域のみでは対処できないような複雑化した問題が出てきています。
そのため、今日では科学哲学だけでなくその周辺分野も巻き込んだより大きな枠組みの中で「科学」という営みを包括的にとらえ直すことが重要となってきています。
その足がかりとなるのが、科学を対象とするあらゆる学問的研究を含む「科学論」という、科学哲学よりさらに幅を広げた学問領域です。科学論の研究では、単一の分野のみでは解明できない領域横断的な問題が展開され、多面的な視点からのアプローチが行われています。
4-2: 科学哲学の有用性
科学哲学という学問の有用性について語ることは容易ではありません。
科学哲学に関わる研究者らが持っている問題意識は多種多様であり、また必ずしも科学の未来を見据えて研究を行っているとは言い切れず、科学的な営みから生じた哲学的な問いのすべてが科学哲学者による考察を経て科学に還元されるとは限らないからです。
そのために、科学哲学の存在意義について、科学者から疑問が発せられることもしばしばあるようです。例えば、須藤靖、伊勢田哲治『科学を語るとはどういうことか:科学者、哲学者にモノ申す』(河出書房新社、2013年)では、物理学者の須藤靖氏から科学哲学者の伊勢田哲治氏に対し、科学哲学についての厳しい批判が展開されています。
しかしながら、科学哲学が哲学の一分野として独立して存在するのではなく、あくまでも科学に接近した位置づけにあることは、この学問分野が科学により有意義な示唆を提供する可能性を持っているという点で大変意義深いといえます。
「科学」という営みを反省的にとらえ直すことで、科学哲学は、科学が人類にとってどのような意味があるのかについて考える機会を私たちに与えてくれるのではないでしょうか。
科学哲学はまだ学問としての歴史が浅いですが、科学の成果を享受し、後世へとつないでゆく私たちにとって非常に重要な問いを投げかけています。この記事を読んでご関心を持ってくださった方は、ぜひ今後の研究動向に注目ください。
- 科学哲学は、科学史、科学思想史、科学社会学、科学技術社会論といった複数の領域と隣接し、包括的な議論が必要とされている
- 科学哲学に対しては批判もなされているが、科学という営みを人類に問いかける意義を持つ
5章:科学哲学について学べるおすすめ本
科学哲学について外観できたでしょうか。科学哲学にはたくさんの良い入門書がありますので、より深くはぜひ書籍から学んでみてください。
オススメ度★★★森田邦久『理系人に役立つ科学哲学』(化学同人)
タイトルにある通り、自然科学の典型的な実験例を用いて説明されている点が本書の特徴です。2章で述べた科学哲学が扱う諸問題や各議論における主義・主張が端的な言葉でわかりやすく整理されているほか、3章で紹介した「個別の科学哲学」の事例もいくつか取り上げられています。
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オススメ度★★★野家啓一『科学哲学への招待』(筑摩書房〔ちくま学芸文庫〕)
放送大学の教材を増補改訂して文庫化された本です。科学史・科学哲学・科学社会学の三部構成で、科学哲学に加えて歴史学や社会学を含めた多面的な視点を意識した構成となっています。1章で取り上げた科学哲学の歴史、4章で触れた「科学論」の入門書として最適の一冊です。
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オススメ度★★須藤靖、伊勢田哲治『科学を語るとはどういうことか:科学者、哲学者にモノ申す』(河出書房新社)
科学者と科学哲学者による対談の様子が描かれた本です。両者を隔てる価値観の違いは何なのか、なぜそのような違いが生まれるのか、といった大変興味深い視点を得られます。また、著者らの議論に注目することで、科学を考えることの意義について洞察を深めることができます。
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まとめ
この記事の内容をまとめます。
- 科学哲学は、科学が今も、おそらくはこれからも答えられない問を扱い、理由を考察する学問
- 科学哲学は、科学と科学でないものの区別や科学的認識そのもの、科学理論という存在そのものについて議論している
- 科学哲学は、科学という営みそのものを人類に問いかける点に意義がある
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参考文献
- ドミニック・ルクール『科学哲学』(沢崎壮宏、竹中利彦、三宅岳史訳、白水社、2005年)
- ジョン・プライス・ロゼー『科学哲学の歴史』(紀伊国屋書店、1974年)
- アレックス・ローゼンバーグ『科学哲学:なぜ科学が哲学の問題になるのか』(東克明、森元良太、渡部鉄兵訳、春秋社、2011年)
- 飯田隆「哲学から見た言語」、遊佐典昭編『言語と哲学・心理学(シリーズ朝倉〈言語の可能性〉 9)』朝倉書店、2010年、39-67頁)
- 伊勢田哲治『疑似科学と科学の哲学』(名古屋大学出版会、2003年)
- 伊勢田哲治『科学哲学の源流をたどる:研究伝統の百年史(叢書・知を究める 13)』(ミネルヴァ書房、2018年)
- 伊勢田哲治「科学哲学日本語ブックガイド」伊勢田哲治のウェブサイト、2019年12月17日更新、< http://tiseda.sakura.ne.jp/PofSbookguide.html>、最終閲覧日:2020年6月29日
- 内井惣七『科学の倫理学(現代社会の倫理を考える 6)』(丸善、2002年)
- 金森修『科学の危機』(集英社〔集英社新書〕、2015年)
- 金森修編著『エピステモロジーの現在』(慶應大学出版会、2008年)
- 源河亨「色や音は世界のなかにあるのか」、西脇与作編『入門 科学哲学』(慶應義塾大学出版会、2013年、38-66頁)
- 古賀聖人「経験的知識とはどのようなものか:合理性非合理性から見た科学的知識と知覚的知識」、 西脇与作編『入門 科学哲学』(慶應義塾大学出版会、2013年、74-106頁)
- 小林道夫『科学哲学(哲学教科書シリーズ)』(産業図書、1996年)
- 小林傳司『トランス・サイエンスの時代:科学技術と社会をつなぐ(NTT出版ライブラリーレゾナント)』(NTT出版、2007年)
- 佐野正博「科学論入門講座」明治大学 経営学部 佐野研究室、1999年3月13日更新、
< http://www.sanosemi.com/htst/Theory_of_Science >、最終閲覧日:2020年6月29日 - 須藤靖、伊勢田哲治『科学を語るとはどういうことか:科学者、哲学者にモノ申す』(河出書房新社、2013年)
- 寺中平治「科学哲学」、村治能就編『哲学用語辞典』(東京堂出版、1974年、65-66頁)
- 戸田山和久「地球惑星科学の哲学をつくる」(2010年10月6日)、<Science of Philosophy of Science: http://sxpxs.org/pdfs/gijiroku_101006-1.pdf >、最終閲覧日:2020年6月29日
- 戸田山和久『科学的実在論を擁護する』(名古屋大学出版会、2015年)
- 苫野一徳『はじめての哲学的思考』(筑摩書房、2017年)
- 中山康夫『科学哲学入門:知の形而上学』(勁草書房、2008年)
- 西田洋平「情報学の哲学的前提と生命観:メタ理論としての情報学と生命論の表裏一体性」(情報メディア研究、2011年、10巻1号、63-74頁)
- 貫成人『図説・標準 哲学史』(新書館、2008年)
- 野家啓一『科学哲学への招待』(筑摩書房〔ちくま学芸文庫〕、2015年)
- 濱田嘉昭『科学的探求の方法』(NHK出版、2011年)
- 森田邦久『理系人に役立つ科学哲学』(化学同人、2010年)