社会思想

【モダニズムとは】絵画・文学・建築での意味やポストモダンとの関係を解説

モダニズムとは
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「モダニズム(modernism)」とは、

19世紀末から20世紀はじめにかけて、ブルジョア的「近代」を乗り越えるようとする変革運動を指し、主に建築・芸術・文学の分野で使われる用語です。

モダニズムは主に芸術や文学の分野で使用される用語と言いましたが、芸術や文学に限定されず、より広範囲の社会思想史でも大事なキーワードです。

特に、「モダニズム」と「ポストモダン」の区別を理解することは、人文・社会科学を学ぼうとする方に必須です。

そこで、この記事では、

  • 諸分野におけるモダニズムの意味
  • モダニズムとポストモダンの関係

をそれぞれ解説します。

読みたいところから読んで、あなたの学びに活用してください。

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1章:モダニズムとはなにか?

まず、モダニズムの定義を確認しましょう。

モダニズムとは、19世紀末から20世紀はじめにかけて、ブルジョア的「近代」を乗り越えるようとする変革運動を指し、主に建築・芸術・文学の分野で使われる用語です。

ここで大事なのは「モダニズム」を「近代主義」と訳すことは誤訳である、ということです。

しばしば「モダン」を「近代」と訳し、「モダニズム」を「近代主義」と直訳する場面が見られます。

しかし、「モダニズム」はどちらかというと「反近代主義」を意味する用語です。だからといって「反近代主義」と訳すことはできませんが、「近代主義」と訳すことは誤訳であることは間違いありません。

「それじゃ一体、モダニズムって何なの?」と感じる方が多いと思いますので、ここからは社会学者の稲葉振一郎の議論を参照しながら、その意味を解説していきます(『社会学入門』NHK出版)。

1-1: モダニズムの意味

結論からいうならば、モダニズムとは近代的な自意識の表れといえます。つまり、ヨーロッパ人が「私たちの時代ってなに?」「私たちとは何?」と自問したことから始まる思想です。

そのような近代の自意識が建築、絵画、文学から出現したきた時代を「モダニズム」といいます。

建築、絵画、文学におけるモダニズムの意味を確認する前に、時代区分とその背景を説明します。

1-1-1: モダニズムが登場する時代区分と背景

モダニズムとは(稲葉振一郎 『社会学入門』(NHK出版)をもとに、筆者作成)

まず、私たちが高校で習う世界史をおさらいしましょう。一般的に、「中世」「近代」「現代」は次のように区分されます。

  • 中世・・・16世紀以前の世界
  • 近代・・・16世紀以降の世界(18世紀末あたり境界として、「近世」と狭義の「近代」が区分される)
  • 現代・・・19世紀末から20世紀後半の世界

それぞれの区分を詳しくみていきましょう。

一般的に、「中世」と「近代」は、

  • 「大航海時代」(ヨーロッパによる植民地)
  • 宗教改革(キリスト教会の分裂と政治と宗教の分離)
  • 主権国家の確立(国家より上位の権力を認めず、国家間が対等な立場に置かれることを前提とした国際社会におけるシステム)

といった歴史的出来事によって区分がされます。

そして、「近世」と狭義の「近代」は、

  • 「市民革命」(身分制国家から「近代的」な議会制国家への転換)
  • 「産業革命」(燃料を用いた動力機関の開発と継続的な経済成長)

に特徴づけられます。

最後に、狭義の「近代」と「現代」は、

  • 「短い20世紀」(第一次世界大戦からソ連崩壊までの時代)
  • 「長い19世紀」(フランス革命から第一次世界大戦までの時代)

といった出来事の切れ目として説明される場合があります。

重要なのは「いつモダニズムが登場するか?」ということです。上述したとおり、モダニズムは19世紀末から20世紀はじめにかけて登場しますが、どのような時代だったのでしょうか?

この時代は第一次世界大戦以前の「世紀末」や「ベル・エポック(よき時代)」といわれた時期で、ヨーロッパは平和でありつつも、帝国主義的な体制に特徴づけられる不思議な時代でした。

つまり、モダニズムは平和でありながら、戦争が始まるかもしれないという不安が充満した時代背景から生まれてきた、といえるでしょう。

1-2: モダニズムと絵画・文学・建築

では一体、具体的にモダニズムとはどのような変革運動を意味するのでしょうか?ここでは、絵画、文学、建築におけるモダニズムを事例として紹介します。

それぞれの分野で共通する点は「近代の自意識としてのモダニズム」です。注意して読んでみてください。

1-2-1: モダニズムと絵画

絵画のモダニズムといえば、

シュルレアリズムやキュビスムに代表される「前衛芸術」または「アバンギャルド(avant-garde)」芸術

です。

とはいっても、これだけではわかりにくいですよね。まず、「19世紀はリアリズムが主流だったが、20世紀に入ると「前衛芸術」という分野が登場する」という歴史の流れを知る必要があります。

簡単にいうと、リアリズムとは、

  • モダニズム以前の主流な手法
  • 見たものをそのまま描写するのではなく、遠近法を用いてあたかも写真のように、ある場面を切り取る
  • 中世的な絵画は一枚の絵の中に一つの物語が詰め込まれるが、リアリズムでは近代的な科学をもとに、一瞬を切り取る作業がされる

といった特徴があります。

リアリズムが現実のある場面を描写する一方で、モダニズム絵画では現実には存在しないものが表現されます。

たとえば、サルヴァード・ダリのシュルレアリズムや、パブロ・ピカソに代表されるキュビスムがあります。あなたもピカソの誰でも描ける?絵を一度は見たことがあると思います。

では一体、モダニズム絵画、特にピカソに代表されるキュビスムでは何が試みられているのでしょうか?それは鑑賞者の視点を「ズラすこと」です。

つまり、リアリズム絵画とモダニズム絵画の違いとは、

  • リアリズム絵画には絵の鑑賞者が視点を置くべき消失点がある
  • この消失点に視点を合わせることで、絵はあたかも写真のようにみえる
  • しかし、モダニズム絵画では複数の視点が一枚の絵に描かれている
  • 一見、グロテスクで歪んだ絵は多方向からの視点を想定している

といえます。

現実の世界において、人間は一定の位置から同じ対象を「鑑賞」することがあまりないように、モダニズム絵画では実際の人間の視点そのものを忠実に捉えようとしています。

そのため、キュビスム絵画とはリアリズム絵画よりもリアル人間の経験を表現したものなのです。

1-2-2: モダニズムと文学

では、文学ではどうでしょうか?モダニズム文学が登場する以前、やはり支配的だったのはリアリズム文学です。

リアリズム文学は現実を重視しつつ、ありのままを写実的に伝えようとします。しかし、モダニズム文学はこの点を乗り越えようとします。

よく考えてみてください。たとえば、ある小説において、

  • ある物語やある事件を書いたとしても、それはある物語や事件そのものではない
  • つまり、リアリズム文学で表現される「何か」は、その「何か」そのものではない
  • 表現される対象と表現している作品そのものは別物である

といえます。

さらに厄介なのは、同じ物語を描くとしても、小説、まんが、映画等々でその物語を表現できることです。つまり、さまざまな形式で同じ一つの物語を表現できるのです。

広義のモダニズム芸術が問題とする点は、このような「主題と表現」「表現内容と表現形式」の関係です。

何か具体的なものを描くことは表現の一方法でありますが、リアリズムが目指した形式は一つの洗練されたやり方にすぎないということです。モダニズムはその点を問題視しました。

  • 絵画や小説はある主題を描くためだけの手段、道具にすぎないという考えを否定
  • たとえば、モダニズムは美しい花を描いた絵という「もの」が美しいのではないと主張
  • 美しさとは、むしろ、一見グロテスクにみえるような、無秩序にみえる組み合わせでも、「ただ純粋に美しい」と感じさせるもの

このような考えが19世紀後半までに顕在化してきます。これが、モダニズム文学では「語られる物語が美しいのではなく、言葉の紡ぐイメージが美しいで構わない」といった考えに繋がるのです。

つまり、モダニズム文学とは美しい「何か」を「描写」するのではなく、音声として、文字の組み合わせとして美しいものを作り上げようとする作業なのです。

モダニズム文学で有名なのは、ジェイムズ・ジョイス(James Joyce 1882年−1941年)の作品です。興味のある方は、彼の言語実験を楽しんでみてください。

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1-2-3: モダニズムと建築

モダニズム建築は、

ものを作るのではなく、ものが存在する「空間」そのものを作り上げる運動

です。

モダニズム建築で大事なのは「鉄」「ガラス」「コンクリート」という工業生産材料の使用です。たとえば、私たちが都会で目撃する高層ビルはまさにモダニズム建築です。

モダニズム建築は、

  • 産業革命以降、新素材や新工法が登場してきたが、それに見合った建築理念がなかったことを乗り越える運動
  • つまり、ルネサンス、古典的なギリシャ・ローマの建築理念を乗り越えるもの

として登場してきます。当然、技術的な問題もありますが、重要だったのは建築理念です。

高層ビルの理念の父はル=コルビュジエです。彼はある場所に何を建てるよりも、空間そのものを組織しようと試みました。

ここまでをいったんまとめます。

1章のまとめ
  • モダニズムとは、19世紀末から20世紀はじめにかけて、ブルジョア的「近代」を乗り越えるようとする変革運動
  • モダニズムは平和でありながら、戦争が始まるかもしれないという不安が充満した時代背景から生まれてきた
  • モダニズム芸術が問題としたのは「主題と表現」「表現内容と表現形式」の関係、モダニズム建築は、空間そのものの構築が試みられている
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2章:モダニズムとポストモダンの関係

さて、モダニズムを経過した新たな時代を説明する用語として「ポストモダン(postmodern)」があります。

「ポストモダン」という用語は一時期流行りとして広まりましたが、21世紀も四半世紀を通過した現在、この用語を用いて真剣に議論する人は少ない気がします。

しかし、「ポストモダンとは一体どのような社会状況を説明する用語だったのか?」を理解することは大事です。この議論からさまざまな社会理論が生まれてきたからです。

2-1: モダニズムとポストモダン

ここでは、2人の論者が唱えるポストモダン的状況を紹介します。それぞれの主張は異なりますので、注意して読んでください。

2-1-1: リオタールとポストモダン

まず、ポストモダンの理論書として有名なのは、ジャン=フランソワ・リオタール(Jean-François Lyotard 1924年−1998年)の『ポストモダンの条件』(1979)です。

リオタールが捉えるポストモダン的状況とは、近代(モダン)社会には特有の世界観と人間観を維持・正当化するためのメタ物語、つまり「大きな物語」があったが、それは正当性を失っている状況である、というものです。

リオタールがいう近代社会を支えた「大きな物語」とは、

  • 社会と人間の進歩と発展
  • 理性的人間主体の自由と解放
  • 富の蓄積と経済成長に対する信頼

を意味します。

つまり、理性的人間主体の合意による真理と正義の共有、進歩思想を核とする社会運営、その結果としての社会と人間の幸福といった物語が「大きな物語」です。

リオタールは「大きな物語」が自明性と正当性を失う社会状況を、「ポストモダン」という言葉で表現しました。詳細はリオタールの『ポストモダンの条件』を参照ください。

2-1-2: ベルとポストモダン

一方で、ダニエル・ベル(Daniel Bell 1919年−2011年)はモダニズムの動きが社会全体を覆うような状況を「ポストモダン」と呼びます。

もう一度確認すると、モダニズムとは19世紀末から20世紀はじめにかけて、ブルジョア的「近代」を乗り越えるようとする変革運動です。

そして、ベルはモダニズムを現状のスタイルを否定しつつ、ブルジョア的世界観を壊す運動であったと捉えています。言い換えると、反ブルジョア文化が社会構造から独立する過程としてモダニズムを捉えており、芸術・文学の諸分野から始まったモダニズムが社会全体を広がったことをポストモダンと考えました。

1章の内容を踏まえて、ベルの主張をまとめると、

  • ブルジョア的リアリズムから表象の安定性を奪うことが芸術・文学におけるモダニズム
  • 「高級文化」としてのモダニズムが全文化領域に浸透した結果、リアルな経験そのものが不安定化してる状況がポストモダン

といえます。

ベルの主張を詳しく知りたい方は必ず原著にあたってください。

2-2: モダニズムとポストモダンの再帰的関係

さて、これまでモダニズムとポストモダンの関係を2人の論者から紹介しましたが、最後にモダニズムとポストモダンの関係を考える上での注意点を述べます。

注意して欲しいのは、特にベルのようなポストモダンの説明です。理由は単純で、ポストモダン的な状況を文化現象に還元して説明することはあまりにも単純だからです。ポストモダンは全般的な社会現象で、モダニズムの単なる延長して捉えることは短絡的すぎます。

ポストモダンとはモダンについての再帰的問いかけであり、モダン全体を問題化する理論的動きです。モダンと断絶された時代があるのではなく、むしろ「ポスト」という接頭辞が示すように、モダンという土台を足場としてされるある理論的な運動です。

カルチュラル・スタディーズの創始者であるスチュアート・ホールが指摘するように、そもそも世界の大半は近代を迎えてない状態で、ポストモダンを議論すること自体、西洋中心主義的なのかもしれません。

これまでの内容をまとめます。

2章のまとめ
  • 「ポストモダン」はモダニズムを経過した新たな時代を説明する用語
  • リオタールは理性的人間主体の合意による真理と正義の共有、進歩思想を核とする社会運営、その結果としての社会と人間の幸福といった「大きな物語」の崩壊をポストモダンと捉える
  • ベルは「高級文化」としてのモダニズムが全文化領域に浸透した結果、リアルな経験そのものが不安定化してる状況がポストモダンと捉える
  • モダニズムとポストモダンの関係は再帰的なもので、そもそもポストモダン理論が議論される状況性を真剣に考える必要がある
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3章:モダニズムの学び方

どうでしょう?モダニズムに関する理解を深めることはできましたか?

モダニズム・ポストモダンに関する議論は芸術・文学の分野に限られず、社会思想全般に重要であることがわかったと思います。

モダニズムは学ぶためにはポストモダンの理論を含めて、網羅的に学ぶことがオススメです。ただし、色々な論者が色々なことを言っているので、注意してください。

おすすめ書籍

オススメ度★★★稲葉振一郎『社会学入門』(NHK出版)

社会学者の稲葉振一郎はモダニズムの系譜を解説し、それが社会学という学問に与えた影響を述べています。この記事でも参照しましたし、まずモダニズムの概要を知りたいと思う方にオススメです。

オススメ度★★ 碓井タカシ、 大野 道邦、 丸山 哲央、 橋本 和幸(編) 『社会学の理論』(有斐閣) 

社会学の基礎知識がないと読みにくいのが欠点ですが、ポストモダン理論の系譜をうまくまとめています。ポストモダン理論の立場は複雑ですので、概要に触れてから、原著に挑戦してみるのがいいでしょう。

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オススメ度★★★ スチュワート・ホール『現代思想』(青土社)

2014年に創刊されたスチュワートホールの臨時特集。ポストモダン理論に批判的な彼の思想を学ぶことができます。特に、「ポストモダニズムとの接合について ステュアート・ホールとのインタビュー」は大変有益ですが、致命的な点は一部誤訳があること。英語に自信のある方は原著にあたってください。

まとめ

いかがでしたか?最後に、この記事の要点をまとめます。

この記事のまとめ
  • モダニズムとは、19世紀末から20世紀はじめにかけて、ブルジョア的「近代」を乗り越えるようとする変革運動
  • モダニズム芸術が問題としたのは「主題と表現」「表現内容と表現形式」の関係、モダニズム建築は、空間そのものの構築が試みられている
  • 「ポストモダン」はモダニズムを経過した新たな時代を説明する用語で、さまざまな立場があるが、モダニズムに対する再帰的問いであることが大事

これからも、たくさんの社会思想や学問について紹介しています。

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