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【入国管理法とは】改正の歴史から学術的な議論までわかりやすく解説

入国管理法とは

入国管理法(Immigration Control and Refugee Recognition Act)とは、「本邦に入国し、又は本邦から出国する全ての人の出入国及び本邦に在留する全ての外国人の在留の公正な管理を図るとともに、難民の認定手続を整備することを目的」1昭和二十六年政令第三百十九号出入国管理及び難民認定法, E-GOV 法令検索とした法律です。正式名は「出入国管理及び難民認定法」です。

2018年の改正によって注目された入国管理法ですが、その内容はどのようなものなのですようか。

この記事では、

  • 入国管理法の概要と歴史
  • 入国管理法の学術的な議論

について詳しく解説します。

関心のあるところから読んで、より身近な問題として考えるきっかけにしてください。

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1章:入国管理法とは

1章では、入国管理法を概説します。課題や問題点に関心のある方は、2章から読み進めてください。

このサイトでは複数の文献を参照して、記事を執筆しています。参照・引用箇所は注2ここに参照情報を入れますを入れていますので、クリックして参考にしてください。

1-1:入国管理法の概要

入国管理法は「出入国管理及び難民認定法」の通称で、日本に出入国する人の管理や難民の認定などについて定める法律を指します。

昭和26年(1951)に公布された出入国管理令を昭和57年(1982)に改正したものですが、その後1990年及び2018年にも改正されています。

日本の移民管理の全般は、日本政府法務省入国管理局の管轄下にあります。これは以下のことを意味しています。

観光で上陸する外国人観光客から日本での就労を目的に長期滞在の予定のある者、さらには難民申請を行うために上陸する難民申請者まで、全く異なる目的で来日する外国人の出入国を一括して管理している

同じく、入国管理法にも、全ての外国人の出入国や在留資格に関する説明が記載されています。

さて、世界の出入国管理制度を大まかに分類すると、3つの類型に分けることができます。

  1. 国防や治安対策を重視する警察国家型
  2. 出入国には比較的緩やかであるが、「在留管理」に重点を置くヨーロッパ型(陸境国型)
  3. 在留活動の範囲と在留期間を重視する米国型(海境国型)

戦前の日本では警察及び公安により出入国を管理していたため、警察国家型に属していました。しかし、第二次世界大戦後から現在に至るまでは、日本の出入国管理制度は米国型を参考として制定されたものであると言われています3山田鐐一・黒田忠正『わかりやすい入管法(第5版)』有斐閣 2000,13頁

先ほど、「難民」申請者についても入国管理法に記載があると言及しましたが、1951年の入国管理令へは当然「難民」への言及はありませんでした。

日本は1981年に難民条約・難民議定書に加盟したため、その後1982年より難民認定手続を整備するために出入国管理令に難民認定関連手続きに関する条項が追加されました。それに伴い、名称も現行の「出入国管理及び難民認定法」に改正されました4李政宏「日本の外国人入国政策の変遷と外国人入国の推移」『早稲田大学大学院教育学研究科紀要』2012 189-199頁



1-2:入国管理法改正の歴史

入国管理法の起源をたどり、今日に至るまでの経過を説明します。起源を追うと、1951年にポツダム政令として設けられた「出入国管理令」に基づく出入国管理行政が展開された時点に遡ります。

この出入国管理令は、国会での審議を経ず制定された政令と言われています。1981年の改正時には法律としての効力が与えられ、その後も形を変えながらも現在は「入国管理法」として維持されているものです5土田千愛「出入国管理に関する法案と論争(1969 年から1973年):「生権力」の視座で」『The Basis : 武蔵野大学教養教育リサーチセンター紀要』2020 247-262頁

では、過去2回にわたる大きな改訂の背景及び内容を時代に即して見てみましょう。

1-2-1:1990年の改正

第1回目の改正は1990年に行われました。同改正以前は、外国人が入国審査官から上陸許可を受ける場合、付与される在留資格が入管法の条項を示した記号により表示されていました(例:観光入国者の場合、当時の第4条第1項第4号該当者なので「4-1-4」と表示)。

しかしながら、この方式の場合では入管局の職員が一眼見ただけでは判断がつきにくいという難点がありました。

この背景を踏まえ、1990年6月1日に在留資格を再編した改正法が施行されました。

在留資格を再編した改正

  • 在留資格は表示の方法が「人文知識・国際業務」「短期滞在」「日本人の配偶者等」などの具体名となった
  • 上陸許可証印には日本語表記と共に、英語標記が表示されるようになった

この改正により「定住者」の在留資格が創設され、日系3世まで、一部の例外の除く就労可能な地位が与えられるようになりました。その結果、主にブラジルやペルーなどの中南米諸国から来日していた日系人の入国が容易になりました。

日系人の流入で問題化していくのが、日本における多文化共生のあり方です。こちらに関しては次の記事を参照してください。

→【日本の多文化共生とは】政策から課題・問題点までわかりやすく解説

1-2-2:2018年の改正

その後も、何度かマイナーな改正を重ねましたが、大きく改訂が行われたのは2018年のことです。

2018年12月8日、第197回臨時国会において「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が成立し、2019年4月1日に施行されました6日本経済新聞「外国人受け入れ拡大へ 改正入管法4月1日施行 5年間で34.5万人」(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43156940R30C19A3PE8000/)最終閲覧日2021年2月6日

この改正で、新たな在留資格として、以下の2種が追加されました7出入国在留管理庁「入管法及び法務省設置法改正について」(http://www.moj.go.jp/isa/laws/h30_kaisei.html)最終閲覧日2021年2月6日

  • 特定技能1号・・・不足する人材の確保を図るべき産業上の分野に属する相当程度の知識又は経験を要する技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格が設けられ、農業・漁業、飲食料品製造、外食、介護、ビルクリーニング、素材加工、産業機械製造、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空及び宿泊の14業種に分かれている
  • 特定技能2号・・・同分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格

このように形を変化させながら、現在の入国管理法が成り立っています。

1章のまとめ
  • 入国管理法とは、日本に出入国する人の管理や難民の認定などについて定める法律である
  • 2018年の改正では、特定技能1号と特定技能2号の2種類が追加された

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2章:入国管理法に関する学術的議論

さて、2章では入国管理法をめぐるいつかの議論を紹介します。

2-1:日本の入国管理法に関する議論

入国管理法の存在は、日本の領域内に入ってくる人を条件によって「仕分け」し、受け入れ国内に「配置」、労働許可の有無や条件などの「処遇」を決めるツールとして捉えることもできます8柄谷利恵子『移動と生存─国境を越える人々の政治学』2016 岩波書店。これは言い換えれば、以下の点を意味します。

  • 入国する外国人に対し、日本にとって「有益」であるかを判断し、そうでない場合は入国を拒否する権利を持っているということでもある
  • 同時に、すでに日本に滞在している外国人に対しても、「好ましくない」と判断された場合は追放できる権利がある

このように、日本国籍を保有しない者を「外国人」と一括し、日本の領土への在留資格などを「調整」することで、彼ら・彼女らの日本での滞在を不安定(precarious)な状態に押しやっているという見解もあります。

ところで、フーコーによれば、「生権力」とは人が政治的戦略の対象となったときに用いられるメカニズムの総体を指します。(→より詳しくはこちら

そして、特に「生(ここでは個人の存在)」が国家の安全性を揺るがしかねないときに、国家の安全を確保するために国家の「権力」が「生」に介入するものであると述べました9Foucault, Michel., translated by Burchell, Graham. (2007) Security, Territory, Population: Lectures at the College De France, 1977-1978, Palgrave Macmillan.

国際政治学者の土田はこの「生権力」を分析の視角とし、以下の点を主張しています10土田千愛「出入国管理に関する法案と論争(1969 年から1973年):「生権力」の視座で」『The Basis : 武蔵野大学教養教育リサーチセンター紀要』2020 247-262頁

  • 治安という安全確保の名のもとに、外国人という「生」を管理すべき集合体とみなす
  • それらの「生」に対して働く「権力」の有り様から国家の統治性を説明することができる

また、「生権力」とは、ここでは入国管理法が外国人を「統治」するように、上から下の権力の行使だけではなく、日本に入国する外国人や在留外国人自身が、日本にとって「好ましくない」存在にならないために、自分の行動や振る舞いを常に正すなど、再帰的なメカニズムを構築する特徴もあります。



2-2:2018年の入国管理法改正に関する議論

1章で論じたように、2018年の改正では、それまで日本政府が外国人に与えていた在留資格の種類にさらに特定技能1号と特定技能2号の2種類を追加しました。

これは、少子高齢化が著しく進む日本の若い労働力を補う目的があります。しかしながら、日本政府は「なぜ人手が足りていないのか」とか「本当に人手は足りないのか」という点をあまり深く検討せずに外国人労働力を入れようとしているという見解もあります。

同時に、新たに設置された2種類の在留資格の特徴として、従事できる職業に制限がります。

  • 漁業や農業、介護、清掃業等の特定技能1号に指定されている業種は、労働条件が悪いという実態がある
  • 日本国籍を有する人々はこのような労働条件の悪いとされる業種に就きたがらないことが多い
  • その空白を埋めるために、海外から安い賃金でも働いてくれる労働力を補うという政府の思索は、差別的であるという見解もある11国際学部の扉「入管法改正の解説と日本が抱える在日外国人の労働問題」(http://mswwres.meijigakuin.ac.jp/~yisa/dw/?p=685)最終閲覧日2021年2月6日

端的にいうと、この制度は、特定技能1号の人も結局は単純労働を強いられるため、やはり技能実習生と同じように搾取され、奴隷的な労働を強いられるのではないかという懸念があります。

移民の受け入れに積極的なドイツの場合は、国や州が責任を持って、移民や難民に最低限の衣食住や言語、職探しのサポートを提供し、移民や難民がドイツの生活に馴染めるように支援を行います。

他方、日本では国として行うそのようなサポートが充実していないため、来日した移民や難民申請者は自分達で日本の生活に慣れていく必要があります。この状況は、多くの在留外国人を困難な状況に追いやっている現状があります12国際学部の扉『入管法改正の解説と日本が抱える在日外国人の労働問題』(http://mswwres.meijigakuin.ac.jp/~yisa/dw/?p=685)最終閲覧日2021年2月6日

このように、戦後70年以上が経ちますが、その根本的な目的は今日も変わっていません。入国管理法の構成要素は、その時代に沿った「日本への利益」が最優先となっていることも事実です。

しかしながら、日本への利益を重要視することで見落としがちな問題点も多々あります。今後、グローバル化が進む現代において、我々は、今後も日本の入国管理法が誰のために、誰によって作られているのか、さらには、誰の利益になり、誰の不利益になるのか、といった社会的な影響を注意深く考察することが必要です。

2章のまとめ
  • 「生」に対して働く「権力」の有り様から国家の統治性が分析されている
  • 2018年の改正によって、技能実習生と同じように搾取され、奴隷的な労働を強いられるのではないかという懸念がある

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3章:入国管理法に関するおすすめ本

入国管理法について理解が深まりましたか?

この記事で紹介した内容はあくまでもきっかけにすぎませんので、下記の書籍からさらに学びを深めてください。

おすすめ書籍

近藤敦『外国人の人権と市民権』(明石書店)

入国管理法の概略から、それができるまでの過程をわかりやすく説明している本です。法的な側面からの分析が多いですが、それだけに偏らず、多方面から日本の外国人の人権と市民権について考察しています。

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森廣正『国際労働力移動のグローバル化-外国人定住と政策課題 比較経済研究所研究シリーズ15』(法政大学比較経済研究所)

国際的な労働力移動を焦点に国境を越えた人の移動、グローバル化が進む中での日本の入国管理制度を考察します。その実態を、日本におけるブラジル日系人の事例を取り上げつつ分析しています。経済学にとどまらず、歴史学・社会学・文化人類学などの視点も導入しており、既存の理論的枠組みを超えた研究をまとめた一冊です。

柄谷利恵子『移動と生存─国境を越える人々の政治学』(岩波書店)

本書では多様な背景をもつ国境を越える移民たちを事例にとり、一つひとつの事例から、移動の構造を考察しています。移民にまつわる議論の中で生じる問題や課題に触れつつ、ヒトやモノの移動が活発になった現代において新たなシティズンシップ概念への提示を試みています。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • 入国管理法とは、日本に出入国する人の管理や難民の認定などについて定める法律である
  • 2018年の改正では、特定技能1号と特定技能2号の2種類が追加された
  • 2018年の改正によって、技能実習生と同じように搾取され、奴隷的な労働を強いられるのではないかという懸念がある

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