社会学

【家族社会学とはなにか】研究概要から問題までわかりやすく解説

家族社会学とは
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「家族社会学(Family Sociology)」とは、

家族の形態や機能を社会学的に分析する社会学の一分野です。特に、近代における家族のあり方や男女の役割の変容などが分析対象となります。

たとえば、第二次世界大戦後の日本社会では「夫は働いて、妻は家事・育児を担当する」といったステレオタイプが広がりました。しかしこれは日本の歴史において、戦後のごく一時期に起きた特殊な家族のあり方にすぎません。

家族社会学では、人と人との集まりとしての家族とこのような社会の関わりを研究することで、社会問題の解決に貢献しようとしています。

そこで、この記事では、

  • 家族社会学の意味
  • 家族社会学と近代
  • 家族社会学の研究と今後の問題

をそれぞれ解説します。

知りたい箇所から読んで、あなたの学びのきっかけにしてください。

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1章:家族社会学とはなにか?

まず、家族社会学とはなにかを確認しましょう。

家族社会学とは、家族の形態や機能を社会学的に分析する社会学の一分野で、特に、近代における家族のあり方や男女の役割の変容などが対象となります。

「家族」を「社会学」する上で注意しなければならない点が2点あります。それは、

  1. 家族は社会と関係ないプライベートな領域と勘違いしないこと
  2. 自己の経験を特権化し、一般化しないこと

です。

「家族なんてプライベートなことなのに、社会と関係あるの?」と考える方が多いですが、社会学において家族は社会的なことであり、立派な研究対象となります。

また、家族を論じる論者の経験を特権化するケースがあり、安易に一般化可能であると考えがちです。

家族社会学を学ぶためには、まずこれらの常識を疑うことが大事です。

1-1: 社会学と家族

「家族を社会的なものとして捉えるべき」といいましたが、一見私的な体験にみえる個人的な経験を社会的文脈に位置づけて解釈することは簡単な作業ではありません。

しかし、家族社会学を学ぶ上で大事なのは、

  • さまざまな社会制度や規範を疑い、歴史的な連関性を分析すること
  • 分析者自身もある社会の成員であることを自覚し、どのように客観性を担保することができるのかを考えること

です。

そうすることで、「家族」を「社会学」する上で注意しなければならない2点を克服することができるでしょう。

1-2: 家族の多様性

さて、では一体、家族社会学は「家族」をどう定義してきたのでしょうか?家族の定義に関する議論を経由することで、家族社会学の特徴を学ぶことができます。

答えからいうと、家族社会学では「普遍的な家族の定義は不可能」という結論がでています。

家族の普遍的な定義が不可能な理由は、

早い時期から社会学や人類学という分野において、異なる社会間の比較・検討をするために普遍的な家族の定義の必要性が叫ばれていたが、世界中の家族の形態を研究すればするほど、さまざまな家族の事例が報告されたから

です。

たとえば、家族を形態と機能の側面から定義づけようとした人類学者のジョージ・マードック(George Murdock 1897年−1985年)という人物がいます。

マードックは家族の定義を、

  • 一組の夫婦とその未婚の子から構成される核家族は他の親族関係から区別できる基礎的なユニット
  • このようなユニットは人類に普遍的に存在し、性・経済・生殖・教育を担う基本的な機能

と主張しました。マードックの定義は核家族普遍説といわれます。

しかし、人類学の内部から核家族がユニットにならない事例が数多く報告されます。

1-2-1:世界における家族の事例

ここでは世界におけるさまざまな家族の形態を紹介します。

マードックへの反論として有名なのは、19世紀後半のインドのナヤール族の事例です。ナヤール族の家族形態の特徴は次のとおりです。

ナヤール族の家族形態の特徴

  • 婚姻成立後も夫と妻は同居せずに正家に所属する
  • 夫は妻の集団に組み込まれないまま、妻を訪れる習慣(通い婚)

通い婚の習慣はガーナのアシャンティ族、インドネシアのミナンカバウ族にもみられます。

他の人類学者は中国の伝統的な拡大家族の事例を用いたり、そもそも「家族が集団である」という前提を覆す事例を報告したりして、マードックの核家族普遍説を批判しました。

その結果、人類学が到達したのは通文化的な家族の定義は不可能であるという結論でした。加えていうならば、マードックの核家族普遍説は欧米社会で主流の家族形態を前提としており、それは理論的な自民族中心主義であると批判がされました。



1-3: 家族の機能と近代社会

さて、家族の形態に多様性を認めたとしても、それは「人それぞれ」と主張することと同様で、家族に関して理解を深めたわけではありません。

形態は多様であろうとも、あらゆる社会で家族は存在してきたことを考えると、家族には社会的な存在意義があります。

そこで「家族は社会的にどのように機能するのか(役立つのか)?」と考えることから、家族の存在意義をみていきましょう。

1-3-1: 家族の機能

社会学者の坂本俊彦(『社会学−基礎概念と射程−』(2003))は、先行研究から家族の機能を整理・提示しています。

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ここでは家族の機能を列記し、確認しましょう。

家族の機能

  1. 性的機能・・・性交渉をとおした夫婦の性的欲求の充足
  2. 情愛機能・・・無条件に受け入れ尊重しあう情愛欲求の充足
  3. 生殖・養育機能・・・子孫を育てたいという欲求の充足
  4. 社会化機能・・・社会規範や生活様式を習得する能力の充足
  5. 生産機能・・・経済的欲求の充足(生活資源の獲得)
  6. 消費機能・・・経済的欲求の充足(生活資源の加工・分配)
  7. 教育機能・・・職業的な自立に不可欠な技能を習得する能力の充足
  8. 保護機能・・・生命や財産を維持したいという欲求の充足
  9. 休息・娯楽機能・・・身体を休めたり楽しい気分を味わいたいという欲求の充足
  10. 宗教的機能・・・祖先崇拝をとおした精神的な安らぎを得たいという欲求の充足
  11. 地位付与的機能・・・社会的地位を獲得したいという欲求の充足

家族はさまざまな機能をもっていることがわかると思います。端的にいえば、家族はその成員の欲求充足のためにどんな機能も包摂する、といえます。

ただし注意したいのは、家族の機能はある社会のあり方と深く関わっているという点です。たとえば、⑦教育機能は学校が、⑧病院、警察などがそれぞれの機能を代替しています。

家族の機能を分析するためには、当該社会のコンテキストをしっかり理解する必要があります。

1-3-2:「近代家族」の意味と役割

これまでより一般的な家族の機能を解説してきましたが、ここからは近代化のプロセスの中で成立した「近代家族」に着目していきましょう。近代家族は家族社会学の中心的な課題だからです。

まず、近代家族の特徴は以下の8つです。

  1. 家内領域と公共領域の分離・・・雇用労働化による職場と家族生活の分離
  2. 家族構成員の情緒的関係・・・家族構成が強い愛情で結ばれること
  3. 子ども中心・・・子どもが大事に育てられる
  4. 性分業・・・男性は職場労働。女性は家事・育児を担当
  5. 家族集団性の強化・・・共同体メンバーよりも家族との時間を大切にする
  6. 社交の衰退とプライバシーの成立・・・家族はプライベートなものと考えられ、社会との境界線がある
  7. 非親族の排除・・・家族のメンバーは親族のみ
  8. 核家族化・・・夫婦・親子で構成される家族

近代家族の特徴は現代社会に生きる私たちにとって、当たり前の経験かもしれません。しかし、家族社会史の研究で明らかになったのは、近代化のなかで成立した近代特有の家族のあり方である、ということです。

1-3-3:「近代家族」の歴史

ここでは日本社会を事例にして、近代家族が成立する社会的背景を紹介します。日本社会における近代家族は「産業構造の転換」をもたらした歴史的な出来事でした。

かつての日本社会は農業中心の社会でありましたが、近代化を経て「サラリーマン中心の社会」になります。

サラリーマン中心の社会では、

  • 家業の継承を必要としない→父親の教育責任は大きく衰退する
  • 父親から子どもへの直接的な技能継承は不必要となる
  • 子どもは父親からでなく、学校教育をへて知識や技能を身につける
  • サラリーマンの父親は外で働き、母親は家庭を担当するという「性分業」が成立していく
  • 子育てに関する地域社会の関心が低下し、子育ては主に母親の仕事となる

といった特徴があります。

近代家族のすべての特徴を産業構造の転換が説明するわけではありませんが、近代家族の成立の基層には日本社会との連関性があることを理解してください。

ちなみに家族社会学の概要を学ぶためには、まず広範囲をカバーした入門書が最適です。社会学がなぜ「家族」を対象とするのかを議論した以下の入門書は大変オススメ。この記事でも参照しています。

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いったんこれまでの内容をまとめます。

1章のまとめ
  • 家族社会学とは、家族の形態や機能を社会学的に分析する社会学の一分野
  • 通文化的な家族の定義は不可能である
  • 近代化のなかで成立した近代特有の家族のあり方を「近代家族」と呼ぶ。これは家族社会学の中心的研究課題
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2章:家族社会学の研究と今後の問題

1章では家族社会学の概要を説明しましたので、2章では具体的な研究を紹介するとともに、家族社会学に対して浴びせられた批判と問題を解説してきます。

2-1: 家族社会学の研究:パーソンズの家族論

日本に大きな影響を与えたのは、タルコット・パーソンズ(Talcott Parsons 1902-1979)の研究です。さっそく、パーソンズの主張と彼に向けられた批判をみていきましょう。

パーソンズの家族論は、

  • 社会システムとの関連から、核家族の孤独化や機能的な分化が近代産業社会の特徴であることを主張
  • また、家族は個人と社会の媒介であると指摘(子どもの社会化と成人のパーソナリティ安定という機能)
  • 孤独化した核家族と社会をつなげるのは成人男性の役割と考えて、性分業は必然的な結果であると考えた

といった特徴があります。

パーソンズの家族論は日本社会でも広く受け入れられ、影響力をもってきました。

しかし一方で、パーソンズの家族論に対する批判が登場し、理論的枠組みの限界が明るみになります。

パーソンズの家族論に対する批判は、

  • マードックの核家族普遍説と同様に、パーソンズの理論は欧米社会で主流の家族形態を前提としており、それは理論的な自民族中心主義であること
  • アメリカ社会では夫婦共働きが一般的となり、パーソンズの理論に当てはまらない事例が次々に出現

といったものがあります。

特に、「成人男性のみが社会の接点でない」「成人男性が家族の中心的な機能ではない」といった批判が次に紹介するフェミニズムからなされました。



2-2: 家族社会学とフェミニズムからの批判

そもそも、社会学の基礎を築いたカール・マルクス、エミール・デュルケーム、マックス・ウェーバーなどの論者は「家内領域と公共領域の分離」を受け入れきたという歴史的な事実があります。

家内領域と公共領域の分離を受け入れてきたとは、

  • 公共領域は動物ではない人間が作り上げる「社会」であり、家内領域は動物と変わらない「自然」の領域であることを認めること
  • つまり、家族は「自然」に属するため、社会学の対象にならない
  • 公共領域における「人間=男性」の活動のみに焦点を当てた研究をおこなったため、近代社会における家族や女性の研究はほとんどしていない

といったことを意味します。

当然ですが、人間が作り上げる家族は生物学的な決定性にしたがって構成されるわけではないです。当該社会の変化に影響を受けて、家族のあり方は変化し続けます。

たとえば、経済的に夫に依存しつつ、家事や育児を担当する主婦は近代資本主義のなかで形成されたものであります。そういった意味で、主婦というカテゴリー自体が近代の産物なのです。

このようなジェンダー・フェミニズム的な視点に立脚した歴史的研究は、バダンテールの『母性という神話』(1998)で詳しく論じられています。

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2-3: 家族社会学の今後の問題

最後に、現代家族の問題とされる事項を列記しましょう。

たとえば、出生率や婚姻率の低下は社会問題として頻繁に取り上げられます。しかし、家族は普遍的なあり方は存在せず、ある時代の特有の現象と考えるとき、それらは「誰にとってどう問題なのか?」という疑問がわいてくるはずです。

ここでは、「離婚率の増加問題」を取り上げてみましょう。

  • 近年、離婚率は増加の一途をたどっているといわれるが、日本社会の歴史をみると、大正時代まで日本における離婚率は非常に高い
  • 離婚率が低い期間は、1910年代から1960年代までの限られた期間
  • 長期的に見た場合、離婚率が低い期間の方が珍しい出来事

この事例からわかるように、家族のあり方は人口転換が起きたある時期に影響されており、普遍的なあり方は存在しないといえます。

その他にも、現代家族で問題とされるのは、

  • 青少年の非行
  • 子どもへの虐待
  • 近代家族の崩壊
  • 家族のあり方の多様化
  • 子ども中心主義(教育やしつけに費やす時間の増加)

などがあります。

それぞれは確かに現代社会における大事な問題ですが、重要なのはそれらの問題は「誰にとってどう問題なのか?」と問うことです。そういった立場問題(ポジショナリティ)と客観的な視点を獲得することが、家族社会学の研究を始める第一歩でしょう。

これまでの内容をまとめます。

2章のまとめ
  • パーソンズの家族論は日本でも影響をもったが、理論的な限界をすぐに指摘された
  • フェミニズムやジェンダーの立場から、「家族」の前提に対する批判がされた
  • 今後の問題は立場問題(ポジショナリティ)と客観的な視点を保ちながら、分析していくことが大事
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3章:家族社会学を学ぶための本

家族社会学の概要を理解することはできましたか?

この記事で紹介した内容は数ある議論のなかのほんの一部にすぎません。家族社会学に少しでも興味をもった方は、これから紹介する書籍を参考にして、あなたの学びのきっかけにしてください。

おすすめ書籍

オススメ度★★★ 落合恵美子『21世紀家族へ』(有斐閣)

日本の近代家族について知りたい方はまずこの本です。歴史的な分析は確かな論証に裏打ちされています。私たちの「常識」を疑うきっかけになる本。

オススメ度★★★ エドワード・ショーター『近代家族の形成』(昭和堂) 

近代家族が形成される時代背景と要因をイギリス社会から検討した本です。近代家族を学ぶ教科書としても使える本です。

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まとめ

最後に今回の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • 家族社会学とは、家族の形態や機能を社会学的に分析する社会学の一分野
  • 通文化的な家族の定義は不可能である
  • 近代家族は家族社会学の中心的研究課題であり、今後の家族社会学を学ぶ上で極めて重要

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