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心理学

【ユングの無意識とは】意識やフロイトとの相違をわかりやすく解説

ユング無意識とは

ユングの無意識とは、人間の無意識を個人的無意識・集合的無意識の2つに分けた上で、人間の心で生じる葛藤や疾患の仕組みについて説明したものです。

ユングの無意識は「意識」との関係から理解しなければならないため、定義的な説明だけではわかりにくいかもしれません。

そこで、この記事では、

  • ユングの意識・無意識の意味
  • フロイトの無意識との相違
  • 諸概念とのつながり

をそれぞれ解説していきます。

好きな箇所から読み進めてください。

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1章:ユングの無意識とは

まず、1章ではユングの無意識の「意味」「フロイトの相違」を解説します。

1-1: ユングの無意識の意味

スイスの精神科医であるカール・グスタフ・ユング(Carl Gustav Jung)は、人間の心の構造を「意識」「無意識」の2つの領域に分けることができると考えました。この理論を基に、ユングは自らの心理学理論を「分析心理学(ユング心理学)」として体系化していきます。

まず、意識と無意識という概念を確認しましょう。

簡単いえば、両者は、

  • 意識・・・人間の心に占める領域のうち、人間が自分の思考や感情として自覚し得る部分のこと(「自我」とされる場合ある)。率直な自分の気持ちや、考えることそのもののこと
  • 無意識・・・人間の自覚し得ない部分、すなわち思考や感情の奥底に潜んだ内なる自分のこと。分析心理学において無意識は、他者はもちろん、自分自身でも自覚することができない心の領域と位置づけられる

と領域を指します。

そして、ユングは、意識と無意識が心の中で対となる存在として考えていました。それは自分の知り得る意識と知り得ない無意識の2つが対となることで、心のバランスを保つことができると考えたからです。

言い換えれば、2つのバランスが崩れたときに、精神に疾患が生じると考えたのです。そういった意味で、無意識の存在は、精神疾患の発生を説明する上で不可欠な要素でした。

1-1-1: 個人的無意識

ユングは無意識を、さらに「個人的無意識」と「集合的無意識(普遍的無意識とも呼ばれる)」の2つの領域に区別します。

まず、個人的無意識とは、

個人の人生経験に基づいて作られる無意識のこと

です。

個人的無意識には、個人のこれまで見たものや経験したことの記憶の多くが存在するとされています。そのため、当然、個人的無意識に存在する記憶には、その人が忘れたいと願っているような辛い記憶や不快な感情を引き起こす記憶も含まれます。

本人が忘れたと思っていても、人間の記憶は個人的無意識の中に存在し続けるとされます。

1-1-2: 集合的無意識

そして、集合的無意識とは、

全ての人間に先天的に備わっているイメージや概念のこと

です。

集合的無意識は個人的無意識よりも下の層に存在する領域です。

では一体、なぜユングはこの集合的無意識という概念を必要としたのでしょうか?結論からいえば、個人の経験や体験に基づいて説明できない精神疾患や漠然とした不安感は、人類に共通する集合的無意識によって生じているのではないかと考えたためです。

集団的無意識の発想

  • ユングは、猫や犬などの動物にはそれぞれ持つ習性があることをヒントに、人間にも育った環境を問わずに共通する習性があるのではないかと考えた1猫は前足で顔をこすり、綺麗にする習性が、犬は排泄物に砂をかける習性が、育った場所や環境を問わずにある
  • その中で、古今東西の神話やおとぎ話などに共通したモチーフが使われていたり、似たようなお話があったりすることにユングは気が付く
  • 同じような話が全く異なる場所で作られることについて、ユングは、人間の心の奥底には共通のイメージや概念が存在しているのではないか、と考えた

1-2: フロイトとの相違

ユングはかつて、精神分析学を創始した精神科医であるジグムント・フロイト(Sigmund Freud)の弟子でした。しかし、ユングは1914年に師であるフロイトの元を離れています。

なぜ、ユングはフロイトの元を離れ、独自の分析心理学を創始したのでしょうか?それにはユングとフロイトの間で生じた、意識・無意識の概念の捉え方の違いが関係しています。

ユングとフロイトの考え方の異なる点を知る前に、両者の意見が一致した部分を紹介します。

  • フロイトは、心には意識・無意識の階層があり、無意識に抑圧された欲望やトラウマ記憶によって精神疾患が生じる、と論じた初めての精神科医であった
  • ユングはフロイトの提示した「心の構造」に共鳴し、フロイトの弟子となる。その後、ユングはフロイトの主宰する国際精神分析学会に所属し、精神分析学の研究をしていった

つまり、両者は人間の心の構造(意識・無意識)といった点において合致していました。しかし、無意識に関して、異なる考えが次第に明らかになっていきます。

まず、フロイトの精神分析学では、

  • 人間の心構造について、意識・前意識・無意識に分けることができる
  • 精神疾患や神経症、不安感などは、全て無意識下に抑圧された性的な欲望や愛情を求める本能的な欲求としての「リビドー」に起因する
  • リビドーは自己や他者に向けられることで中和され、人間のもつべき社会に適応した倫理観の形成へ繋がる

とされました。

フロイトの無意識に関する議論は複雑ですので、ここでは簡潔に説明しています。以下の記事から、より詳しい議論に当たってください。

その一方で、ユングは、

  • 人間の心を意識(自我)・個人的無意識・集合的無意識に分ける
  • 精神疾患や神経症、不安感の原因を全て性的な欲望に求めるフロイトの考えに疑問を持ち、無意識には性的な欲望以外のものがあるのではないか
  • 神話や錬金術などの精神医学を越えた分野の研究を進めるうちに、精神疾患は、個人的無意識や集合的無意識にある記憶や元型などによって引き起こされるのではないか

と考えるようになります。

その結果、フロイトとユングは、無意識の抑圧されたものの違いから、意見を違えることになりました。フロイトの元を離れたユングは、この出来事をきっかけに自らの分析心理学を創始することになります。

1章のまとめ
  • ユングの無意識とは、人間の無意識を個人的無意識・集合的無意識の2つに分けた上で、人間の心で生じる葛藤や疾患の仕組みについて説明したものである
  • フロイトの精神分析学では、人間の心構造について、意識・前意識・無意識に分けるられたが、ユングの分析心理学では意識(自我)・個人的無意識・集合的無意識に分けられる

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2章:ユングの無意識と諸概念との関係

さて、2章ではユングが提唱した無意識を、「個別化」「マンダラ」「コンプレックス」「元型」といった概念から深掘りしていきます。

2-1: 個性化

個性化とは、

人間の精神的な健康を実現したり、人間をより全体的な統合のとれた存在に引き上げたりする際に必要とされる過程のこと

です。

人間の知り得ることができない無意識の中には、その人のこれまでの記憶や感情、人類共通のイメージや概念など、さまざまなものが存在しています。

分析心理学において、人間はこれらの記憶や概念を整理し個人の自己実現をすることによって、精神的なバランスが保つことができるようになると考えられています。

具体的には、

  • 無意識の中には、シャドウと呼ばれる普段は意識できない部分や、対人関係においてその人が演じているキャラクターであるペルソナなどが存在する
  • これらの複数の要素を統合化し、バラバラの要素を1つにまとめ上げていくことによって、人間は成熟する

とされています。

このような個性化を実現させるためには、以下の4つの機能があるとされています。

  • 思考・・・出来事や物事について論理的に考え、判断する機能
  • 感情・・・自身の快・不快感情を元に考え、判断する機能
  • 感覚・・・出来事や物事から受け取る五感に基づく感覚を元に、判断する機能
  • 直観・・・個人の思いつきや直感的なひらめきを元に、判断する機能

思考・感情・感覚・直観の強弱は人によって異なりバラバラであることから、4つの機能のバランスそのものをその人の性格ということもできるでしょう。

人間は過去の記憶や感情を無意識下にもつ生き物ですが、自分の行動を決める権利は自分にあります。分析心理学では、過去の感情や記憶を参考にしつつ、4つの機能を使って判断・行動をすることによって、人間は個性化され精神的に健康になると考えられています。

2-2: マンダラ

マンダラは、

  • ユングが人間の理想的な心の形として考えたもの
  • 集合的無意識を発見するきっかけとなったもの

です。

そもそも、マンダラは仏教用語の「曼荼羅」のことであり、サンスクリット語で「円」のことです。ユングはマンダラの円形を見て、人間の健康な精神は左右対称でバランスの取れたものなのではないか、という着想を得ます。

加えて、ユングがマンダラと出会った当時、彼は円を紙の上にひたすら描いていたというエピソードが残っています。ユングは、西洋人である自分が何気なく描いていた円が、全く知らない仏教のモチーフであるマンダラによく似ていることに驚きました。

ユングは、全人類に共通したイメージの存在すなわち集合的無意識の存在を確かめるために、東洋哲学の研究を始めたといわれています。



2-3: コンプレックス

コンプレックスとは、

  • 感情によって色付けられた複合体のこと
  • 現在言われてるように、劣等感のみを指すわけではない

です。

たとえば、「死」というものに対して、ある人は憎しみや悲しみ、父親、などの思い出や感情が連想されたとき、その人は「死」に対して、多様な感情が複合的に結合している状態であるといえます。

そうした「無意識内に存在して、何らかの感情によって結合されている心的内容の集まり」のことをユング は「コンプレックス」と呼びました。

コンプレックスは、ユングが言語連想検査という心理検査から発見した概念です。言語連想検査の概要は以下のとおりです。

  • 安静な状態の被検査者に、全100語の単語から連想する別の単語を答えさせたり、その反応速度を調べたりする検査
  • ユングは、検査を行うときに、それぞれの被検査者によって、特定の単語から別の単語を連想する反応速度の違いがあることに気が付いた
  • そのため、反応速度の遅い単語には、その人にとってマイナスのイメージが結びついていると考えられた
  • その結果、分析心理学では、言葉に紐づけられたイメージそのものが、無意識の中に存在するコンプレックスであると解釈された

このようにみると、「劣等感=コンプレックス」という認識ではうまく捉えられないことがわかると思います。

つまり、実際は何らかの事象に対してコンプレックスがあることは、劣等感があると同時に優越感のようなものが絡み付いていることを指します。

たとえば、学歴コンプレックスがある人の場合、自分が良い大学を出ていない時は劣等感を抱くものだけど、その劣等感を抱いている人が往々にして自分より学歴の低い人に対して(たとえば高卒の人に対して)威張るとかいうことがあったりすることを思い浮かべてください。

2-4: 元型(アーキタイプ)

元型(アーキタイプ)は、

集合的無意識に存在する人類共通のイメージや概念のこと

です。

ユングは、マンダラの発見にはじまる東洋哲学の研究から、全人類は共通のイメージを先天的にもっているのではないか、という仮説にたどり着きました。元型は、ただ多くの人が持つイメージというわけではなく、人類が進化する過程で重要とされた概念から生み出されたとされています。

代表的な元型として、「太母(グレートマザー)」を挙げることができます。

  • 太母のイメージは、包容力が高く慈悲深い抽象的なイメージ
  • 西洋ではキリスト教の聖母・マリアとして、東洋では地母神(日本では、日本列島を生み出した女神イザナミ)として神話や物語に描かれている
  • 優しく温かみのある母親のイメージ像と、全てを呑み込む破壊的なイメージ像の2つが含まれている
  • 逆らうことのできない超常的な力の象徴とされることも

そして、太母の元型は、個人的な体験に基づかない不安感や恐怖感の原因として説明されました。それは太母のもつ超常的な力のイメージが集合的無意識に存在することによって、不安感が想起されたと考えられたためです。

太母に代表される元型は、普段は集合的無意識の中にありますが、しばしば私たちの夢の中に姿を現します。夢の中に現れることによって、人間に備わるべき本能的な能力(敵に対して警戒すること、親の元を離れて成長すること、精神的に成熟することなど)が発揮されるよう促しているのです。

人間の心の中では、意識や個人的無意識、集合的無意識が相互に影響しあっています。これらを整理し、個性化が進むことによって、バランスの取れた健康的な精神を得ることの第一歩とされました。

2章のまとめ
  • 個性化・・・人間の精神的な健康を実現するために必要とされる過程のこと
  • マンダラ・・・ユングが人間の理想的な心の形として考えたもの
  • コンプレックス・・・感情によって色付けられた複合体のこと
  • 元型・・・集合的無意識に存在する人類共通のイメージや概念のこと

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3章:ユングの無意識の学び方

ユングの無意識を理解することが出来たでしょうか?

ここで紹介した内容はきっかけに過ぎませんので、ぜひ以下の書物を参考に学びを深めていってください。

おすすめ書籍

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前述したように、ユングは昔話や神話の中に集合的無意識が隠されていると考えました。グリム童話に隠された集合的無意識や元型について知ることができる一冊です。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • ユングの無意識とは、人間の無意識を個人的無意識・集合的無意識の2つに分けた上で、人間の心で生じる葛藤や疾患の仕組みについて説明したものである
  • フロイトの精神分析学では、人間の心構造について、意識・前意識・無意識に分けるられたが、ユングの分析心理学では意識(自我)・個人的無意識・集合的無意識に分けられる
  • ユングの無意識は「個別化」「マンダラ」「コンプレックス」「元型」といった概念と関係をもつ

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