心理学

【防衛機制とは】フロイトの研究や種類・事例からわかりやすく解説

防衛機制とは

防衛機制(defence mechanism)とは、自分自身の心理的な葛藤、あるいは外的な攻撃に由来する苦痛を回避するために無意識的に生じる心の動きのことです。

具体的には、退行、抑圧、反動形成、分離(隔離)、打消し、投影(投映)、取り入れ、自己への向き変え(置き換え)、転倒(逆転)、昇華の10種類があります(詳細は具体例とともに後述)。

これらは相互に関連しあったり、重なりしあったりして働くため、しっかりと学ぶ必要があります。

そこで、この記事では、

  • 防衛機制の意味
  • 防衛機制とフロイトの理論
  • 防衛機制の種類と例

をそれぞれ解説していきます。

理論的に難解な場所は飛ばして、事例だけでも触れてみてください。

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1章:防衛機制とは

まず、1章は防衛機制をわかりやすく概観します。

2章はフロイトの研究を理論的に説明し、3章で防衛機制の種類と例を紹介します。2章は難解かもしれませんので、あなたの関心に沿って飛ばして読んでも構いません。

1-1: 防衛機制の意味

そもそも、「防衛」という言葉はジークムント・フロイトが使い始めたものです。のちに10種類の防衛機制がフロイトの娘であるアンナ・フロイトによって整理されますが、ジークムントが発見した防衛機制は最初「抑圧」のみでした。

混乱を避けるため、この記事ではジークムント・フロイト(父)を「ジークムント」、アンナ・フロイト(娘)を「アンナ」と呼びます。

精神分析学の創設者である父のジークムントは、

  • 自身の診察したヒステリー患者の多くが、嫌な記憶や観念、感情を無意識のうちに意識しないようにしていること
  • 一方で、それらの記憶や観念、感情が身体的な症状に置き換わっていること

を発見しました。

この発見から、ジークムントは抑圧によってその患者の心が守られつつも、その代わりに身体的な症状が現れていると考えていきます。

その後、ジークムントは「局所論」「構造論」を発表します。局所論や構造論とは心の構造がどのようになっているのか、それらについて説明する理論です。

両者については後述しますが、少し先取りすると、これらの理論のなかで防衛機制は自我の機能として位置付けられています。また、ジークムントは防衛機制にはこれまでの抑圧に加え、転換、置き換え、昇華、投影などの9種類があることをこの時点で指摘しています。

ただ、フロイトが防衛機制を発見したといっても、あまりそのことを中心的に研究していたわけではなく、防衛機制の研究はフロイトの娘であるアンナ・フロイトに受け継がれ、大きく発展していくこととなりました。



1-2: アンナ・フロイトの防衛機制

ジークムントは「無意識」という普段人間が認識していない心の働きの部分に注目している一方で、アンナの場合は普段意識している自分、つまり自我がいかにして保たれているのか、そのシステムに注目しようとしています。

たとえば、次の例を考えてみてください。

  • 日常生活において性欲をむき出しにして生活していくことは社会的に受け入れられることではない
  • しかし、人はさまざまな欲を持っていて、それと上手く付き合っていかなければならない
  • そうするためには、それを処理し、それにうまく対応していく必要がある

この例は当然なことに思えるかもしれませんが、そのような葛藤に際してどのように自我を守っているのか、その機制(=システム)を明らかにしようとしたのがアンナの研究でした。

こうして、アンナは1936年に『自我と防衛機制』を発表します。本書において、防衛機制には10種類のあり方があることを述べられ、またこれらの防衛機制は単独で働くというより、相互に関連し合いながら、働いていることが指摘されています。

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1章のまとめ
  • 防衛機制とは、自分自身の心理的な葛藤、あるいは外的な攻撃に由来する苦痛を回避するために無意識的に生じる心の動きのことである
  • ジークムント(父)は抑圧によってその患者の心が守られつつも、その代わりに身体的な症状が現れていると考えた
  • アンナ(娘)は葛藤に際してどのように自我を守っているのか、その機制(=システム)を明らかにしようとした
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2章:防衛機制とフロイト

では、防衛機制についてより深く理解するために、心の構造についての理論をここで簡単に紹介します。

ジークムントは無意識を含めた人間の心の構造全体を捉えようとし、様々な概念を生み出していきました。彼の研究の進展によってその概念は、「局所論(第一局所論)」→「構造論(第二局所論)」へと変化してきます。

局所論と構造論は難解ですから、3章の種類と事例から読み進めていただいても構いません。

局所論と構造論をしっかり理解したい方は、次の記事も参照ください→【フロイトの無意識とは】

2-1: 局所論

まず最初にジークムントは、心には「意識」「前意識(ぜんいしき)」「無意識」の3層構造があることを主張します。これは局所論(第一局所論)と呼ばれます。

この説明をする際に、ジークムントは大きく二つの部屋を比喩として挙げて、

  • 第一の部屋=無意識の部屋
  • 第二の部屋=意識と前意識の部屋

として説明します(図1)。

フロイトの無意識

第一の部屋から第二の部屋へ行く際の番人の働きをするのが「抑圧」です。抑圧は以下のように働きます。

  • 無意識で考えていることがあまり好ましいものでない場合、第一の部屋から第二の部屋へその考えや感情が行かないようにするのが「抑圧」の働きである
  • 抑圧には逆方向の働きもある。つまり、第二の部屋=前意識の層にある心的な動きが意識にとって好ましくない場合、抑圧の働きによりその心的な動きが第一の部屋=無意識の層へと押し戻されるということもある

またジークムントは、第一の部屋の大きさが第二の部屋より大きいとしています。これは、

  • 無意識の存在が大きいということ
  • 意識の存在は普段私たちが考えているよりも心の構造全体においてはほんの一握りの部分でしかないこと

を示しています。

これまでの内容を、まとめると以下のようになります。

第一の部屋

  • 無意識=主体は知らないが心の奥底にある心の3層構造の中で一番大きな層。この層にある心的な働きは主体が把握できず、その記憶にも残らない

第二の部屋

  • 前意識 (ぜんいしき)=抑圧を受けなかった心的な動きが無意識から意識へと移る前にとどまる層。ただしこれは意識に属しているため、前意識にある心的な動きに意識が目を向ければ、その心的な動きを意識化できる
  • また、この層に抑圧という機能があるわけではないが、意識にとって好ましくないと思われる心的な動きを押し留めようとする働きもする
  • 意識=主体が完全に把握することができる心的な層。主体は意識の層にある心的な動きを統制することができる



2-2: 構造論

局所論を主張したジークムントでしたが、精神分析を通して患者と向き合っていくうちに、局所論では説明できない心の働きや症状があることを認めざるを得なくなってきます。

そのためその後、ジークムントは局所論を発展させ、より複雑で精緻な心の構造モデル=構造論を主張します。

簡潔にいえば、構造論では局所論において提示された「意識」「前意識(ぜんいしき)」「無意識」を下敷きにし、さらに「自我」「超自我」「エス」という新たな概念が提起され、これら三つの関係が一つの心を形作っているとされます(図2)。

防衛機制とはそれぞれの概念は、

エス

  • 無意識的なもので、生物的な本能からくる欲動が支配している領域
  • 道徳観や時間概念などがなく、そこでは快感原則(善悪の判断なしに快楽を求めていこうとする原則)が一切の過程を支配している

自我

  • 基本的に自分が意識できる心の働き・動きのことである
  • ただし、それは一部であり、自我のほとんどは無意識的な領域に属しており、意識的にしようとしてはじめて意識できるものである

超自我

  • 自我のなかにあるが、自我の働きを監視・抑制しようとする
  • 普段、「良心」と呼んでいる心の働きを指し、自己を観察し、自我としてふさわしい理想を実現しようとする。この理想は各個人の両親の超自我を模範として形成される

という意味をもちます。

エスは自分の欲動を満足させるために実際の行動を起こそうとしますが、自我はふさわしい欲動でない限り、それに対立します。また、もし自我がエスの欲動に屈したり、欲動を満足させることを許可しようとする場合、超自我が働き、それらの動きを牽制しようとしたりします。

しかし、基本的には自我が心の動きを統制しているといえます。この自我の働きが、防衛機制と呼ばれているものです。

2章のまとめ
  • 局所論とは、心には「意識」「前意識(ぜんいしき)」「無意識」の3層構造があることを主張したものである
  • 構造論とは、局所論を下敷きにし、さらに「自我」「超自我」「エス」という新たな概念が提起され、これら三つの関係が一つの心を形作っているとしたものである
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3章:防衛機制の種類と例

さて、では一体、どのような防衛機制の種類があるのでしょうか?

具体的には、ジークムントによって、

  • 退行
  • 抑圧
  • 反動形成
  • 分離(隔離)
  • 打消し
  • 投影(投映)
  • 取り入れ
  • 自己への向き変え(置き換え)
  • 転倒(逆転)

の9種類が発見されていました。

しかし、その後、アンナによって防衛機制についてより深い研究がなされていく中で、10種類目の防衛法である「昇華」が指摘されました。それぞれの防衛機制について、その具体例を挙げながら簡単に説明していきます。

上記の()の表記は訳によって違いがあるために併記していますが、内容は同じものを指します。

3-1: 退行

退行とは、

子供・成人問わず、何らかのことが原因となって幼児期にするような行動をするなど、未発達な段階に逆戻りすること

です。

たとえば、しっかりと立っていた子供が自分の弟が生まれたことによって、何らかの不安などが生じた結果、急にハイハイをするようになるというような場合、退行が起こっていると考えられます。

3-2: 抑圧

抑圧とは、

ある衝動が生じたり、ある願望があったとしても、それを拒否し、意識にあらわれないようにする無意識な過程

を意味します。

無意識になされるため、何かをしたいことを単純に我慢することとは違うので注意してください。そのため、「抑圧」と「禁欲」とは区別されます。

たとえば、「ある人が死んでしまえばいい」という不道徳的な考え方を抑圧した場合、自分が人を傷つけるのではないかという強迫観念に悩まされるという現象などが、その一例です。



3-3: 反動形成

反動形成とは、

承認されがたい衝動があらわれたときに、その反対の衝動に変化すること

です。

たとえば、性的な衝動があった場合、反動形成が行われた結果、それが変化し、反対に人間嫌いになったりするなど挙げられます。

3-4: 分離(隔離)

分離とは、

自我を守ろうとして、感情と行動(思考と感情)が切り離されること

です。

たとえば、あまりにも怖いことや悲しいことを経験した後、その体験をあまり怖そうでも悲しそうでもなく淡々と話す人がいます。一見してその時の感情と話すという行動が一致していないように見えますが、そうすることで自分の自我を守っている場合を指します。

3-5: 打消し

打ち消しとは、

自分のとった行動を忘れたかのように、その前にとった行動と反対の行動をとること

です。

たとえば、相手を罵った後に、急に同じ相手に対して親切になるなどが挙げられます。そうすることによって、前にとった行動と反対の行動をとることで否定的な行動を打ち消そうとする心理が働くためです。

3-6: 投影(投映)

投影とは、

自分の感情を他の人のものとして転嫁すること

です。

たとえば、自分の母親が自分を愛していないことに気を病んで、母親を憎むようになった子供がいるとします。

しかし、自分の母親を憎むという感情をもつこと自体にその子供が無意識的に罪悪感を感じているような場合、母親にその憎悪を向けるのではなく、周りの友達にその憎しみを転嫁し、周りの友達を憎むようになる場合を投影といいます。



3-7: 取り入れ

取り入れとは、

ある人を真似るなどして、自分自身を守ろうとすること

です。

たとえば、子供が先生に叱られることによって苦痛を受けた場合、その先生の攻撃性をとり入れ、子供は攻撃的になることが挙げられます。

また、とり入れによって「同一視」が起こります。同一視とは、たとえばその攻撃的な先生が男性の場合、その先生のもっている属性――男性、攻撃性――を真似ることです。

たとえば、

  • 男性的になろうとミリタリー系の服など男性的な服に身を包みたがる
  • あるいはその先生の怒った顔を真似る

といったような例があります。

そうすることによって、その不安や苦痛から自分の身を守ろうとする心理的な働きがあります。

3-8: 自己への向き変え

自己への向き変えとは、

相手に向けている感情を自分自身へと向け帰ること

です。

たとえば、相手を責めたり攻撃するような気持ちをもっている人が、反対に自分を責めるようになって抑うつ的になる場合などが挙げられます。

3-9: 転倒(逆転)

転倒とは、

感情や欲望を反対の性質のもの変化させること

です。

欲望が転倒する例がわかりやすいです。たとえば、見るという行為が禁じられた場合、見せるという行為によってその欲望を満足させようとすることや、愛が憎しみに変わることなどはいい例です。

3-10: 昇華

昇華とは、

ある衝動が非社会的なものだった場合、その衝動を社会的に受け入れられる方向にその衝動を変化させること

です。

たとえば、性的な欲求の代わりに、出世のために仕事に精を出すなどして、他のもので代理し、ある欲求を満足させるといった例があります。

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4章:防衛機制の学び方・おすすめ本

防衛機制について理解を深めることはできましたか?

さらに深く理解するために、原著や解説本にあたって学びを深めていってください。

おすすめ書籍

オススメ度★★★ アンナ・フロイト『自我と防衛機制』(誠信書房)

防衛機制について学ぶ際に最も重要な一冊。少し内容は堅めですが、一読したい書物。特にアンナは幼い子供や思春期の子供に目を向け、「気力のない、無関心な子供はどうしてつくられるか」「子どものうそつきは許すことができるか」など、子供の症例を数多く提示しており、子供と向き合う仕事をしたい方、また現に教育現場で日々活躍されている方にもおすすめ。

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オススメ度★★★ 上島国利・上別府圭子・平島奈津子編『知っておきたい精神医学の基礎知識 サイコロジストとメディカルスタッフのために(第2版)』(誠信書房)

項目ごとに、精神医学の基礎的な知識がやさしく解説されており、内容も豊富。項目ごとに参考文献も紹介されています。

オススメ度★★ ジークムント・フロイト(高橋義孝・下坂幸三訳)『精神分析入門』上・下(新潮社)

心理学や精神分析を初歩から学ぶためにおすすめの一冊。講義録のため、口語調で書いてあり、読みやすいです。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • 防衛機制とは、自分自身の心理的な葛藤、あるいは外的な攻撃に由来する苦痛を回避するために無意識的に生じる心の動きのことである
  • 防衛機制には退行、抑圧、反動形成、分離(隔離)、打消し、投影(投映)、取り入れ、自己への向き変え(置き換え)、転倒(逆転)、昇華の10種類がある

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