心理学

【ロゴセラピーとは】その意味から批判までわかりやすく解説

ロゴセラピーとは
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ロゴセラピー(Logotherapy)とは、フランクル心理学に基づいて作られた、「人生の意味」を見出すことで疾患や苦境にある状態からの回復を目指す心理療法を意味します。

「自分はいったい、何のために生きているのだろう?」と漠然的な疑問をもつことはありませんか?この疑問は、古今東西様々な分野において研究されてきました。

そのなかでも、オーストリアの精神科医であるV.E.フランクル(Viktor Emil Frankl)による「ロゴセラピー」は、患者自身の「人生の意味」を見つけることを目的とした心理療法として有名です。

そこで、この記事では、

  • ロゴセラピーの意味
  • ロゴセラピーの手法
  • ロゴセラピーの批判

をそれぞれ解説していきます。

あなたの関心に沿って、読み進めてください。

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1章:ロゴセラピーとは

1章ではロゴセラピーを「意味」「価値カテゴリー」「手法」から概観します。

2章ではロゴセラピーに対する批判を紹介しますので、あなたの関心に合わせて読み進めてください。

1-1: ロゴセラピーの意味

冒頭の確認となりますが、

ロゴセラピーとは「人生の意味」を見出すことで疾患や苦境にある状態からの回復を目指す心理療法

です。(しばしば、「意味中心療法」「実存分析」とも呼ばれる)

少し遠回りとなりますが、まずはフランクル心理学について簡潔に説明し、その後にロゴセラピーを深掘りしていきます。

1-1-1: フランクル心理学とは

そもそも、ロゴセラピーの基盤となっているフランクル心理学は、第二次世界大戦後に提唱された比較的新しい学説です。

基本的に、フランクル心理学は以下の2つの点によって特徴づけられます。

  1. 実存主義の心理学であること(→人間は自分の意思で自らの生き方を決めることができる存在であるという前提)
  2. 人間を「身体」「精神」「心」の3つの要素から成る複合的な存在として捉えていること

2つの点はフランクル心理学が人間をどのような存在として捉えているのかを表しています。ここで大ざっぱに、「人間は人生の意味を見つけることによって、自分の人生を主体的に生きることができる存在」と捉えてください。

そして、フランクル心理学は「精神療法のウィーン三大学派」として知られています。ウィーン三大学派とは、

  • ジークムント・フロイト(Sigmund Freud)の精神分析学(→詳しくこちら
  • アルフレッド・アドラー(Alfred Adler)の個人心理学
  • フランクル心理学

から成る学派を意味します。

それぞれ独自の心理療法をもつ心理学は「何のために生きているのか」という問いに対して、異なった見解を示しています。

  • フロイト・・・快楽感情(不快なことを避け、快楽を求めようとすること)を満たすため
  • アドラー・・・力(理想の自分が持っているだろう能力のこと)を手に入れて、劣等感を克服するため
  • フランクル・・・それぞれのもつ生きる意味を満たし、実現させるため

この記事で解説するフランクル心理学には、生きる「意味」や「意義」といった実存に関する概念が多く用いられていることわかると思います。これが実存主義的心理学と呼ばれる所以です。

1-1-2: ロゴセラピーの基本理念

さて、ロゴセラピーには3つの基本理念があります。どの基本理念も人間の実存に根ざしたものとなっています。

  • 意味への意思・・・人間は誰しも自分の人生を「意味あるもの」にしたいと常に願っているということ
  • 人生の意味・・・人生には、必ずその人が実現し、充たすべき意味があるということ
  • 意思の自由・・・どんな困難な状況下においても、人間は自分の行動や態度を自分自身の意思で決定することができるということ

すべての基本理念において、人間は人生の意味を見出すことで主体的に生きることができる存在である、という認識が一貫しています。

では、「人生の意味」とはいったいどこに見出すことができるのでしょうか?フランクルは自身の著書において、「人生の意味」を以下のように説明しています。

人間は自分の人生の意味が何であるかと問うべきではなく、問われているのは自分自身だということを認識しなければならない(V.E.フランクル 2004『意味による癒し−ロゴセラピー入門』春秋社 7頁)

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つまり、この主張によると、「人生の意味」を探し求めることはすでに存在が明らかになっているものを追い求めていることになります。たとえ今「人生の意味」がどこにあるのかわからなくても、「人生の意味」が存在していることは明確だということです。

むやみに「人生の意味」を探すのではなく、自らが人生に問われている側であることを意識すべきだ、と言い換えることもできるでしょう。



1-2: 価値カテゴリー

さらに具体的にいえば、ロゴセラピーにおいて、人間は「創造価値」「体験価値」「態度価値」という3つの価値から人生の意味を見出すと考えられています。それぞれ解説していきます。

1-2-1: 創造価値

まず、創造価値とは「何かを創り出すこと」によって実現される価値のことです。

たとえば、仕事をしたり絵を描いて作品を作ったりするなど、自らの行為によって何かを生み出す(創造する)ことを指します。満足のいく創造物ができたときなどに実現することができます。

1-2-2: 体験価値

そして、体験価値とは「何かを体験すること」によって実現する価値です。

体験することで新たな知見を得たり、自分が生きる世界の素晴らしさを感じることができたりしたときに実現されます。簡単にいえば、「生きていてよかった」と思える体験そのものがもつ価値のことです。

1-2-3: 態度価値

最後に、態度価値とは「困難な出来事に遭遇したときに自分が取る態度」によって実現する価値のことです。

具体的に、困難な出来事とは愛する人との離別、災害、病気などの自分の力ではコントロールすることのできない困難な出来事のことを指します。

これらの出来事に見舞われたとき、あなたはどんな態度を取るでしょうか?おそらく、以下のようなポジティブな態度か、ネガティブな態度をとると思います。

  • ネガティブな態度・・・「もうどうにもならない」「なぜこんなことになってしまったんだ
  • ポジションな態度・・・「どうにもならないことだからこの際開き直ってしまおう」「今がもっとも苦しい状況なら、これからは幸せがやってくるだろう」

ロゴセラピーでは、どちらの態度を取るかは個人の自由だとされています。重要なのは、そのような態度を選択することで実現される価値のことです。

つまり、上述した3つの価値が実現されることで「人生の意味」が見出されるのです。



1-3: ロゴセラピーの心理療法

では一体、ロゴセラピーでは実際にどんな心理療法が行われるのでしょうか?

結論からいえば、「逆説思考」「反省除去(脱反省)」の代表的な2つの心理療法があります。それぞれ解説していきます。

1-3-1: 逆説思考

簡潔にいえば、逆説思考とは、

自分が恐れる状況や感情、物などにあえて向き合うことで、段階的に恐怖心を減らしていくことを目的とする治療法

です。

フランクルは自著の中で「患者が恐れているその当のことを望み、それをしようと決断すること」と説明しています。(V.E.フランクル 2004『意味による癒し−ロゴセラピー入門』春秋社 81頁)

逆説思考が適用されるとき、患者は「予期不安」という現象を起こしていると仮定されます。予期不安とは、自分の恐れている出来事が再び起こるのではないかと不安を持って待ち構えている状況のこと

予期不安が大きすぎると、恐怖のために物事を上手く行うことができなくなってしまいます。そこで、逆説思考という治療法では、

  • 「怖いと感じるのが普通だ」
  • 「いっそ恐れている状況が起こって、取り乱してしまえばいい。最悪の事態は起こらないだろうから」

と、恐怖によって生じる不安を積極的に受け入れるように指示します。

その際、不安を受け入れやすいようにユーモアをもって行うことが推奨されます。不安を受け入れることで、予期不安そのものが薄れ、適切な行動が取れるようになることが知られています。

1-3-2: 反省除去

反省除去とは、

実現したい物事について過剰な期待や反省をしてしまうことを意図的に止めるという技法

です。

逆説思考は「恐怖のあまりに行動できない場合」に適用される治療法ですが、反省除去は「ある行為に対して過剰に期待してしまうことで、実際に行ったときに自分が望むような結果を得られない場合」に適用されます。この過剰な期待のことを、フランクルは「反省」と表現します。

フランクルのいう反省が生じたとき、次のようなネガティブな効果へとつながる可能性があります。

  • 本来の実力が発揮できない
  • 完璧主義に陥る
  • 自信の喪失へと
  • 「人生の意味」の消失

この反省・後悔の頻度を下げることを「反省除去」といいます。具体的に、

  • 反省除去では「自分が本当に実現したいことは何なのか」を考え、反省は果たして本当に必要なものなのかどうかを検討する
  • そして、自分が本当に集中すべきこと(実現したいと思うこと)に集中することで、実際にその行為を成功させることに向かわせる

といった心理的な治療をします。

その結果、本来自分が実現したかったことに向かったり、「人生の意味」を見出すことができるようになるとされています。

いったん、これまでの内容をまとめます。

1章のまとめ
  • ロゴセラピーとは「人生の意味」を見出すことで疾患や苦境にある状態からの回復を目指す心理療法
  • 「創造価値」「体験価値」「態度価値」という3つの価値が実現されることで「人生の意味」が見出される
  • 「逆説思考」「反省除去(脱反省)」という心理療法がある

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2章:ロゴセラピーへの批判

これまで解説してきたロゴセラピーに対して、学術的な批判があったのも事実です。ここでは、ロゴセラピーに対する批判を紹介していきます。

2-1: 意味の意思へに対する批判

まず、ロゴセラピーに対しては、

「意味への意思」は本能から生じる欲望などの衝動そのものに過ぎない

と批判がありました。詳しく説明してきます。

前述したように、人間は人生の意味を見つけようとする意欲的な感情である「意味への意思」があることを紹介しました。しかし、この「意味への意思」は本能から生じる欲望などの衝動そのものに過ぎないとするフロイト的な立場からの批判があります。

たとえば、小説家になるという夢を持っているAさんがいることを想定してください。Aさんは小説家になるために、日々オリジナルの作品を執筆しています。

このAさんの行為は、ロゴセラピーの捉え方によると、次のように分析されます。

  • Aさんは「人生の意味」として「小説を書き、自分の世界や思想を表現すること」をもっている
  • Aさん自身がまだ「人生の意味」を認識していない場合でも、「小説を書く」という行為のもつ「意味への意思」の力によって、Aさんは作品を書き続けることができる

しかし、フロイトの精神分析学の視点からは、全く異なる説明がされます。フロイト的にいえば、

  • Aさんの行動は、欲求不満の表れである
  • Aさんが小説を書くのは 、自らの幼少期の体験から生ずる欲求不満を解消する行為である
  • 言い換えば、欲求不満を昇華(芸術作品などを創作すること)することで、自分の精神を守っている行為である

と分析がされます。

このようなフロイトの精神分析以外にも、心理療法には様々な流派があります。そのため、ロゴセラピーの観点が正しいのか、精神分析の観点が正しいのかは明確なデータを基に判断することが難しいです。

つまり、捉え方の角度によって、同じ状況でも別の意味に解釈されることがあるのです。ロゴセラピーも数ある心理療法の1つと捉え、多角的に解釈していくことが大切かもしれません。

2-2: ロゴセラピーの科学性に関する批判

加えて、ロゴセラピーの技法について「科学的な考えではない」という批判があります。

たとえば、トランスパーソナル心理学の創始者の1人であるスタニスラフ・グロフは、著書の中で、ロゴセラピーの「人生の意味」について、

知的分析や論理の使用によっては、人生を正当化したり、人生に意味を見いだすことはできない スタニスラフ・グロフ『脳を越えて』1988(春秋社, 242頁)

と述べています。

簡単いえば、ロゴセラピーは情緒的・哲学的なアプローチに偏っており、同じ状況下で論理的に考えた場合には必ずしも「人生の意味」は発見されるとは限らないという批判です。

事実、ロゴセラピーは「人生の意味」を見出して精神的な不調からの回復を図るという点から、未来に焦点を合わせた哲学的な心理療法です。そのため、正確な論理や推測よりも、生きることで実感したり実現し得る価値を探るアプローチが多いのは事実です。

そのため、従来の心理学や医学とは異なるアプローチをとるロゴセラピーが批判に晒されたのは仕方ないのかもしれません。

しかし、新たな観点を心理療法の選択肢の1つに加えることで、従来の技法ではカバーできない部分にアプローチをできるようになることが期待できるのはないでしょうか。

2章のまとめ
  • 「意味への意思」は本能から生じる欲望などの衝動そのものに過ぎないというフロイト的な批判
  • 「科学的な考えではない」というアプローチに対する批判

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3章:ロゴセラピーのおすすめ本

ロゴセラピーの全体像をつかむことはできましたか?

ここでロゴセラピーをさらに学びたい方に向けてオススメ書物を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

おすすめ本

オススメ度★★★ V.E.フランクル『ロゴセラピーのエッセンス』(新教出版社)

ロゴセラピーの手順や重要なポイントが18項目にまとめられた本です。フランクル自身がロゴセラピーの初学者に向けて書いた本のため、ロゴセラピーの入門書としておすすめです。

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オススメ度★★★ V.E.フランクル『精神療法における意味の問題』(北大路書房)

フランクルの著したロゴセラピー関連の論文の中で、特にフランクルの思想を理解しやすいものが集められた本です。第二次世界大戦終結直後のものからフランクルの晩年である80年代後半までの論文がまとめられており、40年間にわたるロゴセラピーの発展を知ることができます。

オススメ度★★★ V.E.フランクル『意味による癒し ロゴセラピー入門』(春秋社)

ロゴセラピーにおける「人生の意味」について詳しく解説された本です。フロイトやアドラーなどの心理療法との比較を通して、ロゴセラピーの持つ特徴や得られる効果をわかりやすく説明してあります。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • ロゴセラピーとは「人生の意味」を見出すことで疾患や苦境にある状態からの回復を目指す心理療法
  • 「創造価値」「体験価値」「態度価値」という3つの価値が実現されることで「人生の意味」が見出される
  •  ロゴセラピーに対する批判:「意味への意思」は本能から生じる欲望などの衝動そのものに過ぎないというフロイト的な批判と「科学的な考えではない」というアプローチに対する批判

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参考文献

  • V.E.フランクル『意味による癒し ロゴセラピー入門』(春秋社)
  • V.E.フランクル『ロゴセラピーのエッセンス』(新教出版社)
  • V.E.フランクル『夜と霧』(みすず書房)
  • 中井徹 2010「ロゴセラピー的視点による生きがい感充足要因の検討」『岩手大学大学院人文社会科学研究科研究紀要』 (19)1-22頁
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