社会思想

【STEAM人材・教育とは】意味・特徴・事例をわかりやすく解説

STEAM人材・教育とは

STEAMとは、科学(Science)技術(Technology)工学(Engineering)アート(Arts)数学(Mathematics)の5つの頭文字を取った造語です。STEAM人材とは21世紀型の新しい人材像、STEAM教育はそのような人材を育成するための教育を指します。

日本ではまだあまり根付いていない概念ですが、世界における先進的な人材育育成、教育がどのような方向性にあるのかを知るために重要なものです。

この記事では、

  • STEAM人材の意味・特徴
  • STEAM教育の具体例

をそれぞれ解説していきます。

関心に沿って読み進めてください。

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1章:STEAM人材とは

1章ではSTEAM人材の「意味」「特徴」「STEMからSTEAM人材への変化」を解説します。

2章ではSTEAM教育を紹介しますので、あなたの好きな箇所から読み進めてください。

1-1: STEAM人材の意味

まず、STEAM人材が具体的にどのような意味を持っているのかを確認していきます。

前述した通り、STEAMとは、

  • 科学(Science)
  • 技術(Technology)
  • 工学(Engineering)
  • アート(Arts)
  • 数学(Mathematics)

の5つの頭文字を取った造語です。

もともとはアートの要素がない「STEM」という理数系の能力を重視する言葉で、科学技術リテラシーを高めることで実社会に応用できる知識や技能の習得を促すことが目指されていました。

しかし、後で詳しく述べますが、テクノロジーの発展などにより社会に求められる資質が変化したことで、アートの要素を追加した「STEAM」の力を育成することが世界的に注目されるようになったのです。

1-1-1: STEAMのA(アート)とは?

では、この「アート」の要素は何を意味するものなのでしょうか?

もちろん、まずイメージするような美術の素養を指すこともあります。実際に、ビジネスの領域においては近年、MBA(経営学修士)だけでなく、芸術系の専門学校を卒業したり、MFA(美術学修士)を取得した人材も重宝されるようになってきています。

けれども、STEAMで「A(アート)」が意味するものは、さらにリベラルアーツと呼ばれる領域を含むことが重要です。

リベラルアーツとは、

  • もともと古代ギリシアで生まれた概念
  • 当時は自由民(使う側)と大量の奴隷(使われる側)で成り立つ社会であり、その環境で使う側の自由民に求められていた基礎的な教養やスキルこそがリベラルアーツ(直訳では自由の技法)であった
  • それが後に、ヨーロッパにおいて自由七科として発展した
  • 文法学・論理学・修辞学という三学と、算術・幾何・天文学・音楽という四科が、人が持つ必要がある実践的な知識・学問の基本として、ヨーロッパの大学を中心に受け継がれていった

ものです。(→リベラルアーツについて詳しくはこちら

日本では一般に教養とは歴史・古典・芸術といったものが想定されますが、これらが自由七科に含まれていないように、本来はそれらを学ぶ前の基礎的な能力としてリベラルアーツがあるとされています。

また、日本では文系と理系がはっきりと分かれていて、基本的に文系は理数的な教養が必要とされないといった教育環境にありますが、これはリベラルアーツの観点から見るとナンセンスであると言えます。



1-2: STEMからSTEAM人材へ

では、実際にどのような過程を経てSTEMからSTEAMが注目されるようになったのでしょうか?

ここからは、ヤング吉原・木島の『世界を変えるSTEAM人材』(朝日新書)を参考にしながら説明していきます。

まず、そもそもSTEMがどのようなものかについて知る必要があります。

  • STEM教育とは、科学(Science)技術(Technology)工学(Engineering)数学(Mathematics)という4つの領域の学びを活性化して、科学技術リテラシーを高めて、実社会に応用できる知識や技能の習得を促そうというアプローチのこと
  • 21世紀の初めに、それまでは高等教育で学ぶ専門領域とされていた機械工学や電子工学などを義務教育の段階からカリキュラムに積極的に導入すべきだという議論がアメリカを中心にされるようになったのが始まり
  • そして、こうした国民の科学技術リテラシーの底上げを目指すSTEM教育が21世紀初頭から世界的に急速に広がった背景には、PISAといった国際学力調査が普及したことがある

(*PISAとは、義務教育が終了する15歳の生徒を対象に、経済協力開発機構(OECD)が3年ごとに行なっている学習到達度調査のこと。2018年度調査においては79の国と地域が参加していて、主に「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」「問題解決能力」などが測定されている)

これによって、他国との学力の比較が可能になったことで、自国の教育水準を客観的に把握して見直しにつなげることができるようになりました。STEM教育はイノベーション創出を担う人材を育成して、国の競争力を高めるものとして、国家的な戦略として世界的に広まっていったのです。

しかし、テクノロジーの発展などにより社会に求められる資質が変化していきます。

具体的には、

  • 現在、AIやビッグデータ、IoT、ロボットなどのテクノロジーのめざましい発展が起きた
  • あらゆる産業分野が「デジタル化」「コンピューター化」「ネットワーク化」「オートメーション化」され、今までにない革新的な製品やサービスが創出されるようになった
  • これはまさに時代の変革期であり、第四次産業革命と呼ばれている
  • 日本政府も科学技術基本計画において、超スマート社会(society5.0)を構想している
  • そして、これから目指すべき未来の姿を「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」としている

といった変化が起きています。(→第四次産業革命についてはこちらの記事

つまり、人間とテクノロジーの関係性を問い直しながら、テクノロジーを活用しながら持続可能な社会を実現することが求められています。

この変化において、大量のデジタル情報を効率よくマネジメントするだけでなく、自由に発想して「前例のない問題」にも創意工夫で解を見出すことができる人材として、STEM人材に代わってSTEAM人材が注目されるようになったのです。

Georgette Yakman女史が2006年に提唱して以来、アメリカを中心にSTEAM人材を育成が世界的に広がっていきました。



1-3: STEAM人材の特徴

それでは、従来のSTEMにこうした「アーツ」の意味も加わったSTEAM人材は、実際にどのような特徴をもっているのでしょうか?

1-3-1: ヒューマニスト

まず、STEAM人材は「人間性」を重視する、つまり人間的・主観的な価値を追求するという特徴があります。

STEMに代表されるように、これまでは科学技術を中心に社会が発展する中で、無駄がなく機能的・効率的な価値が重視されてきました。

しかしながら、物質的に豊かな社会になった現在、人々の価値観や生活様式は多様化し、意味のある価値が求められるようになりました。また、最近ではAI技術の発展で、人間と機械の違いを認識することが重要になってきました。

つまり、

  • 人間はただ合理的に判断する経済人、ただ与えられた課題を処理する役割人ではない
  • それぞれ思いを持ち主体的に現実世界に対して価値を創出していく存在であることを前提しながら、人間にとっての有用性を追求していく必要がある

のです。

ビジネスにおいては、人間のためにというヒューマニストとしての信念を持ち、「何を作るのか(what)」や「どう作るのか (how)」だけでなく、「何のために作るのか(why)」に正面から取り組むことが重要になっています。

1-3-2: イノベーター

また、STEAM人材は今までにない新しい価値を創出し続けるという特徴があります。

そもそも、イノベーションとは、「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」に分かれます。

  • 持続的イノベーション・・・iphoneの新機種登場のように、今ある製品サービスをより良くしていくもの
  • 破壊的イノベーション・・・今までにない価値を創出するもの

STEAM人材の特徴は、破壊的イノベーターとなります。課題や問題点がはっきりしない状況においても、新しい切り口を探りニーズを開拓し斬新な解を示すことが求められます。

そのためには、以下のようなマインドセットを持っていることが求められます。

  • 型にはまらない
  • ひとまずやってみる
  • 失敗して、前進する



1-3-3: デザイナー

そして、STEAM人材はデザイン思考を駆使して、あらゆるものをデザインするという特徴があります。

一般にデザイナーといえばファッションや建築などを指しますが、ここでデザインの対象になるのは「モノ」に限りません。人々に感動体験を提供するといったことから、産官学のエコシステムを構築するといったことまで、あらゆる「モノ」「コト」を含みます。

そのためのメソッドとして、STEAM人材はデザイン思考を用います。デザイン思考の具体的な手順としては、スタンフォード大学のd.schoolが「5つのステップ」を提唱しています。

  • 共感する(empathize)
  • 定義する(define)
  • アイデアを出す(ideate)
  • プロトタイプにする(prototype)
  • テストする(test)

これらの実践的なステップをとにかく何度も繰り返すことで、論理分析的なアプローチではなかなか見えてこない本質的な価値を創出することができるとされています。

このようにみると、STEAM人材とは、

  • ただSTEAMの素養をもっているだけではない
  • 素養を生かしながら「ヒューマニスト」「イノベーター」「デザイナー」としての実践を繰り返し、社会に新たな価値を創出していく人材

として捉えることができます。

1章のまとめ
  • STEAMとは、科学(Science)技術(Technology)工学(Engineering)アート(Arts)数学(Mathematics)の5つの頭文字を取った造語である
  • 自由に発想して「前例のない問題」にも創意工夫で解を見出すことができる人材として、STEM人材に代わってSTEAM人材が注目されるようになった
  • 素養を生かしながら「ヒューマニスト」「イノベーター」「デザイナー」としての実践を繰り返し、社会に新たな価値を創出していく人材である
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2章:STEAM教育の具体例

さて、2章ではSTEAM人材を育成するために、実際にどのような教育が展開されているのかを日本と世界の実践を比較しながら見ていきましょう。

2-1: 日本における教育

では、日本においてSTEAM教育がどのように展開されているのかみてみましょう。

まずは、以下の表を見てください。

STEAM人材・教育とは

これまで日本の従来型の教育では、高度経済成長期を支えるための「系統学習型」、つまり生徒が決められた基礎知識をきっちりと修得していくというものでした。

画一化・標準化されたカリキュラムと評価基準に基づいて、紋切り型の答えを暗記していくが前提の「劇場型の教育」が一般的であり、今でも多くがそれに当てはまります。

2-1-1: 文部科学省

これに対して、日本政府もSTEAM教育を推進するための施策を講じています。

文部科学省は2018年に「society5.0に向けた人材育成〜社会が変わる、学びが変わる〜」という報告書を公開し、教育政策の方向性が以下の3点を示しました。文部科学省「society5.0に向けた人材育成〜社会が変わる、学びが変わる〜」最終閲覧日2020年3月31日)

  • 公正に個別最適化された学びを実現する多様な学習機会と場の提供
  • 基礎的読解力、数学的思考力などの基盤的な学力や情報活用能力をすべての児童生徒が修得
  • 文理分断からの脱却

2-1-2: 経済産業省

また、経済産業省は、

といった報告書を公開して、STEAM教育の実現に向けて具体的に検討しています。

2-1-3: その他

内閣府は、2019年に発表したAI戦略において、「数理・データサイエンス・AIに関する知識・技能と、人文社会芸術系の素養をもとに、新しい社会のあり方や製品・サービスをデザインする能力」がこれからの時代に必要とされ、STEAM教育が重要であることを言及しています。

(内閣府「AI戦略2019~人・産業・地域・政府すべてにAI~」最終閲覧日2020年3月31日)

このような取り組みがおこなわれていますが、実際は指導力やパソコン・タブレットといったICT環境が自治体ごとにばらつきがあるなど、世界的にみると圧倒的に遅れているのが現状です。



2-2: 世界における教育

次に、世界におけるSTEAM教育を「シリコンバレーの小学校」「中国の国家的な取り組み」から紹介します。

2-2-1: シリコンバレーの小学校

まず、シリコンバレーにおけるオローニ小学校での実践をみていきましょう。

  • オローニ小学校では知識の習得だけでなく、人との関係性や協調性といった社会的な学びや、自分を見つめ他者の気持ちに寄り添う情緒的な学びも、アカデミックな教科と同じように重視している
  • 理論と実践を両輪とする「体験型学習」では、敷地内にある菜園や果樹園でのガーデニング、ヤギや羊といった動物の世話と言った実践を通して、肌で感じた質感やその時の感じたことなどまでも学びとしている
  • また、「シミュレーション」と呼ばれるプロジェクト型学習では、ヨーロッパから移住してきた人々が、新大陸アメリカで植民地を形成した建国時点やカリフォルニアのゴールドラッシュといった大きな社会の動きをテーマにしている
  • つまり、当時の人々の目線で考えることを学びながら、数ヶ月かけて「体験」する。これは単なる歴史のテーマではなく、英語、数学、サイエンス、美術、音楽、演劇、体育といった複数教科が融合されて設計されている

これらを通して生徒がそれぞれの学びの中から、主体的に物事を判断し責任を追うなどの力を養っていくことが目的とされています。

2-2-2: 中国での実践

次に、中国での実践についてみていきましょう。

(参考:Global Tech Trends「中国で盛り上がる人工知能教育!STEAM(スティーム)教育を中心にEdTech市場が爆発的に拡大中!」最終閲覧日2020年3月31日)

中国では国家戦略としてAI人材育成に力を入れています。具体的には、

  • 小・中・高校教育段階で人工知能に関する授業科目を設ける
  • プログラミング教育を展開し、大学で複合型人材を育成する

ことからAI人材のレベルアップを図ろうとしています。

また、中国のSTEAM教育市場にはEdTech分野の企業がどんどん参入しており、盛り上がりを見せています。

世界的に知られる中国の教育ロボットメーカーmakeblockは、ハードウェアを使って簡単にプログラミングを学習することができるmBotやCodey Rockyなど、遊びの延長線上でプログラミングを学べる商品を販売し、学校や教育機関、家庭などで扱われるようになっています。

2019年にはテンセントが子供向けのオンラインプログラミングプラットフォームであるScratchと合意し、中国の子供達のオンラインプログラミング体験を向上させるための事業提携をしました。

他にも、ロボットやドローン、ARなど様々な分野のスタートアップ企業がこのSTEAM教育市場で事業を展開していて、まさに産官学一体となってSTEAM人材育成に力を入れています。

2章のまとめ
  • 日本では指導力やパソコン・タブレットといったICT環境が自治体ごとにばらつきがあるなど、世界的にみると圧倒的に遅れている
  • 世界には「シリコンバレーの小学校」と「中国の国家的な取り組み」など有名な取り組みがある
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3章:STEAM人材・教育について学べる本

STEAM人材・教育について理解を深めることができたでしょうか?

さらに理解を深めるために、次の書物をぜひ参考にしてください。

オススメ書籍

オススメ度★★★ ヤング吉原麻里子・木島里江『世界を変えるSTEAM人材』(朝日新書)

この本はシリコンバレーの事例をもとに、STEAM人材の本質がヒューマニスト×イノベーター×デザイナーであるという観点から、非常にわかりやすく解説しています。STEAMという概念をさらに深めたい方にはまずはこれ!という一冊です。

オススメ度★★★ 安宅和人『シン・ニホン』(NewsPicksパブリッシング)

この本はSTEAM人材自体というよりも、このAI×データの時代においてSTEAMリテラシーのようなものがなぜ求められているのか、またどのように活かされるのかについて、日本の実際の課題に即しながら理解することができます。

オススメ度★★ 山崎貞登「プログラミング的思考力を育成する技術・情報教育課程基準」『2017(平成29)年度~ 2019年度 科学研究費補助金(基盤研究(C)) 第2年次研究成果報告書』

このレポートはSTEAM教育について網羅的に非常によくまとめられています。また、実践的な事例も豊富に載せられているため、STEAMのイメージを掴む上でも役立つはずです。

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一部の書籍は「耳で読む」こともできます。通勤・通学中の時間も勉強に使えるようになるため、おすすめです。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • STEAMとは、科学(Science)技術(Technology)工学(Engineering)アート(Arts)数学(Mathematics)の5つの頭文字を取った造語である
  • 素養を生かしながら「ヒューマニスト」「イノベーター」「デザイナー」としての実践を繰り返し、社会に新たな価値を創出していく人材である
  • 世界では「シリコンバレーの小学校」と「中国の国家的な取り組み」など取り組みがある一方で、日本は大幅に遅れをとっている

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