【シャーマニズムのおすすめ本７選】古典本から日本の事例まで紹介

シャーマニズムに関する知識は、書籍から学ぶことをおすすめします。

「シャーマニズム」はもともとシベリアの諸民族の宗教的実践を説明する言葉でした。しかし、世界の類似した宗教的実践を説明する言葉として拡大適用されていきます。

地域を越えて「シャーマニズム」が使用されたため、雑多な要素が入り込んでしまい、「シャーマニズム」は捉えどころのない言葉となっています。

そこで大事なのは、

です。

この記事では、「古典本」「日本におけるシャーマニズム」「宗教人類学」のカテゴリー別で書籍を紹介していきます。

ぜひ興味のあるものから手に取ってみてください。

１章：シャーマニズムの古典本

まずは、シャーマニズムの古典本と呼ばれる書籍を紹介していきます。これから紹介する書籍をとおして、シャーマニズムの基礎を押さえることができます。

①『シャーマニズムの世界』

宗教学者/文化人類学者の佐々木宏幹は、シャーマニズム研究の第一人者の一人です。

『シャーマニズムの世界』は「そもそも、シャーマニズムって何だ？」という根本的な疑問に、世界中の事例を用いて答えています。

シャーマニズムという宗教現象を扱った本ですので、ローカライズされた事例を詳細に扱っているわけではないことに注意してください。

獲得できる知識	シャーマニズムの基本的な知識
こんな人におすすめ	シャーマニズムとは何か？を知りたい方
良い点	シャーマニズムの概要を押さえることができます。日本だけでなく、世界中のシャーマニズム的実践と宗教との関係も議論されていることもポイントが高いです。
悪い点	特にありません。シャーマニズムに関心をもった方は、まず読みたい本です。

②『シャーマニズム』

ルーマニア人宗教学者のエリアーデの著作である『シャーマニズム』は、もっとも有名な古典本の一つです。

シャーマン（多くは男性）が天上の神々や精霊と交信することや、この交信をとおして予言や占い、治療行為をおこなうことなど、私たちが想像するシャーマニズムが詳細に描き出されています。

ちなみに、エリアーデが考察したシャーマンは彼自身の身体を離れることができるとされており、それは「脱魂型」と呼ばれます。

獲得できる知識	シャーマニズムの基本的/古典的な議論
こんな人におすすめ	シャーマニズムとは何か？を知りたい方
良い点	シャーマニズムの概要を押さえることができます。特に、東アジアやシベリアにおけるこの宗教的実践に興味のある方に、おすすめです。
悪い点	シャーマニズムがもっとも古い宗教形態であるというエリアーデの主張は、現在否定されていることを念頭に読んでみてください。

③『エクスタシーの人類学』

『エクスタシーの人類学』は英国人類学者のヨアン・ルイスによって書かれた本です。

ルイスは世界中の宗教を比較研究し、シャーマニズムはチベット仏教の影響により誕生した宗教形態と主張しました。

エリアーデはシャーマニズムをもっとも古い宗教形態と考えていましたが、ルイスの登場によりシャーマニズムの起源が明らかになり、現在ではルイスの考えが支持を得ています。

獲得できる知識	シャーマニズムの基本的/古典的な議論
こんな人におすすめ	シャーマニズムの起源に関心のある方 シャーマニズムと宗教との関係に関心のある方
良い点	世界中の宗教を比較研究しているため、宗教の実践や歴史をシャーマニズムとともに学ぶことができます。
悪い点	シャーマニズムの類型である「脱魂型」や「憑依型」に関する最低限の知識が必要です。

２章：日本のシャーマニズムに関する本

続いて、日本におけるシャーマニズムの実践を学べる本を紹介します。日本社会におけるシャーマニズム研究は一定の蓄積があるため、外国人研究者/日本人研究者問わず、良質な本が多くあります。

④『あずさ弓―日本におけるシャーマン的行為』

英国人研究者であるブラッカーによるこの著作は、フィールドワークと文献調査に基づいたたしかな研究です。

扱われている内容は霊能者の実践、巫女や行者の修行、他界への象徴的な旅の意味など多岐にわたります。日本におけるシャーマニズムの歴史を学ぶこともできる点でポイントが高いです。

獲得できる知識	日本におけるシャーマニズムの歴史と実践
こんな人におすすめ	日本におけるシャーマニズムの実践に関心のある方
良い点	フィールドワークと文献調査といった「生の」資料による議論は非常に魅力的です。日本における宗教のあり方を学ぶ上でも、極めて有益です。
悪い点	可能であれば、英語の原著にあたった方がいいです。

⑤『シャーマニズムの文化学』

『シャーマニズムの文化学』は日本人研究者によるシャーマニズム研究です。日本文化をシャーマニズムという側面から分析しており、非常にユニークです。

具体的に、アマテラス、『源氏物語』、柳田国男、近現代文学などがシャーマニズムとの関係でそれぞれ議論されています。扱われる内容は実に多様ですので、読みたい章だけでも読むことができる構成になっています。

獲得できる知識	日本文化とシャーマニズムの関係
こんな人におすすめ	日本文化とシャーマニズムに関心のある方
良い点	多様な学問分野の研究が、それぞれの対象とシャーマニズムとの関係を議論している点が良いです。
悪い点	シャーマニズムそれ自体というよりも、取り扱われる対象とシャーマニズムの関係が議論されます。ある程度、前提となる知識が必要な章があります。

３章：シャーマニズムに関する宗教人類学の本

さて、最後にシャーマニズムなどの宗教実践を対象とする宗教人類学という分野から書物を紹介します。

これから紹介する本は、ある程度専門的な知識が必要ですが、初学者の方も挑戦する価値のあるものとなっています。

⑥『憑霊とシャーマン』

上で紹介したシャーマニズム研究の大御所、佐々木宏幹の論文集です。

フィールドワークにおける観察や聞き取りの成果が個別事例として提示されていると同時に、それら個別の事例に一定の普遍性を与えようとする「一般理論の形成」の試みがされています。その際、キー概念となったのが「シャーマニズム」でした。

佐々木の試みが成功したのかはあなた自身で評価するのが一番でしょう。読み物としても面白いのでぜひ読んでみてください。

獲得できる知識	宗教人類学の専門的な知識
こんな人におすすめ	シャーマニズムに関する学術的な議論を知りたい方
良い点	佐々木の主要な論文がコンパクトにまとめられており、シャーマニズムに関する理解がいっそう深まります。
悪い点	実証的な論文もあれば、彼の当時の関心事に左右された論文もあります。論集であるため、すべてのトピックに一貫性があるわけではありません。

⑦『宗教人類学』

『宗教人類学』は宗教と人類学の関係を知りたい方は、教科書として読みたい本です。

この本で扱われる内容を理解するには、文化人類学の基本的な考え方や機能主義や構造主義といった理論を知る必要があります。

「宗教を人類学的に分析することは、人類学にどんな貢献をもたらすのか？」という疑問を考えるいいきっかけとなるに間違いないでしょう。当然、そのなかでシャーマニズムに関する議論が登場します。

獲得できる知識	宗教人類学の専門的な知識
こんな人におすすめ	宗教と人類学の関係に関心のある方
良い点	シャーマニズムを含めた広い意味での宗教的実践を深く理解することができます。専門的でありながら、入門書としても読めることもポイントが高いです。
悪い点	特にありません。教科書として手元に欲しい本です。

まとめ

どうでしょう？あなたが関心を持てる本はありましたか？

ここで紹介した本があなたのシャーマニズム的感性を刺激するきっかけになれば幸いです。