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心理学

【感覚記憶とは】短期記憶・長期記憶との関係からわかりやすく解説

感覚記憶とは

感覚記憶(Sensory memory)とは、視覚や聴覚といった感覚器官ごとに存在する、非常に保持時間の短い記憶のことです。

短期記憶、長期記憶とともに、記憶の基本的な働きを知る上で不可欠なのが感覚記憶です。非常に基本的な内容ですで、特に心理学を学ぶ方はしっかり理解するべきものです。

この記事では、

  • 感覚記憶の意味・例
  • 感覚記憶の心理学的実験

をそれぞれ解説していきます。

好きな箇所から読み進めてください。

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1章:感覚記憶とは

1章では、感覚記憶の全体像を提示します。感覚記憶の心理学的議論に関心のある方は、2章から読んでみてください。

このサイトでは複数の文献を参照して、記事を執筆しています。参照・引用箇所は注1ここに参照情報を入れますを入れていますので、クリックして参考にしてください。

1-1:感覚記憶の意味

記憶は私たちにとってとても身近なものであるため、日常的に使用される言葉とはしっかり区別してなければ概念の混乱につながってしまいます。そこで、感覚器官の説明をする前に、記憶の基本的な働きを抑えておきたいと思います。

端的にいえば、心理学において、記憶の機能として主に3つの機能が挙げられます。

  1. 記銘(memorization)・・・見たり聞いたり嗅いだりといった感覚器官より入力された情報を覚える機能
  2. 保持(retention)・・・記銘によって覚えたことを忘れずに維持し続ける機能
  3. 想起(remembering)・・・保持した情報を思い出す機能

この記事では、これらの機能を上記の用語で記述しますが、それぞれ、符号化(encoding)、貯蔵(storage)、検索(retrieval)とも呼ばれたりもします。

さて、改めて感覚記憶とは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、といった感覚器官ごとに存在する、非常に保持時間の短い記憶のことです。私たちは外界のさまざまな情報をこのような感覚器から受け取っています。

  • 視覚・・・光情報
  • 聴覚・・・音波
  • 嗅覚・・・揮発性の物質
  • 味覚・・・溶解性の物質
  • 触覚・・・温度や圧力といった刺激を受容するセンサー

これらの情報は、電気信号として神経系を伝い、脳に達し、私たちに感覚を与えます。

反対に、これらの感覚器官によって受容できないような刺激はたとえ外界に存在したとしても私たちは受け取ることが出来ません。たとえば、紫外線は私たちは知覚することができませんが、確かに外界には刺激として存在しています。

感覚記憶とは、一時的に保持されたこれらの感覚器から入ってきた情報のことを言います。これらの情報のうち、視覚情報に関するものは「アイコニック・メモリ」に、聴覚情報に関するものは「エコイック・メモリ」に送られます。保持時間は感覚ごとに異なりますが、感覚記憶の保持時間は0-2秒程度だといわれています。

記憶研究について網羅的に学びたい方には、こちらの教科書がとてもわかりやすいです。



1-2:感覚記憶と短期記憶・長期記憶との関係

記憶は記憶の内容や保持時間の長さによっていくつかの分類が行われています。ここでは、アトキンソンとシフリン(1968)が提唱した二重貯蔵モデルという考え方にもとづいて、感覚記憶がほかの記憶とどのように関係しているのかを説明します2Atkinson, R. C., & Shiffrin, R. M. (1968). Human memory: A proposed system and its control processes. Psychology of learning and motivation, 2(4), 89-195.

このモデルは、記憶が次のものからなると説明しています。

  • 記憶が感覚器官から送られてきた情報を瞬時(0-2秒)保持される感覚記憶
  • 一時的に数個程度の情報を保持する短期記憶(short-term memory)→詳しくはこちらの記事
  • 長期的に大量の情報を保存することが出来る長期記憶(long-term memory)→詳しくはこちらの記事

短期記憶と長期記憶の関係は勉強机と本棚の関係に似ています。私たちは非常に多くの知識を持っています。それらの知識は普段、長期記憶という名の本棚に格納されています。本棚の大きさや中身が個人ごとに異なるように、長期記憶の能力やその中身は人によって異なります。

しかし、私たちは勉強するときに本棚にあるすべての本を勉強机の上に置くわけではありません。今、行いたい勉強に関連したものだけを勉強机の上に置きますよね。この時、一度に机の上においておける本の量が机の大きさによって決まります。

つまり、短期記憶とは今行いたい目的に関連した情報に注意を向けてその情報を操作したり、焦点を当てたりするための作業場としての役割を持っているということです。

この理論では、情報はまず感覚器から入力されると説明されます。そして、その情報は一時的に感覚記憶に保持されます。この保持された情報のうち、注意が向いている情報のみが短期記憶に保持され、さらにその中の一部の情報が長期記憶に送られます。

このような説明だけでは、感覚記憶の役割についてピンとこないと思いますので、私たちが、外の世界の情報を取り入れて、記憶するときどのような流れでそれを行っているのかを考えてみましょう。

たとえば、視覚情報です。私たちは、目で見たものをすべて記憶しているでしょうか?いいえ、そうではありませんよね。もし、そのようなことが出来るのであれば、テスト勉強の時にあんなに苦労することはなかったでしょう。

私たちは、目に映ったものに注意を向けることではじめて、情報を取得し記憶することが出来ます。つまり、「目に映っているもの」と「記憶に残るもの」は異なるのです

二重貯蔵モデルの言葉を使って説明すると、この「目に映っているもの」が、視覚における感覚記憶に相当します。そして、「記憶に残るもの」が短期記憶や長期記憶に送られた情報です。

より、正確には、感覚器官に入ってきた情報は一度感覚情報として保存されます。そのうち、注意を向けた情報のみが短期記憶に送られ、短期記憶内で何度も繰り返された情報や、ほかの情報と関連付けられた情報が長期記憶に送られます。

つまり、感覚記憶とは、感覚器官から入ってきた情報の一時保管場所というわけです。



1-3:感覚記憶の例

さて、感覚記憶の例として、意識にまで登らないにもかかわらず、感覚情報が処理されていることを示すような例を紹介したいと思います。

  • 記憶の話をするのになぜ処理の話をするのかと疑問に思ったかもしれませんので、まずスマホやパソコンで写真を加工するときのことを考えてみてください
  • 加工したい写真は一度ストレージに保存しなければいけませんよね。それと同じで、何らかの処理が行われるということは情報として我々が受け取っていることを意味します
  • つまり、処理と記憶の働きは密接にかかわっているということです

ここで紹介するのはカクテルパーティー効果という現象です。ショッピングモールなどのがやがやした状況を想像してください。そのような状況では、注意して耳をすまさない限り、がやがやざわざわといった雑音が常に耳に入ってきます。

このようなざわざわした状況の中で、ふいに自分の名前が耳に入ってくるという経験はしたことありませんか?これが「カクテルパーティー効果」と呼ばれるものです。名前の由来は、カクテルパーティーのようなざわざわした場所でも自分の名前には素早く反応できるということからきています。

この現象は、我々が注意を向けていないはずの情報も一時的に保持していることを示しています。

  • 先ほども述べたように、何らかの情報を処理するためには、情報を保存する必要がある
  • このカクテルパーティー効果が生じるということは、少なくとも、私たちが普段意識にも上げないようながやがやざわざわの中から、自分に関連した情報を抽出するといった処理を行っているということを意味している

このことは、注意を向けた情報を操作したりする短期記憶よりも以前に、一時的に聴覚情報を保存しておくような機能が存在することを示しています。

1章のまとめ
  • 感覚記憶とは、視覚や聴覚といった感覚器官ごとに存在する、非常に保持時間の短い記憶のことである
  • 感覚記憶とは、感覚器官から入ってきた情報の一時保管場所である

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2章:感覚記憶に関する学術的な議論

さて、2章ではワーキングメモリに関する学術的な議論を紹介します。

2-1:スパーリングの視知覚実験

では一体、このような感覚記憶の性質はどのような心理学実験によって実証されてきたのでしょうか?ここでは、スパーリング(1960)が行ったアイコニック・メモリに関する実験を紹介したいと思います3Sperling,  G(1960)The information available in brief visual presentations. Psychological monographs: General and applied 74(11)1.

実験概要

  • この実験では、瞬間的に提示された情報を記憶できる量はどれくらいかということと、その情報はどれくらい保持されるのかということが検討された
  • 参加者は文字や数字を含む文字列を図1のように並べた刺激を記憶することを求められた
  • この時、刺激は非常に短い時間(50ミリセカンド)のみ提示された(1000ミリセカンドで1秒ですので、この50ミリセカンドというのは本当に瞬きのような時間)
  • このように一瞬画像などの刺激を呈示するすることをフラッシュ呈示と呼ぶ

心理学者スパークリングの実験で使用された刺激の例図1 実験して使用された刺激の例

この研究ではまず、特に教示をせず覚えているものを想起させました。このように、全体を報告させる方法は「全体報告法」といいます。実験の結果、参加者は平均して約4文字程度の報告することが出来ました。

一方で、この報告できた文字数以上に、もっと多くの文字が見えていたということを報告している参加者が複数人存在しました。このことは、もっと多くの情報を保持していたものの、記憶を報告するまでの時間に、忘れ去られてしまった可能性を示しています。

つまり、感覚記憶が多くの情報を保持できるということと、その保持時間が非常に短い可能性があることがわかります。

2-2:スパークリングのその他の実験

しかし、参加者が色のコントラストのような単純な情報から複数の文字があったと推測しているだけで、本当にそのような多くの状況を感覚記憶に保持できているのかはわかりません。

このことを検証するために、スパーリング(1960)は次の実験を行いました。

実験概要

  • 参加者に全体を報告させるのではなく、「上の段」や「真ん中の段」、「下の段」といったような位置を指示して報告させた
  • このように、全体ではなく部分的に報告を求める方法を「部分報告法」という

ここで、重要なのは画像をフラッシュ呈示した「後」でどの部分を報告するべきかが与えられたことです。もし、感覚記憶が多くの情報を保持することが出来るのであれば、後から注意を向けてもその位置の文字列を再生できるはずです。

実験の結果、多くの参加者が、指示された行の文字を再生することが出来ました。刺激がフラッシュ呈示されたときには参加者はどこの部分を記憶すればいいかはわからないにもかかわらず、上の段を指定されたときに3文字報告出来るということは、真ん中の段も、下の段も同程度再生できるということです。

つまり、図1の例の刺激で考えると、約2-3倍程度、部分報告法のほうが再生しやすいことが考えられます。この結果は、感覚記憶が多くの情報を保持できることと、その中から注意を向けた情報を再生できること、感覚記憶の保持時間が非常に短いことが明らかになりました。

ちなみに、この保持時間の長さについては、さらに別の実験でも検証されています。

実験概要

  • この実験では、部分報告法によって文字の再生を行わせた
  • この時、感覚記憶の保持時間がどれくらいかを調べるために、刺激の呈示から、報告を行わせるまでの時間を少しずつ長くしていった
  • 具体的には、部分報告を行うべき段を伝えるまでの時間を変化させることでこの時間を調整した
  • 実験の結果、約1秒程度で、全体報告法で行ったときと同じ程度の成績になってしまった。このことから、視覚における感覚記憶であるアイコニック・メモリの保持時間が非常に短いことがわかった

この研究の重要な点は、報告される情報の量が少ないのは容量よりもその保持時間の短さに起因することにあります。

これまでの研究では、瞬間的に提示された情報を保持できる量が、少ないのは記憶容量の限界として考えられてきました。つまり、図1のような画像を呈示されて、4文字程度しか再生できないのは、記憶の容量がそこまで大きくないためだと考えられてきたということです。

しかし、彼らの実験はこの説を覆し、報告される情報の量が少ないのは容量よりもその保持時間の短さに起因するということを示したのです。このことは、記憶と注意の機能を関連付けて説明するアプローチを飛躍的に発展させました。

2章のまとめ
  • 感覚記憶が多くの情報を保持できるということと、その保持時間が非常に短い可能性がある
  • 報告される情報の量が少ないのは容量よりもその保持時間の短さに起因する
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3章:感覚記憶について詳しく学べる本

感覚記憶を理解することはできましたか?最後に、あなたの学びを深めるためのおすすめ書物を紹介します。

おすすめ書籍

オススメ度★★★ 鹿取廣人・杉本敏夫・鳥居修晃『心理学[第5版]』(東京大学出版)

まず、お勧めしたいのが東大出版の心理学です。これは、心理学の教科書的な立ち位置の書籍です。この教科書は今回の記事で紹介した視覚情報保存についての実験も紹介しており、短期記憶や長期記憶との関連もわかりやすいです。

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オススメ度★★ 箱田裕司・都築誉史・川畑秀明・萩原滋『認知心理学』(有斐閣)

こちらも教科書です。認知心理学に関するものですので、より範囲が狭くなって詳しくなっています。そのため、心理学についての基本的な知識を得たうえでもっと知りたいという方におすすめです。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • 感覚記憶とは、視覚や聴覚といった感覚器官ごとに存在する、非常に保持時間の短い記憶のことである
  • 感覚記憶とは、感覚器官から入ってきた情報の一時保管場所である
  • 感覚記憶が多くの情報を保持できるということと、その保持時間が非常に短い可能性がある

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参考文献

  • 鹿取廣人・杉本敏夫・鳥居修晃『心理学[第5版]』(東京大学出版)
  • 箱田裕司・都築誉史・川畑秀明・萩原滋『認知心理学』(有斐閣)
  • Sperling,  G(1960)The information available in brief visual presentations. Psychological monographs: General and applied 74(11)1.