経営学

【ポーターの競争戦略とは】3つの競争戦略を図からわかりやすく解説

ポーターの競争戦略とは
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ポーターの競争戦略(Porter’s Competitive Strategy)とは、アメリカの経営学者マイケル・ポーターが提唱した経営戦略理論で、「コストリーダーシップ戦略」「差別化戦略「集中戦略」という3つの基本戦略から構成されています。

ポーターが提示した競争戦略は、数多く存在する経営戦略理論のなかでももっとも有名な理論です。

そのため、ポーターの議論に賛成しようと否定しようと、まずはポーターの競争戦略論を理解することが必須となります。

そこで、この記事では、

  • ポーターの競争戦略の考え方
  • ポーターの3つの基本戦略
  • ポーターの基本戦略の事例

をそれぞれ解説します。

好きな箇所から読み進めてください。

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1章:ポーターの競争戦略とは

ポーターは、競争戦略理論の狙いとして、「①経営者が自分の置かれた競争環境を正しく理解し、②その環境が将来どのように変化するかを正しく予測し、③強固な市場地位をもたらしくれる競争の仕方を選ぶ」ことであると述べています。(マイケル・ポーター『競争の戦略』(ダイヤモンド社, 1頁)を参照)

そして、上記の目標を達成するために、以下の3つの内容を提示しました。

  1. 業界における競争の性質を決める基本原理
  2. 競争業者たちのビヘイビア(行動)の形をつくる諸要因
  3. 会社が効果のある競争戦略を作成するための方法

ここでは、特に重要な③を中心的に取り上げながら、ポーターの競争戦略論をみていきましょう。

ちなみに、ポーターの競争戦略は「ファイブフォース」をもとに成り立っています。5つの戦略要因をある程度理解したうえで読み進めるのが理想ですので、まだの方は以下の記事を参照ください。

→【ファイブフォース分析とは】ポーターの議論を事例からわかりやすく解説

1-1:マイケル・ポーターとは

ポーターの競争戦略論に入る前に、ポーターの伝記的情報に触れます。この寄り道をすることで、競争戦略論をより深く理解できるはずです。

さっそくですが、マイケル・ポーターの大まかな経歴は以下のとおりです。

  • 1969年にプリンストン大学工学部航空機械科を卒業
  • 工学士の資格を得た直後に、ハーバード大学大学院へ進学し、1971年に経営学修士
  • その後、ハーバード大学で経営学博士を受ける
  • 1982年には30歳代の若さでハーバード大学史上最年少の正教授になり、多く一流企業や国家機関の戦略アドバイザーを務めた

輝かしい経歴があるなかでもポーターの経営学における最大の貢献は、当時、学術的な交流の少なかった経済学の論点を経営学に応用し、独自に理論を発展させたことです。その最も顕著な例が、ポーターが提唱したポジショニングアプローチです。

簡潔にいえば、ポジショニングアプローチとは、

  • 企業における収益の源泉である優位性を外的要因により分析する手法
  • もともと、産業の組織構造が企業に与える影響を研究する産業経済学がベースとなっている理論
  • それを独自に経営学に応用することで、各企業が戦略的な立ち位置を変えることによって、業界内でより高い収益を得られる実践的な方法を提示したもの

です。(→ポジショニングアプローチに関して詳しくはこちら

ポーターの提唱した競争戦略は理論の構築から30年以上経ったいまでも、経営学における中心的な理論となっています。(世界各国のビジネススクールで必ず取り上げられる議題)

綿密な基本原理の追及と豊富な当時の事例研究はいまでも色あせることがなく、経営者をはじめとする実務家から絶大な支持を受ける経営学者のひとりです。

1-2:競争戦略の考え方

ここで、ポーターの言葉を引用して競争戦略を説明しましょう。ポーターは著書である『競争の戦略』で、以下のように競争戦略を説明しています。

業界内で防衛可能な地位をつくり、五つの競争要因にうまく対処し、企業の投資収益を大きくするための、攻撃的または防衛的アクションである…(中略)…特定の企業にとってのベストの戦略とは、つきつめていうと、その特定企業の環境を計算に入れてつくられた特異な戦略のほかならないのである。

(マイケル・ポーター『競争の戦略』(ダイヤモンド社, 55頁)を参照)

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つまり、これまで世の中のあらゆる企業で考えられてきたどんな経営戦略であっても、競争環境を適切に分析した最も広い意味での戦略と捉えられると指摘しました。

そして、具体的に、その戦略は大きく3つにわけることができると論じたのです。それが、2章で紹介するポーターの「3つの基本戦略」と呼ばれる理論です。

いったん、これまでの内容をまとめます。

1章のまとめ
  • ポーターの競争戦略(Porter’s Competitive Strategy)とは、アメリカの経営学者マイケル・ポーターが提唱した最も有名な経営戦略理論である
  • ポーターの理論は、学術的な交流の少なかった経済学の論点を経営学に応用し、独自に理論を発展させたものである

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2章:ポーターの3つの競争戦略

ポーターの基本戦略では、企業が取るべき戦略を「競争優位性」「ターゲット」のふたつの軸で分析します。そして、その分析に基づき、次の3つに戦略があることを導いています。(図1)

ポーターの3つの基本戦略(図1「ポーターの基本戦略」筆者作成)

  1. コストリーダーシップ戦略
  2. 差別化戦略
  3. 集中戦略(※集中戦略をさらに「低コスト」と「特異性」に分解した戦略を「コスト集中戦略」と「差別化集中戦略」と呼ぶこともある)

ポーターは、上記の3つの戦略のうち少なくとも1つにおいてさえ戦略が作れない企業を「窮地に立った企業」と呼び、低収益に陥ることを指摘しています。ひとたび窮地に立たされると、この状態から脱するにはかなりの時間と忍耐強い努力が必要になるとされます。

つまり、長期的な視点で見ると、企業はこの3つのうち必ずいずれかの戦略を採用しなければならないのです。ただし、コストリーダーシップ戦略と差別化戦略を両立することは、経営資源が限られている企業には難しく、避けるべきであるとしています。

それぞれ解説していきます。

2-1:コストリーダーシップ戦略

コストリーダーシップ戦略とは、

効率化のための積極的な設備投資や販売促進のためのコストを徹底的に切り詰めることで、低コスト体質を実現し、他の競争業者よりも価格面で有利に製品やサービスを提供する戦略

です。

コストリーダーシップの地位を占めるためには、相対的に高いシェアと原材料を有利に調達できることが必須です。そのためには、低コストで大量生産が可能な製品設計や製造計画、そしてコストのかからない効率的な流通チャネルの開拓が求められます。

そのため、地位の獲得には、

  • 事前の巨額の設備投資や攻撃的な価格政策
  • 市場シェアを確保するための大規模な広告宣伝
  • 戦略導入時は赤字になる覚悟

が必要です。

もし、企業がコストリーダーシップの地位を占めることができたなら、5つの競争要因に対抗する手段を得ることができます。(図2)

コストリーダーシップ戦略の5つの競争要因への対抗(図2「コストリーダーシップ戦略の5つの競争要因への対抗」筆者作成)

新規参入者や敵対企業も、自社のシェアを奪うために攻撃を仕掛けてくるかもしれません。しかし、コストリーダーの巨額な設備や強固な流通チャネルは容易にマネすることはできません。

その結果、コストリーダーには、

  • 業界内で高いシェアを獲得することができる
  • 買い手や売り手にとっても、大口の顧客となるコストリーダーには強い交渉力は発揮できなくなる
  • 高い収益率を維持することができ、蓄積された収益はより効率的な最新設備への原資となる

といった利益が生まれます。

2-2:差別化戦略

差別化戦略とは、

製品やサービスに特色を持たせ、業界の中で特異なポジションを占めようとする戦略

です。

差別化に成功するということは、差別化した製品やサービスが顧客に受け入れられたことと、業界で繰り広げられるし烈な価格競争から脱する機会を得たことを意味します。

差別化のための方法には、製品設計やブランドイメージの差別化、テクノロジーの差別化、製品特徴の差別化、顧客サービスの差別化などがあります。いずれも、低コストを第一目標とするのではなく、顧客機能の向上を目指すことが重要となります。

もし、企業が差別化に成功したなら、コストリーダーシップ戦略と同様に5つの競争要因に対抗する手段を得ることができます。(図3)

差別化戦略の5つの競争要因への対抗(図2「差別化戦略の5つの競争要因への対抗」筆者作成)

差別化戦略により得られる強いブランドイメージは、新規参入者にとって大きな参入障壁として働きます。また、競争業者にとっても、顧客を奪うための高いハードルとなり、企業の競争力を高めます。

代替品に対しても、価格優位主体のほかの同業者よりも有利の立場に立てることになりますし、ほかの企業から同じものを購入できないので、買い手の交渉力は弱まります。

さらに、差別化により高収益は供給業者の圧力を回避するための資源として流用でき、企業の体力を高めることができます。

2-3:集中戦略

集中戦略とは、

特定の地域や購入者などに経営資源を集中し、特定のセグメントで、コストリーダーシップ戦略か差別化戦略、または集中戦略に限りその双方を実現する戦略

です。

集中戦略では、とにかくターゲットを限定することが重要です。なぜなら、狭いターゲットに絞ることで、より効果的で、効率の良い戦いをできるからです。

経営資源を集中させ、特定のターゲットのニーズを満たすことで企業は狭い範囲において、コストリーダーシップと差別化を同時に達成することもできます。

集中戦略に成功すれば、企業は5つの競争要因に対して、コストリーダーシップ戦略か差別化戦略と同様のメリット、または双方のメリットを得ることが出来ます。その結果、集中戦略をとる企業の競争力は高まり、高い収益性を実現できます。

ただし、集中戦略ではターゲットとなる顧客の絶対数が限られるため、売上高と収益性のバランスが求められます。もし収益性がずば抜けていたとしても、顧客があまりにも少なければ事業として成立しない可能性があるからです。

2-4:3つの戦略のそれぞれのリスク

企業は必ずいずれかの戦略を採用しなければならないと述べましたが、すべての戦略には異なった特徴によるメリットもあれば、対峙すべきリスクも異なります。戦略を採用する者は業界の変化をよく見極めながら、個々の戦略に伴うリスクをあらかじめ理解しなければなりません。

ポーターによれば、それぞれの戦略のリスクには次のようなことがあげられます。(同書, 68-71頁)

コストリーダーシップ戦略

  • コストリーダーの立場を維持するためには、最新設備に投資するなどの高い負荷がかかる
  • テクノロジーの変化により、製品やサービスのニーズが変質し、これまでの投資の価値が失われる可能性がある
  • 競争業者による模倣のリスクがあり、低価格による優位性を失う可能性がある
  • コスト削減ばかりに目を奪われ、顧客志向のマーケティングが疎かになる可能性がある

差別化戦略

  • 低コスト企業とのコストの差が広まりすぎると、顧客離れの要因となりうる
  • 差別化要因自体が顧客ニーズに合わなくなり、顧客を一気に失う可能性がある
  • 他企業に模倣され、差別化が顧客に認識されなくなる

集中戦略

  • 生産量の増加によるコスト削減が難しく、同業者とのコスト差が広がる可能性がある
  • 絞り込んだターゲットのニーズが陳腐化し、全体市場のニーズと同質になってしまう可能性がある
  • 競争企業が限定されたターゲットに対して、さらに効果的なマーケティングをおこない、顧客が奪われる可能性がある

このようなリスクをあらかじめ理解し適切に対処することができれば、企業は業界において高い競争力を維持する可能性が高まります。企業に対峙するリスクを見逃さないためにも、経営者は5つの競争要因も見直し続けなければなりません。

2章のまとめ
  • ポーターの基本戦略では、企業が取るべき戦略を「競争優位性」と「ターゲット」のふたつの軸で分析する
  • 分析に基づき、「コストリーダーシップ戦略」「差別化戦略」「集中戦略」という3つの戦略が立てられる
  • すべての戦略には異なった特徴によるメリットもあれば、対峙すべきリスクも異なることを理解しなければならない


3章:ポーターの競争戦略の事例

3章では、ポーターの3つの競争戦略がどう生かされているかを「ホテル業界」を事例として紹介します。(図4)

ホテル業界の基本戦略(図4「ホテル業界の競争戦略」著者作成)

宿泊施設として定義されるホテル業界ですが、その特徴はそれぞれの企業が採用する戦略によって大きく異なります。以下のはその特徴をまとめたものです。

コストリーダーシップ戦略をとる企業

  • 「ドーミーイン」などを手掛ける共立メンテナンス、「アパホテル」を手掛けるアパホテルなどある
  • どちらも宿泊特化型のビジネスホテルを中心とし、1泊5000~10000円程度の割安なプランを提供している
  • 食事サービスやルームサービスも最低限のみ提供し、宿泊のニーズのみに特化したホテルを運営している

差別化戦略をとる企業

  • 「グランドプリンスホテル赤坂」などを手掛けるプリンスホテルがある
  • プリンスホテルは1泊8000円~12000円程度とビジネスホテルに比べると高価格なプランを提供しているが、高い格式と充実したサービスには根強い支持がある
  • また、ウェディングやパーティーといった需要も多くあるホテルである

集中戦略をとる企業

  • 「星のや軽井沢」などを手掛ける星野リゾートがある
  • 星野リゾートは1泊15000円~20000円と非常に高価格なプランだが、ほかでは味わえない施設やサービスを提供することで値段をあまり気にしないコアなファンを全国から獲得いている

このようにホテル業界ひとつをとってみても、企業がターゲットとする顧客層は大きく異なっており、まったく違う戦略を採用していることがわかります。

また、それぞれの企業はその個性を磨くことによって、収益性を高めており、2つ以上の戦略を採用することはないことがわかります。もし低価格を武器にする宿泊特化型のホテルが、サービスに重きを置いたプランを提供しても、顧客から支持を得るのは難しいでしょう。

競争の激しいホテル業界において、競争環境をしっかりと分析し、顧客ニーズの変化に合わせて、自社の戦略を適切に定めなければ生き残っていくことはできません。この法則は、ポーターが競争戦略についての理論を発表した当時も、現代も変わっていないといえるかもしれません。

4章:ポーターの競争戦略が学べるおすすめ本

ポーターが競争戦略について理解を深めることはできたでしょうか?

この記事で紹介した内容はあくまでもきっかけでしかありません。そのため、以下の書物を参考にして、あなたの学びをより深めていってください。

おすすめ本

オススメ度★★★ 中野明 『図解ポーターの競争戦略がよくわかる本』(秀和システム)

ポーターの競争戦略がわかりやすく図解されており、はじめてポーターに触れる方におすすめの一冊です。

オススメ度★★★ M.E.ポーター『競争の戦略』(ダイヤモンド社)

ポーターの原論の日本語訳です。30年以上前の書籍であるため古い例が多く読むのは大変ですが、ポーターの競争戦略がしっかりと理解できます。中・上級者向けの一冊です。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • ポーターの競争戦略(Porter’s Competitive Strategy)とは、アメリカの経営学者マイケル・ポーターが提唱した最も有名な経営戦略理論である
  • ポーターの理論は、学術的な交流の少なかった経済学の論点を経営学に応用し、独自に理論を発展させたものである
  • ポーターは「コストリーダーシップ戦略」「差別化戦略」「集中戦略」という3つの戦略を提示した

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