経営学

【人間関係論とは】ホーソン実験の内容から批判までわかりやすく解説

人間関係論とは

人間関係論とは、メイヨーとレスリスバーガーによって提唱された「経営が行われる人間協働における“人間性”を強調する人間関係の構築」1経営学史学会監修、吉原正彦編著(2013)『経営学史叢書 メイヨー=レスリスバーガー 人間関係論』文真堂 まえがきにてに関する理論です。

人間関係論の形成にあたっては、経営学史においてもっとも有名な実験のひとつであるホーソン実験が大きく関わっており、人間関係論は経営学の教科書に必ずと言っていいほど取り上げられている理論です。

この記事では、

  • 人間関係論の特徴
  • 人間関係論とホーソン実験
  • 人間関係論への批判

などについて解説します。

好きな箇所から読み進めてください。

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1章:人間関係論とは

まず、1章では人間関係論を概説します。2章以降では人間関係論を深掘りしますので、用途に沿って読み進めてください。

このサイトでは複数の文献を参照して、記事を執筆しています。参照・引用箇所は注2ここに参照情報を入れますを入れていますので、クリックして参考にしてください。

1-1:人間関係論の特徴

人間関係論の特徴を端的に述べるのであれば、「テイラーの科学的管理法が看過していた人間性を強調し、それを示す概念として非公式組織を中心とした人間関係の解明」3経営学史学会監修、吉原正彦編著(2013)『経営学史叢書 メイヨー=レスリスバーガー 人間関係論』文真堂 まえがきにてを目指した理論であると言えます。

→テイラーの科学的管理法についてはこちら

人間関係論誕生の地であり、ホーソン実験の舞台ともなった20世紀前半のアメリカでは、フレデリック・W・テイラーが提唱した企業活動における特に労務管理を科学的に管理しようとする「科学的管理法」が大きな注目を集めていました。

  • アメリカの大手自動車メーカー、フォード・モーターの創業者であるヘンリーフォードによって「フォード式生産方式」が考案されるなど、大量生産大量消費の社会が形成される礎が数多く築かれた
  • こうした発見・発明のおかげで人々の生活は物的に豊かになり、かつて富裕者層しか手に入れられなかったさまざまな商品を幅広い人々が手に入れられるようになった

一方で、科学的管理法やフォード生産方式は、経営者が労働者をまるで意思を持たない工場の機械のごとく扱っているように見えるものででした。

そのため、より高い生産性を実現したい経営者と自身の企業における待遇や権利を守りたい労働者の間には頻繁に労働争議が発生し、大きな社会問題となっていました。

そんな社会情勢に疑問をもち、科学的管理法に代わる新たな管理理論の構築が必要性を唱えたのがイギリス出身の哲学者で、心理学者でもあったエルトン・メイヨーでした。

メイヨーとは

  • のちに「人間関係論の父」とも呼ばれるメイヨーは、創設間もないハーバード大学経営大学院(現ハーバード・ビジネス・スクール)で教授を務めていた
  • 産業界で起きている労働問題を解決すべく、組織の人間行動、人間関係を重視した理論の構築を目指した

そして、1924年にアメリカの電話電信会社ウェスタン・エレクトロニック会社から労働環境の整備に関する調査の依頼を受け、後の歴史で語り継がれることになる「ホーソン実験(Hawthorne experiments)」を実施します。



1-2:ホーソン実験とは

ホーソン実験とは、1924年から1932年の8年間にわたってアメリカの電話電信会社ウェスタン・エレクトロニック会社のホーソン工場を舞台に、労働環境が生産能率にどのような影響を与えるのかを調べた大規模な調査です。

ホーソン実験はもともと、ウェスタン・エレクトロニック社がアメリカの他の研究機関の調査依頼に応える形ではじまった実験でした。

しかし、のちにその研究の有効性を高めるべくメイヨーと、同じくハーバード大学経営大学院のメンバーであったレスリスバーガーらが招聘され、産学共同の大規模なプロジェクトへと変化します。

ホーソン実験では、次の図の通り6つの実験がおこなわれました。

ホーソン実験の実験内容図1 ホーソン実験の実験内容4経営学史学会監修、吉原正彦編著(2013)『経営学史叢書 メイヨー=レスリスバーガー 人間関係論』文真堂 46頁

1-2-1:①照明実験

照明実験では、

作業中の照明の明るさの変化が作業効率に変化をもたらすかというもの

でした。

実験自体は、労働者の力量やその他の作業環境に違いができないように配慮し、照明環境だけの影響を抽出しなければならないという難しいものでした。

さまざまな実証実験を経て、1927年に照明度は作業量に影響に与えないという結論が導かれ、最初の照明実験は終了します。

1-2-2:②継電器組み立て作業テスト室

継電器組み立て作業テスト室では、

疲労と能率がどのような関係になっているのかを把握すべく作業時間や休憩時間に関する実験

がおこなわれました。

この実験でも、休憩時間を増やすことや、作業時間を短くすることが必ずしも労働者の能率を向上させないという結論が導かれました。

メイヨーやレスリスバーガーらはこの実験を機に、労働者は直接的な作業環境とは関係なく、作業遂行とは直接関係のない部分から作業量に関わる何かしらの影響を受けているのではないという仮説を持つようになります。

1-2-3:③第二継電器作業集団、④雲母剥ぎ作業テスト室

第二継電器作業集団と雲母剥ぎ作業テスト室での実験は、

②の補足的な実験として賃金制度や超過労働時間における割増賃金が生産能率にどのような影響を与えるか

が試行されました。

この実験では、賃金制度の変更や割増賃金の支給には確かに生産能率を引き上げる効果があるが、それはあくまで一時的な効果に過ぎず、時間の経過とともに生産能率は低下していくという結論が得られました。

1-2-4:⑤面接計画

面接計画では、

ウェスタン・エレクトロニック社に所属する一般従業員とその監督者を対象に、長期間にわたって繰り返し面接をおこない、その面接結果がデータ分析されたもの

です。

そして、この実験で被験者から得られたコメントの多くは、実際の作業条件や労働条件の状態そのものが示されているというよりは、それぞれの事柄についての被験者の感情が示されたものでした。

そのため、面接計画はのちの人間関係論の理論の柱となる個人的感情や企業内の非公式集団の影響の大きさを裏付けるテストとなりました。

1-2-5:⑥バンク配線作業観察室

バンク配線作業観察室での実験は、

観察者は被験者に対してなにも指示することなく、利害関係のない部外者として作業風景をただ観察することで、作業中における労働者の極めて自然な行動を明らかにする試み

でした。

この実験では、労働者のリーダー格である班長らを中心として、組織的怠業5テイラーの科学的管理法1-3:科学的管理法の誕生までを参照や集団的な作業量制限行為6班長やベテラン作業員らが若手作業員らに対して、作業量の制限を促すような行為が確認され、上司の指示なくして作業グループが自発的に1日の作業量をコントロールしていた事実が確認されました。

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1-3:人間関係論の理論

ホーソン工場での約8年にわたる実験を経て、メイヨーやレスリスバーガーらは人間関係論の萌芽とも言える次の2つの仮説を提示しました。

1-3-1:仮説1

物的情況の変化が生産能率にもたらす影響は小さく、むしろ生産能率に大きな影響をもたらすのは精神的態度の変化である

継電器組み立て作業テスト室での実験(1-2の②のテスト)では、作業時間や休憩時間に関するさまざまな実験が約5年近くにわたり、合計24もの期間に分けておこなわれました。

実験概要

  • 通常の継電器組み立て作業とは区別される形でおこなわれたため、選ばれた実験メンバーたちには作業のために別室を用意され、賃金制度も通常の継電器組み立て作業とは異なり、実験メンバーだけを一単位とする集団出来高制が採用された
  • 実験グループの作業では、一定の期間もって作業時間や休憩時間の変更が試みられ、疲労と能率がどのような関係になっているのかについての様々な実験がおこなた
  • 最終的には、休憩時間を増やすことや、作業時間を短くすることが必ずしも労働者の能率を向上させないというものであった

しかし、これらの実験の過程において、メイヨーとレスリスバーガーは、すべての労働条件が同一であった第3期に対して、第12期の作業量が大きく向上していた事実に気がつきます。

そして、その要因が実験グループに形成された独自の社会状況にあると考え、以下のような仮説を導きました7同上 53頁

人間は組織のなかでも人間的社会的存在として扱われ、作業方法等で相談を受けたりすると、仕事にやりがいを感じ、それがたとえ作業条件が悪い場合であったとして、作業遂行に努める

この仮説はのちに「ホーソン効果(Hawthorne effect)」と呼ばれ、人間関係の密度が生産能率にプラスの影響を与える効果を持つと考えられるようになります。

1-3-2:仮説2

非公式集団の存在が生産能率に大きな影響を与えている

バンク配線作業観察室での実験(1-2の⑥のテスト)では、14名の実験メンバーを対象として、普段彼らがどのような行動をしているかが観察されました。

そこでは、多くの人間関係や活動のパターンが見出され、それらをさらに観察してみると、この14名の公的な職場集団の中に2つの非公式集団があることがわかりました。

これらの集団は、明確な規範やルールが存在するわけでも無いなかで、上司に対応する行動のあり方や生産高に関する独自の意思決定をおこなっており、公式の作業命令とは異なる行動をとっていました。

たとえば、集団の中で仕事に精を出しすぎているメンバーがいれば、そのメンバーを「がっついている」と非難し、皆が同じような生産量を示すように仕向けていました。

このように非公式集団は、公式に規定された職務設計とは異なるロジックで動いており、なおかつ管理者の意思とは関係なく自然発生的に生まれるため、この非公式集団について今後更なる研究が必要であるとメイヨーとレスリスバーガーは主張しました。

1章のまとめ
  • 人間関係論とは、メイヨーとレスリスバーガーによって提唱された「経営が行われる人間協働における“人間性”を強調する人間関係の構築」8経営学史学会監修、吉原正彦編著(2013)『経営学史叢書 メイヨー=レスリスバーガー 人間関係論』文真堂 まえがきにてに関する理論である
  • ホーソン実験とは、1924年から1932年の8年間にわたってアメリカの電話電信会社ウェスタン・エレクトロニック会社のホーソン工場を舞台に、労働環境が生産能率にどのような影響を与えるのかを調べた大規模な調査である

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2章:人間関係論への批判とその後

さて、2章では人間関係論に対する批判と人間関係論のその後の発展について考察します。

2-1:人間関係論への批判

人間関係が生産能率に大きな影響を及ぼすと主張したメイヨーとレスリスバーガーの人間関係論は画期的な理論として経営管理に新たな論調を生みましたが、人間関係論の根拠ともなったホーソン実験、そして人間関係論自体に対しても次のような批判が存在します。

①ホーソン実験における生産能率の向上は、管理的規律措置や作業時間の変更、大恐慌といった要因に生まれた効果である

この批判を展開したのが、フランケとカウルです。彼らはホーソン実験を統計学的に分析しました。

特に、継電器組み立て作業テスト室での実験での生産能率の向上は、あくまで管理的規律措置や作業時間の変更、大恐慌といった人間的要因以外の要因によって実現しているのであり、ゆえにホーソン効果自体が論証や実証にかけているという批判をおこなっています。

②ホーソン実験における生産能率の向上は、時間的経過による学習・習熟効果によって生まれた効果である

この批判を展開したのが、ピッチャーです。彼はホーソン実験でみられた生産能率の向上は、その多くが労働者の時間的経過による作業の学習や習熟効果によって生まれたものであると主張し、人間関係を生産能率向上の要因としたホーソン効果を否定しています。



2-2:科学的管理法との関係

人間関係論の登場は、20世紀初頭にアメリカの時代背景に鑑みると、実にタイムリーであったために、一種の流行現象とも言える理論として人々に受け入れられました。

  • 「科学的管理の父」と呼ばれるテイラーが科学的管理法を発明し、ヘンリーフォードはこの科学的管理法を「フォード生産方式」に取り入れ、大きな企業成長を実現した
  • 科学的管理法は単なる労務管理の原理原則を超えて、ひとつの確立した経営思想としてアメリカ国内を席巻した

しかし科学的管理法は労働者にとって、労働者らをあたかも感情を持たない機械のように扱うものに見えたため、その在り方についてさまざまな批判を受けることになります。

そこで人間の感情的・社会的側面が生産能率にプラスの影響を与えるという主張をもつメイヨーとレスリスバーガーの人間関係論が登場したことで、人間関係論は科学的管理法のアンチテーゼとして脚光を浴びることになります。

後年になってホーソン実験の実証性や有効性についてはさまざまな批判がありましたが、世論が求めていたタイミングで労働者配慮の主張を提示したという点については、人間関係論は時代を捉えた重要な理論であったと考えることができます。

また、人間関係論は、1950年以降になると行動科学や組織行動といった学問領域として語られることが増え、その後の経営管理に関する主要な論点となるリーダーシップ論やモチベーション理論などの基礎理論の一つとして昇華していくことになります。

※より詳しくはこちらの記事→「組織行動とは」「リーダーシップ論とは」「モチベーション理論とは

辻村は人間関係論について以下のように評価しており、人間関係論が今日の経営学の大きな指針の一つになってること指摘しています9吉原正彦編著(2013)『経営学史叢書 メイヨー=レスリスバーガー 人間関係論』文真堂 181頁

組織の関心がフォーマルな側面からインフォーマルな側面へとシフトし、それによって経営学が企業経済論としてのミクロ経済学の方向を辿ることなく独自の方向を模索するモメントとなったことは、経営学が紀元前・後と線引きできるほどに大きい

2章のまとめ
  • 人間関係論の根拠ともなったホーソン実験、そして人間関係論自体に対して批判があった
  • 人間関係論は今日の経営学の大きな指針の一つになってる

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3章:人間関係論について学べるおすすめ本

人間関係論に関して理解を深めることはできましたか?

以下では、人間関係論をより深く知ろうとする際に参考となる文献をいくつか紹介します。

おすすめ本

吉原正彦『経営学史叢書 メイヨー=レスリスバーガー 人間関係論』(文真堂)

人間関係論の提唱者でもあるメイヨーとレスリスバーガーに焦点を当てた経営学史の書籍です。人間関係論に関する解説だけでなく、なぜ人間関係論が生まれたのか、そしてどう発展していたのかまでが詳細に書かれています。

大橋昭一、竹林 浩志『ホーソン実験の研究』(同文館出版)

ホーソン実験の実体や詳細について書かれた専門書です。ホーソン実験について詳しい中身を知りたい方にはおすすめの著書です。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • 人間関係論とは、メイヨーとレスリスバーガーによって提唱された「経営が行われる人間協働における“人間性”を強調する人間関係の構築」10経営学史学会監修、吉原正彦編著(2013)『経営学史叢書 メイヨー=レスリスバーガー 人間関係論』文真堂 まえがきにてに関する理論である
  • ホーソン実験とは、1924年から1932年の8年間にわたってアメリカの電話電信会社ウェスタン・エレクトロニック会社のホーソン工場を舞台に、労働環境が生産能率にどのような影響を与えるのかを調べた大規模な調査である
  • 人間関係論は今日の経営学の大きな指針の一つになってる

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