国際問題

【国際協力銀行とは】その特徴・事例・成立の歴史からわかりやすく解説

国際協力銀行(Japan Bank for International Cooperation)とは、日本および国際経済社会の健全な発展に寄与することを目的に、国内外において輸出入や投資、事業開発等の金融業務を行う政府金融機関です。

日本はこれまで、国際社会に対して政府開発援助(ODA)を中心とした、経済協力や技術協力を行ってきました。その担い手の一つに、国際協力銀行という組織があります。

JBICを知ることは、日本がこれまで「金融」を通じて世界経済にどのように貢献しているかを知ることにつながり、さらには経済協力のさまざまな在り方を理解することができます。

この記事では、

  • JBICの特徴・役割
  • JBICの具体的な業務
  • JBICの歴史

について詳しく解説します。

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1章:国際協力銀行とは

1章では、国際協力銀行(JBIC)がどのような業務を行っている組織で、どのような目的・役割を果たしているのかを解説します。

このサイトでは複数の文献を参照して、記事を執筆しています。参照・引用箇所は注1ここに参照情報を入れますを入れていますので、クリックして参考にしてください。

1-1:国際協力銀行の特徴

JBICは、株式会社国際協力銀行法という法律に基づいて2012年に設立された特殊会社です。それは政府が100%出資している財務省所管の会社という意味で特殊です。

特殊会社とは

  • 特殊会社とは、国にとって必要な公共性の高い事業について、行政機関が運営するよりも会社という形態をとったほうが適切だと判断されて、株式会社として設立される会社である
  • JBICの他にも、日本電信電話(NTT)や日本郵政、日本たばこ産業(JT)なども、特殊会社に含まれる

そして、JBIC設立の目的は、「日本および国際経済社会の健全な発展に寄与すること」2JBICのHPより引用とされています。また、JBICは、一般の金融機関が行う金融を補完しつつ、以下の分野の業務に対して支援することが期待されています。

  1. 日本にとって重要な資源の海外における開発および取得の促進
  2. 日本の産業の国際競争力の維持及び向上
  3. 地球温暖化の防止等の地球環境の保全を目的とする海外における事業の促進
  4. 国際金融秩序の混乱の防止等またはその被害への対処

①の取り組みとして、エネルギー・資源の確保を行なっています。石油や天然ガなどのエネルギー資源や鉄や銅、レアメタル等の鉱物資源などの安定的な確保のために、日本企業の海外における資源権益や資源開発、輸入等の支援を行なっています。

②については、日本企業による機械・設備や船舶の輸出や海外でのインフラ事業、海外市場の成長を目的として行われる日本企業の海外での製造・販売事業などへの支援を行い、日本産業の国際競争力の維持・向上にも貢献しています。

③では、海外における再生可能エネルギー発電所の整備や省エネ設備の導入の他、国際機関や開発途上国の現地金融機関と連携しながら地球環境保全効果の高い案件に対する支援も行なっています。

④については、2008年に世界的な金融危機が発生した際に、開発途上国向けの輸出や事業を行う日本企業を支援するための貸付を行い、国際的な金融システムの安定化に貢献しました。



1-2:国際協力銀行の金融業務

JBICの金融業務は大きく分けて、次の6つに分類できます。

  1. 輸出金融
  2. 輸入金融
  3. 投資金融
  4. 事業開発等金融
  5. 出資
  6. 保証

それぞれ解説していきます。

①の輸出金融とは、日本企業や日系現地法人等がもつ機械・設備や技術等を輸入したいと考えている外国の輸入者、またはそれに融資する外国の金融機関に対して、JBICが融資を行う業務です。

②の輸入金融とは、1とは反対に、外国の資源や重要物資の輸入を考えている日本の輸入企業に対してJBICが融資を行う業務です。この際、外国の輸出者に対しても融資を行う場合があります。

③の投資金融とは、日本企業の海外投資事業に対してJBICが行う融資で、日本企業(投資家)に対する融資、日経現地法人またはこれに貸付・出資を行う外国の銀行・政府等に融資するものがあります。

④の事業開発等金融とは、外国政府や外国の金融機関、法人に対してJBICが融資を行い、当該国の国際収支の均衡や通貨の安定を図ることを目的とした業務です。

⑤の出資とは、海外で事業を行う日本企業が出資している外国の企業やファンド、事業そのものに対して、JBICが補助的に出資を行う業務です。

⑥の保証とは、民間金融機関が行う融資や開発途上国政府や現地日系企業などが発行する公社債に対してJBICが保証して支援することで、事業等を円滑にする取り組みです。

なお、過去のJBICの実績図1の通りです。

JBICの業務実績図1 JBICの業務実績3JBIC「国際協力銀行の役割と機能」8頁

2018年度は全体の実績金額が1兆7,171億円で、その内の69%が投資金融として実施されています。次いで保証金融が約20%、輸出金融が6%となっています。

これらの業務は、国内拠点である東京本店と大阪支店の他、海外拠点として世界17の国・地域に海外駐在員事務所によって行われています(2020年3月現在)。

このようにさまざまな金融業務の形態を通じて、国際社会の経済活動を支援することこそ、JBICの役割であると言えるでしょう。

日本が戦後に行った国際協力に関する、当事者による語りをもとにした研究に下記のものがあります。どのような実態があったのか、どういう政治が行われたのか詳しく知るのにおすすめです。

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特にアジアに対する国際協力は、アジアの急速な成長・工業化と共に理解する必要があります。関連する研究として下記のものも勉強になります。

国際協力銀行について詳しく知るには下記の本もおすすめです。

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1-3:国際協力銀行で現在行われている具体的事例

次に、JBICが現在行っている事業についての具体的な事例を紹介します。

1-3-1:アブダビ海上油田開発事業

日本政府が2018年に閣議決定した「エネルギー基本計画」において、石油や天然ガスの自主開発比率を2030年までに40%に引き上げる目標を掲げたことにより、JBICは近年、日本のエネルギー事業に対して支援を行っています。

その中でも、アラブ首長国連邦のアブダビ首長国におけるアブダビ海上油田開発事業は、日本の資源戦略上、極めて重要なものです。

この事業においてJBICは、国際石油開発帝石(株)(INPEX)、またその子会社であるジャパン石油開発(株)への融資を行い、日本企業による海上油田鉱区権益の取得・延長を支援しました。

1-3-2:英国大型洋上風力発電事業

英国政府は、2050年までに温室効果ガス純排出量をゼロにすることを2019年に法律で定めました。これの実現に対して大きな貢献が期待されているのが、再生可能エネルギープロジェクトとして最大規模であるMoray East風力発電プロジェクトです。

JBICは、三菱商事(株)や関西電力(株)等が出資する英国法人Moray Offshore Windfarm (East) Limitedとの間で、本事業に対する貸付契約を締結しました。

本事業は、英国北部スコットランドMoray沖合において、洋上風力発電所を建設・所有・運営するものであり、既存発電所の代替として低炭素社会の実現に寄与するものと考えられています。

1-3-3:中堅・中小企業支援事業

JBICは、海外事業を展開しようとする中小企業に対しても支援を行っています。

アジアを中心とした新興国の経済成長に伴い、現地生産を行う日系企業や新興国市場でのビジネス拡大を目指す中堅・中小企業が増加しており、そのような企業による資金ニーズが多様化しています。

JBICは、こうしたニーズに応えるために、日本の民間金融機関や現地の金融機関との連携を強化し、融資を行なっています。具体的な施策としては、数千万円規模の少額融資や米ドル・ユーロ建、現地通貨での融資、海外駐在員事務所の活用などを通じて支援に取り組んでいます。

例を挙げると、自動車部品の製造・販売事業を手掛ける静岡県の中小企業が、メキシコでの事業拡大を目指す中で、JBICが静岡県内の地方銀行経由で融資を行なった事例があります。

1章のまとめ
  • 国際協力銀行とは、日本および国際経済社会の健全な発展に寄与することを目的に、国内外において輸出入や投資、事業開発等の金融業務を行う政府金融機関である
  • 特殊会社とは、国にとって必要な公共性の高い事業について、行政機関が運営するよりも会社という形態をとったほうが適切だと判断されて、株式会社として設立される会社である

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2章:国際協力銀行の歴史

さて、2章では、JBICが現在の体制になるまでの沿革について解説します。国際協力銀行は、これまでに統合や分離を繰り返し、現在の株式会社国際協力銀行となりました。

JBICの沿革図2 JBICの沿革4JBIC「国際協力銀行の役割と機能」1頁

上の図を見ると、現JBICの体制に至るまでの道のりがいかに紆余曲折だったかがわかります。これらの背景について、以下で詳しく解説していきます。

2-1:国際協力銀行が設立されるまで

JBICの前身となる金融機関は、1950年に発足した日本輸出入銀行(1952年に日本輸出銀行から改称、以下、輸銀)です。

輸銀の主な業務は、輸出・輸入金融業務や投資金融です。その他に、円借款をはじめとした開発途上国への開発援助や経済援助等の政府開発援助(ODA)に関する業務も行っていました。

当時の日本社会

  • 戦後からの経済復興を目指しており、円借款などのODAを通じた輸出促進も狙いの一つとして考えられていた
  • そのため、円借款の多くにはひも付き(タイド)と呼ばれる使用使途の制限があり、日本からの資機材や労働力の調達が行われるようにしていた

しかし、国際社会におけるODAの定義は、「援助資金のうち、贈与要素が25%以上あること」とされていました。そのため、金利が高いく制限がある日本のいわゆる「ひも付き援助」は国際社会からの批判の的になっていました。

さらには、ひも付き援助と一般的なODAにあたる援助が同じ組織によって行われていることも、ODAを国益のために使っているという疑念を持たせる要因の一つでもありました。

そこで1970年代に、同じく開発途上国の経済開発のための資金供給を行っていた政府機関である海外経済協力基金(以下、基金とする)と役割を分担することにしました。

つまり、国際社会におけるODAにあたる業務を基金が引き継ぎ、それ以外の金融業務を輸銀が担当することで分業化したのです。

さらには、その後日本が高度経済成長期に突入したこともあり、ひも付き援助自体の割合は減少していき、1980年代にはほぼ全てがひも付きではない援助(アン・タイド)になりました5今津武(2009)「日本の対外政策と政府開発援助(ODA)」『東亜経済研究』第67巻,第2号

その後、日本のODAは次々と増大していき、1991年には日本がODA供与国の中で世界第1位となります。

※ODAに関して詳しくは以下の記事を参照ください。→【ODA(政府開発援助)とは】意味・歴史・問題点をわかりやすく解説

しかし次第に、貸付を受けた一部の国で返済が滞り、日本にとって赤字の状態が続くようになっていきます。この状況を変えるための行政改革として、1999年、輸銀と基金が統合され、国際協力銀行が誕生することになります。



2-2:現在の(株)国際協力銀行の体制になるまで

1999年、統合により誕生した国際協力銀行は、融資承諾合計額1兆7,580億円(1997年)という巨大銀行になりました6竹原憲雄(2000)「海外経済協力基金と借款体制-国際協力銀行への軌跡-」『立教経済学研究』第53巻,第3号,25頁。これは当時の世界銀行の1.7倍の規模でした。

しかし、この統合には当時から多くの議論が起こりました7竹原憲雄(2000)「海外経済協力基金と借款体制-国際協力銀行への軌跡-」『立教経済学研究』第53巻,第3号,26頁

  • そもそも、ODAと非ODAが一緒になっていたものを整理するために輸銀と基金で業務が分担されていたものを、再び統合することの妥当性については、多くの議論が起こった
  • 統合のきっかけの一つであった赤字問題についても、統合によって本当にコスト削減効果が期待できるのかについては疑問が残っった
  • 統合前から、輸銀についてはその運営の不透明さが問題視されており、その悪しき伝統が継承されるのではないかという懸念もあった

そのように、さまざまな課題が残るなか、国際協力銀行はスタートしましたが、国際的なODA削減の風潮に習うように、日本も次第にODAを縮小していきます。そして2008年、日本国内の政策金融改革の流れを受け、国際協力銀行は解散することが決定されました。

かつての輸銀が行ってきた国際金融等の業務については、新たに財務省所管の特殊会社として設立された日本政策金融国庫に移行、かつて基金が行なってきた海外経済協力業務は、独立行政法人国際協力機構(JICA)が担うことになりました。

これによって、資金協力だけでなく、技術協力も含めたODAのほとんどが新JICAによって一元化されることになったわけです。

一方で、旧・輸銀の業務が引き継がれた日本政策金融国庫は、国際金融業務だけではなく、国内における農林水産事業や中小企業を支援する事業も行なっており、一つの組織の中で国内向けと海外向けの業務が混在している状態でした。

この状態を解消すべく、2012年4月、海外金融業務のみを扱う株式会社国際協力銀行へと再び分離・独立するのでした。このように、JBICは何度も統合・分離を繰り返し、現在の体制にたどり着きました。

2章のまとめ
  • JBICの前身となる金融機関は、1950年に発足した日本輸出入銀行である
  • JBICは何度も統合・分離を繰り返し、現在の体制にたどり着いた

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3章:国際協力銀行に関するおすすめ本

国際協力銀行について、理解できましたか?さらに深く知りたいという方は、以下のような本をご覧ください。

おすすめ書籍

草野厚『解体―国際協力銀行の政治学』(東洋経済新報社)

現在の株式会社国際協力銀行の体制になるまでの過程において、どのような背景があったのかをより詳しく知りたい方におすすめの一冊です。

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山田順一『新興国のインフラを切り拓く 戦略的ODAの活用』(廣済堂出版)

海外経済協力基金でキャリアをスタートし、JBIC統合を経験し、現在はJICAの副理事長を務める筆者が語るODAとインフラ開発の在り方について知りたい方におすすめの一冊です。

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鷲見一夫『ODA援助の現実』(岩波新書)

分離や統合を繰り返すきっかけとなったODA援助の拡大について、その当時の現状や課題を指摘している一冊です。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • 国際協力銀行とは、日本および国際経済社会の健全な発展に寄与することを目的に、国内外において輸出入や投資、事業開発等の金融業務を行う政府金融機関である
  • 国際協力銀行の前身となる金融機関は、1950年に発足した日本輸出入銀行である
  • 国際協力銀行は何度も統合・分離を繰り返し、現在の体制にたどり着いた

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