心理学

【集団思考とは】具体例・ジャニスの研究・対策をわかりやすく解説

集団思考とは
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集団思考(groupthink)とは、集団で意思決定をする場合において、個人のそれよりも非合理的な意思決定が容認されることを意味します。しばしば、「集団浅慮」「グループシンク」と呼ばれます。

集団思考は、プロフェッショナルが集まる専門家委員会から社内の小さな班会議に至るまで、集団の大小を問わず発生するということがわかっています。

そのため、日常的な現象として集団思考を捉えつつ、集団思考にはまらない対応をする必要があります。

この記事では、

  • 集団思考の意味と例
  • 集団思考とジャニスの心理学的実験
  • 集団思考の対策

をそれぞれ解説していきます。

あなたの関心にそって読み進めてください。

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1章:集団思考とは

1章では、集団思考を「意味」「例」から概説します。

2章ではジャニスの心理学的実験を、3章では集団思考の対策を解説しますので、好きな箇所から読んでください。

1-1: 集団思考の意味

まず、冒頭の確認となりますが、集団思考とは、

集団で意思決定をする場合において、個人のそれよりも非合理的な意思決定が容認されること

です。

簡単にいうと、場の空気に流されて誤った選択をしてしまうことといえます。

1-1-1: 集団とは

集団思考の詳しい解説の前に、心理学における「集団」についての議論を紹介します。

端的にいえば、心理学では以下のような人間社会に関する基礎的な考えがあります。

  • 人間は決して1人で生きることができず、何らかの集団に所属して相互に関わり合いながら生きるものである
  • しかし、人間が所属する「集団」には、集団の規模(2人、10人、不特定多数など)や集団のもつ性格(共通の目的を持っている、ある行動を共にするなど)など、多様な要素が関わっている

社会心理学では長年大小さまざまな集団を扱った研究がされてきましたが、「集団」に明確な定義を与えることに成功していません。

そこで、本記事における「集団」は、集団構成員が対面的・直接的な関わりをもつ「小集団」という暫定的な定義で捉えてください。

1-1-2: 集団思考にみられる症状

さて、社会心理学者の原田純治は『社会心理学ー対人行動の理解』(ブレーン出版)で、集団思考に陥った集団には以下の3つの症状が表れると示しています。

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  1. 勢力・道徳性の過大評価・・・絶対に失敗しないという過剰な自信、自分たちは正しいことを言っている、という思い込みのこと
  2. 精神的閉鎖性・・・自分たちにとって不利な情報を無視する、自分たちと相対する考え方が「悪」であると決めつけること
  3. 意見の斉一化への圧力・・・異議を唱える集団構成員に圧力を加える、疑問や疑念を口にするのを控えること

以上のような3つの症状が生じた集団は「表面上の満場一致」を根拠に、「自分たちは正しいという見せかけの自信が生じる」とされています。(同上, 232頁)



1-2: 集団思考の具体例

集団思考の例として、1986年に起こった「チャレンジャー号爆発事故」が挙げられます。

チャレンジャー号爆発事故とは、

  • 1986年1月28日にアメリカで打ち上げられたスペースシャトル・チャレンジャー号が打ち上げから73秒後に空中分解した事故
  • 7名の宇宙飛行士が犠牲となり、チャレンジャー号が飛び立つ様子が世界中にテレビ中継される中で発生したもの

です。

多くの民衆が注目する中で起こった悲惨な事故の原因には、チャレンジャー号の打ち上げを強行したNASA(アメリカ航空宇宙局)上層部に、集団思考が働いていたためであるといわれています。

当時、チャレンジャー号の打ち上げは、NASAの総力を挙げて行われたプロジェクトでした。しかし、チャレンジャー号の打ち上げを目前に、現場の技術者たちはチャレンジャー号の打ち上げを延期するように求めていました。

それは当日の悪天候や冬という季節ならではの低気温、チャレンジャー号に使われた部品の欠陥があったことから、安全な発射が難しいと考えたからです。

しかし、

  • NASAの上層部は、技術者たちの訴えを聞いたにも関わらず、「打ち上げは正常に行われるだろう」と判断した
  • つまり、NASAのスペシャリストたちが、危険を回避するという「合理的な判断」を放棄し、計画の決行という「非合理的な判断」を下してしまった

のです。

この判断の背景には、NASAの上層部が「絶対に計画は失敗しない」という信念をもってしまい、信念に反する事実(計画決行に危険性があるという指摘)を無視してしまったという集団思考の典型的な症状があったと分析されています。

1章のまとめ
  • 集団思考とは、集団で意思決定をする場合において、個人のそれよりも非合理的な意思決定が容認されることである
  • 集団思考の症状として、「勢力・道徳性の過大評価」「精神的閉鎖性」「意見の斉一化への圧力」がある
  • チャレンジャー号の打ち上げ失敗は、集団思考の結果と言われている

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2章:集団思考とジャニスの研究

さて、集団思考に関して有名な研究をおこなったのは、アーヴィング・ジャニス(Irving Janis)というアメリカ人社会心理学者です。

2-1: ジャニスの研究関心

具体的に、ジャニスは、

  • アメリカ政府のおこなった外交政策の中で、非合理的な判断がされたことによって失敗と評された政策を分析し、非合理的な判断が下された現場状況に共通点がないかを調査した
  • たとえば、真珠湾攻撃における日本からの攻撃可能性の過小評価、朝鮮戦争における中国の参戦を想定できなかったこと、キューバ侵攻作戦の失敗などを考察した

研究をおこないました。

そして、ジャニスはこれらの事例を分析した結果、集団思考が発生した集団には、4つの原因があることを示しました。

  1. 集団凝集性が非常に高いこと
  2. 外部情報から隔絶され、孤立すること
  3. 指示的なリーダーがいること
  4. 高いストレス状況にあること

それぞれ解説していきます。



2-2: 集団の凝集性

まず、「集団凝集性が非常に高いこと」とは、

集団としての結束力や団結力が高いこと

を意味します。

話し合いの場で集団の結束力が強い場合、個人は自分の考えを貫き通すことよりも集団の和を乱さないことを意識してしまいがちとされています。

それは個人が社会で他者と関わりながら生きる存在であるため、自分が阻害されてしまうことを恐れるからです。集団が非合理的な意見を採用しようとしている中で、自分だけが合理的な意見をいうことは勇気の要ることでもあります。

2-3: 集団の閉鎖性

次に、「外部情報から隔絶され、孤立すること」とは、

集団の閉鎖的な空気が高まり、外部の情報に触れる機会が減ること

です。

外部情報に触れること、たとえば集団外の人の意見を受け入れることは、多角的な検討を可能にします。しかし、多角的に検討することが疎かになると、非合理的な判断をしても誤りに気が付くことができなくなってしまいます。

2-4: 指示的なリーダーの存在

「指示的なリーダーがいること」とは、

集団内に影響力の大きいリーダーがいること

です。

影響力の大きいリーダーは指導力に優れていることが多いため、集団内の話し合いをスムーズに進めていくのに大きな助けとなります。

一方で、リーダーの権力があまりに大きい場合、集団内に「反対意見を言いにくい」「とりあえずリーダーに賛成しておこう」というようなネガティブな空気が作られてしまうことがあります。

この場合、リーダー1人が判断を誤ったことが原因で大きな失敗を招き、集団の存在価値がなくなってしまう可能性が危惧されます。



2-5: 高いストレス状況

最後に、「高いストレス状況にあること」とは、

集団の下す判断が周囲に大きな影響を与えると予想される状況下にあること

です。

この場合、集団は大きなストレスにさらされたまま話し合いを行わざるを得ないため、多くの構成員が「早くストレスから解放されたい」と考えます。そして、話し合いを早く終わらせようとしてしまいます。

早く話し合いを終わらせようと意識することは、表面的な浅い論議を招き、結論の持つ非合理的な可能性に気付かないまま決断してしまう危険性を持っています。

以上の4つの原因が、「非合理的な判断」を下してしまう事態を生む主な要因となっています。

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3章:集団思考の対策

では、私たちは集団思考を防止するためにどのような工夫ができるのでしょうか?

集団思考への対策法として、社会心理学者の蜂屋良彦が以下の4つの対処法を提示しています。(蜂屋良彦(1987)「グループシンクをめぐって」『現代社会心理学』(有斐閣, 418-433頁)を参照)

  1. バス・セッション法・・・集団を幾つかの小グループに分けて話し合いをおこなう方法。小グループの結論が出たらそれぞれの結論を持ち寄って、大グループで再検討をする
  2. エキスパート法・・・外部の専門家を招き、集団の決定について意見を述べてもらう方法。客観的な外部意見を取り入れることができる
  3. デビルズ・アドボケート法・・・集団の中で、多数意見に反対する役割をもつ人を作る方法。多数意見の正当性を過信し過ぎてしまわないよう、抑制する効果がある
  4. 仮想敵想定法・・・集団の最終結論を出す前に、仮想敵が指摘するであろう内容を提示する方法。集団の決定において非合理的な点がないか、再検討することができる

これらの4つの方法を用い、集団に異なる意見を意図的に持ち込むことで、集団が一面的または偏った見方になることを阻止することができるとされています。

集団での議論を回避して暮らすことがほとんど不可能な私たちにとって、上述の議論を頭に入れておく必要はあるのかもしれません。

4章:集団思考を学ぶ本・論文

集団思考について理解を深めることはできましたか?

ここで紹介した内容はごく一部ですので、今後のあなたの学びのために役立つ書物を紹介します。

おすすめ本

オススメ度★★★ マイケル・A・ウェスト『チームワークの心理学 エビデンスに基づいた実践へのヒント』(東京大学出版会)

会社や学校の場面において、集団心理がどのように働くのかが分かりやすく解説されています。集団心理を理解した上で、チームワークを上手に働かせるためのヒントを知ることができる一冊です。

オススメ度★★★ 釘原直樹『グループ・ダイナミックス  集団と群集の心理学』(有斐閣)

集団思考をはじめとする、集団や群衆の内部で起こる心理作用について詳しく解説された本です。集団思考について、より深く知りたい方におすすめです。

オススメ度★★ 井上隆二・山下登美代『図解雑学 社会心理学』(ナツメ社)

集団を扱った心理現象は、社会心理学に分類されます。社会心理学の様々な現象について、図や絵を用いて分かりやすく解説されています。初学者におすすめです。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • 集団思考とは、集団で意思決定をする場合において、個人のそれよりも非合理的な意思決定が容認されることである
  • 集団思考の症状として、「勢力・道徳性の過大評価」「精神的閉鎖性」「意見の斉一化への圧力」がある
  • 集団思考の対策として、「バス・セッション法」「エキスパート法」「デビルズ・アドボケート法」「仮想敵想定法」がある

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