心理学

【忘却曲線とは】具体例・批判・心理学的実験からわかりやすく解説

忘却曲線とは
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忘却曲線(Forgetting curve)とは、記憶の保持時間の経過に伴って忘却が進行する様子を数量的に表したものです。

英単語を勉強するとき、なぜ時間が経つと忘れるのだろうとなんて考えたことはないでしょうか。そのような疑問は、忘却曲線を理解することで、解消されてます。

そこで、この記事では、

  • 忘却曲線の意味・具体例
  • 忘却曲線への批判
  • 忘却曲線の心理学的実験

をそれぞれ解説していきます。

好きな箇所から読み進めてください。

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1章:忘却曲線とは

1章では、忘却曲線の意味・例を解説します。忘却曲線への批判は2章から、心理学的実験に関心のある方は3章から読んでみてください。

このサイトでは複数の文献を参照して、記事を執筆しています。参照・引用箇所は注1ここに参照情報を入れますを入れていますので、クリックして参考にしてください。

1-1: 忘却曲線の意味

我々は、さまざまなことを経験し、それを思い出として思い出すことが出来ます。一方で、すべての記憶を完璧に覚えているわけではありません。むしろほとんどの記憶は忘却されてしましいます。

もし、すべての記憶を保持していられたら、私は漢字のテストで酷い点をとることもなかったでしょう。では、この忘却はどのように進むのでしょうか?

あなたは「今日の朝ご飯をおぼえていますか?」という問いに答えることが出来ますか?おそらく、これは覚えている人が多いのではないでしょうか。では、「昨日の朝ご飯は?」と聞かれるとどうでしょうか、怪しくなってきていると思います。さらに3日前は?4日前は?…と聞いていくと、もう思い出せないでしょう。

一般的に、我々は過去の記憶ほど忘却してしまいます。

忘却曲線は、このような我々の記憶の減衰率、すなわち忘れていく様子を数値的に表したものです。この忘却曲線は、ドイツの心理学者、エビングハウス(Ebbinghaus、1885)によって提唱されました。

エビングハウスは忘却の現象を始めて科学的に扱ったことで有名です。実験の概要は以下のとおりです。

実験の概要

  • エビングハウスは無意味つづりという意味のない英単語(SAG、DET、AIW、UOLなど)を作成し、それを記憶するという実験を行った
  • 実験は、彼自身を唯一の被験者として、実験を行われた
  • エビングハウスはまず、無意味つづりの単語セットを、完璧に暗唱できるようになるまで学習した
  • そして、その学習した単語について、さまざまな時間間隔でどの程度覚えているかを調べた
  • その結果、20分後には42%、1時間後には56%、そして1日後には74%が忘れられ、そこから先は忘却量は比較的少なくなっていくことが示された

つまり、忘却ははじめは急激に進むが、ある一定程度忘却が進むと、次第にその忘却率は緩やかになることが判明したのです。この忘却の割合を縦軸を忘却率、横軸をテストまでの時間としてグラフに起こしたものを忘却曲線というわけです。



1-2: 忘却曲線が用いられる場面

このような忘却曲線は、しばしば学習の文脈で取り上げられます。皆さんは、英単語を学習したいとしましょう。

この忘却曲線に基づいて考えると、今日完璧に暗記できたと思っていても、次の日には74%が忘れ去られていることになります。このような状況下では反復学習が必要になります。この反復学習に関してエビングハウスは面白い実験を行っています。

実験の概要

  • エビングハウスは、まず先ほど紹介した実験と同様に、無意味つづりの単語を暗唱できるまで繰り返し学習し、その学習にかかった時間を測定した
  • その後、20分、1時間、9時間、1日、2日、6日、31日の系7つの時間間隔で、再びすべての単語を暗唱できるまでに、どれくらいの時間が必要かというのを調べた

実験の結果、再学習にかかる時間は、次のようになることが判明します。

1時間
→はじめの学習から1時間しかたっていない条件でさえも、再び暗唱できるようになるまでには、はじめに暗唱できるようになるまでにかかった時間の半分程度の時間が必要になる

8時間
→8時間がたつ頃には、再び暗唱できるようになるためにははじめに暗唱できるなるまでにかかった時間の2/3程度の時間(最初の時間の65%の時間)がかかる

それ以降
→それ以降では、この反復学習にかかる時間の減衰率は低下し、31日後の時点では、再学習までに最初の学習の79%程度の時間がかかる

この実験の結果は我々に2つのことを教えてくれます。1つは、時間間隔を置けば置くほど再び学習するまでにかかる時間は多くなることです。はじめの学習から1時間後の再学習では、はじめの半分の時間で再び暗唱できるようになるのに対し、8時間後でははじめの2/3もの時間がかかってしまいます。

もう1つは、忘れてしまうものの、反復学習にかかる時間は初めに学習した時間よりも長い時間になることはないとことです。このことは31日目に反復学習に要した時間が、最初の学習の79%程度で済んでいたことからも明らかです。つまり、時間がたてばたつほど学習した内容は忘却されていくものの、そのすべてが忘却されるわけではないということです。

エビングハウスの実験の結果から、反復学習を行うのであれば、短い時間間隔で行うのが効率が良いことが分かります。この反復学習の回数は、忘却曲線と似た形をとります。すなわち、忘却率が少ないうちに再学習を行うことで、より短い時間で再学習が完了するということもできます。

この話を聞くと、何度反復練習をしても、31日後には20%程度まで記憶が減衰するのであれば、学習する意味がないと思うかもしれませんが、その理解は誤りです。エビングハウスのこの結果はあくまでも、一度学習した刺激セットの忘却率を調べたものです。そのため、反復学習を繰り返すとどうなるのかということとはまた別の話になります。

ちなみに、エビングハウスは、毎日暗唱できるようになるまで学習するということを繰り返すことで、再び暗唱できるようになるために必要な反復回数は変化するのか、についても検討しています。

実験の結果

  • 24音節の系列刺激を学習するために必要な反復回数が、1日目の時点で21.5回、2日目の時点で10.0回、3日目の時点で5.0回、4日目の時点で3.0回というように変化することが示された
  • この結果は、反復学習を繰り返すことによって、1日たった後の、再学習に必要になる時間が減少することを示している

先ほども述べたように、再学習に必要な時間と忘却率の間には密接な関係があります。つまり、直接的ではありませんが、この結果は、毎日繰り返し学習することによって、次の日に忘却している割合が減ることを示しています。

エビングハウスの行った実験群は、あくまでもエビングハウス自身に対して行ったものであり、実験結果やその解釈についてはさまざまな批判もありますが、学習や教育に関する理論や技法の基礎となっています。

1章のまとめ
  • 忘却曲線とは、記憶の保持時間の経過に伴って忘却が進行する様子を数量的に表したものである
  • 忘却ははじめは急激に進むが、ある一定程度忘却が進むと、次第にその忘却率は緩やかになる
  • 反復学習を行うのであれば、短い時間間隔で行うのが効率が良い
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2章:忘却曲線に対する批判

さて、2章では忘却曲線に向けられた批判を紹介してきましょう。

2-1: エビングハウスの実験の一般的問題点

エビングハウスの実験は、忘却を代表するさまざまな記憶研究の基盤となっています。一方でいくつかの問題点が挙げられます。

1点目は、エビングハウス個人のデータのみが検討の対象となっていることです。心理学においては、個人ごとのばらつきというモノを考える必要があります。

たとえば、記憶能力によって、この忘却曲線は大きく変わることが予測されます。ただし、この問題点に関しては、さまざまな研究者が引き続き実験を行うことで、ある程度共通した忘却曲線がみられることを示しています。

一方で、忘却曲線は参加者の年齢や記憶能力によって変化することが知られています。つまり、個人の能力や年齢によっては忘却曲線は再現されないということです。

もう1点は、記憶刺激が意味を持たないものだということです。試しに次の数字を覚えてみてください。

「119213381603」

人の記憶できる情報の量は基本的に7±2個の情報のまとまりであることが知られています。ここには12個の数字がありますので、非常に難しいと思います。ですが、ある知識を得ると非常に簡単に記憶できるようになります。

実は、この数字を「1192、1338、1603」というように3つに分けると、それぞれの数字が、鎌倉幕府、室町幕府、江戸幕府が開かれた元号になっています。この場合、1192が1つの情報としてまとまりを作りますので、3つの情報を記憶するだけでよくなります。

そのため、記憶が非常に容易になります。つまり、われわれが物事を記憶する際には、意味の情報が非常に大きな効果を与えるということです。忘却曲線の実験は、意味の持たない刺激を使っているので、こういった意味のあるものの学習にそのまま適用できるのか、という批判があります。

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3章:忘却曲線の心理学的実験

1章では、エビングハウスの行ったさまざまな実験から、忘却曲線に関して概説を行ってきました。そして、2章では忘却曲線に関して、個人の能力や意味のない刺激と意味のある刺激といった刺激の違いによって忘却曲線が異なるという問題点を上げました。

そこで、3章では記憶の持つ意味やその時々の状況によって忘却曲線が変化することを示すような心理学の実験を紹介したいと思います。

3-1: レミニセンス・バンプ

ここで紹介するのは、記憶の中でも自伝的記憶についての研究です。自伝的記憶というのは、記憶の中でも特に自分に関する記憶のことです。より正確には、自分の人生に関する記憶の総体を指していて、エピソード記憶(出来事についての記憶)の一種であるといわれています。

今から紹介する実験では、この自伝的記憶を語らせたときに出てくる記憶の年代ごとの分布がどのようになるのかについて検討しています。この実験は、ルービンら(Rubin et al、 1986)において行われました。

実験の概要

  • 実験参加者に、さまざまな手掛かり語を与え、それに関連して思い出される記憶を年代ごとにまとめた
  • たとえば、「自転車」という単語が提示されたときに、「10歳の頃、自転車で転んだ」という記憶と、「25歳の時、伊豆でパートナーとサイクリングをしたな」という記憶が思い出された場合には、10歳の頃と25歳の頃の記憶が思い出されたことになる

実験の結果、3つの現象が確認されました。まず、3歳以前の記憶に関しては想起される量が非常に少ないことが明らかになりました。この現象は「幼児性健忘」と呼ばれます。

続いて、それ以降は想起される量は加齢に従って増加していき、10歳~30歳のあたりでピークが来て、減少します。これを図に起こすとこぶのように見えることから、この現象を「レミニセンス・バンプ(reminiscence bump)」と呼びます。

そして想起した年齢から過去10~20年は、想起した年齢に近い記憶ほど思い出されやすくなります。この現象は、想起した年齢に近いほうが思い出しやすいという点で、通常の忘却曲線と同様の現象です。

つまり、まとめると、自伝的記憶について想起させると、3歳くらいまでの自伝的記憶はほとんど想起されず、20代あたりのピークに向かって想起する量は増加し、少し減少した後、自伝的記憶を想起した年齢に向かって増加することが示されました。

忘却曲線に従って考えるのであれば、この結果は解釈が難しくなります。忘却曲線の考え方では、過去に行くほど忘却率が高くなるはずなので、20代でバンプ(こぶ)がみられることが説明できないためです。

また、忘却曲線では長い時間がたっていても記憶は0になることはありません。そのため、3歳以前の記憶がみられないことも忘却曲線の理論とは反しているのです。



3-2: 実験結果の要因

何故忘却曲線と反した結果が得られるのでしょうかのは、2章で挙げた問題点と対応付けて説明が出来ます。

まず、幼児健忘がなぜみられるのかという点についてです。幼児性健忘は 0歳~3歳の発達の未熟さに起因すると説明されます。都築は以下の書物で、次のように説明しています。

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  • たとえば、記憶に関わるといわれている海馬といった脳の基本的な機能が十分に発達していない
  • また、この時期の子どもは基本的に、言語が獲得されていないため、経験したことを言語情報として記憶にインプットすることが難しいと考えられる
  • つまり、幼児健忘は、この年齢の子どもにとっては、記憶の形成自体が難しいために起こる現象といえる

これは、個人の能力によって忘却曲線が異なるという観点と関連していると考えられます。また、幼児期には、自分が他とは分離しているといったような自己意識があいまいであることが知られています。

つまり、たとえ記憶が形成されていたとしても、自分についての記憶というような意味を持たせることが難しいため、自伝的記憶として想起されにくいと考えられます。このことは、記憶する刺激のもつ意味によって、記憶のされ方が異なるという2点目の指摘に関連します。

次にレミニセンス・バンプがなぜみられるのかという点です。このレミニセンス・バンプがみられる原因は、10~30代におけるイベントには、自分とは何かというアイデンティティの形成に関わるものが多いためだといわれています。

つまり、自己と密接にかかわるイベントが多い時期であるため記憶に残りやすいということです。この結果も、刺激の持つ意味によって、忘却曲線が異なることを示していると考えることが出来ます。

ここまで、忘却曲線では自伝的記憶は説明できないという面ばかり取り上げましたが、想起した年齢から過去10~20年に関しては、忘却曲線に従って、過去に行くほど想起される出来事の数が減るという現象が確認されています。

この10~20年という非常に長いスパンにおいても忘却曲線で説明されるような現象が確認できるという点では、忘却曲線の頑健性を示しているといえます。

最後に注意しておくと、ルービンら(Rubin et al、 1986)の実験は、忘却曲線だけでは忘却という現象すべて説明できるわけではないということを示すために行われた実験ではありません。

あくまでも自伝的記憶の量が年代ごとで、どう異なるかを示したものです。今回紹介したのは、あくまで、忘却曲線がどういう時に、当てはまって、どういう時に当てはまらないかを説明する好例だと考えたからです。その点ご留意ください。

3章のまとめ
  • ルービンらの実験では「幼児性健忘」「レミニセンス・バンプ(reminiscence bump)」などが確認された
  • ルービンら(Rubin et al、 1986)の実験は、忘却曲線だけでは忘却という現象すべて説明できるわけではないということを示すために行われた実験ではない

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4章:忘却曲線を学ぶ本と論文

忘却曲線を理解することはできました?

忘却曲線に少しでも関心をもった方のためにいくつか本を紹介します。

おすすめ書籍

オススメ度★★★ H.Ebinghaus『記憶について-実験心理学への貢献』(誠信書房)

エビングハウスの忘却曲線に関する実験をまとめたものの和訳です。非常に古い書籍ですので、入手は困難かと思いますので、図書館等で参照するとよいと思います。

オススメ度★★★ 井上毅・佐藤浩一『日常認知の心理学』(北大路書房) 

後半で紹介した、自伝的記憶の研究をはじめとする日常認知に関する書籍です。忘却曲線を深堀するというよりは、日常場面において記憶をはじめとする認知機能がどのようにかかわっているかを知りたい方向けです。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • 忘却曲線とは、記憶の保持時間の経過に伴って忘却が進行する様子を数量的に表したものである
  • 忘却ははじめは急激に進むが、ある一定程度忘却が進むと、次第にその忘却率は緩やかになる
  • ルービンらの実験では「幼児性健忘」「レミニセンス・バンプ(reminiscence bump)」などが確認された

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参考文献

H.Ebinghaus (1978)宇津木保(訳) 記憶について-実験心理学への貢献, 誠信書房.

Rubin, D. C., Rahhal, T. A., & Poon, L. W. (1998). Things learned in early adulthood areremembered best. Memory & cognition26(1), 3-19.

都築誉史「7章 日常認知」『認知心理学』箱田裕司・都築誉史・川畑秀明・萩原滋(編) (pp141-163) 有斐閣

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