ミクロ経済学(micro-economics)とは、個別の経済主体、すなわち家計(消費者)と企業(生産者)がいかに行動して商品の需要と供給を創り出し、それらがいかに市場で調整されるかを解明する理論領域です。
この記事では、ミクロ経済学についてまずは概要を理解したいという方に向けて、初歩的知識を解説します。
- 家計の理論
- 企業の理論
- 市場の理論
について解説します。
好きな所から読んでみてください。
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1章:ミクロ経済学の家計の理論(効用最大化)
そもそも、ミクロ経済学とは個別の経済主体を中心に考える経済学のことです。個別の、つまり小さな主体から見ていくために「ミクロ」経済学なのです。これに対して、マクロ経済学は一国の経済の総量に着目するため「マクロ」経済学です。
ミクロ経済学の理論では、主に下記の主体から理論を考えます。
- 家計=消費者:私たちが日常的にモノやサービスを買って、そこから満足感を得ること。その理論が家計の理論。買う人の理論
- 企業:消費者が買うモノ、サービスを売っている側の理論
これら2つの主体が取引(売り買い)するのが「市場」です。この市場では、どのように取引が行われるのか、ということについて説明するのが市場の理論です。
そこでここでは、まずは家計の理論を、2章では企業の理論を、そして3章では市場の理論を解説します。
このサイトでは複数の文献を参照して、記事を執筆しています。参照・引用箇所は注1ここに参照情報を入れますを入れていますので、クリックして参考にしてください。
1-1:消費活動とは
私たち家計(消費者)は、市場から商品(製品、サービス)を購入して生活します。
それでは、家計はいかにして商品を購入するのでしょうか? ミクロ経済学(価格理論)では、家計は効用(utility)を最大化するように商品を購入し、それを消費すると考えます。効用とは、要するに商品から得られる満足度のことです。
簡単に言えば、消費者は「もっと良い買い物をしよう」と考えながら、商品やその組み合わせを、限られた予算の中で選ぼうとするわけです。
日常生活で考えると、カフェで飲み物とおやつを食べようとするときに予算が1000円しかなければ、その中で最大の満足度が得られる組み合わせを考えるでしょう。これを単純にモデル化したのが下記の図です。
図と数式にするとややこしいと思わえる方も多いと思いますが、これは、実際には難しいことではありません。
図1 家計の効用最大化
完全競争市場におけるある家計をモデルとします。
※完全競争市場とは、誰もが自由に競争して商売をしている取引の場(市場)のことです。
1-2:無差別曲線とは
2次元で表せるように極端な仮定を置いて、ある家計がx財とy財の2種類の商品のみを消費して生活するとします。たとえば、コーヒーとおやつの2商品のみを消費する消費者「A君」と考えてみましょう。
そこで登場するのが、原点に対して凸の形の曲線、無差別曲線(indifference curve)のUです。Uの上では、x財とy財の様々な組み合わせから得られる効用が同一、つまり無差別とされます。
※Uの大きさは様々あるので、図では描きませんが、無差別曲線Uはちょうど地図の等高線のように幾つも連なっていると考えてください。
A君は、コーヒーとおやつの組み合わせが好きで、コーヒー3杯とおやつ3つで70点の満足感を得ることができます。当然、コーヒー4杯、おやつ5つと両方の量を増やせば、その分満足感は80点に増えます。
しかし、コーヒー2杯とおやつ4つや、コーヒー1杯とおやつ5つであれば、同じ70点くらいの満足感を感じるようです。
このように、同じ満足感(70点)が得られる組み合わせが多数あり、それを結んだ曲線が無差別曲線になるのです。
また、なぜ曲線Uが原点に対して凸になるかというと、Uの両端ではx財の限界効用MUxとy財の限界効用MUyとの比率、すなわち限界代替率(marginal ratio of substitution,MRS)が大きくなったり小さくなったりするからです。
これも分解して理解すれば難しくありません。
限界効用とは、簡単にいえば、ある商品の購入量を1単位増やしたときの効用の増分のことです。たとえば、コーヒーを1杯飲んだ後、2杯目を飲むときに得られる満足感が限界効用です。
それを前提に、曲線Uの形が原点に対して凸になることは、以下のように説明できます。
Uの右端では、同じ効用を維持するためにはy財の消費=コーヒーの量を少し減らすかわりに、x財の消費=おやつの量を多く増やさなければなりません。つまり、このあたりに来ると、コーヒーの追加によって得られる効用が0に近づいていくため、同じ満足度を得るためにはもっと多くのおやつを食べる必要があるということです。
逆にUの左端では、x財の消費=おやつの量を少し減らすかわりに、y財の消費=コーヒーの量を多く増やさなければなりません。
したがって、原点に対して凸の曲線になるということです。ここでは、限界効用は、単位を増やすほど減っていく(つまり、コーヒーを多く飲むほど、プラスアルファで得られる満足感は少なくなっていく)という意味だけ覚えておいてください。
1-3:予算制約線とは
ところで、家計が消費生活を送るといっても、そこには自ずと所得Iの制約があります。上記の例で言えば、1000円の中で可能な組み合わせを選ばなければならないということです。
これを予算制約と呼ぶことにしましょう。今、x財の価格をpx、購入量をx、y財の価格をpy、購入量をyとすると、予算制約は次の式で表せます。
pxx+pyy=I
これも難しく考える必要はなく、コーヒー〇個とおやつ〇個が、1000円以内に収まらなければならない、という意味です。
図の斜線が予算制約線で、これは所得I(1000円)をx財(おやつ)だけに使い切った横軸の点I/pxと、y財(コーヒー)だけに使い切った縦軸の点I/pyを結んだ直線です。
さて、ここまで来ると家計(消費者)がどのように消費活動をするのか、分かってきます。
1-4:効用最大化
この家計(A君)のx財(おやつの購入量)とy財(コーヒー)の購入量の組み合わせは、無差別曲線と予算制約線が接する点Eで決定します。
そうです、x財の購入量はx*、y財の購入量はy*です。
つまり、おやつがx*という個数(たとえば3個)で、コーヒーがy*という個数(たとえば4杯)が、A君の予算(1000円)の中では効用U(満足度)が最大になる組み合わせになるということです。
予算制約線上の他の点では、2つの線が接しません。つまり、効用は最大にはならないのです。
そして、このとき重要なことは、限界代替率=相対価格が成立しているということです。それは、次の式で表せます。
MRS=MUx/MUy=px/py
これが、効用最大化の条件です。この点は、もう少し詳しい理解が必要になるため、より詳しくは書籍から学んでみてください。さらに、効用最大化の問題には、さらに所得(予算制約)Uが変化したケース、または相対価格px/pyが変化したケースなど、様々な変形もあります。
詳しくは3章で紹介している書籍もおすすめですが、非常に初歩的な内容から学びたい場合、下記の本をおすすめします。
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2章では、モノ・サービスを売る側の企業の理論について説明します。
- 消費者は自己の満足感(効用)が最大になるように行動する
- 無差別曲線とは、満足感が最大になる商品の組み合わせを結んだ曲線
- 予算内で可能な満足度を最大限にできる組み合わせが、予算制約線と無差別曲線が交わる点であるため、この点で消費者の行動が決まる
2章:ミクロ経済学の企業の理論(利潤最大化)
1章で解説したのが、モノ・サービスを買う側の行動でした。経済活動を分析するには、当然モノ・サービスを売る側の行動も明らかにしなければなりません。
これから、企業の理論について解説していきます。
2-1:企業の活動とは
企業(生産者)がいかにして生産量を決定しているかについても、家計の効用最大化と似たような論理構成で考えることができます。結論からいえば、企業は利潤(profit)を最大化するように生産量を決定します。
図2 企業の利潤最大化
ここでも、完全競争市場におけるある企業をモデルにします。厳密には、完全競争の条件は幾つかありますが、重要なのは企業が自分で価格を決定できないということです。たとえば、その業界を独占・寡占しているような企業(たとえば少し前までの携帯業界)は、価格を自分で決定できます。
しかし、競争相手が多い中小企業の場合、高く設定すれば売れませんので、競争の中で価格を決める必要があります。このモデルで前提としているのは、このように市場の影響を受けて価格を設定する企業であるということです。
以下、図中の主要な記号を定義しておきます。
- P=商品価格
- Q=生産量
- TR=総収入(売上、すなわちPQ)
- MR=限界収入(収入の微増分、すなわちP)、1商品売れるたびに増える分の売上
- TC=総費用(以下では、Qの関数C(Q)とします)
- MR=限界費用(費用の微増分、すなわちC´(Q))、1商品売れるたびに増える諸経費
直感的に理解できるように解説します。
そもそも企業は、先に費用をかけて商品を作り、それを売ることによって売り上げを得ます。その差額が利益であり、この利益を最大化することが企業の行動原理です。
利益=売上ー費用
利益を最大化するには、できるだけ安く作るか、できるだけ高く売るか、のどちらかの手段しかありません。これが、企業行動を理解する前提となります。
企業の場合、何らかの商品を生産するためには、生産のために必要な材料や機械設備が必要です。そのため、材料や機械の量は生産量によって変わります。
生産量Q=Q(材料、機械)
これを生産関数と言います。
ここまでを前提とすると、生産量と収入の関係はどうなるでしょうか?「生産量を増やすほど収入が増える、直線になるのではないか」と思われた場合は間違いです。実際には、上図にあるようなゆるやかな逆S字になるのです。
ある機械を使って商品を生産する場合、ある一定の所までは、材料が少ないために機械の稼働効率が悪く効率的に生産できません。そのため、ある点までは傾きが穏やかになります(収穫逓減)。
しかし、ある点を超えると生産効率が良くなり、効率よく生産できて収入が成長します。これが、傾きが急になっている所です(収穫逓増)。
図ではその先がありませんが、ある一定の点を超えて生産を拡大させようとすると、また効率が悪くなり生産のわりに収入が得られなくなります。そのため、逆S字の形になるのです。
さて、このように生産量によって企業の得られる生産1単位あたりの収入(売上)が変わっていくのですが、企業の場合は、利益が最大になる生産要素(機械や材料)の組み合わせを探っていくことになります。これは、消費者の「無差別曲線」と同じです。
消費者は「予算」に制約されるために、予算制約線と無差別曲線の交わるところが、最適な組み合わせになるのでした。それに対し、企業の場合は、
- 等量曲線:同じ量の生産物を生産できる生産要素(機械や材料)の組み合わせを表したもの
- 費用線:生産にかけられる費用(たとえば1000万円)を表したもの
ということになります。企業も、限られた予算の中で可能な生産活動によって、最大の利益を得たいため、消費者と同じようなモデルになるのです。
2-2:企業の利潤最大化とは
では、企業が利潤を最大化できるベストな生産量はどうやって決まるのでしょうか?
そもそも、利益は、
利益=商品価格×生産量ー諸経費
で決まりますので、1単位追加で商品を売った時の売上が、1単位追加で商品を作った時の費用よりも大きければ、利益が出ます。
1単位追加で商品を売った時の売上(限界収入)>1単位追加で商品を作るときの費用(限界費用)
生産にかかる諸経費(限界費用)は、先ほどの説明のように生産量によって変化します。
図で説明するならば、総収入TRの傾き(これは、限界収入MRでもあり、価格Pでもあります)と総費用TCに引いた接線の傾き、すなわち限界費用MCが一致する点E*の生産量Q*で、この企業は生産量を決定するということです。
図からも直感的にお分かりのように、例えば点E1やE2では、利潤は最大となりません。
ここで数式を用いて解説します。高校で習った数学Ⅲの微分・積分(解析)を思い起こしてください。 極大値、極小値の問題です。今、この企業が超過利潤(π)最大化を目標にしているとします。
超過利潤とは、企業が存続可能な正常利潤を超える利潤の意味で、図では総収入TRと総費用TCの開きです。すると、超過利潤=総収入-総費用の最大化ですから、これは次の式で表せます。
π=PQ-C(Q) → Max!
超過利潤最大化の際は、利潤は増えも減りもしませんので、
dπ/dQ=0
すなわち、 生産量Qの関数πの微分ですから、
dπ/dQ=P-C´(Q)=0
∴P=C´(Q)
かくして、 商品価格=限界費用となったときに超過利潤最大化が実現されます。
企業の利潤最大化の問題には、完全競争の他に不完全競争(独占、寡占、独占的競争など)のケースといった変形がありますが、興味のある方はご自分で勉強してみてください。別稿の不完全競争や産業組織論で、不完全競争下での企業の利潤最大化にも触れています。
2-3:企業の最適操業度(資源の最適配分)
ところで、完全競争の下では、ある企業に超過利潤が存在する限り、他企業の当該商品の市場参入と価格競争を生じて、商品価格Pはしだいに下落してゆきます。簡単に言えば、ある企業が儲かっていれば他の企業も同じ商品で儲けようとするため、価格競争が起きて商品価格が下落するということです。
しかし、儲け(超過利潤)がゼロ以下になれば、企業はその商品の市場から撤退します。
上の図2でいうと、P、すなわち総収入TRの傾きが小さくなり、総費用TCの接線(これは、限界費用MCでもあります)になるところで超過利潤π=0になることがお分かりかと思います。
もしπがマイナスになるならば、企業は市場から退出します。そして、この際重要なことは、TRの傾きは原点からTCに引いた直線、すなわち(最小)平均費用(これをC*としましょう)でもあることから、商品価格=限界費用=(最小)平均費用が成り立ちます。式で表すと、次のようになります。
P=C´(Q)=C*
あくまで極端な仮定の下とはいえ、各企業および各産業でこういった状態となるならば、各企業は最適な操業度で、つまり最も効率的に操業していることになります。
言い換えれば、原材料や機械設備などの資源が最も効率的に使われていることになります。つまり、資源の最適配分です。
これは、商品の市場価格を中心とする自由な市場経済(資本主義)の面目躍如たるところで、市場価格の存在しない共産主義経済では実現できません。悪くいえば、経済はデタラメとなります。
共産主義国家が理論的支柱とした理論について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
ソビエト連邦(ロシア)が崩壊したのも、中国が国家資本主義に転換したのも、基本的にはこのためです。
- 企業は利益を最大化できるように行動する
- 利益は売上から経費を引いた部分であるため、売上が最大になるか、経費が最小になるように行動する
- 利益が最大になる生産要素の組み合わせが等量曲線であり、それと費用線が交わる点で、企業の生産量が決まる
3章:ミクロ経済学の市場の理論(需給均衡)
1章では家計(消費者)の理論、2章ではモノ・サービスの売り手である企業の理論について簡単に解説しました。
ミクロ経済学では、家計と企業はそれぞれ、自らの満足度や利益が最大になるように行動すると考えます。では、この行動の結果価格はどのように決定されるのでしょうか?それを明らかにするのが市場の理論です。
3-1:部分均衡
家計の効用最大化、企業の利潤最大化の説明からお分かりのように、家計と企業は商品価格を基準として商品の購入量や生産量を決定します。
これが、市場においては商品の需要D(demand)と供給S(supply)になります。そして、家計はできるだけ安く買おう、企業はできるだけ高く売ろうとするため、それぞれの思惑が一致する交点E*=市場価格で価格が決まります。
すると、皆さんが高校で勉強したであろうお馴染みの図が出来上がります。
図3 市場の需給均衡
図3で説明しましょう。
今、市場にm軒の家計があり、それぞれの需要をD1、D2、‥‥、Dmとすると、D=D1+D2+‥‥+Dmで、またn社の企業があり、それぞれの供給をS1、S2、‥‥、Snとすると、S=S1+S2+‥‥+Snです。
需要Dは価格Pの関数ですからD(P)となり、供給Sも価格Pの関数ですからS(P)となり、それぞれ右下がり、右上がりの線となります。なぜそうなるかというと、家計は価格が安ければそれだけ買いたいと思うし、企業は価格が高ければそれだけ売りたいと思うからです。
そのため、家計と企業の思惑が一致するのが、需要線と供給線の交点E*となります。これが、需給均衡です。このとき、均衡価格はP*、均衡生産量はQ*となります。
では、この均衡した点から価格が高くなるとどうなるでしょう?図で言えば(P″)です。
これだと、供給が需要を上回る超過供給の状態が起こります。すると、市場には買い手のない商品が溢れるため、価格が下落します。
逆に、価格が均衡価格よりも低い(P′)と、需要が供給を上回る超過需要の状態が起こります。この場合は、需要が多いため、買い手の間の競争により価格が上昇してゆきます。
かくして、市場で成立する均衡価格が家計と企業にフィードバックされ、それらの行動の基準となるわけです。
この市場の需給均衡は、x財だったらx財という1つの商品に関する均衡の考えでした。こうした考えを部分均衡(partial equilibrium)といいます。
これに対し、社会の全ての商品に関する均衡の考えを一般均衡(general equilibrium)といい、最後にこの問題について説明しておきます。
3-2:一般均衡
スイス・ローザンヌ学派の経済学者であるレオン・ワルラス(M. E. Léon Walras、1834~1910年)は、社会に存在する全ての商品の価格、需要、供給は相互に依存しており、それらの均衡は連立方程式の解として表されるとしました2Walras,Eléments d’ économie politique pure, ou théorie de la richesse sociale,1874,1877.久武雅夫訳『純粋経済学要論:社会的富の理論』岩波書店、1983年。
先に紹介したように、この理論を一般均衡論といいます。
しかし、実際にこうした均衡解が存在することが証明されたのが1950年代に入ってからというのは、驚きです。ここで、一般均衡について数式で簡単に説明します。
ここで皆さん、中学校の数学を思い起こしてください。
連立方程式に解がある条件は、未知数の数だけ方程式の数があることでした。今、単純化のために、社会に互いに競合するx財、y財の2つの商品だけがあるとしましょう。x財の需要Dxは、それ自体の価格Pxのみならず、競合するy財の価格Py にも依存すると考えるのが妥当です。
同様に,y財の需要Dyも、それ自体の価格Py のみならず、競合するx財の価格Pxにも依存すると考えるのが妥当です。つまり、x財の需要Dx、y財の需要Dyは、
次のような関数として表されます。
Dx=Dx(Px,Py)
Dy=Dy(Px,Py)
同時に、x財の供給をSx、y財の供給をSyとすると、それらは需要と同様に次のような関数として表されます。
Sx=Sx(Px,Py)
Sy=Sy(Px,Py)
x財とy財の需要と供給が均衡すると考えると、この場合の市場均衡条件は次の式となります。
Dx=Sx
Dy=Sy
この均衡状態の下では、結果的なx財の生産量Qxとy財の生産量Qyは、市場で調整されて次のようになります。
Qx=Dx=Sx
Qy=Dy=Sy
よって、4つの未知数、PxPyQxQyは、以下の4つの方程式から成る連立方程式を解くことによって、その解が得られます。
Qx=Dx(Px,Py)
Qx=Sx(Px,Py)
Qy=Dy(Px,Py)
Qy=Sy(Px,Py)
所与の価格、完全情報、原子論的競争などの完全競争の仮定もさることながら、以上見てきたように価格理論全体は余り実践的な内容とはいえません。特に、一般均衡論はそうです。
また、市場のメカニズムには公害のような「市場の失敗」もあります。しかし、本稿で説明した価格理論は、自由な市場経済(資本主義)がいかに効率的で優れたシステムであるかの理念を色濃く反映しているのです。
- 消費者と企業はそれぞれ自己の満足度、利益を最大化しようと行動するため、その結果、需要と供給が均衡する点で市場価格が決まる
- 社会のすべての商品に関する均衡を一般均衡と言うが、抽象的で実践的ではないものの、市場経済の効率性を反映している
4章:ミクロ経済学に関する参考文献
ミクロ経済学について概要を解説しましたが、もちろんここで示したのは全体像に過ぎず、この内容だけで理解できるとは言えません。下記に紹介する書籍から、より深く勉強してみてください。
奥野正寛『(経済学入門シリーズ)ミクロ経済学入門』(日経文庫)
ミクロ経済学の教科書として最もオーソドックスです。高校レベルの数学の知識があれば十分に学習可能ですので、ぜひ手元に置いて繰り返し読んでみてください。
小暮太一『落ちこぼれでもわかるミクロ経済学の本―初心者のための入門書の入門』(マトマ出版)
数式をほとんど使わずにミクロ経済学を直感的に理解できるように解説している本です。数学が苦手な場合、まずはこちらから読むと理解できるはずです。
一部の書籍は「耳で読む」こともできます。通勤・通学中の時間も勉強に使えるようになるため、おすすめです。
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また、書籍を電子版で読むこともオススメします。
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まとめ
最後にこの記事の内容をまとめます。
- 消費者は自己の満足度を最大化するように、企業は自己の利益を最大化するように行動する
- 消費者と企業の行動の結果需要と供給が均衡し、その均衡する点が市場価格となる
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