心理学

【ピグマリオン効果とは】意味・例・心理学的実験をわかりやすく解説

ピグマリオン効果とは

ピグマリオン効果(pygmalion effect)とは、他者から期待されることによって実際に高いパフォーマンスができるようになることを指す心理学的用語です。他者から期待の眼差しを向けられることにより、自分に対する期待感を感じることができ、実際の能力を向上させることができるようになるといわれています。

ピグマリオン効果は、主に教師などの教育者や会社の新人研修を行う社員への教育の場でよく参照されており、生徒の成績向上や新人社員のマネジメントに用いられます。

では、そもそもなぜ人間は他者からの期待によってより高い能力を発揮することができるようになるのでしょうか?哲学的な意味を含めてとても深い疑問だと思います。

そこで、この記事では、

  • ピグマリオン効果の意味
  • ピグマリオン効果の仕組みや活用方法
  • ピグマリオン効果に関する実験や批判

それぞれ詳しく解説していきます。

あなたの関心に沿って読み進めてください。

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1章:ピグマリオン効果とは

まず、1章ではピグマリオン効果の「意味」「ゴーレム効果との違い」を解説します。

2章ではピグマリオン効果の実験や批判を紹介しますので、好きな箇所から読み進めてください。

1-1: ピグマリオン効果の意味

まず、冒頭の確認となりますが、

ピグマリオン効果とは、ある人が他者から期待されることによって、実際にその人の能力が向上するという心理的効果のこと

です。

教育現場で利用されることが多く、教師の期待によって学習者の能力向上が見られることから、しばしば「教師期待効果」とも呼ばれます。また、提唱者のロバート・ローゼンタールの名前から「ローゼンタール効果」という別称をもちます。

1-1-1: ピグマリオンとは

そもそも、ピグマリオン効果の「ピグマリオン」とは、何を意味するのでしょうか?

結論からいえば、「ピグマリオン」とはギリシア神話に登場する王の名前です。ギリシャ神話の一部に以下のような話が登場します。

  • ピグマリオン王はある日、自らの理想の女性像を込めた彫像を作らせる
  • あまりの美しさにピグマリオン王は彫像に恋をしてしまい「この彫像に命が吹き込まれたらどんなに素敵なのだろう」と期待するようになる
  • ピグマリオン王の恋焦がれる様子を見た女神アフロディーテは、王の願いを叶え、彫像に人間の女性として命を吹き込んだ

この「期待を込めた平凡なもの(彫像)が自分の期待通りの素晴らしいもの(人間)になる」という神話をもとに、ローゼンタールは「ピグマリオン効果」という名称を用いました。

1-1-2: ピグマリオン効果の例

「ピグマリオン効果」という言葉は、教師などの教育者や会社の新人研修を行う社員への教育の場で頻繁に聞かれます。

具体的には、教師・社員への教育の場では、

  • ピグマリオン効果は「教育者・学習者の区別のある場面で、学習者の成績や成果を伸ばすヒント」として登場する
  • 特に、学習の成果を最大化する間接的な要因として、教育者の態度や学習者の学習への積極性(やる気)が重要視され、ピグマリオン効果は教育者の態度を変化させることで、学習者が成果を出し、効率的に学習できるようにさせる

といった文脈で登場します。(ちなみに、学習者の成績・成果を伸ばす直接的な要因は、学習者が学んだ知識量や経験が挙げられる)

では、ピグマリオン効果を引き起こすためには、教育者たちはどのような行動をする必要があるのでしょうか?

結論からいえば、ピグマリオン効果を誘発させるために、教育者は学習者に期待していることを示す必要があります。

それは学習者は教育者からの期待の眼差しを受けることによって、「自分は期待されているのだ」「自分は期待されるだけの能力を持つ人間だ」ということを理解し、能力を伸ばすことができるためです。

たとえば、教育者が学習者への期待を示す場合に取ることができる方法として、

  • 学習者の行動に気を配り、手助けができる場所にいる
  • 学習者にポジティブな声掛けを行う(褒める、ミスを気にしないよう声をかけるなど)
  • 学習者へ「期待をしている」ということを直接伝える

などの方法が考えられます。

学習者は教育者の期待を知ると、周囲の期待に見合った行動を取るように考えます。周囲の注目や期待に応えようとすることを通じて、本人のパフォーマンスそのものを向上させることができるようになると期待されます。

また、ピグマリオン効果は幼稚園児や児童などの小さな子どもによく見られる効果といわれていますが、利用者次第でマネジメントなどに応用できることが期待されています。



1-2: ピグマリオン効果とゴーレム効果の違い

ピグマリオン効果を理解する上で知っておきたいのは、ピグマリオン効果とは反対の意味をもつ「ゴーレム効果」です。

端的いえば、ゴーレム効果とは、

  • 周囲から期待されない人は、実際にその能力が低下する効果
  • 人間は周囲から期待されていないことを感じ取ると、「自分は能力が低い」「何をやっても成果を上げることができないだろう」という思考を持ってしまう
  • さらに、ネガティブな思考回路によってネガティブな感情が想起され、結果としてその人自身の成績・成果が低下してしまう

ことを説明する用語です。

もしかしたら、あなたは経験的にある人が優れた能力を持っていたとしても、周囲の態度によって能力を発揮できなくなってしまうことを理解しているかもしれません。

1-2-1: ゴーレムとは

ちなみに、ゴーレム効果の「ゴーレム」とは、ユダヤ教の土人形の名前です。

ゴーレムは意思をもって動く人形ですが、額に描かれた文字が消えてしまうと動かなくなってしまいます。周囲の期待がなくなると動けなくなり、能力が低下してしまうことから、前述の心理的効果が「ゴーレム効果」と名付けられました。

1-2-2: ピグマリオン効果とゴーレム効果の関係性

そして、先ほども触れたように、

  • ピグマリオン効果とゴーレム効果は、反対の因果関係をもつ
  • すなわち、ピグマリオン効果が「他者から期待されることによって、実際にその人の能力が向上する」効果である一方で、ゴーレム効果は「他者から期待されないこと(批判的な態度を取られること)によって、実際にその人の能力が低下する」効果

です。

つまり、ピグマリオン効果とゴーレム効果の両者は、周囲の人がどのような態度を取るのかによって、その人の能力が上下してしまうことがある可能性を示しています。おおざっぱな説明が許されれば、「人間の能力は他者の態度によって上下する場合がある」といえます。

言い換えれば、人間は「他者が自分のことをどう思っているのか」について非常に敏感な存在だといえます。ピグマリオン効果やゴーレム効果は、周囲のちょっとした言動によって引き起こされる効果です。私たちは自分が思っている以上に、他者の行動に敏感であり、他者に影響を与えているといえるのかもしれません。

1章のまとめ
  • ピグマリオン効果とは、ある人が他者から期待されることによって、実際にその人の能力が向上するという心理的効果のことである
  • ゴーレム効果とは、周囲から期待されない人は、実際にその能力が低下する効果である
  • ピグマリオン効果とゴーレム効果の両者は、周囲の人がどのような態度を取るのかによって、その人の能力が上下してしまうことがあることを示している
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2章:ピグマリオン効果の心理学的実験

では一体、ピグマリオン効果はどのような実験から証明された効果なのでしょうか?ここでは提唱者のローゼンタールの実験を紹介していきます。

2-1: ロバート・ローゼンタールの実験

ロバート・ローゼンタールは、ピグマリオン効果について2つの実験をおこないました。1つは大学生を対象にした実験、もう1つは小学生を対象とした実験です。

大学生を対象とした実験

  • 実験には心理学を専攻する大学生が参加した
  • ネズミを用いた心理学実験を行うと指示された大学生は、まず2つのグループに分けられ、2つのグループはそれぞれ、ローゼンタールから実験に使用するネズミを一匹ずつ渡された
  • ローゼンタールは、1つ目のグループには「このネズミは訓練を受けた頭の良いネズミである」といってネズミを手渡し、もう一方のグループには「このネズミは鈍間で頭の悪いネズミである」といって手渡した
  • すると、ネズミ2匹は両方とも普通のネズミだったにも関わらず、実験結果に違いが見られた
  • 「頭が良い」といわれたネズミは良い結果を、「頭が悪い」といわれたネズミは悪い結果を出した

ローゼンタールは、この結果を「大学生のネズミへの期待が結果に影響を与えた」と解釈した後、2つ目の実験に移行します。

小学生を対象とした実験

  • 実験はサンフランシスコの小学校で小学生を対象におこなわれた
  • 実験者は小学校教師に「ハーバード式突発性学習能力予測テスト」という名の知能テストを児童におこなうように指示し、「この知能テストは、今後数か月の間に成績を伸ばす児童を知ることができるテストである」と説明した
  • さらに、テスト実施後、実験者は無作為に選ばれた児童数名の名簿を教師に見せ、「知能テストの結果が良く、今後の成長が期待できる児童」として説明した
  • その後、教師たちは該当の児童に対して特に目をかけ、その後実際に児童の成績が向上した

ローゼンタールはこの実験結果から、ネズミで示された「他者からの期待」という効果が、人間に対しても証明されたと主張しました。



2-2: ピグマリオン効果への批判

ローゼンタールが示したピグマリオン効果は、教育心理学の中でも高い知名度を持つ心理的効果です。しかし、ローゼンタールの行った2つの実験やピグマリオン効果そのものへの批判は少なくないことが現状です。

たとえば、ローゼンタールが実施した実験についての批判には、以下の数点が挙げられます。

  • ローゼンタールはネズミを使った実験を根拠にしている(動物実験のため、臨床実験よりも説得力に欠ける)
  • 小学生を対象にした実験に再現性がない(ローゼンタールと同じ手順で実験の再現が行われたが、ローゼンタールと同じ結果が得られなかった)
  • 小学生を対象にした実験において、教師は本当に「知能が高い」とされた児童に期待の眼差しを向けたのかが不明確である。
  • また何を持って「期待を向けた」とするのかについても不明瞭である(たとえば、「期待していることを直接児童に伝える」「これまで以上に児童への個別的な指導を行うことを提案する」など)

心理学研究において、実験の再現性の有無はその理論の信頼性を大きく左右します。物質の変化と異なり、変化しやすい人の心を扱う分野である以上、一定の結果が求められるためです。

しかし、ピグマリオン効果の場合、

  • 実験は再現されず、ローゼンタールの行った実験のみでの成功となってしまっているため、理論の正当性は証明されていない
  • また、「教師が児童に期待の眼差しを向けていたのか」「児童や教師の期待を感じたのか」の2点についても、ローゼンタールの実験では明確にされていない

といった問題が指摘されています。

実際、知能テストを受けたことによって児童の積極性が増大した(児童が学習へのやる気を出した)ために成績が向上したことも、十分に考えられます。しかし、ピグマリオン効果を支える理論に関して、今後更なる研究が重ねられることが期待されます。

2章のまとめ
  • ロバート・ローゼンタールは、ピグマリオン効果を証明するために、大学生と小学生に対して異なる実験をおこなった
  • ローゼンタールの実験は、その再現性の有無や内容に関して批判がある
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3章:ピグマリオン効果を学ぶ本

どうでしょう?ピグマリオン効果の概要をつかめることができましたか?

ここで紹介した内容はあくまでも心理学という学問における議論の一部です。ぜひ以下の書物にあたり理解を深めていってください。

おすすめ本

オススメ度★★★ 亀田達也(監修)『眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学』(日本文芸社)

学校・家庭・会社などの日常場面の出来事と、社会心理学の理論を結び付けて紹介されている本です。絵や図も多く、初めて心理学に触れる人にもおすすめの一冊です。

オススメ度★★★ 服部環・外山美樹 (編)『スタンダード教育心理学』 (サイエンス社)

教育現場における心理学の利用方法について、詳しく解説されています。ピグマリオン効果をはじめ、実際に教育現場で活用しやすい効果について解説されているため、心理学にあまり馴染みのない方でも読み進めやすい一冊です。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • ピグマリオン効果とは、ある人が他者から期待されることによって、実際にその人の能力が向上するという心理的効果のことである
  • ゴーレム効果とは、周囲から期待されない人は、実際にその能力が低下する効果である
  • ロバート・ローゼンタール実験は、その再現性の有無や内容に関して批判がある

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参考文献

  • 中澤 潤『よくわかる教育心理学』(ミネルヴァ書房,2008)
  • 無藤隆 , 森敏昭, 遠藤由美, 玉瀬 耕治 (編)『心理学 新版』(有斐閣,2004)
  • 服部環・外山美樹 (編)『スタンダード教育心理学』(サイエンス社,2013)