心理学

【セルフ・ハンディキャッピングとは】例・克服法までわかりやすく解説

セルフ・ハンディキャッピングとは

セルフ・ハンディキャッピング(Self-handicapping)とは、あることが失敗すると予測されるときに、自分が不利な状況にいることを主張したり、自分を不利な状況に置こうとすることです。

テスト期間にセルフ・ハンディキャッピングをおこなった経験がある方が多いのではないでしょうか?では一体、どのようにすればセルフ・ハンディキャッピングを克服できるのでしょうか?

この記事では、

  • セルフ・ハンディキャッピングの意味・例・原因
  • セルフ・ハンディキャッピングの心理学的実験

をそれぞれ解説していきます。

好きな箇所から読み進めてください。

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1章:セルフ・ハンディキャッピングとは

1章では、セルフ・ハンディキャッピングの全体像を提示します。セルフ・ハンディキャッピングの心理学的実験に関心のある方は、2章から読んでみてください。

このサイトでは複数の文献を参照して、記事を執筆しています。参照・引用箇所は注1ここに参照情報を入れますを入れていますので、クリックして参考にしてください。

1-1: セルフ・ハンディキャッピングの意味

冒頭の確認となりますが、セルフ・ハンディキャッピングとは、

失敗が予測されるときに、自分が不利な状況にいることを主張したり、自分を不利な状況に置こうとすること

です。

皆さんもテストの前にこんな会話をしたことがあるのではないでしょうか?「昨日全然勉強してないわ」とか「三日くらい寝てない…」とかといったものです。これらの発言はセルフ・ハンディキャッピングにあたります。

セルフ・ハンディキャッピングには2種類のハンディキャッピングがあります。

  1. 主張的セルフ・ハンディキャッピング・・・自分自身が不利な状況にあることを主張するようなもの
  2. 獲得的セルフ・ハンディキャッピング・・・実際に徹夜して睡眠不足になるとか、勉強を全くせずにテストに挑むといった、実際に自分にハンディキャップをかけるようなもの

これらのセルフ・ハンディキャッピングは、テストでいい点をとるという目標を考えたときには適応的ではありません。睡眠をしっかりとったほうがテストには集中できますし、勉強をしないで点数がとれるわけがありません。

1-2: セルフ・ハンディキャッピングの原因

では、なぜこのようなことをしてしまうのでしょうか?このことを説明するために、まず自己呈示について説明したいと思います。

自己呈示とは、自分についてのある印象を他の人に与えるための行動のことを意味しています。他者にこう見られるためにこういう行動をしよう、といったものがこれにあたります。このセルフ・ハンディキャッピングというのはその自己呈示の方法の1つです。

自己呈示には大きく分けて2通りあるといわれています。ひとつが「主張的自己呈示」と呼ばれるもので、もう1つが「防衛的自己呈示」と呼ばれるものです2太幡直也「第1章 自己・態度-自分自身や物事を理解する心-」村井潤一郎(編)藤田哲也(監修) 『絶対役立つ社会心理学 日常の中の「あるある」と「なるほど」を探す』 1-28頁 ミネルヴァ書房。それぞれ解説していきます。

1-2-1: 主張的自己呈示

主張的自己呈示というのは、特定の他者に積極的に印象を持たれようとすることです。主張的自己呈示は、5つに分類されることが知られています3Jones, E. E., & Pittman, T. S. (1982). Toward a general theory of strategic self-presentation. Psychological perspectives on the self, 1(1), 231-262.

  • 他者の好意を得るための「取り入り」
  • 自分の能力を高く見せるための「自己宣伝」
  • 道徳的な人間であることを示そうとする「示範」
  • 自分自身の危険性を示そうとする「威嚇」
  • 自分自身が弱い存在であることを示そうとする「哀願」

これらの主張的自己呈示の特徴は、ある印象を持たせるために行うものであるという点です。

1-2-2: 防衛的自己呈示

後者の防衛的自己呈示というのは、自分自身の印象が悪くなることを防ごうとする自己呈示です。たとえば、失敗した時に言い訳をするような弁明行為や、自分の否を認めず正当化するといった行為はこれにあたります。つまり、(成功するかどうかはともかく)、自分自身に対する悪い印象を少しでも軽減しようするような行為がこれにあたります。

セルフ・ハンディキャッピングは、後者の防衛的自己呈示に含まれます。セルフ・ハンディキャッピングは自己の背負っているハンディキャップを主張する行為です。そのため、何か失敗をしたときに、その原因をハンディキャップに帰属させることが出来ます。

つまり、以下のようなことがいえます。

  • 失敗しても失敗の原因を、自分の能力や性格といった内面的性質ではなく、その時々の環境や状況といった外的なものに帰結させることが出来る
  • セルフ・ハンディキャッピングは、失敗の原因が、そのハンディにあったことにすることで、失敗による他者からの印象の悪化を防ぐために行われる

また、このセルフ・ハンディキャッピングは、自分への言い訳を用意し、自尊感情を維持するための役割を果たしていることが知られています。



1-3: セルフ・ハンディキャッピングの例

セルフ・ハンディキャッピングは、さまざまな場面で行われますが、その中でも想像しやすいのはやはり学習場面でしょう。セルフ・ハンディキャッピングは、多くの場合、自分自身が気づかないうちに行っていることが知られています。

ここでは、セルフ・ハンディキャッピングが行われている例を示しながら、負のスパイラルに陥りやすいセルフ・ハンディキャッピングの性質について説明したいと思います。

テストまで残り1週間の場面を想像してみてください。

  • A君は「まだ7日もあるし、余裕でしょ」といって、マンガやゲームをして遊んでいます
  • もちろんこれだけでは、本気でそのように思っているのか、怠惰なだけなのか、セルフ・ハンディキャッピングなのかは判断することできません
  • しかし、多くの場合、セルフ・ハンディキャッピングは自覚的には行われません。今回は例ですので、「A君が勉強しない」ということを指して、セルフ・ハンディキャッピングをしている状態だとしましょう

さて、そこから何日か日にちがたち、テストまでの残り日数が4日となりました。A君はまだまだ勉強をしません。上述したように、セルフ・ハンディキャッピングは失敗するかもしれないと思う時に、その失敗の原因を自分の内的性質に帰属しないように行うものです。

A君は勉強しないことにより、「テストで点が取れなかったのは、勉強しなかったからである、勉強していれば点数をとる能力があった」ということにしたいわけです。ですが、よく考えてみてください。残り7日の時点で勉強していないという状況と、残り4日の時点で勉強していないという状況どちらのほうが“失敗するかもしれない”状況でしょうか。

もちろん、それは後者です。より失敗の可能性が高まったいま、他者からの印象の悪化を防ぐことと、自己評価の低下を防ぐためには、より大きなハンディが必要です。そしてついにテスト前日、Aくんはまだ一切の勉強をしていませんでした。今から勉強しては、せっかく付けたハンディキャップの意味がなくなってしまいます。結局Aくんは全く勉強をせずにテストを受けました。

セルフ・ハンディキャッピングのような回避的な方略は、このような負のスパイラルに陥りやすいことが知られています。その回路はこうです。

  • ある問題を回避することで問題が生じる場合、その問題の解決のためには、はじめよりより大きな労力が必要になる
  • たとえば、勉強しなければいけない内容を10としたとき、7日前から勉強する場合1日当たりの勉強量は全体の10/7で済むが、4日前から行う場合、1日当たり10/4行う必要がある
  • つまり、同じ問題を解決するためには、より大きな労力が必要となる
  • 回避を続けた結果、大きくなった問題を解決するのは一般的にはじめより難しいので、また回避を行うしかない。このようにして、負のスパイラルが生じる

もちろん、セルフ・ハンディキャッピングを行うと必ず負のスパイラルに陥ってしまうわけではありません。むしろ時には、セルフ・ハンディキャッピングのように、自分の自尊感情の維持するために、外的なものに責任を転嫁することは、むしろ適応的ともいえます。

そのため、セルフ・ハンディキャッピングを適応的ではないというのには慎重になる必要がありますが、負のスパイラルのような適応的ではない状況に陥ることがあるという意味で、セルフ・ハンディキャッピングを回避する必要性が議論されています。

1章のまとめ
  • セルフ・ハンディキャッピングとは、あることが失敗すると予測されるときに、自分が不利な状況にいることを主張したり、自分を不利な状況に置こうとすることである
  • セルフ・ハンディキャッピングは、失敗の原因が、そのハンディにあったことにすることで、失敗による他者からの印象の悪化を防ぐために行われる

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2章:セルフ・ハンディキャッピングの心理学的実験

さて、2章ではセルフ・ハンディキャッピングに関する心理学的な実験を紹介していきます。

2-1: セルフ・ハンディキャッピングの有無を調べる心理実験

バーグラスとジョーンズ4Berglas, S., & Jones, E. E. (1978). Drug choice as a self-handicapping strategy in response to noncontingent success. Journal of personality and social psychology, 36(4), 405.は、セルフ・ハンディキャッピングは自分の能力によって成功したという確信が持てない状況下で行われるだろうという仮説を立てて実験を行いました。より簡単に説明すると、次のような仮説です。

バーグラスとジョーンズの仮説

何かに成功したとしても、自分の能力による成功だと自信が持てないときには、次に同じ問題を解いたときに失敗しても良いように、成功の原因を自分の能力以外のところに帰属させるだろう

そして実験は、以下のように実施されました。

  • 実験参加者を「薬品が認知的な作業に与える影響を調べるための実験」だと説明して募集した
  • そして、薬を飲む前に実力を測定するといって、ある認知課題を行った
  • この時、認知課題には2種類あり、1つは解決が可能なもの、もう1つは解決が不可能なものとなっていた(※ここでは解決可能な課題が与えられたグループを「解決可能群」、解決不可能な課題を与えられたグループを「解決不可能群」と呼びます)。
  • 認知課題を行った後、それぞれの群の半分の参加者には、成績に関係なく非常に優秀な成績であったというフィードバックを行い、もう半分の参加者は何のフィードバックも与えなかった

つまり、解決不可能群の参加者は自分の課題の成績に自信がない(解けない課題を行ったので)にも関わらず、成績が良かったと伝えられたということです。

そして、その後、薬を飲んでから同じ課題を行ってもらうと参加者に説明しました。参加者は2つの薬から好きな薬を選ぶことが出来ました。薬品Aは、認知課題を促進する効果があり、薬品Bは認知課題を妨害する効果があると実験参加者に伝えられました。

つまり、次の課題を行う時に、薬品Bを選んだ場合に、実験参加者がセルフ・ハンディキャッピングを行ったと考えるということです。

もし、自分の回答に自信がないのに成功してしまった場合にセルフ・ハンディキャッピングを行うのであれば、解決不可能群であり、成績が良かったとフィードバックを受けた人が、より多く課題を妨害する薬を選択するはずです。

実験の結果、予測の通り、解決不可能群であり、成績が良かったとフィードバックを受けた参加者は、課題を妨害する薬品Bを選択した割合が非常に高いとういうものでした。このことは、自信のない成功をすると、次に同じことを行う時に失敗しても面目をつぶさないように、セルフ・ハンディキャッピングを行いやすいことを示しています。

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3章:セルフ・ハンディキャッピングの克服法

セルフ・ハンディキャッピングは失敗するかもしれない状況で起こるというようにこれまで説明してきました。そのように考えるとセルフハンディキャッピングを克服したいと考える場合、未来に対して楽観的になるほうが良いように考えられます。しかし、本当にそうでしょうか?

光浪はセルフ・ハンディキャッピングと、認知的方略の関係を検討しました5光浪睦美「認知的方略の違いがセルフ・ハンディキャッピングやストレス対処方略の採用に及ぼす影響」『パーソナリティ研究』19(2), 157-169.。認知的方略とは、個人がある目標を追求するときの期待、評価、計画、努力、回顧の一貫したパターンのことです。

具体的には、過去の自分のパフォーマンスのどのように認知しているかや、未来の自分のパフォーマンスをどのように期待するかについての傾向のことです。簡単にいえば、過去や未来についてどの程度楽観的かという傾向です。

この認知的方略は、過去のパフォーマンスについての認知と将来のパフォーマンスについての期待のそれぞれに対して、楽観的かどうかで4つのパターンに分類されます。

  • 過去の自分のパフォーマンスに対してポジティブな認知をもち、未来のパフォーマンスについてもポジティブな期待を持つ認知的方略を「方略的楽観主義」という
  • 対して、過去のパフォーマンスについてはポジティブな認知をしているが、将来に対する期待は低い認知的方略を「防衛的悲観主義」という
  • 対して、過去のパフォーマンスについてポジティブな認知を持っていない代わりに、未来のパフォーマンスについてはポジティブな期待を持つ認知的方略を「非現実的楽観主義」という
  • 未来のパフォーマンスについてもネガティブな期待を持つ認知的方略を「真の悲観主義」という

光浪は、大学生を対象に、学業に対してこれらのどの認知的方略を用いているかによってセルフ・ハンディキャッピングの使用傾向が異なるかを検討しました。その結果、セルフ・ハンディキャッピングの傾向は、過去のパフォーマンスについてポジティブな認知を持っていない方が、ポジティブな認知をしている場合に比べ高いことが示されました。

つまり、自分の過去のパフォーマンスについてうまくいっているという認識を持っていない場合には、将来のパフォーマンスがうまくいくと期待している場合もうまくいかないと期待している場合も、セルフ・ハンディキャッピングを行いやすいということを示しています。

この研究結果は、セルフ・ハンディキャッピングを克服するために単に楽観的になればいいとか、悲観的になるのをやめればいいとかそういうことではないということを示唆しています。

もちろん、この光浪の研究はセルフ・ハンディキャッピングの克服を検討したものではありませんので、この研究成果からセルフ・ハンディキャッピングの克服について結論を出すことはできません。

しかし、過去のパフォーマンスに対してポジティブな認知をもつほうがセルフハンディキャッピング傾向は低いということから、セルフ・ハンディキャッピングの克服には過去のパフォーマンスに対してポジティブな認知を行うことが重要だと考察できます。

過去のパフォーマンスに対してポジティブな認知を行うためには、まずは第一歩を踏み出すことが重要です。なぜなら、やってみなければポジティブな経験を持つことなどないのですから。

4章:セルフ・ハンディキャッピングを学ぶ本と論文

セルフ・ハンディキャッピングを理解することはできましたか?セルフ・ハンディキャッピングに少しでも関心をもった方のためにいくつか本を紹介します。

おすすめ書籍

オススメ度★★★ 市川伸一『勉強法の科学: 心理学から学習を探る』(岩波書店)

セルフ・ハンディキャッピングに関する詳しい内容は載っていないですが、セルフ・ハンディキャッピングをはじめとする学習に影響を与える心理的要因に関心がある方にお勧めです。とても平易な内容のため初学者向けです。より詳しいことが知りたい場合には不向きです。

Berglas, S., & Jones, E. E. (1978). Drug choice as a self-handicapping strategy in response to noncontingent success. Journal of personality and social psychology, 36(4), 405.

2章で紹介した実験の原典です。読むのは容易ではないですが、セルフ・ハンディキャッピングという実験的に取り出すのが難しい題材を、薬の選択によって取り出した実験方法は巧みで一読の価値はあると思います。セルフハンディキャッピングを研究の対象としたい方向けです。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • セルフ・ハンディキャッピングとは、あることが失敗すると予測されるときに、自分が不利な状況にいることを主張したり、自分を不利な状況に置こうとすることである
  • 自信のない成功をすると、次に同じことを行う時に失敗しても面目をつぶさないように、セルフ・ハンディキャッピングを行いやすい
  • セルフ・ハンディキャッピングの傾向は、過去のパフォーマンスについてポジティブな認知を持っていない方が、ポジティブな認知をしている場合に比べ高い

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参考文献

  • Berglas, S., & Jones, E. E. (1978). Drug choice as a self-handicapping strategy in response to noncontingent success. Journal of personality and social psychology, 36(4), 405.
  • Jones, E. E., & Pittman, T. S. (1982). Toward a general theory of strategic self-presentation. Psychological perspectives on the self, 1(1), 231-262.
  • 光浪睦美「認知的方略の違いがセルフ・ハンディキャッピングやストレス対処方略の採用に及ぼす影響」『パーソナリティ研究』19(2), 157-169.
  • 太幡直也「第1章 自己・態度-自分自身や物事を理解する心-」村井潤一郎(編)藤田哲也(監修) 『絶対役立つ社会心理学 日常の中の「あるある」と「なるほど」を探す』 1-28頁 ミネルヴァ書房