経済学

【パレート最適とは】具体例とエッジワースボックスからわかりやすく解説

パレート最適とは
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パレート最適(Pareto efficiency)とは、「他の誰かの状態(効用)を悪化させないかぎり、誰かの状態(効用)も改善できない状態」1奥野正寛(1990)『ミクロ経済学入門』日本経済新聞出版社, 125-126頁と定義され、社会的に望ましい分配のひとつの条件とされています。しばしば、「パレート効率性」とも呼ばれます。

パレート最適は、経済学における資源分配の効率のひとつの基準となる状態であり、限られた資源が市場において最大限活用されているかを示す指標です。

ここで言う資源とは、天然資源から生産活動で生み出された財やサービスに至るまで、分配・所有・消費可能なすべてのモノの総称を表しており、使用者の効用2効用とは、財やサービスを消費することで得られる主観的な満足の度合いのことを変化させるものです。

定義を読んだだけで、具体的なイメージを思い浮かべるには少し難しいですが、経済学では頻繁に利用される考え方であり基礎となる概念です。

この記事では、

  • パレート最適の意味
  • パレート最適の定理
  • パレート最適の貢献と限界

をそれぞれ解説していきます。

好きな箇所から読み進めてください。

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1章:パレート最適とは

1章ではパレート最適を概説します。パレート最適の貢献や限界を知りたい方は、2章から読み進めてください。

このサイトでは複数の文献を参照して、記事を執筆しています。参照・引用箇所は注3ここに参照情報を入れますを入れていますので、クリックして参考にしてください。

1-1:パレート最適の意味

パレート最適を理解するために、AさんとBさんでひとつのホールケーキを分け合って食べる状況を想像するとわかりやすいです。

  • AさんとBさんでホールケーキをちょうど半分ずつ分け合って食べた時、ホールケーキはすべて分配されることになり、ケーキは最適に分配されたと考えることができる。
  • この状態は「パレート最適である」と呼ばれ、最適な資源分配が実現したとみなされる

この状態をさらに変化させるため、Bさんのケーキをさらに2分割して、AさんとBさんで分配し直す行為を考えましょう。

  • Aさんは4分の3のケーキを手に入れるが、Bさんは4分の1のケーキしか手に入らなくなる
  • これは一見すると不公平な分配に見えるが、資源の分配効率の面から見ると、ホールケーキは余らずにすべて分配されており、「パレート最適である」状態は変わらない

では、「パレート最適ではない」状態とはどのような状態でしょうか?

今度はホールケーキを3等分し、AさんとBさんで一切れずつ、つまり3分の1ずつ分配した時、ホールケーキは一切れ余り、すべて分配されなかった状態を想定してください。

この状態は「パレート最適でない」と表現され、資源の分配効率の面からは望ましくないと判断されます。しかし、余った一切れをAさんとBさんでさらに分割し、ホールケーキをすべて分配できれば「パレート最適」となります。

こうした「パレート最適でない」状態を「パレート最適である」状態に近づけることを「パレート改善」と呼びます。

上の事例からわかるように、パレート最適はいかに資源を無駄なく分配するかを考えるために用いられる概念です。注意すべきは、資源の分配効率の面から見て最適なのであって、個人間の平等性や分配方法などは考慮にいれない点です。



1-2:厚生経済学におけるパレート最適

すべての市場が完全競争の場合、つまり消費者・生産者がともに市場価格に影響力を持ちえない場合、すべての市場は同時に均衡していると表現され、ある意味で望ましい資源分配が実現されるとされています。

これは、ミクロ経済学においてひとつの理想的な状態であるとされ、次の2つの定理が導かれます。

1-2-1:第一定理

第一定理は、

「すべての市場が完全競争的なら、市場はつねにパレート効率的な状態を実現する」4奥野正寛(1990)『ミクロ経済学入門』日本経済新聞出版社 126頁

ことです。

たとえば、財の種類がワインとコーヒーの2つに限られ、生産活動はおこなわれておらず、消費者がすでに消費財を保有している経済を想定します。そして、以下の状況を仮定してみてください。

  • Cさんはワインを10杯、コーヒーを20杯保有しており、Dさんはワインを20杯、コーヒーを10杯保有している
  • 財の交換をしなければCさんとDさんはそれぞれ保有している財を消費し、効用を得る
  • そこで、もしCさんはもっとワインが欲しいと考え、Dさんはもっとコーヒーが欲しいと考えたとき、Cさんの保有するワインと、Dさんの保有するコーヒーをそれぞれ交換する
  • すると、両者の効用が高まる新たな組み合わせが発生し、資源がもたらす合計の効用は最大化する

※効用とは、ある財(たとえばコーヒー)を消費したときに得られる満足度のことで、経済学で多用される概念です。

このように、交換経済が完全に機能する前提であれば、パレート最適の定義である「他の誰かの状態(効用)を悪化させないかぎり、誰かの状態(効用)も改善できない状態」は常に維持されることになり、第一定理が成立します。

1-2-2:第二定理

第二定理とは、

「適当な一括税と一括補助金を使うことで、どんなパレート効率的な配分も、市場均衡として実現することができる」こと5奥野正寛(1990)『ミクロ経済学入門』日本経済新聞出版社 129頁

です。

第一定理では、あくまで資源分配の効率化の視点だけで定理を導きました。

しかし、もしCさんとDさんの所有するワインとコーヒーの数に差があり、Cさんはワイン、コーヒーともに10杯ずつ、Dさんはワイン、コーヒーともに20杯ずつ保有するといった状況であった場合、Cさんに分配される資源は少なくなり、分配の公平性に課題が生まれます。

そこで、政府の介入により税と補助金を導入し、多くの資源を持つDさんが、少ない資源しか持たないCさんに公平性の観点から資源を渡すことができれば、パレート最適を維持しつつも、分配の公平性も実現できます。この市場法則は厚生経済学の第二定理と呼ばれます。

こうした「効用」を中心として議論する厚生経済学は、功利主義という考え方をベースににしています。詳しくは以下の記事をご覧ください。

→功利主義について詳しくはこちら



1-3:パレート最適が分かるエッジワースボックス

上記の説明をもう少しわかりやすく理解するために、「エッジワークボックス」と呼ばれるグラフを用いてパレート最適を解説します。エッジワークボックスとは、2人の個人が2つの財を交換する、経済の実現可能な配分を分析するうえで非常に有用なグラフです。

まずは、1-2-1で用いた例を用いて、CさんとDさんの無差別曲線6無差別曲線とは、ある2つの財を消費者が消費する場合の、同じ効用が得られる組み合わせを結んだ曲線のことです。を作成します(図1)。

CさんとDさんの無差別曲線(図1「CさんとDさんの無差別曲線」筆者作成)

それぞれが独立した状況は、CさんとDさんの保有する財をもとに無差別曲線C1とD1が作成されます。ここでは、保有する財の数量や財に対する嗜好に変化がない限り、無差別曲線が変化することはありません。

こうして作成された2つの無差別曲線をひとつのグラフに合成することでエッジワークボックスが完成します(図2)。エッジワークボックスはCさんとDさんの保有する財の総量を合成したものであり、実現可能なすべての配分(組み合わせ)の集合を表することができます。

エッジワークボックス(図2「エッジワークボックス」筆者作成)

図2から、CさんとDさんの無差別曲線の交点aとbは、双方が保有する財を最大の効用にするための組みあわせであることがわかります。つまり、交換を前提としない経済であれば、交点aとbの財の組み合わせが、パレート最適のひとつの状態であると言えます。

一方で、交換経済であれば、CさんとDさんの双方の効用が高くなる網掛けxにおいて、より効用の高い組み合わせが生まれます。つまり、財の初期保有数が変化せずとも、交換という方法を用いることで、資源がもたらす効用はおのずと最大化し、パレート最適は常に維持される第一定理が導かれます。

一方で、CさんとDさんの所有するワインとコーヒーの数に差があり、Cさんの初期保有数が、Dさんの初期保有数に比べて少ない場合、エッジワークボックスは図3のようになります。

エッジワークボックスと第二定理(図3「エッジワークボックスと第二定理」筆者作成)

C2とD2の無差別曲線が作られます。このケースでも、第一定理が働いている限り、資源の最適分配は実現し、交点dが資源の最適分配の組み合わせとして導かれます。

しかし、初期保有数の少ないCさんは、初期保有数の多いDさんに比べて、交換経済下では配分される資源の数は少なくなり、パレート最適は機能していても、公平性に欠けた分配結果となります。

このとき、

  • 政府の介入により税と補助金を導入し、Dさんのもつ資源を税として徴収し、Cさんに補助金として渡すことができれば、Cさんの無差別曲線を右上のC3にシフトすることになる
  • つまり、パレート最適を維持しながら新たに交点eが生まれる

といえます。

もちろん、Dさんの無差別曲線はD3にシフトするため、Dさんの効用は低下しますが、パレート最適を維持しつつ、公平性を調整することが可能となります。

1章のまとめ
  • パレート最適とは、「他の誰かの状態(効用)を悪化させないかぎり、誰かの状態(効用)も改善できない状態」7奥野正寛(1990)『ミクロ経済学入門』日本経済新聞出版社, 125-126頁と定義され、社会的に望ましい分配のひとつの条件である
  • すべての市場が完全競争の場合、2つの定理が導き出せる

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2章:パレート最適の貢献と限界

パレート最適は、価格支配力をもつ経済主体が存在しない完全競争市場において達成され、そこでは各個人は最大の満足を得ると同時に、企業は利潤を最大化できるという重要な法則です。

つまり、

望ましい資源分配を実現するためには、企業による市場独占は好ましくなく、完全競争に近づけることこそ個人・企業ともに利益があることを理論的に示した

といえます。

このような貢献から、その後発展する厚生経済学の基礎となりました。

一方で、パレート最適はあくまで資源分配のみに関する理論であり、所得分配の公平性に関しては別の観点から議論しなければなりません。

実際に、第一定理を純粋に適用しようとすると、保有資源の少ない者に分配される資源が極端に少なくなるといった事象が発生することは、第二定理で説明した通りです。

資源分配に加え、公平性のある分配を実現するためには、複数間の経済状況の優劣を判断するための別の理論が必要となります。

しかし、第二定理においても、税や補助金という手段を用いてもパレート最適を維持できあすが、絶えず変化する個人持つ資源量や財に対する嗜好を正確に把握する方法までは言及されていません。つまり、あくまで理論的に格差を解消できることを示したに過ぎませんでした。

ただ、理論的に格差解消のための市場への政府介入の必要性を呈した貢献は大きく、いまでも経済状況の分析や、政策立案の前提となっている理論です。さまざまな条件下において、より効率的かつ公平な資源分配を実現するために用いられています。

実際の政治においては、分配を重視する政治のことを「福祉国家的政策」と呼び、特に戦後多くの国家で実行されました。

【福祉国家とは】3つの分類と誕生〜現代までをわかりやすく解説

また、分配の重要性については様々な議論があり、たとえば政治哲学から議論された「正義論」が有名です。

【正義論とは】二つの原理・無知のヴェールから批判までわかりやすく解説

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3章:パレート最適に関するおすすめ本

パレート最適を理解することはできましたか?

最後に、おすすめ本を紹介します。

おすすめ書籍

オススメ度★★★ 奥野正寛『ミクロ経済学入門』(日本経済新聞出版社)

ミクロ経済全体がわかりやすくまとめられており、初学者にもおすすめの1冊です。パレート最適をより理解するための「無差別曲線」や「企業活動とパレート最適」もしっかり解説されています。

オススメ度★★木暮太一『落ちこぼれでも分かるミクロ経済学の本』(マトマ出版)

ミクロ経済学の概要を学ぶのに、初心者にむけてとことん易しくかかれたこの本もおすすめです。入門以前の読み物として読んでみてはいかがでしょうか。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • パレート最適とは、「他の誰かの状態(効用)を悪化させないかぎり、誰かの状態(効用)も改善できない状態」8奥野正寛(1990)『ミクロ経済学入門』日本経済新聞出版社, 125-126頁と定義され、社会的に望ましい分配のひとつの条件である
  • 望ましい資源分配を実現するためには、企業による市場独占は好ましくなく、完全競争に近づけることこそ個人・企業ともに利益があることを理論的に示した

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