経営学

【マーケティングミックスとは】4Pから4Cを事例とともにわかりやすく解説

マーケティングミックスとは

マーケティングミックス(Marketing Mix)とは、「企業がターゲットとする市場で目標を達成するために、複数のマーケティング要素を組み合わせること」1野村総合研究所(2008)『経営用語の基礎知識 第三版』ダイヤモンド社 64頁です。

マーケティングミックスは、ジェローム・マッカーシーが1960年に発表した『ベーシック・マーケティング』で提唱した4Pを中心としたマーケティングツールです。

製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)の頭文字を取ったマーケティングにおいて最も有名な分析フレームワークのひとつとなっています。

この記事では、

  • マーケティングミックスの背景や特徴
  • マーケティングミックスに関連する研究

などについて解説します。

好きな箇所から読み進めてください。

このサイトは人文社会科学系学問をより多くの人が学び、楽しみ、支えるようになることを目指して運営している学術メディアです。

ぜひブックマーク&フォローしてこれからもご覧ください。→Twitterのフォローはこちら

Sponsored Link

1章:マーケティングミックスとは

まず、1章ではマーケティングミックスを概説します。

このサイトでは複数の文献を参照して、記事を執筆しています。参照・引用箇所は注2ここに参照情報を入れますを入れていますので、クリックして参考にしてください。

1-1:マーケティングとは

そもそも、マーケティングとは、

「企業が、顧客との関係の構造と維持を、さまざまな企業活動を通じて実現していくこと」3石井淳蔵、栗木契、嶋口光輝、余田拓郎著(2013)『ゼミナール マーケティング入門』日本経済新聞出版社 32頁

です。

「マーケティング」という言葉の学術的な定義がなされるはるか以前から、物品やサービスの交換や取引がおこなわれる商業活動では、マーケティングの概念はごく自然に用いられていました。

たとえば、世界ではじめての株式会社として設立された有名なオランダ東インド株式会社も、香辛料や陶磁器、生糸などの物品を主に西洋とアジアの国々間で取引していました。

そして、ヨーロッパ諸国の顧客のみならず、異国の顧客とも継続的な関係を築いていたことから、マーケティングをおこなっていたと考えることができます。

※オランダ東インド株式会社についてはこちら→【オランダ東インド会社とは】設立から解散の歴史をわかりやすく解説

マーケティングが成立するためには、次の5つの条件が整わなければなりません4フィリップ・コトラー、ケビン・レーン・ケラー著、恩蔵直人訳(2014)『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 基本編(第三版)』丸善出版 7頁

  1. 少なくとも2つのグループが存在する
  2. それぞれのグループが、他方にとって価値のありそうなものを持っている
  3. それぞれのグループが、コミュニケーションを受け渡しができる
  4. それぞれのグループが、自由に交換の申し入れを受け入れたり拒否したりできる
  5. それぞれのグループが、他方と取引することが適切で好ましいと信じている

これらの条件からも、誰かが誰かに何かを与えるがお返しに有形の物品は何も受け取らない「譲渡」や、政治的または経済的支配等により有形の物品等を献上させる「献上」「搾取」はマーケティングには当てはまらないことがわかります。

一方で、公約と引き換えに政治家が有権者から票を集める選挙活動や、信仰やそこから生じるベネフィットと引き換えに協会が信者から寄付金を集める宗教活動などは、交換の概念が発生していることから、広義の意味ではマーケティングと考えることができます。

このようにマーケティングの対象とは必ずしも有形財やサービスに限らず、イベントや経験、人や場所、情報といったものも対象になると考えます。



1-2:マーケティングミックスが生まれた背景

マーケティングとは、かつて「製品を売り込む技術」と考えられていました。

  • たとえば、自動車メーカー「フォード社」の創業者ヘンリー・フォードは、自社のマーケティング戦略について「顧客は好みの色の車を買うことができる。好みの色が黒である限りは。」5フィリップ・コトラー, ヘルマワン・カルタジャヤ, イワン・セティアワン著, 恩藏 直人 監訳, 藤井清美訳(2010)『マーケティング3.0』朝日新聞出版と言い放ち、セールスにおける製品中心の考え方を肯定した
  • このように製品志向で製品販売を目的とする製品管理に重きをおいたマーケティングは、「製品中心のマーケティング」と呼ばれ、1960年代以前においてマーケティングの中心的な考え方となった

そして、「製品中心のマーケティング」を支えるフレームワークとして、1950年ごろに誕生したのが「マーケティングミックス」という考え方です。

このマーケティングミックスという言葉自体はニール・ボーデンという学者によって生み出されましたが、この考えを整理・発展させ4Pというフレームワークにあてはめ提唱したのがジェローム・マッカーシーです。

マーケティングミックス図1 マーケティングミックス6石井淳蔵、栗木契、嶋口光輝、余田拓郎著(2013)『ゼミナール マーケティング入門』日本経済新聞出版社 31頁

もっともマーケティング研究における世界的権威であるフィリップ・コトラーは、このマーケティングミックスを中心とする「製品中心のマーケティング」を「マーケティング1.0」と呼び、過去のマーケティング・フレームワークとして紹介しています。

しかし、このマーケティングミックスという概念は、現代のビジネスにおいてもまだまだマーケティングの共通言語として用いられているものであり、その存在意義を失ったわけでありません。



1-3:マーケティングミックスとは

コトラーは、マーケティングミックスにおけるマーケター7マーケティングを企画する立場の者の責務として「消費者に向けて価値を創造し、伝達し、提供する能力を最大化するようなマーケティング活動を考案し、マーケティング・プログラムを作成することである」8フィリップ・コトラー、ケビン・レーン・ケラー著、恩蔵直人訳(2014)『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 基本編(第三版)』丸善出版 13頁と述べています。

先でも述べたようにマーケティングの中心にあるのは、財やサービスの交換や取引です。

しかし、いくら買い手側の求める財やサービスのイメージが明確であっても、買い手がそれを手に入れる方法を知らなかったり、その財やサービスの価値を適切に評価できなければマーケティング活動は成立しません。

そこで重要となるのが、売り手側の「マーケティングの4P」と呼ばれる、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)の4つの視点です。

1-3-1:製品(Product)

製品は、

市場において人々が対価を支払い購入しようとする直接的な対象

です。

4Pのカテゴリーとしては、便宜上「製品」と記されますが、正確にはサービスもその対象に含まれます。

売り手がどのような製品やサービスを提供しようとしているかは、顧客との関係を構築するにあたり中心的な問題となります。

売り手が、新たな製品やサービスを買い手に向けて販売しようとしているとき、その製品やサービスはなんらかの優れた機能や特性、品質を備えている必要があります。

一方で、製品やサービスの価値が機能や品質だけで決まるわけでもありません。製品のネーミングや、デザイン、パッケージ、サイズなども価値に加わる重要な要素です。

たとえば、従来の製品のパッケージに流行りのアニメキャラクターの絵を載せて販売したり、単身世帯用に従来の製品よりもサイズダウンした製品を企画したりするようなことも、製品のマーケティングを考える上では非常に重要です。

1-3-2:価格(Price)

価格は、

売り手が製品やサービスの対価として買い手に支払いを求める金額

です。

基本的に価格は、売り手が製品やサービスを提供するのに必要なコストを回収し、適正な利潤を得ることができるように設定されますが、その設定の仕方にあたってはいくつかの選択肢があります。

  • たとえば、同一の製品やサービスであっても、それを提供する場所や時間によって価格を変えたり、提供する数量の増加によって割引価格を適用するケースが考えらる
  • さらに対価の支払方法についても、現金のみならずクレジットカードや銀行振り込み、キャッシュレス決済など多様な支払方法が存在している

これらのような多様な決済方法を用意しておくことも価格のマーケティングを考える上では重要です。



1-3-3:流通(Place)

流通は、

買い手が財やサービスを手に入れる際の時間的あるいは地理的な制約などに関する購入手段

です。

買い手がその製品やサービスを必要としており、購入可能な水準に価格が設定されていたとしても、買い手が欲しいタイミングで製品を購入できなかったり、販売している場所まで向かうことができなければマーケティングは成立しません。

かつて流通における時間的または地理的制約は、買い手と売り手双方にとって克服困難な制約でした。しかし、現代では情報処理技術の進展や、小口配送サービスの発達によって、多様な流通の形態を選択することが可能になってきています。

1-3-4:プロモーション(Promotion)

プロモーションは、

製品やサービスの存在や価値を買い手に知ってもらうための手段

です。

いかに優れた製品やサービスであっても、買い手がその用途や有用性を知らなければ、人々はその製品を購入しようとは思いません。

プロモーションのもっとも代表的な手段は、広告です。売り手のプロモーションは、テレビCMやチラシ、最近ではインターネットなどさまざまなメディアを通じておこなわれます。

またメディアを媒介しなくても、店頭での販売員を通じた接客や、サンプル・クーポンの配布なども売り手のプロモーション手段のひとつと考えることができます。

1章のまとめ
  • マーケティングミックスとは、「企業がターゲットとする市場で目標を達成するために、複数のマーケティング要素を組み合わせること」である
  • 売り手側の「マーケティングの4P」と呼ばれる、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)の4つの視点が大事である

Sponsored Link

2章:4つのPと4つのC

4Pが企業と顧客の関係を構築するための手法や活動を売り手側目線から分析したのに対して、それを買い手側目線から分析したのが「4つのC」(4C)です。

4Cと4Pは、それぞれの項目が対応関係になっており図2のように表すことができます。

4C図2 4C9石井淳蔵、栗木契、嶋口光輝、余田拓郎著(2013)『ゼミナール マーケティング入門』日本経済新聞出版社 36頁

2-1:顧客の抱える問題の解決(Customer solution)

4Pの「製品(Product)」にあたるのが、「顧客の抱える問題の解決(Customer solution)」です。

4Pでは、売り手が買い手に提供するのは、製品であってもサービスであっても、買い手が認知できる具体的なモノである必要がありましたが、4Cの視点においては買い手の抱える「問題」がどのように解決されるかが注目されます。

たとえば、「本を読みたい」という「問題」を抱えた顧客に対して、企業は次のような方法で「製品」を提供することができます。

  • 本屋として、顧客に本を有償で販売する
  • レンタルショップとして、顧客に本を有償でレンタルする
  • 喫茶店として、顧客に本を無償で貸し出す
  • 図書館として、顧客に本を無償で貸し出す

このようにひとつの「問題」でも多様な解決策が存在することがわかります。4C分析は、製品開発を顧客目線から考えることで、より顧客のニーズに応えた製品を開発できる効果が期待できます。

2-2:顧客が支払う費用(Cost)

次に「価格(Price)」にあたるのが、「顧客が支払う費用(Cost)」です。

「価格」がいわば「製品」の値付けであったのに対して、その「製品」を購入してもよいと思える「費用」を顧客視点から分析したもの

たとえば、お菓子という同様の製品であっても、それが日頃から家庭で消費する日常品であるか、あるいは旅先でついつい購入してしまうお土産のような非日常品であるかによって、顧客が支払っていいと思う「費用」は大きく変わります。



2-3:顧客の購入時の利便性(Convenience)

次に「流通(Place)」にあたるのが、「顧客の購入時の利便性(Convenience)」です。

「流通」では、企業が「製品」をどのような手段で顧客に提供するかが考慮されましたが、「利便性」では、顧客が「製品」をいかに便利に購入できるかが注目される

たとえば、コンビニエンスストアは、一般的なスーパーマーケットより価格の高い商品を取り扱っているにもかかわらず、その立地をスーパーが出店できない狭小スペースに設けたり、営業時間をスーパーがやっていない深夜まで延長するなど「利便性」を追求することで、大きな市場を確立しました。

2-4:顧客へのコミュニケーション(Communication)

最後に「プロモーション(Promotion)」にあたるのが、「顧客へのコミュニケーション(Communication)」です。

「プロモーション」が、どちらかというと売り手側発信の一方的な伝達やアピールであったのに対して、「コミュニケーション」は売り手と買い手の双方向の意思疎通を重視する

たとえば、コミュニケーションを強化するために、企業は顧客の要望を聴くためのお客様相談室を設けたり、自社のホームページに問い合わせ用のページを設けたりすることで、企業と顧客が直接やりとりできる環境の構築に注力します。

このように、4Pがあくまで「製品中心のマーケティング」であったのに対して、4Cはその着想を顧客に移すことで、企業が「顧客中心のマーケティング」を実現するための具体的な手法を提供しています。

そして、コトラーはこの考え方を「マーケティング2.0」と呼ぶことで、時代の変化にあわせた新たなマーケティング思想への転換を論じていきます。

Sponsored Link

3章:マーケティングミックスについて学べるおすすめ本

マーケティングミックスを理解することはできました?少しでも関心をもった方のためにいくつか本を紹介します。

おすすめ書籍

フィリップ・コトラー、ケビン・レーン・ケラー『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 基本編(第三版)』(丸善出版)

「近代マーケティングの父」フィリップ・コトラーによって著されたマーケティングの教科書です。世界中で読まれている同著は、マーケティングに携わる者であれば必ず1度は目を通しておきたい内容です。

石井淳蔵、栗木契、嶋口光輝、余田拓郎『ゼミナール マーケティング入門』(日本経済新聞出版社)

大学の商学部や経営学部生向けに書かれたマーケティングの入門書です。マーケティングに関する幅広い論点がバランスよく取り上げられており、まさに入門書として最適な1冊です。

created by Rinker
¥2,579
(2024/04/27 19:35:49時点 Amazon調べ-詳細)

学生・勉強好きにおすすめのサービス

一部の書籍は「耳で読む」こともできます。通勤・通学中の時間も勉強に使えるようになるため、おすすめです。

最初の1冊は無料でもらえますので、まずは1度試してみてください。

Amazonオーディブル

また、書籍を電子版で読むこともオススメします。

Amazonプライムは、1ヶ月無料で利用することができますので非常に有益です。学生なら6ヶ月無料です。

Amazonスチューデント(学生向け)

Amazonプライム(一般向け) 

数百冊の書物に加えて、

  • 「映画見放題」
  • 「お急ぎ便の送料無料」
  • 「書籍のポイント還元最大10%(学生の場合)」

などの特典もあります。学術的感性は読書や映画鑑賞などの幅広い経験から鍛えられますので、ぜひお試しください。

まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • マーケティングミックスとは、「企業がターゲットとする市場で目標を達成するために、複数のマーケティング要素を組み合わせること」である
  • 売り手側の「マーケティングの4P」と呼ばれる、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)の4つの視点が大事である
  • 4Pが企業と顧客の関係を構築するための手法や活動を売り手側目線から分析したのに対して、それを買い手側目線から分析したのが「4つのC」がある

このサイトは人文社会科学系学問をより多くの人が学び、楽しみ、支えるようになることを目指して運営している学術メディアです。

ぜひブックマーク&フォローしてこれからもご覧ください。→Twitterのフォローはこちら