心理学

【ストループ効果とは】事例から心理学的実験までわかりやすく解説

ストループ効果とは

ストループ効果(Stroop effect)とは、ある特性への反応がそれと競合するもう1つの特性への反応によって妨害される効果のことです。心理学者のジョン・ストループが発見しました。

ストループ効果はその特性に着目されて、さまざまな応用研究に発展していっています。どのような症状を検査する際に、用いられるのでしょうか?

この記事では、

  • ストループ効果の意味・例
  • ストループ効果の学術的な議論

をそれぞれ解説していきます。

好きな箇所から読み進めてください。

このサイトは人文社会科学系学問をより多くの人が学び、楽しみ、支えるようになることを目指して運営している学術メディアです。

ぜひブックマーク&フォローしてこれからもご覧ください。→Twitterのフォローはこちら

Sponsored Link

1章:ストループ効果とは

1章では、ストループ効果を概説します。ウェイソン選択課題の心理学的な実験に関心のある方は、2章から読んでみてください。

このサイトでは複数の文献を参照して、記事を執筆しています。参照・引用箇所は注1ここに参照情報を入れますを入れていますので、クリックして参考にしてください。

1-1:ストループ効果の意味

冒頭の確認となりますが、ストループ効果とは、

ある特性への反応が、それと競合するもう1つの特性への反応によって妨害される効果のこと

です。

この効果は、ストループ課題と呼ばれる課題で確認することが出来ます。ストループ課題には、非常に多くのバージョンが存在しますが、ここでは、もっと単純な文字の意味と文字の色の間の葛藤を題材にしたものを紹介します。

今から、いくつか単語を提示しますので、その単語の色をこたえてください。たとえば、「三角」であれば、赤と答えてください。

  • あか
  • あお
  • きいろ

それでは続けて、もう3つ単語を提示します。

  • あか
  • あお
  • きいろ

どうでしょうか?後半に行った課題のほうが、色をこたえるのに苦労したかと思います。これがストループ効果です。

一体、なぜこのようなことが起こるのでしょうか?そのカギは、自動的処理にあるといわれています。

自動的処理

  • 私たちは、すべての情報を選んで取得しているわけではない
  • たとえば、私たちは目で見たものの意味をいちいち考えたりはしない
  • 「あか」という文字を見たときには、文字の「あ」と「か」があるとは考えず、その単語を意味のあるものとして認識する
  • つまり、私たちは、特に考えることなく、自動的にみたものの意味を認識している

そのため、私たちは、あかあかを見ると、ひとまず色の赤という意味を認識してしまうのです。その結果、文字の色をこたえるということが求められていても、その意味の認識が、あかに対して、青と答える邪魔をしてしまうということです。



1-2:ストループ効果の例

このストループ効果のように、一方の反応がそれと競合するもう一方の反応を阻害してしまうような場面は、現実の場面の中でも考えることが出来ます。

たとえば、道路交通の場面を考えてみましょう。

道路交通の場面

  • 日本に住んでいる私たちは「止まれ」は赤、「進め」は青(または緑)という認識を持っている
  • そのため、止まれ止まれでは、前者のほうがすんなり入ってくるかとはずである

もし一瞬一瞬の判断が命取りとなる場面では、ストループ効果が生じることで、重大な事故につながる可能性があります。

そのため、看板などを新しく作る際には、このような私たちの持つイメージに合ったものを作る必要があります。

このような私たちの認識と葛藤しないように配慮して作られているものの一つに、トイレのマークがあります(図1)。

トイレのシンボル図1 トイレのシンボルマーク

トイレのマークのようなシンボルは「ピクトグラム」と呼ばれ、私たちが、それを見ればある程度の意味をとれるようになっています。

そして、その一つの方法として、形があります。

  • ステレオタイプ的な知識として、スカートは女性がはくものという認識がある
  • そのため、女子トイレのことを示すアイコン(図1左)はスカートをはいており、女性用であることを想起させる

もう1つが、色のイメージです。

  • 男性は青、女性は赤というステレオタイプを持っている
  • そのため、女性が赤く描かれていると、女性が青く描かれているよりもスムーズに認識することが出来る

つまり、これらのシンボルはなるべく私たちの認識と葛藤しないように、すなわちストループ効果が起こらないように作られているということです。

ストループ効果は、ADHDや統合失調症との関連において議論される場合もあります。具体的には、『認知心理学』(有斐閣)を参照してみてください。

created by Rinker
¥3,740
(2024/11/20 18:51:13時点 Amazon調べ-詳細)

ちなみに、近年このトイレのマークに異議が唱えられています。主な批判は、トイレのアイコンがジェンダーフリーを阻害するというものです。先ほども説明したように、これらのアイコンは私たちのステレオタイプに合うように作られています。

しかし、近年では、学校の女性服も選択制になるといったように、女性だからといってスカートをはくとは限りませんし、男性用スカートも存在しています。

このように、トイレのアイコンがすんなり受け入れられなくなっている背景には、私たちの知識がアップデートされ、アイコンの持つ意味とそのアイコンの色や形の間で干渉を起こしてしまっているためかもしれません。

ジェンダー論に関しては、次のページで詳しく解説しています。

→ジェンダー論の記事一覧へとぶ



1-3:逆ストループ効果

さて、ここまで日常的な例をいくつか提示しました。これらは一方の反応がそれと競合するもう一方の反応を阻害してしまうような場面を挙げたものでした。

それに対して、文字の色が文字の意味の識別に影響を与える効果のことを逆ストループ効果といいます。先ほどお同じように一度やってみよう、今度は先ほどとは逆で、三角と書かれていたときには、「三角」と答えるのが正解になります。

  • あか
  • あお
  • きいろ

いかがでしょうか?先ほどのストループ効果の時よりも、あまり干渉されなかったのではないでしょうか?実際に、この逆ストループ効果は、ストループ効果ほど強く見られないことが知られています。

なぜ、ストループ効果では強い干渉が起こり、逆ストループ効果ではあまり見られないのでしょうか?これは、文字の意味と文字の色の認識の仕方に違いがあるからだと説明されます。

  • たとえば、私たちは文字が何色で書かれていようとも、その色の意味を考えることは基本的におこなわない
  • あなたもこの記事が黒で書かれていることの意味をいちいち考えたりはしないのは、私たちにとって文字の色は背景情報だからである

一方で、文字は即座にその意味を考える必要があります。このように、ストループ効果と逆ストループ効果の違いは、私たちの異なる認知過程を反映した現象であるということです。

1-3-1:マッチング法

一方で、課題を少し変え、マッチング法という方法をとると逆ストループ効果が報告されるようになることが知られています2箱田裕司, & 佐々木めぐみ. (1990). 集団用ストループ・逆ストループテスト. 教育心理学研究, 38(4), 389-394.

マッチング法を用いたストループ課題では、文字の意味やインクの色を読み上げるのではなく、それとマッチするものを選択肢の中から選ぶという方法をとります(図2)。

図2において、逆ストループ効果がみられるか確かめてみましょう。先ほどと同じように、文字の意味と同じ色の四角を選択してみてください。

マッチング法による逆ストループ課題図2 マッチング法による逆ストループ課題

上の問題よりも下の問題のほうが難しかったのではないでしょうか?このようなマッチング法において、逆ストループ効果がみられるのはなぜでしょうか?

そのカギは、マッチング法に要求される処理にあります。

  • マッチング法を使わないストループ課題では、逆ストループ効果を確かめるときに参加者は、あかに対して、「あか」ということを求められていた
  • この時、インクの色は見えているだけなので、色について意識的に処理をする必要はなかった
  • しかし、マッチング法に基づくストループ課題では、文字の意味を認識した後で色を識別する必要があったので、色について意識的に処理をすることになる

つまり、本当は無視をしておきたい色についての処理を意識的に行う必要が出てくるということです。その結果、文字のインクの色を無視することが難しくなり、逆ストループ効果が生じたというわけです。

このように、逆ストループ効果が測定できるようになったことで、ストループ効果と逆ストループ効果の個人差が別々で測定できるようになりました。

1章のまとめ
  • ストループ効果とは、ある特性への反応が、それと競合するもう1つの特性への反応によって妨害される効果のことである
  • 逆ストループ効果とは、文字の色が文字の意味の識別に影響を与える効果のことである

Sponsored Link

2章:ストループ効果の心理学的実験

さて、2章ではストループ効果の心理学的な実験を紹介してきます。

2-1:ストループ効果の実験

ここでは、ストループ効果が報告された、ストループの実験を紹介します3Stroop, J. R. (1935). Studies of interference in serial verbal reactions. Journal of experimental psychology, 18(6), 643.

実験概要

  • 実験の対象は、学生であった
  • 実験では、あかのような競合しない刺激(非競合刺激)と、あかのような競合が生じる刺激(競合刺激)の2種類が用意されていた
  • 参加者は、これらの刺激に対してインクの色を読み上げるという課題を行った
  • もしストループ効果が見られるのであれば、競合刺激のほうが非競合刺激よりも時間がかかると想定された

実験を行うにあたって、さまざまな工夫がされていました。たとえば、このような課題を完了する時間の長さを比較する実験では、参加者の疲労への配慮が必要です。

疲労への配慮とは、以下のようなことを意味します。

  • 非競合刺激の読み上げを行ってから、競合課題の読み上げを行ったとする
  • 当然、後の課題のほうが疲労が蓄積しているから、読み上げに時間がかかることが考えられる
  • すると、非競合刺激と競合刺激の間の差異が、疲労によるものなのか、刺激の違いによるものなのか判らない

このように、心理学のような人を対象にした実験では、課題の順序が結果に大きく影響します。

そこで、この実験では課題を行う順番に工夫がされました。

  • グループA・・・非競合刺激・競合刺激・競合刺激・非競合刺激という順番で課題を行う
  • グループB・・・競合刺激・非競合刺激・非競合刺激・競合刺激という順番で課題を行う

これにより、疲労などの順番によって競合刺激と非競合刺激の間で反応時間の差異が出ないように工夫をしました。

実験の結果、競合刺激のほうが非競合刺激に比べて、読み上げに時間がかかることが示されました。つまり、ストループ効果が見られたということです。



2-2:ストループ効果と臨床研究

上述の結果は非常に単純なものでしたが、その後、ストループ効果はさまざまな応用研究に発展していきました。

振り返ると、ストループ課題では正しくインクの色の名前を回答するためには、「あか」という文字によって想起される意味を、抑制し、インクの色だけに注意を向けることが必要でした。

つまり、ストループ課題に正しく回答するためには、注意制御能力が必要となるわけです。

このようなストループ課題の特性に着目して、ストループ課題は以下のスクリーニング検査としての有効性が検討されています。

  • 精神疾患
  • 発達障害
  • 認知症など

たとえば、永原・伊藤・岩原・堀田・八田は、認知症に対するストループ課題をもとに開発された新ストループ検査の有効性が示めしています4永原直子, 伊藤恵美, 岩原昭彦, 堀田千絵, & 八田武志. (2012). 認知機能スクリーニング検査としてのストループ検査の有用性の検討. 人間環境学研究, 10(1), 29-33.。このほかにも、注意欠陥多動性障害(ADHD)とストループ効果および逆ストループ効果の関係を検討した研究もあります5Song, Y., & Hakoda, Y. (2011). An asymmetric stroop/reverse-stroop interference phenomenon in ADHD. Journal of attention disorders, 15(6), 499-505.

2章のまとめ
  • ストループの実験では、競合刺激のほうが非競合刺激に比べて、読み上げに時間がかかることが示された
  • ストループ効果は、注意制御能力に着目することで、さまざまな応用研究に発展していった

Sponsored Link

3章:ストループ効果を学ぶ本・論文

ストループ効果を理解することはできましたか?最後に、あなたの学びを深めるためのおすすめ書物を紹介します。

おすすめ書籍

箱田裕司・都築誉史・川畑秀明・萩原滋『認知心理学』(有斐閣)

知心理学の教科書です。心理学についての概論書より範囲が狭くなって詳しくなっています。ストループ効果と逆ストループ効果についてのTOPICSでは、ADHDや統合失調症との関連についても整理されて記載されています。

created by Rinker
¥3,740
(2024/11/20 18:51:13時点 Amazon調べ-詳細)

マイケル・アイゼンク & デイヴィット・グルーム(編)『古典で読み解く現代の認知心理学』(北大路書房)

認知心理学に関する代表的な古典的な研究を紹介している書籍。今回紹介したストループの実験も紹介されています。この実験についてのさらに詳しい解説を知りたい方にオススメです。

created by Rinker
¥3,960
(2024/11/20 18:58:26時点 Amazon調べ-詳細)

Stroop, J. R. (1935). Studies of interference in serial verbal reactions. Journal of experimental psychology, 18(6), 643-662.

2章で紹介した、ストループの論文です。ストループがストループ効果を報告したのがこの論文です。古い論文ですが、PDFで閲覧でき、文章もコピーできるように処理がされています。

これは書籍ではありませんが、箱田先生のHPを見るのもおすすめです。箱田先生は日本におけるストループ効果の研究の第一人者です。ストループ効果、逆ストループ効果についての簡単な説明と、代表的な文献が紹介されています。

https://www.psycho.hes.kyushu-u.ac.jp/~lab_hakoda/beginner2.html

学生・勉強好きにおすすめのサービス

一部の書籍は「耳で読む」こともできます。通勤・通学中の時間も勉強に使えるようになるため、おすすめです。

最初の1冊は無料でもらえますので、まずは1度試してみてください。

Amazonオーディブル

また、書籍を電子版で読むこともオススメします。

Amazonプライムは、1ヶ月無料で利用することができますので非常に有益です。学生なら6ヶ月無料です。

Amazonスチューデント(学生向け)

Amazonプライム(一般向け) 

数百冊の書物に加えて、

  • 「映画見放題」
  • 「お急ぎ便の送料無料」
  • 「書籍のポイント還元最大10%(学生の場合)」

などの特典もあります。学術的感性は読書や映画鑑賞などの幅広い経験から鍛えられますので、ぜひお試しください。

まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • ストループ効果とは、ある特性への反応が、それと競合するもう1つの特性への反応によって妨害される効果のことである
  • 逆ストループ効果とは、文字の色が文字の意味の識別に影響を与える効果のことである
  • ストループ効果は、注意制御能力に着目することで、さまざまな応用研究に発展していった

このサイトは人文社会科学系学問をより多くの人が学び、楽しみ、支えるようになることを目指して運営している学術メディアです。

ぜひブックマーク&フォローしてこれからもご覧ください。→Twitterのフォローはこちら