心理学

【虚偽記憶とは】事例・原因・心理学的な研究からわかりやすく解説

虚偽記憶とは
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虚偽記憶(False memory)とは、実際には起こっていない出来事についての記憶のことです。

あなたはは「自分は自分の記憶を正しくもっている」と思っているかもしれませんが、虚偽記憶はだれしもが、それを虚偽の記憶だとは思わずに持っている可能性があります。虚偽記憶の仕組みや働きについて知ることは、あなたの生活や仕事にも役立つでしょう。

そこで、この記事では、

  • 虚偽記憶の意味・例・原因
  • 虚偽記憶の心理学的実験

をそれぞれ解説していきます。

好きな箇所から読み進めてください。

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1章:虚偽記憶とは

1章では、虚偽記憶の全体像を提示します。虚偽記憶の心理学的実験に関心のある方は2章から読んでみてください。

このサイトでは複数の文献を参照して、記事を執筆しています。参照・引用箇所は注1ここに参照情報を入れますを入れていますので、クリックして参考にしてください。

1-1:虚偽記憶の意味

冒頭の確認となりますが、虚偽記憶とは、実際には起こっていない出来事についての記憶のことです。

そもそも、記憶には大きく分けて以下の2種類の記憶があります。

  • 意味記憶・・・さまざまなものの意味をつかさどる記憶
  • エピソード記憶・・・こういうことがあったなといった自分が経験した出来事についての記憶

虚偽記憶は、主にエピソード記憶における思い違いを指します。つまり、虚偽記憶が形成されている状態というのは、実際には経験していない記憶(もしくは経験していても誤った形の記憶)が形成されている状態を意味しています。

このような虚偽記憶は一部の人だけに見られる特殊な事例ではありません。私たちは日常的に、こういった虚偽記憶を形成してしまっていることが知られています。おそらく多く人は記憶がはっきりしているときは、その記憶が本当にあったことなのかを疑うことはないかと思います。

しかし、この虚偽記憶は、実際には起こっていない出来事についての記憶であるにもかかわらず、時として非常に強い確信度を伴うことが知られています。つまり、虚偽記憶はだれしもが、それを虚偽の記憶だとは思わずに、持っている可能性があるのです。



1-2:虚偽記憶の例

ここでは、虚偽記憶の例としてしばしば取り上げられる例を2つほど紹介したいと思います。

1つ目にとりあげるのは、目撃者証言についての例です。以下のような状況を、少し想像してみてください。

  • Aさんはレイプ事件の被害者です。Aさんは、事情聴取でこの中に犯人がいるかと7枚の写真を見せられました。
  • するとAさんは、7枚の写真の中の1人であるBさんをこの人が犯人だといっていいました。しかも、顔や声も記憶しているものと鮮明に一致していると強く確信しており、Bさんの顔を見ると恐怖でショック症状が出てしまうほどでした。

さて、この証言はどの程度の正確性を持っていると思いますか?おそらく、多くの人は被害者であるAさんが、そうだといっているのであれば、非常に高い確率でBさんが犯人だと考えるのではないでしょうか?

しかし、Bさんを犯人として捜査を進めていくと、Bさんはその時ちょうど生放送のテレビに出演していたことが分かりました。そして、レイプ事件の現場ではこのテレビの映像が流れていたというのです。

つまり、Aさんはテレビに映っていただけのBさんの顔や声を、犯人だと誤って記憶してしまっていたということです。しかも本人は、ショック症状が出るほどに、そうと信じて疑ってはいませんでした。これは作り話ですが、実際にあった出来事をもとに作ったものです。

続いて取り上げるのは、幼少期の記憶についてです。皆さんは、幼少期の記憶をどの程度持っていますか?特に、両親にどのように育てられたかという記憶を思い出してください。そういった記憶ももしかしたら虚偽記憶かもしれません。そのような例として、また実話をもとにしたエピソードを紹介したいと思います。

  • 27歳のCさんは、ある日両親を、自分を虐待していたとして訴えました。
  • Cさんの証言によると、Cさんの両親は、ことあるごとに鞭で自分のことをたたいたといいます。また、父親からは性的虐待を受けており、そのことを思い出し、男性恐怖症になってしまいました。
  • 現在Cさんは、その記憶が原因で、うつ病を患い、回復に向けたトレーニングを受けています。両親は児童虐待の損害賠償で、家や財産のほとんどを失ってしまいました。

さて、目撃証言の例を読んだ後なので、この後の展開は予想できるでしょう。そうです、事実はこれとは大きく異なります。結論から言ってしまうと、Cさんの両親は虐待を行っていませんでした。つまり、Cさんが病気にまでなってしまった生々しい記憶は、後から植え付けられてしまったものだったのです。

Cさんは、小さな悩みを抱えており、カウンセリングに通っていました。そこでは、思い出すとつらすぎて心が耐えられないので、心の奥底に抑圧して隠した記憶が、現在の問題につながると考えられていました。

そこでのカウンセリングはその抑圧された記憶を思い出すことでした。そして、Cさんは、自分が覚えていないけどあるはずの「抑圧された記憶」を思い出そうと、努力をしました。その結果、両親に虐待されたという「抑圧された記憶」を思い出してしまったのです。実際には、そんなことはなかったにもかかわらず。

この話は、虚偽記憶研究の第一人者であるロフタスの著書『抑圧された記憶の神話―偽りの性的虐待の記憶をめぐって』(誠信書房)に記載されたエピソードをもとにしています。

そのほかのさまざまな事例とともに紹介されていますので、こういった話に関心のある方は、ぜひ参照してみてください。

1-3: 虚偽記憶の原因

では、なぜこのような虚偽記憶が形成されてしまうのでしょうか?結論からいえば、その原因は記憶の変化のしやすさにあります。

皆さんは、記憶というのはどのようなものだと考えていますか?心理学の分野では、長らく以下のような前提がありました。

  • 記憶は、脳の中の貯蔵庫のようなところに入っている積荷のようなもので、長く入れておくと無くなってしまうことはあっても、そこに入っている物は基本的に変化しないもの
  • これは「貯蔵庫モデル」と呼ばれる

しかし、上述のロフタスは、記憶は一度貯蔵庫に入った後も変化するものであるということを、さまざまな実験から示しました。こういった記憶の変化は、事後的に提示された情報によって起こることが知られています。

先ほどの、目撃証言の例では、事情聴取で7枚の写真を見せて、その中に犯人がいるかを判別させるという方法がとられていました。

このように犯人を選ばせると、Aさんは「写真を見せられるということはこの人たちが犯人である可能性が高い」という先入観をもってその写真を見ることになります。その結果、写真の中に犯人がいなくても、その中の誰かを犯人だと思ってしまう可能性は高くなります。

ここまでは、事後的に提示された情報によってもともと持っていた記憶が書き換わってしまうことによって起こる虚偽記憶の説明でした。

それでは、Cさんのようなありもしなかった記憶が形成されるというのはどのようなことが原因なのでしょうか?これにはイメージ化という過程が関連しているといわれています2越智 啓太 (2014)『つくられる偽りの記憶: あなたの思い出は本物か?』 株式会社化学同人

簡単にいえば、イメージ化とは、

記憶を思い出すときにさまざまな手掛かりを1つにするような作業のこと

です。

Cさんの例を使って、説明します。Cさんは、カウンセリングを通して、自分の今の問題に関わっている「トラウマ」を思い出そうとしていました。その結果、両親にキツくられた記憶やケガをしてしまった記憶、幼児虐待が取り上げられていたテレビ番組など、断片的な記憶が想起されます。

これらのトラウマを思い出そうと想起した断片的な記憶が、出来事としてまとめられ、そういった体験があったことを思い出したと勘違いしてしまいます。つまり、ありもしない記憶の形成は、それを強くイメージすることによって起こるのです。

1章のまとめ
  • 虚偽記憶とは、実際には起こっていない出来事についての記憶のことである
  • 虚偽記憶は記憶の変化のしやすさから起こるもので、ありもしない記憶を強くイメージすることで生まれる

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2章:虚偽記憶に関する心理学的な研究

さて、ここまでは虚偽記憶がどのようなものかということを事例ベースで説明してきました。事後的に提示された情報によって記憶が変化してしまうことを示した実験と、実際には体験していない記憶が形成されることを示した実験の2つの実験を紹介します。

2-1:事後情報効果の実験

ここでは、事後的に提示された情報によって記憶が書き換わるのかを検証した実験の中でも、非常に単純なものを1つ紹介します。この実験は、上述したロフタスらによって行われました。

実験概要

  • 実験参加者は、車が衝突事故を起こしてしまうような映像を視聴させられた
  • 参加者はその後2つのグループに分けられた
  • あるグループの参加者は、「車が『激突(smashed)』したとき、どのくらいの速度でしたか?」という問いに回答した
  • もう一方のグループの参加者には「車が『接触(contacted)』した時、どのくらいの速度でしたか?」という問いに回答した
  • この質問の意図は、後に行われる質問の内容によって、記憶にどのような影響が与えられるかを検証することであった

実験の結果、「接触」したという文が与えられたグループに比べて、「激突」したという文が与えられたグループのほうがより、車の速度を速く見積もっていました。

具体的には、

  • 「激突」したという文が与えられたときには、平均して、時速40.3マイル(時速65キロメートル程度)と見積もっていた
  • 「接触」したという文が与えられた場合には、時速31.8マイル(時速51キロメートル程度)と見積もられていた

という結果が出ました。

はじめに視聴した動画はどちらのグループも同じものであったにもかかわらず、この結果がでました。このことは、事後的に行われる質問のちょっとした違いによって、簡単に変容してしまうことを示しています。



2-2:実際には経験していない記憶の形成実験

ここでは、実際には経験していないはずの記憶が作られることを検証したロフタスらの実験について紹介します。ロフタスらは、ショッピングモールで迷子になったという偽の記憶を思い出させることは出来るのかを検証しました。

実験概要

  • ロフタスの学生のジム・コアンの14歳の弟に、ショッピングモールで迷子になったという実際には経験していない記憶を思い出させるために次のような手続きをとった
  • ジムは弟のクリスに4つのエピソードを文章で見せた
  • これらの文章のうち3つは本当に経験した出来事についての文章であったが、そのうち1つは実際には経験していない出来事であった
  • しかし、弟にはすべて実際にあったことととして伝えた

ここでは、経験していない出来事の文章だけを以下に示します。

5歳のころの話だ。みんなでスポーカンにあるユニバーシティ・ショッピングセンターに出かけた。クリスがいなくなってみんながパニックになっていたころ、クリスが背の高いお爺さんに手を引かれてやってきた。彼はフランネルのシャツを着ていたように思う。クリスは泣きながら、おじいさんの手を握りしめていた。この男性は、数分前、クリスが泣きはらした目で歩き回っているのを見つけ、親探しを手伝ってあげようとしていたところだといった。

そして、これら4つのそれぞれの文章の出来事について、思い出したことを5日間日記に記載するように求めました。また新しく思い出したことがなければ、「思い出せない」と書くように指示をしました。実験の結果、クリスは以下のようなことを記載しました。

  • 1日目:そのおじいさんについて少し思い出した。「やった親切な人だ」と思ったのを覚えている
  • 2日目:その日、僕は本当に怖くて、もう家族には会えないかもしれないと思った。困ったことになったと思った
  • 3日目:お母さんがもう二度と迷子になんかなっちゃダメといったのを思い出した
  • 4日目:おじいさんのフランネルのシャツを思い出した
  • 5日目:店のことをぼんやりと思い出した

つまり、クリスは実際には起こっていないはずのショッピングセンターの記憶を思い出したと報告したとことになります。この結果だけを聞くと、クリスが兄の言ったことを忖度して思い出したと回答しただけではないかと考えるかもしれません。

しかし、クリスは4つの文章のうちの1つ(つまり本当にあった出来事)で、「思い出せない」と回答しています。このことから少なくともクリスは、思い出せない出来事には真摯に思い出せないと答えていたと考えられます。

また、この実験のあと、クリスにショッピングセンターで迷子になった思い出はどのくらいはっきりしていたかを1(全然はっきりしていない)~11(非常にはっきりしている)までの11段階で回答を行ってもらいました。その結果、ショッピングセンターの記憶は8と、高い確信をもった記憶として想起されていることが示されました。

2章のまとめ
  • 事後的に行われる質問のちょっとした違いによって、簡単に記憶は変容してしまう
  • 実験の結果、クリスは起こっていないはずのショッピングセンターの記憶を思い出したと報告した

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3章:虚偽記憶について詳しく学べる本

虚偽記憶を理解することはできました?

虚偽記憶に少しでも関心をもった方のためにいくつか本を紹介します。

おすすめ書籍

オススメ度★★★ E.F.ロフタス, K.ケッチャム『抑圧された記憶の神話―偽りの性的虐待の記憶をめぐって』(誠信書房)

虚偽記憶研究の第一人者であるロフタスの著書です。虚偽記憶に関するさまざまな事例を紹介するだけではなく、虚偽記憶に関する心理学の実験も豊富に紹介されています。こちらの著者ロフタスはTEDでスピーチもしており、そちらを視聴するのもおすすめです。

オススメ度★★★ 越智啓太『つくられる偽りの記憶: あなたの思い出は本物か?』(株式会社化学同人)

比較的平易な文章で偽りの記憶について概説されています。エイリアンに連れ去られた記憶は本物か?といった面白いテーマにも触れているので、初学者にはこちらがおすすめです。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • 虚偽記憶とは、実際には起こっていない出来事についての記憶のことである
  • 虚偽記憶の原因は、記憶の変化のしやすさにある
  • 虚偽記憶はだれしもがそれを虚偽の記憶だとは思わずに、持っている可能性がある

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