デヴィッド・リカード(David Ricardo)の経済学とは、アダムスミスの思想を精緻化し、「差額地代論」「収穫逓減の法則」「比較生産費説(比較優位説)」など、その後の経済学の原型となるさまざまな理論を提唱したものです。
リカードの経済学は、古典派経済学と言われる一分野を形成し、その後のマルクス経済学や新古典派経済学が発展する基礎となりました。
リカードの経済学は、経済学の歴史を学ぶ上でも、現在の国際貿易論のなどの理論を学ぶ上でも、避けては通れない重要なものです。
そこでこの記事では、
- リカードの経済学における論争や理論の特徴について
- 投下労働価値説、差額地代論、賃金生存費説、収穫逓減の法則、比較生産費説などの各理論について
を詳しく解説します。
リカードの理論は、個別に独立しているものではなく、精緻に体系化され繋がっているものです。
まずは全体像をこの記事で学び、これからの学習に活用してください。
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1章:リカードの経済学とは
まずは簡単にリカードの人物、思想や関わった論争について紹介します。
『経済学および課税の原理』で示された経済学の体系について知りたい場合は、2章からお読みください。
このサイトでは複数の文献を参照して、記事を執筆しています。参照・引用箇所は注1ここに参照情報を入れますを入れていますので、クリックして参考にしてください。
1-1:リカードとは
デヴィッド・リカード(David Ricardo/1772-1823)とは、産業革命期を生きたイギリス経済学者で、自由貿易を重視する主張、国内の資本家階級の立場の擁護、などの特徴を持つ理論を提唱しました。
アダムスミスが『国富論』で示した経済学をさらに精緻化、理論化したことで知られています。
アダムスミスの国富論について、以下の記事で詳しく解説しています。
スミスの経済学が道徳哲学などと切り離せない、哲学的側面を持った総合知であったのに対し、リカードはスミスの思想を科学的法則として理論化し、専門的科学としての経済学の礎を作ったと言えます。
とはいえ、古典派経済学の礎はリカード一人で作ったのではなく、『人口論』が代表作でありリカードの親友であったマルサス(Thomas Robert Malthus/1766-1834)との論争の中で作られていったものです2野原慎司ら『経済学史』日本評論社54-55頁に詳しい。
1-2:リカードと「金地金論争」
リカードは「金地金論争」と言われる論争に関わり、経済論壇にデビューしました。
「金地金論争」とは、
- イングランド銀行が銀行券と金の兌換(交換すること)を停止(1797年)
- ナポレオン戦争後、インフレ(物価上昇)が発生
- インフレにプラスして金価格が高騰し、ポンドの相場が下落(1809年)
という一連の出来事から起こった論争です。
この出来事に対して、リカードは、イングランド銀行が金兌換を停止したのに、通貨の供給を拡大したことがインフレを起こしたのだとイングランド銀行を批判しました3野原、前掲書56頁など。
1-3:リカードとマルサスの論争
さらに、リカードはその後のイギリス議会の「穀物法改正(1815年)」を批判したことから、マルサスと真っ向から対立しました。
穀物法改正とは、
- ナポレオンが大陸封鎖(1806)したことや穀物の不作から穀物価格が高騰したが、戦争後に穀物価格が急落
- 地主階級は、自分たちの利益を守るために、安価な穀物の輸入の禁止によって穀物価格を高値に維持することを議会で主張
という背景から起こったものです。
マルサスは穀物法改正を擁護し、
- 穀物を輸入に依存すると、安全保障上のリスクがある。
- 穀物輸入を自由化すると、イギリス国内の農業が衰退、工業が発展しすぎる。工業は雇用や賃金が安定しないため、労働者階級を中心に社会の不安定を招く。
と主張しました4『穀物法および穀物価格の騰落が我が国の農業および一般的富に及ぼす効果に関する考察』。
これに対しリカードは、穀物の輸入の禁止は経済停滞を招くと批判し、資本家の立場を擁護しました。
リカードの主張は以下の通りです。
- 国家の権力をもってしても、輸入を完全に規制することはできないため、輸入に依存しすぎることにはならない。
- 穀物輸入で穀物が安価になれば、労働者の生活費を引き下げ賃金を減らせるため、資本家の利潤を拡大し資本蓄積を可能にし、経済成長の原動力となる。
マルサスは地主階級を擁護し、リカードは資本家階級を擁護したことから、このような対立が生まれたのです。
しかし、リカードとマルサスは論争の中で自らの理論を鍛え上げていき、それが古典派経済学の基礎を作ることになりました。
ちなみに、マルサスとリカードは論争していた一方で、プライベートでは非常に親密な親友同士だったことが分かっています。
「結局、リカードの経済学の理論はどのような内容だったの?」と疑問だと思いますので、2章で詳しく解説します。
まずはここまでをいったんまとめます。
- リカードはアダムスミスの経済学をより精緻化・専門科学科し、近代経済学の礎を築いた
- リカードは「金地金」論争の中で、イングランド銀行の通貨供給拡大がインフレの原因だと批判したことから論壇デビューした
- リカードは、穀物法改正を批判して資本家階級の立場を擁護し、地主階級を擁護したマルサスと論争し、その中で理論を発展させた
2章:『経済学および課税の原理』から見るリカードの経済学
それでは次に、リカードの代表作である『経済学および課税の原理』からリカードの経済学を詳しく解説していきます。
『経済学および課税の原理』を先に要約します。
- 投下労働価値説…生産物の価値は投下される労働力の量によってのみ決まる
- 賃金生存費説…労働者の賃金は、労働者が生存できる消費財の量(生存費)によって決まる
- 差額地代論…同じ投下労働量でも、土地によって収穫量が異なるため、最も生産力が低い土地との差額が地代になる
- 収穫逓減の法則…需要に応じて生産力が低い土地を耕作するようにすると、拡大するだけ生産力が減る(拡大の法則)。また、同じ土地にさらに労働力を投下しても、獲得できる収穫量は減っていく(集約の法則)
- 比較生産費(比較優位)説…どのような国家も、生産物ごとに生産性の高さが異なるため、貿易して生産物を交換し合った方が利益が大きくなる
重要なのは、リカードはただの抽象的な理論化を目的としていたわけではなく、これらの理論を通じてイギリス社会の行く末を論じているということです。
これらの理論から考えると、貿易を規制したままではイギリスの経済力は成長しない。そのため、自由貿易を実現して経済成長できるようにしていこう、というのがリカードが『経済学および課税の原理』で主張したことです。
※詳しく理解するためには、実際に原著を読んでみることをオススメします。この記事を参考にしながらぜひ読んでみてください。
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2-1:投下労働価値説
スミスが「投下労働価値説」と「支配労働価値説」を両方論じたのに対し、リカードは「投下労働価値説」のみを支持しました。
難しく考える必要はありません。投下労働価値説とは、生産物の価値は投下された労働量のみによって決まるという説のことです。
スミスが例示したように、ビーバー2頭を獲得するのにかかった労働量と鹿1頭を獲得するのにかかった労働量が同じなら、ビーバー2頭と鹿1頭が同じ価値を持つということになります。
ただし、リカードの投下労働価値説は、「自然価格」と「生産物が持つ価値」を混同していると後に批判されました。
自然価格とは、その商品を作る過程でかかった、土地の地代や労働者の賃金、資本家が獲得する利潤などのすべての「自然率(平均率)」で決まるという考え方です。
自然価格=地代の自然率+賃金の自然率+利潤の自然率
ということになります。
リカードは、賃金率が上昇すると「生産物の価値」が上昇するため、投下労働価値説は一部修正する必要があると考えました。
しかし、実際には賃金率の上昇で影響を受けるのは「自然価格」のみで、「生産物の価値」ではありません。そのため、生産物の価値は賃金率の上昇によって増減することはありません。
このように自然価格と生産物の価値を混同していたことは、その後多く批判されました。
とはいえ、リカードは賃金の変動が価値に与える影響は小さなものであるため、あくまで生産物の価値は「投下された労働量」を主な要素として決まると主張しています。
2-2:賃金生存費説
リカードは、賃金を「生存費」、つまり労働者が生存するために必要な最低限の消費財の量によって決まると考えました。
これはマルサスの『人口論』から影響を受けた考えで、「賃金生存費説」と言います。
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実際の賃金は、もちろん生存費とまったくイコールになるとは限りません。
しかし、実際の賃金が生存費を超える状態が続くと、家計に余裕が生まれ、子供を増やすため労働力が増え、労働市場において労働供給が過剰になります。
労働人口が多すぎれば、資本家は賃金を安くしても簡単に労働力を増やすことができるため、賃金を下げることができます。
逆に賃金率が生存費以下になれば、労働者は子供を作れず労働人口が減少するため、資本家は労働力を得るために賃金を上げざるを得ません。
そのため、長期では生存費によって実質賃金が決まるとリカードは主張しました。
賃金生存費説にのっとって考えると、
穀物価格上昇→労働者の生存費が上昇→賃金上昇→資本家の利潤減少
ということになります。これが穀物法改正に反対した1つの理由です。
2-3:差額地代論と収穫逓減の法則
「差額地代論」と、そこから導き出される「収穫逓減の法則」は、リカードの理論の中でも多く知られているものです。
2-3-1:差額地代論
「差額地代論」について簡単に要約すると、
- (前提①)生産物の価値は投下された労働力の量によって決まる
- (前提②)耕作できる土地の質には、場所によって優劣がある(よく育つ土地とそうでない土地がある)
- 生産性が高い土地から耕作すると、徐々に生産性が低い土地を耕作せざるを得なくなっていく
- そのため、穀物価格は最も生産性が低い土地(限界地)での生産費と同じ価格になる
- その結果、「地代」は生産力が最も低い土地(限界地)ではゼロになり、それ以外の土地では肥沃な土地との差額が地代になる
というものです。
もう少し詳しく解説しましょう。
■地代が発生するメカニズム
まず、生産力が高い順に土地がA、B、Cとあるとしましょう。Aでは100トンのお米が生産できますが、同じ労働力でもBでは80トン、Cでは60トンしかお米が作れません。
土地Aだけの耕作でお米の需要にこたえられる社会では、Aで耕作している資本家に地主が地代を要求しても、資本家は地代がかからない土地に移動してしまいます。
そのため、Aの地代はゼロ円であり、お米の価格はAに投下される労働量と等しくなります。
しかし、人口が増加している社会では、食料を得るために生産性が低い土地も耕作していかなければなりませんので、資本家はBやCの土地も借りて耕作しなければならなくなります。
地代が発生するのは、社会がこのような状況になった場合です。
なぜなら、仮に土地Aを持つ地主が資本家にお米10トン分の地代を要求したとしましょう。
Aにいた資本家は「地代を払うくらいなら土地Bに移動してやる」と思うかもしれませんが、土地Bは同じ労働力でも80トンのお米しか得られません。
Aにいれば地代を支払っても、
生産量100トン-地代10トン分=利潤90トン分
となって、Bで耕作する場合の「生産量80」を超えるため利潤が最高になります。そのため、資本家は土地Aに残って耕作を続ける選択をします。Aの資本家は、土地Aから得られる利潤が、Bから得られる生産量を超えるまでAから移動しません。
地主も「できるだけたくさんの地代をもらいたい」と考えるため、Aの地代はBから得られる生産量との差額まで最大化していきます。この場合は、Bの生産量が80であるため、地代は20まで膨らむことになります。
さらにBの耕作地がなくなりCの土地まで耕作しなければならなくなると、同じことが起こってBの土地でも地代が発生します。
このようにして、人口が増加する社会では
- 地代は限界地では発生しないが、それ以外の土地では限界地と土地の肥沃度に応じて地代が発生する
- 地代によって価格が決まるのではなく、地代は穀物が高価であるために発生する
ということになるのです。
スミスは価格の決定が「地代」「賃金」「利潤」から決まると考えたのですが、リカードは上記の理論でこれを批判したのです。
2-3-2:収穫逓減の法則
「収穫逓減の法則」は経済学の非常に基本的な理論ですので、経済学を学んだことがある方は記憶にあると思います。
※「逓減」とはだんだん量が減っていくという意味です。
リカードの収穫逓減の法則には、以下の2つのものがあります。
- 拡大の限界…生産性が低い土地にまで耕作を広げると、同じ量の労働力から得られる収穫が減っていく
- 集約の限界…同じ土地に同じ量の労働力を投下し続けると、余剰の収穫が逓減していく
(少しややこしいかもしれませんので、まずは上記の法則を覚えておくだけでも問題ありません。)
①は、2-2-1で説明した「差額地代論」のことです。
つまり、需要に応じて生産力の低い土地を耕作していくと、同じ労働力の投下量でも、収穫できる生産物(たとえばお米)の量は減っていく、というものです。
リカードは「拡大の限界」によって地代が発生すること。地代は穀物価格の決定には影響しないことを主張しました。
②「集約の限界」とは、同じ土地にさらに多くの労働量を投下したときに得られる生産物の量は、逓減していく(徐々に減っていく)という法則です。
たとえば、2-2-1の例でAの土地で生まれる収穫量は「100トン」としましたが、そこに追加で同じだけの労働量(つまり労働量が2倍になる)と、追加で得られる収穫量が「65トン」だとしましょう。
追加で同じだけ労働力を投下しても、得られる収穫量は減少していく。これが「集約の限界」です。
問題なのは「その結果どうなるのか?」ということです。
- Aの土地に同じだけ労働力を追加で投下することで、追加で得られるお米の収穫量が「65トン」になる
- この社会での「限界地」である土地Cでは、Aで収穫量100トンが得られるときに60トンしか得られないため、Aの地代はCとの差である「お米40トン分」になる
- この場合、土地Cの資本家は土地Cを耕作する収穫量「60トン」より、土地Aで追加で得られる「65トン」の方が多いため、5トン分の地代を支払うからAの土地を貸してほしいと交渉する
- その結果、地代は「45トン分」になる
このようにリカードは説明しています。
結局、「集約の限界」によっても土地の肥沃度に応じて地代が決まることが分かります。
2-4:資本蓄積論
リカードは、ここまで説明した「賃金生存費説」や「収穫逓減の法則」を理論化したのは、イギリスの将来を予測するためでした(資本蓄積論)。
2-4-1:輸入がなければ経済成長がない
人口が増加し穀物需要が増大する限り、徐々に生産力が低い土地を耕作するようにしていかなければなりません。
その結果「拡大の限界」と「集約の限界」によって、同じ労働力でも得られる穀物量は徐々に減少していきます。
すると、地代と賃金の支払いによって資本家が得られる利潤は徐々に減少していきます。
経済成長は、資本家が資本(余剰のお金)を新たな事業に投下することによって生まれます。しかし、その資本蓄積が徐々にできなくなっていくのですから、その結果イギリス経済の成長力は減衰してしまいます。
しかも、地主は地代の獲得によってより金持ちになり、労働者はぎりぎりの生存費で生活する状況が変わりません。
2-4-2:貿易自由化が成長を生む
リカードは以上の理由から、穀物法改正を批判しました。
穀物法があることから国内の穀物価格が高値に維持されるため、結果的に生存費が高くなり、賃金が上がり、資本家の利潤が減少し、資本家の新たな投資の障害になります。
しかし、穀物を輸入できれば穀物価格が下がり、生存費・賃金が下がり、その結果資本家の利潤が増大し資本蓄積が可能になる。
リカードはこのような考えがあったため、穀物法改正を批判したのです。
この主張の背景には、「供給は自らの需要を作り出す」という「セーの法則」と同じ考えを持っていたからです。つまり、生産されたもとは必ず消費されるため、資本蓄積さえ進めば経済が成長するという考えです。
■マルサスによる批判
しかし、このリカードの主張はマルサスから批判されました。
マルサスは、
- 資本蓄積が進み、資本家が新たな事業によって生産物の供給を増やしても、それを消費する側の需要が増えていなければ、経済成長にはならない
- 労働者の消費(主に消費財)は通常増大しないし、資本家は資本蓄積のために節約するため、消費を拡大しない
- そのため、奢侈品(ぜいたく品)を消費する地主の利益を守る必要があり、そのため穀物法改正による穀物価格の高値での維持は必要である
と主張しました5野原、前掲書60-63頁など。
ここに、リカードとマルサスが資本家と地主のそれぞれの階級を擁護した根拠が分かります。
2-5:比較生産費(比較優位)説
リカードはさらに、自由貿易がどこの国にとっても利益になることを主張しました。それが「比較生産費説(比較優位説)」です。
比較生産費説(比較優位説)」を要約すると、以下のようになります。
- 「収穫逓減の法則」のように、国内では高い利潤率を求めて資本が移動する(つまり高い利潤を求めて資本家は投資する土地を変えていく)
- 自由な貿易が可能な世界では、上記と同じように高い利潤率を求めて国際分業する
- そのため、国家は労働や資本を自国がもっとも高い利潤が得られるように活用する
実際には完全な自由な貿易はできないのですが、それでもすべての国家にとって自由な貿易は利益になります。
詳しく解説します。
たとえば、二国間で同じ労働量を投下したときに、生産費に以下のように違いがあるとしましょう。
イギリス | ポルトガル | |
ぶどう酒 | 120 | 80 |
毛織物 | 100 | 90 |
※根井雅弘(2005)より引用
どちらも労働の投下量は同じです(つまり1年間に働く労働者の数が同じ)。
この場合、イギリスはどちらの生産物でも生産力が高いため、これだけ見るとイギリスに貿易の必要はないように思われます(絶対優位)。
リカードは、それでも二国間は貿易をした方が良いと主張します。なぜなら生産費が二国間で異なるからです。
- 貿易前…イギリス国内ではぶどう酒1に対して、約0.8の毛織物が交換できる
- 貿易後…イギリスの毛織物は、ポルトガルとの貿易によって約1.1の毛織物と交換できる
同じように、ポルトガルもぶどう酒の輸出によって、より多くの毛織物を得ることができます。
二国間で、それぞれの生産物に対する生産費が異なるため、このようなことが可能になるのです。
これが比較生産費説(比較優位説)です。
こうした理論から、リカードは自由貿易の必要性を主張したわけです。
- 投下労働価値説…生産物の価値は投下される労働力の量によってのみ決まる
- 賃金生存費説…労働者の賃金は、労働者が生存できる消費財の量(生存費)によって決まる
- 差額地代論…同じ投下労働量でも、土地によって収穫量が異なるため、最も生産力が低い土地との差額が地代になる
- 収穫逓減の法則…需要に応じて生産力が低い土地を耕作するようにすると、拡大するだけ生産力が減る(拡大の法則)。また、同じ土地にさらに労働力を投下しても、獲得できる収穫量は減っていく(集約の法則)
- 比較生産費(比較優位)説…どのような国家も、生産物ごとに生産性の高さが異なるため、貿易して生産物を交換し合った方が利益が大きくなる
3章:リカードの経済学の学び方
『経済学および課税の原理』で示されたリカードの経済学について、理解を深めることはできましたか?
繰り返しになりますが、リカードの経済学は近代経済学の礎となり、その後の経済学の発展に大きな貢献をしました。そのため、これから経済学や経済思想を学ぶ上でリカードを深く理解しておくことには意義があります。
ただし、リカードは一人で古典派経済学を作ったわけではないので、リカード一人を深く学ぶのと合わせて、古典派経済学の経済思想をまとめて学ぶことも大事です。
その上で以下の本がオススメです。
デヴィッド・リカード『経済学および課税の原理』(岩波文庫)
この記事で詳しく説明した『経済学および課税の原理』は、リカードを理解する上での必読書です。この記事では含められなかったさまざまな論点が書かれていますので、ぜひ読んでみてください。
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根井雅弘『経済学の歴史』(講談社学術文庫)
著名な経済学者であり、経済学史について多数の著作を発表している著者による、経済学の概説書です。
リカードについてはもちろん、著名な経済学者について章ごとの解説されているため経済思想を学ぶ上で必読書です。
松原隆一郎『経済思想入門』(ちくま学芸文庫)
こちらも経済思想の概説書ですが、根井本と異なり人物別ではなく「古典派」など大きな繋がりで解説されているため、初学者により優しい内容になっています。
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書物を電子版で読むこともオススメします。
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数百冊の書物に加えて「映画見放題」「送料無料」「書籍のポイント還元最大10%(学生の場合)」などの特典もあります。学術的感性は読書や映画鑑賞などの幅広い経験から鍛えられますので、気になる方はお試しください。
まとめ
最後に今回の内容をまとめます。
- リカードは経済学を専門科学化し、近代経済学の礎を築いた。また、マルサスとの論争の中でともに経済学の体系を作り上げていった。
- リカードの経済学は、純粋に理論化を目的にしたというよりも、現実の「穀物法改正」などのイギリス政府の政策を批判し、資本家階級の利益を代弁するものだった。
- マルサスが地主階級の立場を擁護したのに対し、リカードは資本家階級の立場を擁護した。
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