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【2021年1月~3月に読んだ本(第二段)】おすすめ本12選

2021年1月〜3月に読んだ本

この記事は、運営代表者である深谷が執筆しています。

2021年も早くも3カ月が過ぎようとしていますが、私は年明けから多忙な日々でした。しかし、すでに食事や歯磨きのように身体に染み付いた読書習慣のおかげで、多忙な中でもいろいろと本を読み進めることができました。

この記事で紹介したいのは、読んだ本の中でも特に読んでよかったと思った下記の本です。

簡単な内容を紹介していきますので、ぜひ手に取って読んでみてください。

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①見田宗介『現代社会はどこに向かうか』

見田宗介『現代社会はどこに向かうか』(岩波新書)は、社会学者の大家である著者が、非常に大きな枠組みから現代社会を捉えた著作です。

現代社会について論じる多くの見方は、現代が激動の時代であり、これからも変動が続くという見方だと思います。しかし、著者の主張では、近代以降の成長はすでに限界が来ており、成長は鈍化してきているのである、よって新たな価値観が登場しているのが現代の特徴である、というのが大きな論点です。

著者は、人類の歴史は大きく下記のような流れに区分できると言います。

  1. 原始
  2. 軸の時代Ⅰ:人間の精神的枠組みが形成される時代。貨幣経済や都市の出現によって、人々は共同体の外部に無限の世界を知り、不安になり、普遍的な宗教、哲学が形成されるきっかけとなった(第一の曲がり角)
  3. 文明/近代社会:「外部」である他の共同体や、自然を征服していく時代。
  4. 軸の時代Ⅱ(現代社会):「外部」である征服の対象としての社会や、自然の開発の限界が来て有限性にぶつかった(第二の曲がり角)
  5. 未来

このように、④近代社会は「外部」を開発や資源として活用することで成長してきましたが、その限界が格差の拡大、自然の開発による気候変動問題といった形で登場しています。

この限界を、デザイン広告やクレジットでさらに消費活動を無限にすることで乗り越えようとしてきたものの、それも限界が来ている。それが人類の「第二の曲がり角」であり、これから、人類は新しいシステム、価値観を形成していく必要があるだろうというのが、著者の見方です。

非常に壮大な話ですが、分量も少ない新書ですので、数時間あれば読み終わるでしょう。知的好奇心の掻き立てられる非常に面白い本でした。

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➁吉見俊哉『大学という理念 絶望のその先へ』

吉見俊哉『大学という理念 絶望のその先へ』(東京大学出版会)は、日本の大学が直面する様々な問題の中で、大学の存在意義や役割を再検討している著作です。下記下ろしの部分もありますが、著者のこれまでに発表した論稿が元になっています。

「大学って何で行く必要があるの?」「文系ってわざわざ大学で勉強する意味あるの?」といった疑問を持つ方は、ぜひ読んでみていただきたいです。

一部の論点を簡単に紹介します。

  • さまざまな問題解決に役立つ実用的な知(理系的な知)が、社会に必要なのは間違いないが、その実用的な知の「意味」を判定するには、別次元の知=「リベラルな知(文系的な知)が必要。
  • 平成の大学の改革(大綱化、大学院重点化など)によって、大学院生が増えた一方で、社会の側に受け皿がなく、ポスドク、高学歴ワーキングプアなどの問題を生んだ。社会側に高度な知の有用性が認知されていないことが問題。
  • 新たな知を生み出すには、異質な人が集まり、議論し、体験を共有することが重要で、現代における大学の意義もそこにある。

また、終章では「近代社会」の発展によって現代は限界を迎えているという論点が議論されています。簡単に言えば、

グローバル化で労働力が安価に→日本は競争力が減少→マーケティングやイノベーションでの需要創出、デジタル化、金融化の市場創出など→限界

というように「近代」を貫徹することで現代社会は限界を迎えています。これらは「もっとイノベーションを起こそう」「もっと市場を創出しよう」という、これまで通りの価値観の上での工夫では、解決できない問題です。

したがって、価値や文化そのものを問い直すことが必要で、それができる「地球人」を創っていくのが大学の役割だということです。

大学、学問そのものについて考えたい方はぜひ読んでみてください。

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③ショーペンハウアー『読書について』

ショーペンハウアー『読書について』(光文社古典新訳文庫)は言わずと知れた名著ですが、ちゃんと読んだことがなかったので通読しました。これは、特に勉強家、読書家の方が読むと、自分の読書を見直すきっかけになるかもしれません。

一部、抜粋してみます。

「(前略)生まれながら凡庸で単純な多くの人間は、博識が仇となってますます精神のひらめきを失い、またあれこれ書き散らすと、ことごとく失敗するはめになる。」(10頁)

「だが思想家、天才、世界に光をもたらし、人類の進歩をうながす人とは、世界という書物を直接読破した人のことだ。」(11頁)

「本を読むとは、自分の頭ではなく、他人の頭で考えることだ。」(14頁)

「少なくとも読書のために、現実世界から目をそらすことがあってはならない」(19頁)

「できれば原著者、そのテーマの創設者・発見者の書いたものを読みなさい。少なくともその分野で高い評価を得た大家の本を読みなさい。」(38頁)

「ひっきりなしに次々と本を読み、後から考えずにいると、せっかく読んだものもしっかり根を下ろさず、ほとんどが失われてしまう。」(140頁)

「思想体系がないと、何事に対しても公正な関心を寄せることができず、そのため本を読んでも、何も身につかない」(149頁)

「本を読むとは、自分の頭ではなく、他人の頭で考えることだ。」で有名な著作ですが、戒めているのは多読や乱読であり、古典、名著のような本当にいい本は繰り返し読むべきであると言っていました。

私自身本は読む方ですが、自分の問題意識に沿ってある程度系統的に読むようには意識していたため、自分の考えと共通する部分が多くすんなりと入ってくる内容でした。

非常に分かりやすい訳で、分量も多くありませんので、ぜひ手に取ってみることをおすすめします。

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④渡辺一夫『ヒューマニズム考』

渡辺一夫『ヒューマニズム考』(講談社文芸文庫)は、ヒューマニズムという概念は本来どういう意味なのか、宗教改革の歴史をたどりながら明らかにした本です。

著者も言うように、ヒューマニズムと言うと人道主義、博愛主義などと混同される傾向にあります。しかし、本質的には「それは人間と何の関係があるのか」という意味にあるというのが著者の主張です。

歴史をたどると、ヒューマニズムは、カトリック教会の腐敗に対して、エラスムス、ルターなどの人々が「それはキリストの本来の教義と何の関係があるのか?」と批判したことから生まれたと言います。カトリックの神学は、教義に関する議論のための議論のようになっていたため、信者らにとってほとんど意味がなくなっていたためです。

そのため、もっと人間らしい学芸を求め、そこから古典研究が始まりました。これがルネサンスでした。

こうした歴史的背景から生まれた「それは人間と何の関係があるのか」と、対象を問い直していく姿勢がヒューマニズムだというのが著者の主張ですが、これは現代でも重要な姿勢ではないでしょうか。著者は下記のようにも主張します。

思想・制度・機械・・・など、人間がつくったいっさいのものが、その本来もっていた目的からはずれて、ゆがんだ用いられ方をされるようになり、その結果、人間が人間のつくったものに使われるというような事態に立ちいった時、『これでは困る。もっと本来の姿に戻らなければならない。』と要請する声が起こり、これが『人間らしい』ことを求めることになるのです。(41頁)

「現代社会がどこかおかしい方向に向かっているのではないか」という疑問を感じている方や生きづらさを感じている方は、少なくないように思います。このような時代に、この時代を問い直す姿勢として、ヒューマニズムを理解することは重要であるように思いました。

これも難しくなく、分量も少ないので、いろんな人に読んで頂きたいと思いました。

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⑤「世界の歴史」シリーズ

ここまで紹介したように、現代社会を広く相対化して見ていきたいという問題意識が最近強くなってきたため、あらためて歴史を勉強しなおそうと思いました。人類の歴史を広く見ていくことで、現代という時代の特殊性も捉えやすくなると思ったからです。

そこで、遠大な読書計画になってしまいましたが、中央公論新社の『世界の歴史』シリーズ、30巻を読み始めました。

現在、3巻まで読んだため、簡単に紹介します。

第1巻は人類の誕生から古代オリエント(メソポタミア、エジプト)の歴史をたどったもの。以下は簡単なメモです。

  • 古代から国家間で争いは絶えなかったものの、同盟、条約で国際(?)秩序を創ろうとしてきた
  • 古代の王らは正当性のために宗教の力を必要とし、統治と宗教は一体であった
  • 人類史上初とも言われる唯一神信仰のアテン神は、アメン神の神官らの権力抑制のために、王が意図的に、強引に作り出そうとした
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第2巻は中華文明の誕生。「邑」の集まり→邑をはじめて統一した殷→周→春秋戦国→秦による統一→漢→赤眉の乱をおさめて後漢→黄巾の乱から三国時代へ→晋へという流れです。

  • 中国では権力の正当化のために王朝の継承を操作した歴史書や、「天命」の逸話を創作したりしてきた。
  • 広い国土の統一のために巨大な統治機構(官僚制、地方政府)をつくる必要から、権力闘争が生まれやすい。

第3巻は古代インド。

  • アーリア人から先住民が支配され、ヴァルナ制が生まれるきっかけとなる。
  • バラモン教批判から仏教、ジャイナ教が生まれ、仏教は統治に利用。しかしバラモン教も社会の変化に合わせて変わっていき、各地の信仰と融合してヒンドゥー教が生まれ、仏教はインド亜大陸からほぼ消滅(近代に入って復興)。
  • ヴァルナ制と職業から複雑なカースト制度が形成され、社会秩序が生まれ、現代でも差別の温床だが、一方で人々の仕事を守る役割にも。

インドは宗教の話がほとんどで、メソポタミアや中国のように対外的な勢力との戦いや権力闘争があまり出てこないのが特徴でした。

まだ途中ではありますが、通読すると世界史の学びなおしとして非常に良いと思います。今は文庫で全巻出ていますので、ぜひ一緒に読み進めましょう。

⑥岡田英弘『世界史の誕生』

世界史の学びなおしの一環で、岡田英弘『世界史の誕生』(ちくま文庫)も読みました。端的に言えば、モンゴル中心に世界史を捉えている点で、教科書的な世界史の本と一線を画す面白い本です。

「世界史」というと当たり前のように世界全体の歴史を思い浮かべますが、著者によれば、これまでの世界史の描かれ方には問題があるということです。

  • そもそも、歴史を描くことは文化的な営みで、自ら「歴史」を描く伝統は、これまで地中海世界と中国でしか生まれなかった。
  • 地中海世界におけるヘロドトス『ヒストリアイ』、中国における司馬遷『史記』が史上はじめての歴史であり、それぞれの歴史の描き方が、その後のそれぞれの世界の歴史の描き方を規定した(他の文明はそこから影響を受けた)。
  • 東西の文明は、モンゴル帝国の誕生までほとんど別個の存在であり、本来の「世界史」はモンゴル帝国以降のものとしか描けないし、「世界史」はモンゴル中心に描かなければならない

地中海世界、中華文明における歴史観の成立と、モンゴル帝国以降の「世界史」を著者独自の視点で解説しており、非常に面白く読みました。

他には、昔読んでいた古代地中海世界の漫画「ヒストリエ」を少し再読しました。これは、スキタイ族出身の主人公が、急成長するマケドニアのフィリッポス3世やアレクサンドロス王子(後の大王)に仕えて、参謀のように活躍するストーリーです。古代ギリシアが好きな方におすすめです。

⑦アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』

『スマホ脳』(新潮新書)は、最近はかなり売れているようで本屋で見かけることが多いです。

簡単にまとめてしまうと、

  • 人間の脳は進化の中で「新しいことが知れる」「もしかしたら、という期待がある」ことに注意を割くようになってきた
  • スマホは、そんな性質を持つ人間の注意力を奪い、できるだけ画面に釘付けするように設計されている(長く見させた方が広告収入になり、スマホを活用する企業にとって利益になる)
  • スマホやSNSは睡眠を妨げる、自尊心を奪う、集中力・注意力が弱くなる、といったデメリットがある上、依存性が高い「現代のドラッグ」である

ということです。

面白いのは、スマホは触っている時だけでなく、身近に置いているだけでも集中力を奪ということ。そのため、物理的に遠ざけて気にならないようにすることが重要のようです。

すでに現代人の多くは依存している媒体ですので、一度読んで使い方を見直してみることをおすすめします。

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⑧アイリス・チュウ『Au オードリータン』

2020年は新型コロナの影響で、日本の政治と世界の政治が比較され、「○○の国の政治は優れている、それに比べて日本は、、」といった話も多く見受けました。そのような話の是非は置いておいて、特に注目されたのが、台湾の政治だったのではないでしょうか。

特に、台湾のデジタル担当大臣として活躍し、メディアにも多く登場したオードリー・タンは、日本人にも多く知られることになりました。「天才」と言われるオードリー・タンが、どのような人生を歩んできたのか、また、どのような改革を実現したのか、それがなぜできたのか、といったことが『Au』を読んでよく分かりました。

このような革新的な人物が日本でも登場してほしいですね。

重複する部分もありましたが、下記の本も良かったです。

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⑨藻谷浩介・NHK広島取材班『里山資本主義』

この記事でもいくつか紹介したように、「現代社会の進歩は限界に来ているのではないか」「これ以上、これまで通りの進歩を続けようとすれば、世界の混乱がもっと大きくなるのではないか」といった議論は、特に新型コロナ以降に強くなったように思います。

私自身、そのような問題意識から、ではこれからの社会はどういう方向に向かえばいいのだろうか?どういう変化なら可能なのだろうか?と考えることが多かったです。

そんな問題意識から、『里山資本主義』を読みました。

これは、日本の地方を中心にはじめられている、企業活動、社会、自然が調和的な取り組みを取材した本です。この本で書かれているように、資本主義自体を変えることはできずとも、その「サブシステム」として地域に自律的な社会が生まれていくことは、有効そうに思えます。

すでに出版から7年以上経っていますが、ますます重要なテーマになっていると感じます。

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⑩子ども・教育・家庭に関する本たち

他にも仕事との関係もあって、子ども・教育・家庭に関する本をいくつか読みました。

現代社会では、発達障害、精神疾患、また後に紹介するように家族関係によっても「生きづらさ」を感じる人が多く存在します。私も身近にそういう話を見聞きし、とても他人事ではないと感じます。

こういった問題は、広く言えば近代化のプロセスの中で、人に求められる能力、性格、ふるまいなどの水準が変わり(狭まり)、また家族関係が変わり教育における親の負担も大きくなり、、という変化から生まれたのだろうと思います。

そういう点で、私の社会的な問題意識ともつながるものとして読みました。

『ケーキの切れない非行少年たち』

『ケーキの切れない非行少年たち』は、少年院に行くような非行少年たちが、実は発達障害などを持っていて認知能力に問題を抱えていること。それなのに適切な支援を受けて来なかったどころか、そのような問題を抱えていること自体が少年院まで来てはじめて明らかになっている、という内容です。

認知能力が弱いために勉強について行けない、衝動的に動いてしまう、といったことから非行に走るのだそう。そのため、更生以前に認知能力のトレーニングから行うことが重要なのだそうです。

認知能力の弱さゆえに虐待やいじめをうけてきた「被害者」が、非行という形で「加害者」になり、その先ではじめて認知の問題が分かり支援される。問題は複雑であり、だからこそ一部の専門家ではなく、社会的に取り組まれなければならないものだと思いました。

『ADHDの正体』

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最近は大人のADHDも増えていると言われますが、研究を見ていくと、大人のADHDは子どものそれとは異なることが分かってきたというのが著者の見解です。

しかし、現実に大人でもADHDの症状で仕事につけなかったり、生活に影響が出てしまっている人が多く存在する。それはなぜか?というのがこの本のテーマです。それは、親子関係から生まれる愛着障害に原因がある場合があるそうです。そうであれば薬物治療などを受けても改善されないため、適切な診断が必要と。

『子は親を救うために「心の病」になる』

「引きこもり」「拒食症」「反抗」などの問題を抱える子どもと向き合ってきた著者が、その子どもの問題が、実は親から生まれていることを論じています。親が問題を抱えているために子供が病む、ということです。

家庭環境を通じて、親の心の病が子どもに受け継がれていく。これは、親子関係が閉鎖的になりがちな現代では、ますます他人事ではないですね。

どれも、自分事としても読めるため、多くの人におすすめしたい本でした。

まとめ

こうして見ると、広いテーマを読んでいるようで自分の問題意識は一貫していることを再認識します。すべては紹介できませんでしたが、どれも面白い本だったので、少しでも興味があればぜひ手に取ってもらいたいです。

■紹介した本

またある程度まとめて本を紹介したいと思いますので、こうご期待ください。

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