心理学

【アンカリング効果とは】具体例・心理学の実験からわかりやすく解説

アンカリング効果とは
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アンカリング効果(Anchoring effect)とは、事前に提示された意味のない数字が、文字通りアンカー(いかり)となり、後の数値の見積もりや推定といったに影響を与える現象のことです。

アンカリング効果は、日常のさまざまな場面で起こります。そのため、心理学的な実験から深く理解しておくことで、その効果について深い理解ができるでしょう。

そこで、この記事では、

  • アンカリング効果の意味・原因・例
  • アンカリング効果の心理学的実験

をそれぞれ解説していきます。

好きな箇所から読み進めてください。

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1章:アンカリング効果とは

1章では、アンカリング効果の意味・原因・例を解説します。心理学的実験に関心のある方は、2章から読んでみてください。

このサイトでは複数の文献を参照して、記事を執筆しています。参照・引用箇所は注1ここに参照情報を入れますを入れていますので、クリックして参考にしてください。

1-1: アンカリング効果の意味

冒頭の確認となりますが、アンカリング効果とは、

事前に提示された意味のない数字が、文字通りアンカー(いかり)となり、後の数値の見積もりや推定といったに影響を与える現象のこと

です。

これだけではどんな現象か想像しにくいと思いますので、心理学者のエイモス・トベルスキーとダニエル・カーネマンが紹介したアンカリング効果についての代表的な研究を1つ紹介します2Tversky, A., & Kahneman, D. (1974). Judgment under uncertainty: Heuristics and biases. science, 185(4157), 1124-1131.

実験におけるグループ分け

  • この実験では、あらかじめ実験に参加する人は2つのグループに分けられた
  • グループの分け方は非常に単純で、65と10という2つの数字が必ず1:1で出現するルーレットのようなものを使用し、65が出た参加者と10が出た参加者に分けた
  • この時重要なのは、実験参加者は65と10が1:1で出ることを知らないので、実験参加者にとってこの数字はルーレットでたまたま出現した意味のない数だということである

※ここでは、65という数字が与えられたグループの名前を「アンカー高群」、10という数字が与えられたグループの名前を「アンカー低群」と呼ぶことにしましょう。

さて、ルーレットでそれぞれの数字が与えられたあとで実験参加者は、以下のような質問されました。

「国連加盟国に所属している国の中でアフリカ大陸にある国家の占める割合は、この数字よりも大きいですか?小さいですか?」

つまり、アンカー高群の実験参加者は、65%よりも大きいか小さいかという判断を、アンカー低群の実験参加者は10%よりも大きいか小さいかという判断を行いました。

そして、その後、両方のグループの実験参加者は「国連加盟国に所属している国の中でアフリカ大陸にある国家の占める割合は、いくつですか?」という判断を行いました。

実験の結果

  • 「国連加盟国に所属している国の中でアフリカ大陸にある国家の占める割合は、いくつですか?」という質問に対する、アンカー高群の参加者は回答の中央値は45%、アンカー低群の回答の中央値は25%となった
  • この結果は、後半に行った数値の見積もりが事前に提示されたルーレットの数字に近い値となったことを示している

ここで重要なのは、事前に提示されたルーレットの数字は参加者にとっては何の意味もない数字であることです。

つまり、われわれの数字の見積もりや推定は、事前に提示された数字によって簡単に影響を受けてしまうということです。これをアンカリング効果といいます。



1-2: アンカリング効果の原因

なぜ、私たちの数字のみつもりは、このような何の意味もない数字に影響をうけてしまうのでしょうか?この点に関して、意思決定についての研究の中で、「調整」「プライミング」という2つの観点から説明されています(カーネマン 2011)。

1-2-1: 調整によるアンカリング効果の説明

まずは、「調整」の観点からアンカリング効果がなぜ起こるのかを説明します。私たちは曖昧な数値の推定を行う場合には、アンカーとなる適当な数値から出発し、推定したい数値に近づけていくことで推定を行います。

例として、AさんとBさんがアイスクリームの値段の平均を推定する場面を考えてみましょう。

Aさん「アイスクリームといえば、ガリガリ君(執筆時には70円程度)だよなぁ。ガリガリ君は比較的安いアイスクリームだし、平均ってなるともう30円くらい上かな?100円じゃ安すぎるか、じゃあもう20円くらいかな、120円にしよう」

Bさん「アイスクリームといえば、やっぱりハーゲンダッツ(執筆時には270円程度)だね。ハーゲンダッツは特別な日にたべるアイスだしもう少し平均は安いかな。うーん、70円下げて、200円か。もう少し少ないかな、30円くらい下げて、170円かな!」

なぜ大きい値から調整するか、小さい値から調整するかだけでこのような違いが出てしまうのでしょうか?それは私たちがもつ曖昧な知識に原因があります。

私たちはこれらの曖昧な数値に対して具体的な値を知っているわけではありません。アイスクリームの値段の平均の例で考えると、「120円から170円くらいかな」といったように、これくらいからこれくらいの範囲といったような形で知識を持っています。

この範囲に対して、ある値から調整して近づけていくと、出発点が小さい場合にはその範囲の下限に、出発点が大きい場合にはその範囲の上限にぶつかることになります。

つまり、曖昧な値を推定する場合には、これくらいの値なら妥当だと思う範囲があり、そこに近づけていくという判断方略をとるためにアンカリング効果が生じるということです。

1-2-2: プライミングによるアンカリング効果の説明

続いて、「プライミング」の観点からアンカリング効果がなぜ起こるのかを説明します。まず、プライミングとは、事前に与えられた刺激が、後の刺激の処理を促進する効果のことです。再度、例を出しながら説明します。

まずは、以下の単語を見てよく覚えてください。

「リンゴ」「ブドウ」「メロン」

では、次の〇に共通して当てはまる文字は何でしょう?

「ミ〇ン」「スイ〇」

多くの方は、すぐに「カ」が正解だとわかったのではないでしょうか?

このような現象は、「リンゴ」「ブドウ」「メロン」という事前の刺激が、果物に関連する知識を活性化させ、ミカンやスイカといった果物に関連する単語が思いつきやすかったために起こると説明されます。

つまり、事前に与えられた刺激が後の刺激の処理を促進したということです。これがプライミングと呼ばれる現象です。

プライミングによるアンカリング効果の説明の際には、

  • 事前の刺激にあたるものがアンカー(例:ルーレットの数字、出発点にするアイス)
  • 後の刺激の処理というのが数値の見積もり(例:国連におけるアフリカ大陸内の国が占める割合、アイスの値段の平均)

にあたります。

では、アイスの例をもう一度使って説明します。

プライミングによるアンカリング効果

  • Aさんはアンカーとしてガリガリ君を想起していますので、「ガリガリ君といえば、70円くらいで、バータイプのアイスだな」といったように、ガリガリ君から連想しやすい商品を想起することになる
  • 対して、Bさんはアンカーとしてハーゲンダッツを想起していますので、「ハーゲンダッツといえば、270円くらいで、カップタイプのアイスだな」といったように、ハーゲンダッツから連想しやすいアイスを想起することになる
  • もちろん、ガリガリ君から高いアイスを、ハーゲンダッツから安いアイスを想起することもあるが、主にガリガリ君から連想しやすいのは安いアイスで、ハーゲンダッツから連想しやすいのは高いアイスである
  • すると必然的に、Aさんが想起したアイスの平均価格とBさんが想起したアイスの平均価格では、Bさんの平均価格のほうが大きくなりやすいと考えられる

このように、プライミングに基づくと、アンカリング効果は、事前に提示したアンカーから連想される知識が活性化し、その活性化した知識に基づいた判断が促進されるために起こると説明されます。



1-3: アンカリング効果の具体例

このようなアンカリング効果は日常生活の中でも、多くの判断や意思決定に影響を与えています。

たとえば、裁判の判決といった非常に公平性を求められる場面においてもこのようなアンカリング効果は影響を与えることが知られています。

裁判では大きく分けて2つのことを判断します。1つは有罪か無罪という判断、そしてもう1つがどれくらいの罪が妥当かという量刑判断です。アンカリングが特に影響を与えるのは、後者の判断です。

たとえば、社会心理学者の綿村・分部・佐伯(2014)は、以下の例を提示しています3綿村英一郎, 分部利紘, 佐伯昌彦. (2014). 量刑分布グラフによるアンカリング効果についての実験的検証. 社会心理学研究, 30(1), 11-20.

  • 刑の長さを判定する前に、1998年-2008年の10年間の内にどのくらいの刑が執行されたかというグラフを見せる実験を行った
  • この実験では、片方のグラフは、視覚的に平らになるようになっていたが、もう片方のグラフは5-10年あたりの部分にピークが来るようになっていた
  • 実験の結果、他の情報は同じにもかかわらず、ピークのないグラフを見せられた参加者よりも、5-10年にピークが来るグラフを見た参加者のほうが刑期を5-10年に近い値に見積もった

つまり、グラフの視覚的な情報がアンカーとなり刑期を短く見積もらせたということがわかったのです。

1章のまとめ
  • アンカリング効果とは、事前に提示された意味のない数字が、文字通りアンカー(いかり)となり、後の数値の見積もりや推定といったに影響を与える現象のことである
  • アンカリング効果は「調整」と「プライミング」という2つの観点から、その原因が説明されている
  • 裁判の判決といった非常に公平性を求められる場面において、アンカリング効果は影響を与える場合がある

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2章:アンカリング効果の心理学的実験

2章では、エルダー・シャフィールとロビン・ルブフの研究4LeBoeuf, R. A., & Shafir, E. (2006). The long and short of it: Physical anchoring effects. Journal of Behavioral Decision Making, 19(4), 393-406.から、ものの長さ、重さ、音の大きさといったはっきりとした値を持たない物理的な刺激におけるアンカリングの実験の例を紹介します。

2-1: 長さに関する心理学的実験

シャフィールとルブフは上述した「調整」という考え方に基づいて、ものの長さの判断にアンカリングが働くのかを検討しました。

実験課題

  • 実験参加者は3. 5インチの線を定規などを使用せずに引くように求められた
  • この時、半数の参加者は長い線を短くしていくことで、もう半数の参加者は短い線を長くしていくことで、3. 5インチの線を引くように求められた
  • この時、短い線と長い線のちょうど中間が3. 5インチになるようになっていた

この実験の結果、短い線から長していくことで調整した参加者のほうが、長い線から短くしていくことで調整した参加者よりも、短い線を引きました。

この結果は、長さの判断といった物理的な量的な判断においてもアンカリングの効果がみられることを示しています。

さらに、この実験はまさにアンカーから「調整」していくという手続きをとったうえで、アンカリング効果が示されたという点で、アンカリング効果が調整によって起こるという考え方を支持するものでもあります。

2-2: 重さと音の大きさに関する心理学的実験

シャフィールとルブフは、長さのような物理的な判断においてもアンカリング効果が見られたことから、他の物理現象でもアンカリング効果がみられるのかを検討しました。続いて、重さと音の大きさについて彼らが行った実験を紹介します。

2-2-1: 重さに関する実験

まずは、重さの推定にアンカリング効果がみられるのかを検討した実験です。

実験の概要

  • この実験では実験参加者は、短い鉛筆で満たされたプラスチックのカップを渡され、それをしっかりと観察することを求められた
  • この時、実験参加者は特に、カップの重さに注意を払うように言われていた。このカップの重さは合計6.0オンス(1オンス = 訳28グラム)であった
  • 続いて、実験参加者は、コインの入ったカップが与えられ、先ほどのカップと同じ重さになるまでコインを追加したり減らしたりするように求められた
  • この時、実験参加者は2つのグループに分けられた
  • 1つのグループには、6. 0オンスよりも重くなるようにコインを入れたカップが与えられた(高アンカーグループ)
  • もう1つのグループには、6. 0オンスよりも軽くなるようにコインを入れたカップが与えられました(低アンカーグループ)

これにより、先ほどの長さの実験と同じように、調整する方向が操作されました。実験の結果は、ここまで読み進めた方ならおわかりでしょうが、低アンカーグループのほうが高アンカーグループよりもより軽い段階で、はじめの重さに近いと回答しました。

この結果は、重さという数値として明示されておらず、長い短いといった視覚的な特徴もないような物理的な刺激においてもアンカリング効果が表れることを示しています。



2-2-1: 音に関する実験

次に、音の大きさに関する推定にアンカリング効果がみられるのかを検討した実験を紹介します。

実験の概要

  • この実験では参加者は、数十秒の音楽を聴くことを求められた
  • この時、実験参加者はこの音楽を注意深く聴くように説明されていた
  • この音楽の音量はPCのスケールで35に設定されていた。
  • 続いて実験参加者は、この音楽の音量と同じになるように、音量のスケールを調整するように求められた
  • この時、これまでの実験と同じように、大きい音量から調整する参加者と小さい音量から調整する参加者の2群に分けられていた

実験の結果、大きい音量から調整した参加者に比べて小さい音量から調整した参加者のほうがより小さい音量で、最初に聞いた音楽と同じ音量だと答えました。この結果はアンカリング効果が、音量といった聴覚的な情報の推定においても影響を与えていることを示しています。

この実験は、アンカリング効果が純粋な数値の大きさの推定だけではなく、物理的な大きさを持つ現象においても生じることを示したものです。

このことはアンカリング効果が単なる数値を扱う時の現象ではなく、私たちが何かの量的関係の見積もりに関する判断全般に影響を与える現象であることを意味しています。

1章のまとめ
  • エルダー・シャフィールとロビン・ルブフはものの長さ、重さ、音の大きさといったはっきりとした値を持たない物理的な刺激におけるアンカリングの実験をした
  • アンカリング効果が単なる数値を扱う時の現象ではなく、私たちが何かの量的関係の見積もりに関する判断全般に影響を与える現象が明らかになった

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3章:アンカリング効果を学ぶ本・論文

アンカリング効果を理解することはできましたか?少し関心をもった方のためにいくつか本を紹介します。

おすすめ書籍

オススメ度★★★ ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?』(早川書房)

ノーベル経済学賞を受賞したカーネマンが、人間の意思決定の特性について記述した本です。アンカリング効果をはじめとするさまざまな意思決定におけるバイアスについて2つの思考というアイデアからまとめています。

オススメ度★★★ Tversky, A., & Kahneman, D. (1974). Judgment under uncertainty: Heuristics and biases. science, 185(4157), 1124-1131.

彼らは意思決定における様々なバイアス研究における第一人者です。この論文は、1-1で紹介したアンカリング効果についての実験をまとめいています。『ファスト&スロー』の下巻にも付録として和訳が掲載されていますので、和文で読みたい場合にはそちらを参照するとよいです。

オススメ度★★★ LeBoeuf, R. A., & Shafir, E. (2006). The long and short of it: Physical anchoring effects. Journal of Behavioral Decision Making, 19(4), 393-406.

この論文は2章でも紹介した論文です。こちらは英語ですが、ロジックは単純で初学者にも読みやすい論文だと思います。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • アンカリング効果とは、事前に提示された意味のない数字が、文字通りアンカー(いかり)となり、後の数値の見積もりや推定といったに影響を与える現象のことである
  • アンカリング効果は「調整」と「プライミング」という2つの観点から、その原因が説明されている
  • アンカリング効果が単なる数値を扱う時の現象ではなく、私たちが何かの量的関係の見積もりに関する判断全般に影響を与える現象が明らかになった

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参考文献

  • Kahneman, D. (2011). Thinking, fast and slow. New York: Farrar, Strauss, Giroux. (カーネマン,D.友野典男(解説)・村井章子(訳) (2012).ファスト&スロー(上・下):あなたの意志はどのように決まるか? 早川書房)
  • LeBoeuf, R. A., & Shafir, E. (2006). The long and short of it: Physical anchoring effects. Journal of Behavioral Decision Making, 19(4), 393-406.
  • Tversky, A., & Kahneman, D. (1974). Judgment under uncertainty: Heuristics and biases. science, 185(4157), 1124-1131.
  • 綿村英一郎, 分部利紘, 佐伯昌彦. (2014). 量刑分布グラフによるアンカリング効果についての実験的検証. 社会心理学研究, 30(1), 11-20.
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